幻想郷に春が来た。
人里に住まう○○は、春の息吹が席巻する間、自宅に篭もって息を潜める。

「○○さーん~春ですよぉ~春が、私が来ましたよぉ~」

ドンドンドンとドアを叩く音が聞こえる。
リリーホワイトはこの時期興奮してて、特に好意を寄せている○○に強烈な勢いで迫ってくる。
始めて過ごした幻想郷の春、つまり去年だが酷い目に遭った。
だから○○は賽銭と引き替えで巫女に作って貰った物忌みの護符を戸に張り、彼女が興奮している間家に引き籠もるのだった。
しかし、彼女もこの時期は本当にしつこい。
春を告げる妖精とは思えない程澱んだ眼光と歪んだ笑みを浮かべ、○○の家に這入り込もうとするのだ。

ドンドン。

「○○さーん、春ですよぉー」
「○○……春、来たよ……」

ドンドンドン。

「○○さーん、春ですよぉー」
「○○……春、来たよ……」
「○○さん、秋来ましたよー」

ドンドンドンドン。

「○○さーん、秋ですよぉー」
「○○……春、来たよ……」
「○○さん、秋来ましたよー」
「○○、紅葉の季節が来たわよ」

ドンドンドンドンドン。

「○○さーん、秋ですよぉー」
「○○……春、来たよ……」
「○○さん、秋来ましたよー」
「○○、紅葉の季節が来たわよ」
「○○、冬の季節到来よ、開けて頂戴」


ドンドンドンドンドンドン。

「○○さーん、秋ですよぉー」
「○○……春、来たよ……」
「○○さん、秋来ましたよー」
「○○、紅葉の季節が来たわよ」
「○○、冬の季節到来よ、開けて頂戴」
「○○ー、虫の知らせサービスに来たよー」

もう、突っ込む気力も無いが、最後のは違うだろと○○は思った。
家の戸が病んだ女の子達によって破られるまで後数秒の事である。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年05月06日 02:38