07 御阿礼幻想艶戯譚 -綴-



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(ふけ)る夜は更ける
記憶が見つからぬまま、身を震わす。
かつて記した筈の気持ちは、
幾万の言葉の中にさえ…

ひとひこそ
まちよかるながきけを
かくにみまたば
ありかつましじ

うつつには
あふよしもなかりければ
やがてこひにしぬべし

めぐりあひては
みだれそめにし
おもひたへぬことこそなかりけれ
おもへば
こころそらにありて
いとせめてまちやかねてむ

かくしてそ
ひとはしぬといふ
かくだにも
阿礼はこひなむ
ただこのみのいたづらなるゆゑに
かなはぬことこそをしけれ

つづりつづりて
つづりのはてに
なほもこのみの
わびしきかも
なぐさみに
よこそすぎにけれど
わすらえぬ
ものがたりせんとす


せむかたなくつれづれに


よもすがら
ものおもふころは
あけやらで
ねやのひまさへ
いとつれなかりけり

よもすがら
ものおもはずには
ながらえぬ
あかつきばかり
うきものはなかりけり

さても
ひとりぬるよはわびしく
あひみてしがな


幾千幾万の夜の記憶
そして迎える無数の追憶
夢で逢おうと待ち続けては
思い返すが、熱情。

寄る辺もなく幻想に委ねる
行く先を無くした想いのまま
ゆらり揺られて流れ流れて
たどり着く先は、劣情。

望みの果てに求め合えども
そこより先はけして叶わず
挿さる椿を散らさんばかりに
激しさを増す、激情。

かつて抱いたる慕情(ぼじょう)をたより
かつて記したる感情(おもい)をめぐり
おぼろげたる記憶の果てめざし
夜を彷徨(さまよ)い続ける

深く深く、止め処なく。

想い駆けよ
思いがけぬ出会いに絆され
終わることのない
独りの夜を謳歌せよ

想い馳せよ
思いはせぬ言葉を抱え
かつての我が身さえ
一個(ひとり)の「登場人物(ひと)」としながら

…綴られる艶戯(えんぎ)は、[幻想]とさえ遊離して。


かつて愛したひとがいた、と。

かつて望んだひとがいた、と。

かつて許したひとがいた、と。

そんな記憶は
見つからないけれど…


こんな軌跡。
いつかめぐりあう運命が…
そんな、物語を信じていたい。

そんな奇跡。
きっとめぐりあうアナタこそ
その人に違うことはないのでしょうと。

辿りましょう。
私を虜にしたという、
アナタの記憶を私にどうか下さい。

綴りましょう。
そしていずれ迎える時代に
次の私に胸を張って誇りたい。

…そんな、幻想に身を委ねる夜があってもいい。


(ふけ)る夜は更ける
記憶が見つからぬまま、身を震わす。
かつて記した筈の気持ちは、
幾万の言葉の中にさえ…
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最終更新:2021年03月19日 13:26
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