いきなりだけど今白玉楼に監禁されてる。

  さすがに両腕切断は痛い。

  足も鎖で繋がれてるし。

  どうすればいい?


  車に轢かれて死んだと思っていたら白玉楼いたんだ。

  それでゆゆさまやようむと楽しく暮らしてたら、スキマからゆかりんがやってきて
   外の世界に帰る時が来たとか言うから泣きながら支度をしていたんだ。

  そしたら後ろからようむに呼ばれたから振り向こうとしたら頭に鈍痛が走って
   気がついたらここにいたんだ。

  何度か逃げだそうとしたけど失敗して
   10回を超えたあたりで「悪い子ね」とか「お仕置きが必要ですね」とか言って腕を切り落とされたんだ。

  ちなみにこれは足とPSPを駆使して入れたものだよ。


  この書き込みを見ているみんな、これが大衆に晒されるとき、俺はこの世にいないだろう。

  俺は自分がどの様にして死に至ったかを記した文章を送る。

  この場所にいるみんなよ是非見てくれ。
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  俺の名は○○、昔は人間だったが今はいわゆる幽霊というやつをやっている。

  なぜ幽霊になったとかいつ死んだのかとかは省く。

  俺は自分が死んだということが信じられずに
   冥界をさまよっているときに白玉楼の主である幽幽子様に気に入られ、白玉楼に厄介になっている。

  そして白玉楼の庭師である妖夢に色々世話になり
  幽幽子さまと早食い勝負をしたりしていた。

   テレビやら何やらは無いが、なぜかPSPを持っていて
   バッテリーやらオンラインネットの接続やらが滅茶苦茶に狂っていたおかげで
    一人でも退屈はしなかった。

  今ではもう、ゆゆこさん、ようむ、とあったときより柔らかい感じで呼び合うようになっていた。

  「○○ーおやつ食べましょー」

  おや、ゆゆこさんが呼んでいる、早くいかなければ。


  「何してたの?」
  「ちょっと日記のようなものを」
  と、ゆゆこさんと短い会話を交わす。
  「今日のおやつはみたらしだんごですよ…幽幽子様、涎を拭いてください、みっともないですよ」
  「いいじゃない、おいしそうな物を見ると自然と涎がでちゃうのが人間って物でしょう?」
  「ゆゆこさんの場合食べ物を見ると際限無く涎がでますがね、後あなたは幽霊ですよ」
  とようむの注意に聞く耳持たずなゆゆこさんにツッコミを入れるのもいつものこと。
  「ところで○○、今日って何か用事あるの?」
  不意にそう聞かれる。
  「はい、今日からこーりんさんのところでバイトがあります」
  さすがに俺も食わせて貰ってばかりなのは申し訳ないので、俺も働くことにしたのだが、幽霊の上に何の取り柄もない俺ができる仕事など無いに等しいのだ。
  だいたいの簡単そうな仕事は門前払い、何とか話を聞いてくれる所もあった物のやはり不採用
  ダメもとで変わり者でもできるバイトを聞きまくってみたところ
  人里から少し離れたところにある森の入り口に、外の世界の物や幻想郷の珍品を集めて売っている変わった店があるらしいのでそこを訪ねてみた。


  バイト先を探し人里から少し離れた森の入り口にある物好きな雑貨屋、こーりん堂を訪ねた俺は元外来人ということもあり無事、バイト先を手に入れることができたのだ。
  そして今日はそのバイトの初日だ。
  「でも今更働くなんて、あなたさえよければずっと養っていってあげるのに」
  「さすがにそれは俺のプライドが許さないですから」
  「でも、外はとても危険なんですよ?妖怪もでますし…(○○さんに言い寄ってくる輩が居ないとも限りませんし)…」
  最後の方がよく聞こえなかったが、二人とも俺を思っての事だとはわかっている。
  だが……
  「男には!やらなきゃならん時がある!」
  俺は声高に言った。
  ふふふ…どうだ二人ともポカンとしているぞ。
  「はぁ…まあ仕方無いわね…(いざとなったら消しちゃえばいいし)…」
  「でも、何かあったらすぐに教えてくださいね」
  「あいよ」
  まあそんなこんなでここから夕飯までごっそり過程が省かれる。


 ~夕飯~

 「幽幽子様ー○○さんー晩ご飯の支度ができましたよー」
  「あいさー居ま行くー」
  「ごはーん!」
 妖夢の声に返事を返し、子供のように廊下を走るゆゆこさんを目で追いながら歩いて行く。

 「「「いただきます」」」

 「そういえばどうだった?バイトの方は」
 「もぐもぐ…んぐ、全然普通、棚に置いてある物を整理したり綺麗にしたり」
 「妖怪とかに襲われませんでしたか?」
 「襲われてたらここには居ないよ、あ…でも何故か異様にアリスや魔理沙を見かけたかな?」
 ピクッ「……そう(妖夢)……」
 コク「偶然じゃないですか?(はい…消せばいいんですね?)」
 「?どうした二人とも」
 「いいえ、何でもないわよ、それより○○、あなたはもう外にでてはいけないわね」
 「え?でもまだバイト初めて一日ですよ?」
 「そうですね、○○さんは外に出ない方がいいです、ずっとここにいるべきです」
 おかしい、どうしたんだ二人とも、いつもと雰囲気が違う。
 「おい二人ともどうしたんだ?何でいきなり…」
 「いい○○絶対に白玉楼から出ちゃ駄目よ?絶対に…ね?」


俺は今、白玉楼から出てこーりん堂へ向かっている。
二人がおかしくなってしまった原因を探すためだ。
人妖に様々な知り合いの居るこーりんさんならきっと何とかしてくれるはず。
そう信じずには居られなかった。
「こーりんさん!」
俺は戸壊さんばかりの勢いでこーりん堂に飛び込んだ。
だけどそこには…
「○○君…逃げろ…!」
血塗れのこーりんさんと…
血に塗れた刀を持つ妖夢…
「○○さん?…駄目じゃないですか外に出ちゃ」
「妖夢…おまえが…やったのか?…」
「そうですよ?当たり前じゃないですか、この不届き者は○○さんを危ない目にあわせたんですよ?」
「危ない…目?」
そんなことはない、昨日はそんな目にあった覚えはない。
「そうですよ、だからこいつも!あの人形使いも!魔法使いも!死んで当然なんですよ!」
「ちょっと待て…何でそこであの二人が出てくる?」
「○○さんは知らなくて良いことです、さぁ…帰りましょう?白玉楼へ」


クソッなにがどうなってる!
幽々子さんと妖夢はおかしくなっちまうし
二人で交代で見張られてるから白玉楼からは出られなくなっちまった
ああクソ!どうする!どうすれば二人を元に戻せる!?
「どうしたの○○?難しい顔をして」
「どうすりゃここから出してもらえるか試行錯誤中だ」
「っ!駄目よ!外は危険でいっぱいなのよ!妖怪は出る、あなたを誑かそうとする悪女も居る!そんなところに○○を行かせてたまるものですか!」
幽々子さんがヒステリックに叫ぶ
普段大人しい幽々子さんが叫んだことに驚く俺
少しすると落ち着いてきたのか、軽い深呼吸をしながら
「○○、ここは白玉楼、冥界の地よ、ここにいれば危険で薄汚い現世なんかには行かなくていいのよ?何故それを拒むの?」
幽々子さんの顔が俺に近づく
「あなたが望むなら何だってしてあげるのに、ほら、こんな事も」
そう言った幽々子さんは俺の唇を奪う
「ん…んはぁ…」
幽々子さんの顔が離れる
「プハッゆっ幽々子さん!?いきなり何を!?」
「まだわからないの?私はこんなにも○○を愛しているのに…」
「な…」
「その顔じゃ気付いてなかったのね、鈍感さん、まあいいわ、このままずっと一緒よ○○…」


「○○さん、ごはんですよ…あ!また逃げ出そうと…」
今の妖夢の台詞からわかるだろう、俺は今通算十四回目の白玉楼脱出を試みていた
今まで一度も成功してない脱出作戦も、もうこれでタネ切れ
これで捕まればもう俺は外という物を感じることは叶わないだろう
だからこそ、一度でいい
もう一度外を感じたい
そう思うのは悪いことだろうか?
否、俺は至極当然な願いを持っていると思う……だがそれも
「捕まえましたよ○○さん」
これで終わりだ

「まったく、これで十四回目ですよ?いい加減あきらめてずぅーっとここで暮らしましょうよ?」
「……」
俺は黙して語らない
語りかけることはもう無駄なのだ
二人にとって重要なのは俺が生きていることと、ほか女性に会わないこと、そしてここ白玉楼からでないこと
この三つ、もはや俺の意志など関係ないのだ
「あ…ご飯、冷めちゃいました、暖めなおしてきますね」
もうどうでもいい、俺は眠い、いや
おそらくもう外に出ることができないという絶望から逃げようとしているのだろう
だがまあそれより、俺は寝る…お休み


「また脱走?」
「ええ、もう十四回目です、○○さんも毎回手を変え品を変えですから…」
「もう諦めて私たちとずっと一緒に暮らすって言ってくれないものかしらね…」
「…○○さんが喋らなくなってから…もう一月です」
「そうね…」
「何で喋ってくれないんだろう」
「貴方が乱暴したらじゃないの?」
ピキッ「幽々子様がはしたないから愛想尽かされたんじゃないですか?」
ビキッ「何ですって?」
「何ですか?」
「だいたい貴方は何?いくら何回も脱走しようとしたからって両腕を切り落とす何て」
「な!それは貴方も賛成してたじゃないですか!だいたい!あなたこそ!色仕掛けで○○さんを困らせて!そんなだから○○さんに口聞いてもらえなくなるんです!」
「言ったわね…チンチクリンな暴力女!」
「自分の事を棚にあげて…もういい、貴様の様な痴れ者に○○さんは渡さない!今ここで消してくれる!」
「言ったわね…いいわ、貴方みたいな奴、私の○○には必要ないわ、今ここで完全に殺してあげる!」
ズゴーン!!
何だ?今の揺れ
ズガーン!!
!今衝撃で老朽化していた壁が崩れた!チャンス!そうして俺は無事、外ヘ出る事が出来た


無事外に出ることの出来た俺は、これからどうするかを考えていた
「どうせまた連れ戻されるなら…」
いっそ三途の川にでもいこうかと思ったその矢先
「駄目よ………○○………危ないわ………」
「○○さん………戻りましょう………平気ですから………」
………
「ははっははははは!」
なんと幸運な事だろう!
俺を縛り付ける存在が二人揃って共倒れとは!
昔はまだよかったなぁ!
あのままならふつうの関係でいれただろうに!
今では憎くて憎くて堪らない!
「ははははははははははははははははは!!」
はいずりよってくる二人に何発も蹴りをいれて絶命させてから俺は久しく忘れていた冥界の大地を歩き出す



     The end

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最終更新:2017年04月08日 04:56