はぐれたら、どうなるの?
離したら、どうなるの?
そんなこと、考えても意味はないと。
ただ、その冷たさを心の支えにして、
闇の中、独りで、探していた。
隣には、誰も居ないのに。
どうしてか、彼方の声が聞こえる。
どうして、目を背けていたのだろう?
だって。
握り締めていた、
その手は。
もう、蓮子では、無かった。
―ひろがる。 ―せかい。
―なにもかもが。―ありのままのすがたで。
―ああ。 ―これこそが。
“死という名の幻想”
致命的な何かを奪われたでもなく
徹底的に犯しつくされたでもなく
圧倒的な何かに陵辱されたでもなく
倒錯的にもてあそばれたでもなく
そう、私を、縛るものなど、はじめから存在なかったのだ。
でも、目が、離せない。
でも、足が、止まらない。
でも、腕が、動かない。
でも、心が、…
わたしは、ただ、くいいるように、それをみていた。
一歩、歩めば、神尋ね
二歩、進めば、神隠し
三歩、踏めば、神遊び
四歩、辿れば、***
もう、ひきかえすことなど、できないとわかった。
うつくしきこのせかいを、目にした刹那の瞬間より
わたしは、きっと新たに生まれ変わったのだ。
なんて、すばらしい。
なんて、いとおしい。
なんて、ここちよい。
なんて、あたたかい。
得がたき、恍惚が、目に見えぬ形をまとって、私に入り込む。
とても残酷な
とても美しい
終わりなき幻想をかき抱くために
―わたしは、このうつくしきせかいとともに、生きていくのだ。
かつてのその名も
自分の居場所も
何より尊いわが友人でさえも
その全ての価値より、たいせつなものをいま、私は知ってしまったから
…なにも、こわくない。
…なにも、おそれない。
これが、“彼方の願い”なのでしょう?
小さな違和感は、握りつぶされた感情と共に何処かへ。
―わたしは、このうつくしきせかいとともに、生きていくのだ。