安価『親友が大好きだが男同士でもんもんとする日々……ある日親友が女の子に!』

優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
ああ、またこの夢だ――と、あなたは左手を伸ばして優しい手を掴もうとします。
もう少し。もう少し伸ばせば優しい手に届きそう。
そして、あとほんのちょっとという所で、優しい手はするりとにげて行ってしまいます。
ざんねん。
かなしくなってしまったあなたは、しょんぼりしたきもちで、またふかいねむりにおちます。
ふかーく。
ふかーく……。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたはゆっくりと覚醒します。
瞼を上げ、声を掛けられた方向を向くと、可愛らしい少女があなたに向かって微笑みかけています。
まるで夢の続きのよう。
あなたは彼女に微笑み返そうと表情を緩め……はたと思いだしました。
彼女があなたの幼馴染で親友だという事。
そして、彼女は彼女ではなく彼、つまり男の子であると言う事。

「今日はいつもよりも寝ぼすけさんですね」

そう言って、彼は微笑みながらあなたの頭を撫でてくれます。
いつもなら男同士でこんなコトするなと拒否するのですが、
なんだかぼーっとしてきて、あなたは優しい手のなすがままにされてしまいます。
優しい手からじんわりと暖かさが伝わってきて気持ちいい。
気持ちよくて、あなたの全身から力が抜けてしまいます。
なでなで。力が抜けていく。
なでなで。もっと力が抜けていく。
ふかふかのお布団。柔らかい日差し。優しい手。なでなで。
とても幸せな気分。
せっかく開いたあなたの瞼が、また閉じてしまいそう。

「眠ってしまうんですか?」

乙女と見まごうあなたの親友が、優しく耳元で囁いています。

「眠っちゃったらイタズラしちゃいますよ?」

いたずらは困ります。何をされてしまうかわかりません。

「だいじょうぶ」

男同士なのに。だいじょうぶなわけないのに。

「だって、もう女の子ですから」

そうでした。この世界は女体化する世界でした。それなら安心ですね。

「おやすみなさい……」

彼女に優しく撫でられて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。

優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
そう、またこの夢です。あなたは左手を伸ばして彼女の手を掴もうとします。
そして、あとほんのちょっとという所で、またも彼女の手はするりとにげて行ってしまいます。
ざんねん。
とてもかなしくなってしまったあなたは、泣き出してしまいそう。
すると、彼女の手が戻ってきて、あなたの手をつつみこんでくれます。
ちいちゃくて、すべすべで、あたたかくて、いい匂いがして、優しい手。
うれしくなったあなたは、右手も伸ばして、彼女の手をじぶんのものにしようとします。
すこしずつ、すこしずつ。
彼女の手は逃げません。
もうすこし。あと、ほんのちょっと。
彼女の手は逃げません。
そうして、あなたの右手が彼女の手に触れると、彼女はあなたを迎え入れます。
彼女はあなたを待っていてくれたのです。
あなたの手と、ちいちゃな手が、にぎり合い、からみあい、ひとつになり、しあわせになる。
あなたのこころはあたたかいきもちでいっぱいになります。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「よく眠ってましたね……夜更かしさんだったのですか?」

あまりにも近い距離で囁かれました。

「それとも、日ごろの疲れがたまっていたのかな?」

横を向くと、至近距離に彼女が。

「お布団、気持ちいいですね」

同じベッドの、あなたの隣に、彼女が。

「あったかい、です」

彼女の匂いに、ぬくもりに、包まれています。

「……また、ねむっちゃうんですか?」

彼女に微笑まれて、彼女の手を自分のものにして、彼女に包まれて、あなたはしあわせで、いっぱい。

「また、イタズラ、しちゃいますよ?」

彼女のイタズラは……しあわせ。

「くすくす、おやすみなさい……」

彼女に優しく囁かれて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。

優しい手つきで、あなたの頭が撫でられています。
ゆっくりと……あやすように……慈しむように。
そう、またもやこの夢です。
ですが、彼女はあなたのもの。
彼女の何もかもを、あなたはあなたの好きなように出来るのです。
そして、あなたは彼女のもの。
あなたのなにもかもが、彼女に優しくされるかもしれませんし、愛されるかもしれません。
どきどき。
期待に胸の鼓動が早くなります。
どきどき。
彼女の鼓動が期待で早まります。
どちらからともなく、あなたと彼女の指がからみあい、すこしずつ顔がちかくなって、そして

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「こんなに近いと、なんだか恥ずかしいです」

あなたの両手は彼女の腰にまわされています。

「そんなふうに見つめられたら……困ります」

彼女の両手はあなたの背中にまわされています。

「……えっち」

彼女の唇が、濡れています。

「おやすみなさい」

彼女に優しく微笑まれて、あなたは深い眠りに落ちます。
深く。
ふかーく。

「おはようございます」

目覚めを促す声に誘われ、あなたは覚醒します。

「わたしのこと、愛してくれますか?」

あなたは目を細め、小さくうなずきます。

「わたしも、あなたのこと、愛しています」

彼女の言葉で、幸せが溢れてしまいそう。

「……」

彼女に組み敷かれ、見つめ合い……いよいよ、その瞬間が来たようです。

「……きて」

あなたは、小さく、でもはっきりと彼女に伝えました。

「……やっぱり、やめましょう」
「……ぇ?」
「今からわたしがみっつ数えると、わたしが掛けた暗示は全て解けて、綺麗さっぱり無くなってしまいます」
「1」
「2」
「3」
「はいッ!」

彼女のカウントと合図で、あなたは全てを思い出しました。
彼女は彼女ではなく、やはり男の子であるという事。
男の子ではあってもいわゆる「男の娘」であるという事。
彼と自分は恋仲であったという事。
そして、女体化してしまったのは彼ではなく自分自身だったという事。

「わたし達が結ばれるためだからって、にょたちゃんの初めてをこんな風に奪うなんて……出来ないよっ」
「だ、だからって、仕方ないだろ!
 俺はまだ男の意識が残っちゃってて、ヤられるのは怖いし!
 かといって、もうお前が女体化するまで、もう猶予は無いし!」

男の娘の方が誕生日が早いので、予定では彼が女の子に生まれ変わり、二人はめでたく結ばれるはずでした。
しかし何の因果か、男の娘より先に彼女が……にょたちゃんの方が早く女体化してしまったのです。

「で……でも、それでも!にょたちゃんの初めてが催眠でふわふわしてるうちに勢いで、なんて……だめ、だよ!」

予定がひっくり返り、恋人達は戸惑いました。
ですが、互いの役割が入れ替わろうとも愛する気持ちに変わりは無い、と二人は苦難を乗り越えたのです。

「じゃぁどうすんだよ……お前まで女体化したら、それこそ俺達は、もッ……ぅ」

男の娘に苦しげに見つめられ、にょたの中の何かがドクンッと揺れた。
先程までの催眠の残滓か、それとも窮地に立たされた故の本能の胎動か、それは分からない。
だが、愛する者からの求めに対して、応えたいという想いが彼女の中で急速に大きくなっていく。

「なぁ……今なら、出来るかも、しんない」
「……え?」
「い、いまなら、ひょっとしたら……きっと……」
「え?えええ!?」
「ば、ばっか、何度も言わせんな!」

まっ赤になってそっぽを向くにょた。
彼女の手を取って、両手で包みこむ男の娘。

「……にょたちゃん」

優しく囁かれる。

「にょたちゃんの初めて、わたしにください」
「ぅ……あ……」

にょたの全身から力が抜け、恋人にしなだれかかってしまう。
慌てて支えた彼の耳に、幸せが溢れ出てしまった彼女が囁く。

「……きてっ」


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最終更新:2011年07月04日 23:40
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