「なんだ、今日も安田は来てないのか?」
朝のHRで出欠を取っていた担任がこぼした。
「おい五十嵐、おまえたしか近所だったよな?悪いがこのプリント、届けてくれるか?」
そういわれて渡されたプリントの束は、ゆうに1cmを超えていた。
それもそのはず、安田は新学期が始まって以来、始業式の日に学校に来ただけで、あれから3ヶ月近くも休み続けているのだ。
梅雨も明け、じりじりと肌を焼くような日差しに、目を開けているのも困難になり、鞄からサングラスを取り出した。
安田の家に着き、玄関のチャイムを押す。──が、返事はなかった。
「おーい安田、いるんだろ?」
そう言いながらドアノブをひねると、鍵がかかっていなかったようで、玄関のドアが開いた。
「入るぞ~。学校のプリント、持ってきたからさ」
今までにも何度も安田の家に遊びに来たことがあるから、彼の部屋は知っている。
勝手知ったる何とやら、と彼の部屋のドアを開ける。
「ずっと休んでどうしたんだよ?それはそうと、俺のサングラスもイカスだろう?」
そこまで言って、俺は言葉を失った。安田の部屋にいたのは、男物のTシャツとトランクス1枚で、うつろにゲームをしている美少女だったのだ。
ゲームの画面で主人公が言ったその台詞は、俺の気持ちをよく表していた。
『──性欲をもてあます』
最終更新:2008年07月21日 03:17