小ネタ

  • 作者 7スレ344氏


 これは夢だろうか、と思う時は必ずと言っていいほど現実の中にいる。

 ベッドの端に腰掛けた俺の膝の間に、ショートカットの黒髪が魅力的な小柄な女性が
跪いてマジマジと俺の股間を眺めている。
「ほ、本気でこんなことして欲しいわけ?」
 こんな姿勢から上目遣いで見つめられれば、普通は嬉しいはずなのだが、勝気な彼女が
やると睨まれているとしか思えない。
「ええっと……して欲しいなぁ、と」
 彼女の大きな黒い瞳が揺れる。
「ふ、ふん。女の子にこんなことさせたいなんて、あんたはヘンタイよ、ヘンタイ!」
「ダメ?」
「バカ!……あんたがして欲しいって拝み倒すから、仕方なくやってあげるのよ。感謝しなさい!」
 別に拝み倒してまで頼んだ覚えはない。彼女が「やってあげるわけじゃないけど、一応、
あんたがして欲しいことがあるなら聞いておいてあげるわ」などとエッチの前に言い出したのが
事の発端だ。
 いざ前々から興味があったことを口にすると、彼女はあらん限りの言葉で散々に俺を罵った。
そのケがある人ならきっと大満足なのだろうが、残念ながら俺にはそんなケは毛頭ないわけで、
浴びせられる言葉の数々を項垂れて大人しく拝聴するしかなかった。
 一通り罵詈雑言の洗礼が済むと、何故か俺は強制的にベッドの端に座らせられ、彼女は
真向かいにしゃがみ込んだ。繰り返すが、決して俺が頼み込んだわけではない。
 そして、彼女が俺のズボンをくつろげ、分身を取り出してからもう十分以上が経つものの、
彼女は俺の”もの”を前に固まったまま動こうとしない。
「無理しなくてもいいよ。そのここまででも、結構感激しているからさ」
 と俺が言った途端に彼女の眉が釣り上がる。これは彼女がムキになった時にでる仕草だ。
次の瞬間、彼女の掌が俺の性器を包み込む。
「えっ」
「あっ」
 ただ、それだけでも互いに見合って固まってしまう。
「……まだ、掴んだだけでしょう!男なんだから、ジタバタしないの!!」
 何故か俺は怒られてしまい、ただ頷くことしかできなかった。それよりも彼女のひんやり
とした白い指先に掴まれたことで、俺の身体は一箇所を除いて硬直してしまう。硬直して
いない一箇所に全身から血が注ぎ込まれ、硬度と熱が増していく。
「ヘンタイ。もう興奮している」
「ご、ごめん」
「何で謝るのよ、バカ」
 急に彼女の握る手に力が籠もった。
「ちょっ……い、痛っ!」
「うるさい!これから、やってあげるんだから我慢しなさいよね!」
 彼女はどうやら本気で”やる”つもりらしい。口をポカリと開けて、少しずつ性器の先端に
顔を近づけていく。まるで、ホットドッグでも食べるかのように仕草に不安が募り、思わず
静止しようと声が出てしまった。

「ねぇ……っ!?」

 ハムッ!

 いや、そんな音がするはずはない。幻聴だ。しかし、それでも俺の鼓膜は確かに
聞こえたのだ。
「んんっ……」
 眉間に皺が寄り、目をギュッと瞑りながら口元を窄め、まるで苦虫を潰したかのよう
な表情の彼女が言葉にならない声を漏らした。
 そんなに嫌ならやらなくても、と思っていると、それを鋭く察して彼女が「あんたのため
だからね」というような顔でこちらを見上げてきた。しかし、彼女はどんな顔をしても、
美しく魅力的だ。特に吸い込まれるような円らな黒い瞳に見つめられるだけで、
恋人同士になった今でも心拍数が否応無しに上がってしまう。
 そんな彼女が男特有のグロテクスな器官をその桜色の唇で包み込んで、体温の籠もった
口腔に含んでいる──この光景に興奮しない男がこの世にいるのだろうか。
 当初は、恐る恐る舌先で突くように刺激してきた彼女の控えめな愛撫も少しずつ大胆に
なっていき、やがて前後に頭を動かし出すと病み付きになりそうな快感が襲ってくる。
 異物を咥えた彼女の口からは絶え間なく唾液が染み出し潤す。そして、飲み込んだり
引き抜いたりする動きに合わせて、彼女の口元からイヤらしい水音が零れ出る。おまけに
彼女の唾液の量は相当で、口の中に収まりきらない分は唇の端から顎を伝いフローリングの
床に小さな溜まりを作るという、何とも淫靡な光景が展開されている。
「んっ……んくっ……ふっ……」
 必死に俺を気持ちよくさせようと動く彼女の吐息混じりの声が俺の劣情を煽る。
 俺が彼女の頬にかかる髪をかき上げてあげると、彼女が潤みを帯びた目で俺の表情を
伺ってくる。その頬がほんのりと紅く染まっている。断続的に込み上げてくる射精感に俺は
目を閉じ歯を食いしばって堪え、一秒でも長く快楽を味わおうと余計な刺激を遮断することに
努めた。
 すると、途端に刺激が止まった。彼女が口を離したのだ。
「……良くないわけ?」
 詰るような口調とは裏腹に少し声が震え、彼女には珍しく不安げな声色だった。
 きっと、俺が我慢しようとした姿に、彼女は俺が不快感を覚えているとでも思ったのだろう。
「いや、気持ちいい……う、上手いよ」
「……あ、当たり前よ!」
 言ってから、自分がトンデモないことを言ってしまったことに気づいたのか、彼女は顔を
真っ赤にして視線を合わせないように目を伏せてしまった。「当たり前」というからには、
どこかでやったことがあるのだろうか。ムクムクと不安と疑念が湧き上がってきて、
それを問わずにはいれなかった。
「以前に、誰かにやったことが……」
「バ、バカァァ!!!」
 凄まじい彼女の大音声が狭い俺の部屋に響き渡る。
「そんことあるわけないでしょ!!こ、こんなことをしたの、あんたが初めてよ!」
「……」
「本当なんだから!……本当……よ」
 最後は弱々しく、消え入りそうだった。
「分かったよ。ねぇ、だから、続けてくれない?」
 俺の答えに、彼女はパッと表情を明るくする。
「し、仕方ないわね」
 不承不承という感じだが、やけに声色は軽やかで嬉しそうにすら聞こえる。そして言うなり、
彼女は再び俺の先端を飲み込み、先程までよりも一層激しい口戯を施してくる。
 キュッと窄まった桜色の唇、柔らかな舌、潤滑油代わりの湧き出る唾液、時々触れては
違った刺激をもたらす歯、そして口腔の粘膜、全てが極上の快感をもたらしてくれる。
「ふぅっ……んっ」
 そして彼女が時折、口の端から洩らす舌足らずな吐息が心なしかエッチする時の喘ぎに
似た近い感じに聞こ、俺の興奮を最高潮に押し上げる。
 やがて腰の辺りが熱くなり、背筋を痺れにも似た特有の刺激が駆け上がってくる。
「や、やばい……出そう……だ!」
 思わず口をついて出た言葉で、彼女が全身をビクリと震わせ、慌てて首を振って口を離す。
「ダメよ、ダメ!我慢して!」
 正直に言おう。彼女が口を離した最後のストローク、それが俺の限界ギリギリだった。
 そして、彼女が言葉を発した瞬間、俺の先端に向けて吹きかけられた彼女の息が暴発寸前だった
俺の砲身の引き金を引いてしまった。
 スローモーションみたいに先端がビクビクと震え、白濁した粘液が噴き出す。そして、
飛び出したそれが、目を見開いて呆然と俺を見つめる彼女の端整な顔に付着する。
 二人とも硬直したまま、俺は奔流を遮ることもできず吐き出し続け、彼女はただ顔で精液を
受け止めていった。

◇ ◆ ◇ ◆

「バカ!バカ!ヘンタイ!」
 彼女はベッドの端に座って縮こまった俺の前で、腰に手を当てて仁王立ちになっている。
 顔は憤懣やるかたない様子で、眉を吊り上げ俺を責めるように睨みつけている。

 あの後、慌てて正気に戻った俺は濡れタオルを用意し、彼女の顔にヘバリ付いた精液を
拭い取った。彼女の方は放心状態でされるがままだった。それから正気を取り戻すまでには
暫く時間を要した。そして、正気を取り戻した途端──

「最低!恋人の顔にあんなものかけるなんて、最低!」

 時には、直接的な暴力よりも言葉の暴力の方がこたえることがある。罪の意識に苛まれた
今の俺には、まさに心を抉るような攻撃だ。
「大体、私が『我慢して』って言ったのに、少しも堪えられないなんて……信じられない!」
 荒げた声が部屋中に響き渡り、それが俺の心を苛む。責任は全て、俺にある──のだ。
「もう、あんなこと二度とやらないんだから!」
 きっと、言葉通り、もう二度と彼女が口でしてくれることはないだろう。ここまで
怒っているのだから当然かもしれないが、彼女の与えてくれた快楽を思い出すと悔やんでも
悔やみ切れなかった。
「な、何よ……その表情(かお)」
「……ゴメン。俺が悪かったよ。その、あまりに気持ちが良かったから、つい。ゴメン」
 俺は最大限申し訳なさを表現して、謝罪の意を表す。ここは快楽のことは忘れて平身低頭、
何とか彼女に嫌われないように最善を尽くすべきだろう。
「ゴメン。もう二度と頼まないから」
「……バカ!」
 彼女はそう言うと、プイとそっぽを向いてしまった。
「未練タラタラな顔して、そんなこと言わないでよね」
 自分ではそんな顔をしているつもりは毛頭ないが、彼女にはそう見えるのだろうか。彼女が
長い溜め息を吐いて、再び視線を戻して俺の顔を覗きこむ。
「分かったわよ……仕方ないから、またやってあげる。だから、そんな顔をしないの!」
「えっ!?い、良いの?」
「でも、今度は顔にかけないで我慢してよね!」
「う、うん」
「……もったいないから」
 意外なその一言に俺は完全に思考停止に陥り、身体が硬直してしまう。
「ど、どういうこと?」
 彼女は顔を真っ赤に染めて、何だかモジモジと口籠っている。そんな彼女をジッと見つめ、
答えを催促する。彼女は目を伏せたり、こちらを見たりを繰り返して何とか誤魔化そうと
しているが、俺が視線を外さず凝視するので、観念してついに口を開いた。

「……だ、だって、ああいうものは…………わ、私の中に出しなさいよ!」

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最終更新:2010年04月14日 02:12