06 盲目の笑顔



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どうか、もう私を
独りにしてください。
もう何も私には
わからないのですから。

どうか、もう私を
放っておいてください。
もう何も私には
聞こえないのですから。


心の瞳が閉ざされてしまったとき、
あの子がとても遠くに
見えてしまいました。

こんな(よわいもの)に縋るしかない、
自分が本当に悔しくてなりませんでした。

それでも、わずかな意思でも
感じられることだけが、
わずかな救いだったのに。

ああ、
それさえももう、
聞こえない。


絶望に満ちた
鳴り止まぬ絶叫(こえ)
その主は他ならぬ私だったと
気付くことさえ

ただ耳を塞ぎ
ただ眼を覆い
立ち尽くす私には
到底出来ぬことでした


   帯びる悲劇の色濃く
    その姿はただ力なく
    呼びかける声響く

     遙か、遠く。

    いうなればひとつの
    愛の結論(こたえ)たる破局(カタストロフ)
  避け難き終幕(フィナーレ)を迎えただけ



あの子なりの
アイなのでしょう
あの子の全てを賭した
アイの形だったのでしょう


止め処なく流れる涙
いつか枯れ果て遺ったのは
脳裏に響く叫び声
忌まわしき瞳が映し出す(むいしき)想起(リフレイン)


もう誰の声も
聞きたくないと
全てから眼を背けた
私がそうして手に入れたものは

絶望さえ
忘れるほどの
―いっそ、幸せを感じるほどの
静寂でした。


笑っていて と。
幸せでいて と。
あの子がそう望んだのだから、
私は応えたいのです。

そう、皆様。
私は幸せです。
独りきりでも、
私は永久(とわ)に笑顔で居続けます。
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最終更新:2023年03月18日 09:50
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