居候先の魔理沙の家に帰ると、俺は真っ先に彼女の寝室へ向かった。
「〇〇……。」
魔理沙は蚊の鳴くような声で俺の名を呼んだ。 その顔はやせ細り、あの胸のすくような快活な表情は浮かぶことはない。
「魔理沙、……魔理沙っ。」
思わず名前を呼んだ。 そうしなければ魔理沙が直ぐに死んでしまう気がして仕方がなかった。
弱弱しい力で彼女は俺の掌を握る。 ……一週間、たった一週間でこの有り様だ。
一体何が彼女をここまでさせた? 病と呼ぶには余りにも急すぎる、老衰でもあるはずはない。
打てる手はすべて打った、なのに全く状況は改善されていない。
「魔理沙、おい魔理沙っ!」
嫌に胸騒ぎがする。 何なんだ、コレは。
「うる、さいなぁっ……! きこえて、いるよ、」
その顔にあかるい表情が戻り、彼女の声に力が入る。 そのことに俺は思わず安堵した。
――その矢先、
「〇、〇」
ずるりと、魔理沙は崩れ落ちた。
魔理沙が死んだ? 俺を残して?
嘘だ、そんな事はあり得ない。
魔理沙の顔に手を翳した。 息をしていない。 胸に耳を当てても、何の音もしない。
魔理沙が、死んだ。
あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。
もう、会えない?
魔理沙に会えない?
魔理沙が居ない?
魔理沙のいない世界なんか、
要ラな イ
*
彼は何かを呟いていた。 その内容は聞き取れないが、時折『魔理沙』と言う単語が聞こえた。
扉の軋む音と共に、暗い部屋に光が飛び込む。 『彼女』は微笑みながら彼に近づき、それを振り上げた。
「――がっ」
小さい悲鳴が上がった。
「あは、00の血って、あったかい」
『彼女』は自らにかかったそれを愛おしげに撫で、掬い取った後に、口元へ運ぶ。
「あハ。」
そして何度も、何度も何度も。
「あッはは、」
霊夢は包丁を彼に振り下ろした。
「アは、あっハははアはハはハっ、アはっはハははハはッ!」
……。
「00ぅ、死んじゃったの?」
「…………。」
「うふ、死んじゃった。00死んじゃった。うふふふふふ」
「………………。」
「ぜーったいに、寂しいなんて思いはさせないんだから。 だって、私も」
「死んっ……で、あげるからぁっ!」
「げほっ、天国なら……っ。 アイツも、……げほっ! 居ないから、 いっ…しょに、げほげほっ! ま……た……」
そして誰も、
*
「やあ、初めまして」
「あぁ、あたいかい? まぁ、この川の渡し守って所だね」
「とにかく乗りなよ、何せあたいはこれが仕事だからさ。」
ゆっくりと船は岸辺から離れる。
「いやぁ、まさかここまで巧く行くとは思っていなかったよ。」
そう呟くと、彼女は彼の魂を小さい篭の中へと入れた。 篭には何らかの術が組まれているのか、彼はすり抜けて逃げることは出来ない様だった。
「あたいは小町って言うんだ。 よろしくな〇〇。」
居なくなった?
最終更新:2011年03月28日 00:01