「はぁ・・・やっちゃいましたよ私」
自室のベットには白目を剥いて横たわる・・・私の一番大好きな人○○さん。
白目を剥いているのは奪い去るときに一気に意識を飛ばしたかったから結構な量の気を注入したから、気絶しながら泡も吹きましたそれはさすがに途中でふき取りましたけど。
本当はこんな方法使いたくは無かった。
説得して○○さんが○○さんの意思でこの紅魔館の門をくぐって私と一緒に暮らすという展開が一番だとは分かってます。
でもお嬢様がそんな悠長な方法を認めてくれなかったのです。

「美鈴、私は何も貴方と○○の付き合いに反対しているわけではないのよ」
「彼が私達と同属に、つまりは妖怪になるのならそれは素敵なことよ」
「貴方も、彼を同属にしたいのでしょう?」
そりゃもちろんそうですよ、同属になれば強くなりますし何より一緒にいられる時間が増えます。
「でもね、私は貴方の悠長なやり方には感心できないの」
「貴方まだ説得すら始めてないのでしょう?」
「ただ毎日楽しくおしゃべりしてるだけじゃ彼は妖怪になりたいなんて言ってくれないわよ」
分かってますよそれくらい、人が人を止めるのにどれだけの決意が必要か。
「仮に説得を始めた所で彼が生きてるうちにいい返事がもらえるかしら?」
「美鈴、貴方にも準備ってのがあると思うわ。そうね一ヶ月あげる、だから・・・」
やめてやめて、それ以上は。
「奪いなさい、彼を」
あぁ・・・やっぱりそのやり方になりますか、確かにそれが一番手っ取り早いのは分かってます。
でもそれじゃ嫌なんです。私は○○さんの意思でここに来てほしかった。
「大体貴方、奪うための算段はそれなりに立っているのでしょう」
「彼からそれとなく聞き出した彼の住む周辺の見取り図を何で後生大事に持っているのかしらね?」
何で知ってるんだろう・・・あーもしかして○○さんの会話から察知したとか?
まぁ知ってても知らなくてもお嬢様から「奪え」とは言われるだろうなとは薄々思ってましたけどね。
「美鈴、私達は妖怪なのよ。妖怪の生き方は人とは相容れないの」
「欲しい物は奪い去ってでも手に入れる、それが私達よ」
「何もフランのように目の前の障害を全部まとめてぶち壊しながらやれとは言わないわ」
「とゆうか短期間で立て続けにそんな事やられたら言い訳が聞かないからそれはやめて頂戴ね」
「まぁ貴方ならそんな不恰好なやり方はしないでしょうしスマートにやれる技量もあるから大丈夫だけど」
「いい美鈴一ヶ月よ。一ヶ月経っても彼を奪えなかったら」
「その時は私の眷属にするわ」
思わず見ちゃいましたよお嬢様の目を。
「でもお嬢様、少なくとも○○さんはお嬢様にとってはあまり面白い物ではないと・・・」
「貴方へかける発破よ。彼の運命は今この瞬間二つに絞られたわ、私の眷属になるか」
「それとも紅美鈴と同族になるか。どちらが幸せかよく考えなさい」

「美鈴」お嬢様が席を立って奥に引っ込むと咲夜さんが声をかけてくれた
「これ、里の正門周辺の見取り図よ、どれくらい役に立つかは分からないけど」
そう言えば咲夜さんは買出しでよく空から里に行ってましたね。
「じゃあ、頑張ってね」そう言うと咲夜さんはお嬢様の後を追って部屋を出て行きました。
背を向けるときに見せたあの笑みは間違いなく本心からの笑みでした。
人一人奪おうとする者に本心から「頑張って」ですか・・・分かっちゃいましたけど彼女人間やめてますね。
フラン様襲撃後も変わらず里に買出しにいけるハートがある時点で推して知るべし何でしょうが。
お嬢様は本気でしょうねぇ・・・説得できるような性格でもないし出来たとしても私の実力ではとても無理。
となると・・・もうやるしかないじゃないですか。
少なくとも私と同族になるのがお嬢様の眷属になるより○○さんにとっては間違いなく幸せです!
そして今に至ります。

寝ている○○さんへ何度目かの口付け。それと安眠出来るように口移しで優しく気を送る
今頃里は大騒ぎでしょうねぇ・・・
盗み聞きした自警団の話では、この間のフラン様の襲撃で自警団長が過労で倒れる寸前だとか。
会った事も無いけど悪いことしましたねぇ・・・そういうのが嫌だから穏便に済ませたかったんですが。
○○さんは・・・いつかは分かってくれるでしょうか?こんな強引な方法では分かるものも分からなくなりかねない気がするんです。
でもお嬢様の言ってる事も一理あるんですよね。
「上白沢慧音のやってる寺子屋、あれの授業を全員が全員本心から受けたいと思ってるかしら?」
「嫌々受けてる子も多いと思いますよ」
「その通りよ、でもアレの授業を受けた経験のある大人はどうかしら?」
「・・・受けてよかったと思ってるでしょうね。まぁまぁな割合で」
「同じことよ美鈴。彼もいつか貴方に感謝してくれるわ、自分をこちら側に招きいれてくれた貴方に」
○○さん、分かってくれるかどうかは今は分かりませんが・・・絶対にこっち側の方が幸せだと思いますよ。
○○さん、一緒に幸せになりましょうね。
最終更新:2011年05月06日 01:33