安価『シェルショック』

「・・・恐らく・・・でしょうね・・・」

白服を着た中年男性が、重い口を開く。
言い終えると、唇を強くかみ締める。出来れば言いたくなかったことなのだろう。
それを聞いた母親らしき人の体から一気に力が抜ける。
がくんと膝から落ち、近くにいた看護士に肩を抱かれる。

「すいません・・・ちょっと休ませてください・・・」

母親は看護士の肩を借り、その部屋から出て行った。
何人も母親のような人は見てきたが、こういう人の場合だと原因を告げるのが辛い。
白衣を着た男性は、薄汚れたベッドに横たわる少年を見る。
目は開いており、意識はちゃんとあるのだが、何かが変なのだ。
本人の目に手をかざしても反応はない。何と言うか、死んだ魚の目をしている。
何かを聞き出そうとしても、返してくれない。というか、言葉を発することができない。

原因はある程度分かっている。戦争の混乱に乗じた強姦によるものだと想像がつく。
女性ばかりが狙われているものとは限らず、男性にも被害はあったようだ。
15歳になろうかという少年の目の前で、次々と人々が殺されていく様を見せられてしまっては、心的障害となってしまっても仕方ない。
こればっかりは、15歳の少年だろうと関係はない。
ただそれに加えて、逆レイプという性的暴行があったから、彼は色々なものを失ってしまった。

軍事工場で働いていた少年達が、突如として女性になる事件がここ最近多発していた。
原因を調べてみると、彼らは童貞だったということ。
復興に向けて男手が強く必要になってくるであろうに、女性比率が高くなってしまっては色々と大変だ。
国の統計調査によると、この国の15歳近辺の男性の6割強が女性になってしまったと発表された。
今では彼のように女体化していない人が必要だった・・・

だが今の彼にベッドから起き上がれというのは酷な話。
言葉が話せず、正気のない彼が社会復帰を果たすのは難しい。

戦争は・・・二度と起こしてはならない・・・
そう強く思った夏の終わり・・・


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最終更新:2008年08月02日 15:35
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