アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE





むかしむかし、第三次聖杯戦争の時代、アインツベルンはとても強い槍使いの召喚に成功しました。


――冬木は燃えていた。
誰がその熱量を信じるだろうか、日は沈み、夜はとっくに訪れていたというのに、冬木を支配していたのは闇ではなく、光だった。
何もかもが燃えていた。それは公園であり、住宅であり、高層建築物であり、思い出であり、そして人であり、死体であった。
失われた生も、元から存在しない生も、今消えようとする生も、懸命に逃げ場を探す生も、何もかもが平等に炎に巻かれ、焼かれていった。

全てが廃と化し、灰と化し、風に吹かれ、消えていく。
残るのは圧倒的な炎、炎、炎。

死に行く誰かが、それを聞いた。
この地獄と化した街に高らかに響く笑い声を。
――祝福されなかった赤子、そのようなものを思わせる邪悪な声を。

空を見上げる。
炎の光で、夜空だというのに、昼のように明るく見えた。
だから、見てしまった。
男も、女も、子供も、老人も、死にゆく者も、生き延びんとする者も、皆、それを。


――おぎゃあああああああああああああああ。


妖が、嗤っている。


――どうやら、夜は明けそうにないらしい。



月の綺麗な夜だった。
衛宮切嗣は何をするでもなく、縁側で月を眺めている。
冬だというのに、気温はそう低くはない。
わずかに肌寒いだけで、月を肴にするにはいい夜だった。
傍らには一人の少年がいる。彼もまた何をするでもなく、切嗣と一緒に月見をしている。
名前はラーマ。
かつて切嗣が全てを喪った炎の中で、唯一の救いをもたらした存在だった。

――ラーマ……?

衛宮切嗣の隣に座っているのは、褐色肌の少年だった。
どこか違和感を感じる、あの火災で助けだしたのは■■ではなかったか。
一つ、世界に綻びを見つけると、まるで泉のようにこんこんと疑問が湧き上がる。
己の住居は、東京ではなく冬木ではなかったか。
己の隣にはもう一人大切な娘がいるはずではなかったか。
その娘を――救う途中の旅路ではなかったか。

そもそも、月の色は――こんなにも紅くないのではないか。

「ラーマ……」
「どうしました?」

「僕は……いや、月は何色だい?」
それは世にも珍妙な質問であったに違いない。
並んで同じ月を見ているのだ、聞くまでもなく見るままに答えは己の中にある。
それでも、切嗣は聞かずにはいられなかった。
その答えが、新しい戦いを告げる合図になる、戦う前から決まりきった負け戦の合図に。

「何言ってるんですか……今日は、それはそれは綺麗な青い満月ですよ」
「……ああ、そうだね。変なことを聞いてしまった」
そう言うと、切嗣は悲しそうな笑みを浮かべて、蔵の方へと歩き出した。
そのような切嗣の表情を見ることは初めてで、ラーマは何かを言おうとして、何も言えなかった。
ただ、青い満月が狂ったように輝いていた。


――以前はそうだったのかもしれない。でも今は違うの。私には意志があり、望みがある。"この世に産まれ出たい"という意思が。
かつて愛した女性の口で、それはそう語った。

――おぎゃあ。
彼女の声と共に、そのような幻聴が聞こえた気がする。


ぎい――と、戸が軋む鈍い音を立てて、蔵の戸はゆっくりと開いた。
蔵の中の雑多な収集物を脇に寄せて、切嗣は地下への扉を探す。
確信に近い予感があった――サーヴァントは、この蔵の地下にいる、と。

肉体労働は一切苦にならなかった、しかし地下へとその歩みを進める度に肩が疼いた。
あの戦いから時々、切嗣の感情に呼応して快感と共に右肩に奇妙な疼きを感じる時があった。
しかし、この疼きは何かが違うように思えた。

――恐怖。
切嗣のものではない怖気が、右肩から全身に伝わるようであった。

しかし、歩みを止める気は切嗣には無かった。
その権利も、あの火災で燃え尽きてしまった。

地下にあったものは、切嗣の予想に反して――槍、ただそれだけであった。
それを振るうべき使い手がいない、いやその槍さえも――赤い織布で雁字搦めにされている。

――封印。
英霊としてこの地に召喚されながら、その槍は、そうされているようにしか思えなかった。
切嗣は一歩、槍に近づいた。
赤い織布の封印から僅かに、その刀身が姿をのぞかせている。
その刀身に反射されていたのは、切嗣の姿ではなかった。

そこに映るものは世界の全てを憎んでいたかのような淀んだ目をした男だった。
切嗣は目を凝らし、刀身を見る。刀身に映る人物が切り替わる。
すぐに気づく、これはかつて槍の使い手だった者達なのだと。

男がいた、女がいた、己の利益のために槍を振るうものもいれば、人を守るために槍を振るうものもいた、
復讐者が血反吐と共に槍を振るう光景が映り、軍勢を引き連れて槍を振るう将軍の姿が映り、
そして、最後に映った者は――少年だった。

どこまでも真っ直ぐな瞳をした少年だった。



切嗣は、その目を見れなかった。


【クラス】
ランサー

【真名】
獣の槍@うしおととら

【パラメーター】
筋力E~C++ 耐久E~B 敏捷E~B 魔力E~C 幸運E 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

単独行動:C~A
マスター不在でも行動でき、持ち主が不在の時でも自在に動くことを可能とする。

憎悪:A+
白面の者に対する尽きる事の無い憎悪。

【宝具】
『獣の槍(スピアー・オブ・ビースト)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:10

春秋・戦国期の中国で、白面の者に両親を殺された兄妹が、白面の者を倒すべく身命を賭して作り上げた武器。
妹が炉に身を捧げることで妖怪を討つ力を得た鉄塊を、刀剣鍛冶である兄が刀剣に鍛え上げ、兄自身も白面への
底知れぬ怨念と憎悪から槍の柄へと変化(へんげ)した。
そうして出来た“獣の槍”は意思を持ち、どんなに妖(バケモノ)を切り刻んでも刃こぼれせず、錆びもしない“妖器物”となる。
槍に選ばれた人間が手にして戦うと、槍は使用者に囁きかけ、魂と引換えに妖を滅する力を与えるために、
使用者の身体能力は著しく向上する。また使用者は空中の妖気を頭から吸収し、
髪が異様に伸びた外見となり(戦い終えると妖気の吸収が途絶え、元の姿に戻る)、
その姿では治癒能力は異常とも言える程向上、加えてこの状態は妖怪と同じ存在と化している。
変化した際には、蓄積された槍の使用者達の戦いの記憶と経験を、現在の使用者が瞬時に自らのものとして戦う事が可能となっている。
また結界や人にとり憑いた妖、呪いなど、通常の視界には映らないものを悉く斬り裂く能力を持っている。

『封印の赤織布』
ランク:B 種別:対槍宝具 レンジ:1 最大補足:1

常時発動型の真名の存在しない宝具。
妖達が団結・変化した織布であり、獣の槍の力を封印している。
この赤い織布を取り除くことによって、獣の槍のパラメーター及び、保有スキル単独行動は上昇していき、
それに応じて、マスター及び、獣の槍使用者の魔力消費量及び、魂の削られる量は上昇していく。

『白面の者』
ランク:E~A++ 種別:対憎悪宝具 レンジ:XXXX 最大補足:XXXX人

第三次聖杯戦争時に召喚されたランサー、シャガクシャの持つ宝具。
第四次聖杯戦争の際、切嗣に宿り、産まれ出る時を待つ。

【人物背景】

白面の者を憎む。




【マスター】
衛宮切嗣@Fate/zero

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
右肩が疼く。

【人物背景】
正義の味方にはなれなかった。

【方針】
???



-018:園田海未&ランサー 投下順 -016:渋谷凛&ランサー
-018:園田海未&ランサー 時系列順 -016:渋谷凛&ランサー


登場キャラ NEXT
衛宮切嗣&ランサー(獣の槍 000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命

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最終更新:2015年02月05日 02:15