04 Fairy Disease



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夜の帳の裏側に
在れる無数の物語
その饗宴を 目にするものよ
かれはかくしてあくがれよう

その髪 その肌 その瞳
人の手ならぬ奇跡の神秘
なんとここまで瑞々しくも
そして幾何艶めかし

ああ かくも深更の逢瀬
どうにも色情(いろ)にも匂わさせ
その(こえ) 聞くものの心中に
妖しき意味さえも(そぞ)ろに

瑠璃 玻璃 蒼玉 黒瑪瑙(オニキス)
光は瞬き 悪しくすも
瞳に宿り 身勝手に盛り
かれをかくしてかどわかす──


ああ、どうしてこんな
俗悪なこの世の中に
こうも美しいものが…


どうか踊って呉れ
この目の前で

けれど何人(だれ)とも 踊らないで呉れ

夜の淵まで
惑わせて呉れ

そしてこのすべて 無駄にさせて呉れ──


照らす月
潤む星
何も知らずに笑える陽
描く円環のその瞬間
影狂わしく巡る林冠

覚めぬ夢
解けぬ絵
定まらぬこゝろの行方
これがきっと私が患うdiseaseというものなのでしょう──


震える手をほんの僅かでもあなたがたに伸ばすことが
この世のあらゆる悪徳の何たる発露であることか!

(あま)ねく言葉にかこつけて
ただジッと足を竦ませて
踏み越えてはならないとばかりに
或いはそれさえ謀りに


永遠なるconflictのままに
矜持(きょうじ)と遺恨振りまくが前に
この場を去れれば それで善いが
そうはさせぬとこの宵が

アアいけません
その愛おしさに向けらる想いは斯くにも下賤
口に出すのも憚られましょう
望みを引き出すその魔性──



揺れ泡立つこゝろは斯くも
私を()め立てゆく
ああ あなたがたという美しきものが
こうにも誘えど 触れないがために…



どうか笑って呉れ
この目の前で

けれど何人にも 笑わないで呉れ

何人のものにも
なってしまわぬで呉れ

どうかこのまま 愛らしくいて呉れ


どうか踊って呉れ
この目の前で

けれど何人(だれ)とも 踊らないで呉れ

病める(わたくし)
見やらないで呉れ

そしてこのすべて 無駄にさせて呉れ──

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最終更新:2021年03月23日 23:45
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