145 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:12:11 ID:0nQ78ATp
「ふ~っ…もう十一時四十分か……」
 もう直ぐ昼休みになる…憂鬱でたまらない…え!?何故かって‥僕、岩倉智也にとってはみんなが楽しみな昼休みが魔の時間になるからだ。
それは…今日もまた僕の幼馴染み…有栖川アリサが、もう直ぐ来ると言う理由からである…彼女の家は旧華族の家柄で、母親はイギリス人で侯爵家の出らしい…
 まあ要するに…筋金入りのお嬢様だ‥容貌も真っ白な陶器の様な肌、栗色の緩くウェーブのかかった艶やかなロングヘアー、真っ赤な小さな唇、ダークブラウンの大きな瞳をいっも細めて
(色素が弱い為)見詰める様は、社交界では月下美人と称えられている。
僕の家は先祖代々有栖川家に仕える家系らしく、父親は有栖川家執事、母親は厨房で働いている。
 僕自体も登下校時はいっも一緒で鞄持ち兼ボディガードをしている…“アリサ様も車で登下校すればいいのに”…彼女の父親もこの物騒なご時世故、車での登下校を
勧めているらしいが…アリサ様が頑として断ってると言う…
「岩倉、この問題をやって見ろ」
おっと…ポーッとしていたら教師に目を付けられた様だ…僕は頭を大きく左右に振り溜め息を一つ吐いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 午前中の授業が終わった…多くの生徒が、学食や購買に向かう中、僕は弁当を待っていた。
「岩倉、一緒に食べようぜ」
 中学校からの親友である山本が机をくっつけてきた。
「別に良いけど…今日もお嬢様が来るけど……」
僕の弁当は何故かアリサ様が持っていた。
「いいの、いいの、今日もお裾分けがあるから…」
ニヤニヤ笑う山本…セレブのアリサ様が来るとみんな遠慮して近寄らないのに…流石オタク…神経が無い、まあ‥そこが良い所でもあるのだが。
 “ガラガラ”音と同時に、教室のドアが勢いよく開かれた…教室にいた生徒は驚いてそちらの方を見て、またか、という様な顔をした。
その場に月下美人が咲き誇る様な少女漫画的雰囲気と共にアリサ様が現れた。
「御機嫌よう、智也…待ちましたか」
「いえ、お嬢様」
「もう、智也…学校では名前を呼んでくれないと困りますわ」
「すいません…アリサ様」
 アリサ様は何故か弁当を三つ持っていた…豪華なブランド物のスカーフで包まれた物が一つ、普通の弁当が一つ、後大きな赤い包みの可愛い弁当が一つ…
「はい…智也」
 アリサ様が僕に渡したのは赤い包みの弁当。
「また…ですか…」
「何か言ったかしら」



146 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:14:30 ID:0nQ78ATp
ギロリと睨むアリサ様。
「べ、別に」
普通の弁当をアリサ様は山本に渡す。
「これ、余りましたので、良かったらどうぞ」
「イヤ、イヤ、有栖川さん、何時もすいませんねぇ~」
この山本のお調子者め…実は豪華な弁当はアリサ様の、普通の弁当は僕の、どちらも僕の母親が作った物だ…しかしながら赤い包みの弁当は…アリサ様のお手製なのだ…
「アリサ様…僕の母親が二人分の弁当を作ってるので、何もわざわざ‥自分で作らなくても……」
「べ、別に…花嫁修業の一貫ですわ…智也の為に作ったんじゃ有りませんのよ」
「しかし……」
僕はうんざりする様に言った。するとアリサ様は顔を赤くして、
「あなたねぇ、わたくしがせっかくお手製のお弁当を差し上げるって言ってるのよ!
殿方だったらつべこべ言わずに食べなさい!」
 と、言った。ついでに、一空間からも非難の声が上がるが、僕は無視した。
「あんなの全部食べられるわけないじゃないですか!」
 アリサ様の弁当は別に不味くはなかったのだが、異様に量が多く、超塩辛いのだ。
 残そうしたり、誰かに分けようとすると、アリサ様は急に泣きそうな顔になるので、
僕は意地でもアリサ様の弁当を完食しなければならない。
 弁当を食べ終わった頃には、僕は机に突っ伏して、うめき声しか上げられない。
 アリサ様は帰り際にいつも、「いつもこんなことがあるとは思わないで下さいね。
き…今日は気紛れなんですからね!」
 という捨て台詞を吐いて出て行くのだ。
 ちなみに、その捨て台詞が履行されたことは一度も無い。
「まあ‥何と女々しいことを!これくらいなんともありませんわ!」
「あんなのを毎日食べてたら、僕が死んじゃいますよ!」
 今日こそははっきり言わないと、この負の連鎖が続いて身が持たない。
 僕はいつもより厳しく言った…間近で見ている山本や、一空間の住民達はへらへらしながらこの論争を楽しんで見ていた。
その時…「有栖川さんいい加減にして下さい!」
アリサ様に向かって叫んだのはクラス委員長の堀北さんだった。
「あら…あなた、何ですの」
「岩倉君が迷惑しています…クラス委員としては見過ごせません」
「まあ…これは有栖川家の問題ですのよ‥部外者は引っ込んでて、いただきたいわね」
「別に岩倉君があんたの家来って訳じゃ無いんでしょ」
「委員長……」



147 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:16:54 ID:0nQ78ATp
僕は委員長の言葉に感動していた…だって他の人達はアリサ様には何も言えないんだもん…僕が彼女を熱く見詰める視線を感じたのか、アリサ様がブルブルと肩を震わせて僕を睨み付ける。
「い…いいですわ。分かりましたわ!
せっかくわたくしが好意でお弁当を差し上げているのに、
食べないって言うなら……‥も‥もうお弁当を作っても、智也には絶対あげないんだから!」
 アリサ様は顔を真っ赤にし、目に涙を浮かばせる…マズいこれ以上お嬢様を怒らせたら…
「アリサ様分かりました…僕が間違っていました…使用人の息子として、お嬢様の花嫁修業の協力はさせてもらいます…
それと…委員長…ありがとう…でも、もういいんだ…」
 委員長は悲しそうな顔で僕を見詰めていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
数日後の昼休みに、アリサ様がいつもの様に弁当を持ってきた‥ただ、いつもとは違っていた。
「今日から、わたくしもここでいただきますわ」
 そう言うなり、空いている机を僕の机にくっつけた…昼食は、僕、アリサ様、山本とにぎやかなものとなった。
「そういえば、智也、お付き合いしているひととかいますの?」
アリサ様が箸で僕を指した…僕の父親が見たら“お嬢様、淑女にあるまじき行為ですぞ”って大騒ぎになるなぁ…
「いませんけど…、なにか…?」
「やっぱり。あなたみたいな人に“いいひと”がいるはずないですわ」
「それ、地味に傷付きます…」
僕はアスパラの肉巻きを口に入れた…相変わらずショッパい…
「そう言う有栖川さんにはいるんですか、彼氏?」
 隣から山本が口を出してきた。
「わたくしに見合うような殿方はいないですわ…」
僕と山本の答えがシンクロした…こんなわがままで高飛車な女を彼女にしたら、彼氏の方は心労で倒れてしまいそうだ、こういうのを「地雷女」と言うのだろうか。
「あの~、もう一つ聞きたいんですけど、なんでいつも岩倉に弁当持ってくるんですか?」
 山本はやはり気になっていたようだ…自分の目の前で繰り広げられる、ギャルゲー、もしくはエロゲ的展開を。
「前から言ってる事ですけど。花嫁修業の為にお料理の勉強をしてまして、仕方なく智也にあげてますの」
「それって何故毎日の様に?
それに、なんでよりによってあげるのが岩倉なんですか?」
「そ…それは、知らない殿方には……」
「ようは、岩倉以外に手作りのお弁当をあげたい人がいないと…」



148 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:24:03 ID:0nQ78ATp
「ようは、岩倉以外に手作りのお弁当をあげたい人がいないと…」
「な…そ、それは…」
アリサ様は雪の様な真っ白な肌を茹で蛸みたいに真っ赤に染めて固まってしまった。「ふ~ん…」

 山本はどこか納得したらしく、再び弁当に口を付け始めた。
 その後、三人は雑談をしながら昼食を楽しんだ。
 アリサ様は帰り際、いつもの捨て台詞を吐いて、教室を後にした。
 アリサ様が出て行ったのを見届けると、山本が近付いてきた。
「岩倉、お前も大変だな」
「はぁ?なにがだ?」
「いずれ、分かるさ…フラグを逃すなよ……」
 山本が気になることを言って、教室から出て行ってしまった…僕は山本の言っている意味が分からなかった‥委員長の熱い視線が有ったことも。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
高校生にとって一番うざったい期末考査と、夏休みが重なる心情的に少し微妙な七月。
委員長のご指名で、放課後…夏休み前のクラスアンケートの入力作業で居残りする事に成った…アリサ様は終わるまで待つと言って大騒ぎしていたが……僕は父親に
電話してアリサ様の向かいの車を寄越してもらって無理矢理お嬢様を先に帰した‥アリサ様は両頬をフグの様に膨らませてむくれていたが。
「岩倉君、有栖川さんの事どう想っているの」
パソコンを入力しながら横目で僕をチラ見する委員長。
「彼女は小さい頃から一緒で幼馴染み、みたいなモノだから…」
「そうじゃなくて、有栖川さんの事は一人の女の子として好き?…」
 アリサ様の事を……一人の女の子として…うーん、考えた事も無かったな…でも身分が違うし…委員長がじっと僕を見詰める。
「一人の女の子として考えた事は無いよ…第一身分が違うし…」
「そう…よかった」
 ほっとした様に微笑む委員長…彼女も可愛いんだよなぁ~アリサ様のように派手さは無いけど…優しいし…気がつくし…
「委員長は彼氏とか居ないの?」
「私みたいなお堅い女は敬遠されるのよね…」
俯く委員長…
「そ、そんな事ないよ、委員長は可愛いし、優しいし、僕がこんなんじゃ無かったら委員長と付き合いたいくらいだよ」
や、やべえ~まるで告白みたいじゃないか…人畜無害が取り柄の僕としては不味い発言だ…警戒されてしまうなぁ…
「いいよ…」
「へ…!?」
「岩倉君だったら私……」
「委員長……」



149 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:26:11 ID:0nQ78ATp
潤んだ瞳で見詰めてくる委員長…お嬢様に振り回されるのはもう嫌だ、こういう女性を彼女に出来れば皆に自慢できる。
 それに、夏休みになればどこにでも遊びに行ける…高嶺の花のアリサ様よりこうゆうカスミそうの様な女の子が僕のオアシスなんだ……僕は委員長と付き合う決心を固めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の日の昼休み、僕はアリサ様、山本が来た所で、昨日のことを告げた。
「岩倉、お前、堀北さんと付き合うのか!?
俺はてっきり、有栖川さんと付き合うもんだと思ってたぜ!」
「だから、そんなんじゃないって言ってただろ。
 僕とお嬢様はあくまで幼馴染み。そうですよね、アリサ様?」
「そ……そう…よ…。わ…わたくし達は…あくまで…幼…馴染み…です…わ…」
 途切れ途切れの物言いからは、動揺がひしひしと伝わってきた。
 よっぽど、ヘタレの僕に彼女が出来たことがショックだったんだろうか…僕だってやれば出来る子なんだ。
「それからアリサ様。明日から弁当いりませんから」
「えっ…!どう…して…!?」
「明日からは委員長が弁当を作ってくれるって言うから。試食の方は僕の母親に頼んで下さいね」
二人は僕の惚気話を黙々と聞いていた…特にアリサ様はなにかの感情を押し殺すように黙って聞いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
終業式の日に、国語、数学、理科、社会、英語と順にテストが返された…別にテストの点など、どうでもいい。
 山本は五教科全てヤバイ点を取って、夏休みの補習が確定していた‥横で山本がさめざめと泣いていたが、僕はそれを無視した。
僕の頭の中では、夏休みに委員長とどこに行こうかという考えでいっぱいだ、すると、委員長が僕の所にやって来た。
「あっ、委員長。どうかしたか?」
「ひっ…あ…あの…岩倉…くん…」
 なぜか怯えたような声を出した。どうしたんだ?
「あ…あの……私…別れて…ほしいの…」
「はぁ…はぁ!?」
 まったく予測できない言葉に僕は大いに動揺した。
「委員長。僕、君に何かしたかい!?昨日だって一緒に帰ったじゃないか!?
いったい、どうして!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
 彼女はただそう呟くだけだった周囲は賑やかに騒いでいたが、僕にはそれを無視する余裕も、突っ込みをする余裕もなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






150 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:27:30 ID:0nQ78ATp
わたくしと智也の関係は、小学生一年生の時まで溯る。
普段から篭の鳥で、どこに行くにも護衛付きのわたくしは…とにかく一人で外を歩きたかった。
その頃は智也に対しても何時も一緒にいる遊び相手と言う感じだった。
小学校の入学式が終わってから、わたくしは…意を決して‥護衛の目を盗んで、一人で帰った…一人で歩く外の世界はワクワクする事ばかりの様な気がした。
しかし…外の世界は篭の鳥には甘くなかった…二人組の男にさらわれそうに成ったのだ…今考えたら身の代金目的の誘拐犯だったかもしれない。
大人の男に口を塞がれ、車に連れ込まれそうに成った…その時…
「アリサちゃんを離せ!!」
小さい智也が男にいきなり飛びかかったのだ…勿論大人に適うはずがなく…軽く跳ね飛ばされた、だが…智也は諦めなかった。
「いてて…このクソガキ噛みつきやがった」
「早く車に乗せろ!」
「分かってるよ!‥このガキ!」
男は噛みついて離さない智也を容赦なく殴りつける、智也の顔面が血だらけになる…
「やめて!!智也ちゃんが死んじゃう!!」  わたくしは力の限り泣き喚いた…やがてわたくしの泣き声に気付いた大人が駆けつけて来て男達は逃げ出した。
「智也ちゃん‥死んじゃダメ!!」
泣き縋るわたくしに智也は……
「アリサちゃん…無事で…よかった…」
そう言うなりニッコリ笑って気を失った…わたくしは…ソッと智也に口付けをした。
それ以来智也以外の男には興味を失った…どんなに地位、能力がある男だろうと…一度アラブの石油利権を持つ王子様とかゆう人に求婚された事が有ったが、
智也以外の男はわたくしにとっては路傍の石同然だった。
それが……「それからアリサ様。明日から弁当いりませんから」


151 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:33:57 ID:0nQ78ATp

「えっ…!どう…して…!?」
「明日からは委員長が弁当を作ってくれるって言うから。試食の方は僕の母親に頼んで下さいね」
 それだけは駄目…分かってる。分かっているのに、口から出てきたのは、
「えぇ…わたくしもこれから早起きしなくて清々…しますわ…」
 いつもの様な、憎憎しい言葉だった‥この後、智也はなにかを言っていたが、まったく聞き取れなかった。
 いや、実際は聞こえていた…でも、頭の中が強制的にその言葉を遮断したのだ。
 放課後になって、下駄箱に向かうと、そこでは智也と楽しそうに話す堀北の姿があった。
本来ならば、その隣にいるのはわたくしなのに…どうして…?どうしてどうしてっ!どうして彼はあんな女を選んだの!?わたくしのほうが、彼のことを誰よりも知っている!
 彼のことを誰よりも一番愛せる!彼のためなら死ねる!彼のためなら誰だって殺せる!
「許せない、許せない、許せない、許せない、智也を取られるのは死んでも嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、あの女、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!」
“智也待っててね”…わたくしは…全身に殺意のオーラを感じていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 終業式が終わり、生徒達が教室に帰る中、わたくしはまっすぐに堀北の元に向った。
「堀北さん。お話がありますの…」
 わたくしはそう言って、堀北の手を引いて歩き出した。
「ちょ…ちょっとどうしたんですか!?」
「ここでは話しにくいので、付いてきてくださいまし」
 堀北の言葉を半ば無視して、わたくしは体育館から少し離れたトイレに堀北を招き入れた。
「あの…こんな所で、いったいなんの話があるんですか?」
「堀北さん。あなた、智也と付き合ってるんですってね…」
わたくしの質問に、堀北は少し驚いた。
「えっ!えぇ…そうですけど…」
 驚いた中にも、どこか嬉しそうに堀北は答えた。
当たり前か…智也と付き合っているのに…お前の様な、薄汚く、下劣で、下等な泥棒猫が付き合うにはもったいないぐらいに!!
 でも大丈夫。今すぐ起こしてあげる…お前が見ている幸せな夢から、本当の現実の世界に戻してあげる!!
「嘘……ですよね…?」
「はぁ…?」
 わたくしの言葉が理解できないらしく、泥棒猫は疑問の声を上げた。




152 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:37:46 ID:0nQ78ATp
「あなたが…智也と付き合ってるなんて…嘘なんですよね…?」
 わたくしは今度ははっきりと、泥棒猫に言った。
「なに言ってるんですか、有栖川さん。私は彼から直接…」
 凄まじい音が響いた。わたくしが泥棒猫の言葉を遮る様に、猫を壁に強く押し潰したたのだ。
「つ…な…なにするんですか!?有栖川さん!?」
「ふざけたこと…抜かさないでくださいよ、堀北さん…。
わたくし…知ってるのよ…。あなたが勝手に智也にくっついているだけだって…。
それで彼と付き合ってるだなんて…誇大妄想にも程がありますわ…」
「こ…誇大妄想なんかじゃ…」
 再び、猫の言葉を遮る様に、風切り音を、猫の耳元で聞かせた。
 わたくしの手には、狩猟用のボウガンが握られていた‥縞馬でも一撃ですのよ‥
「ひっ…」
猫の口から悲鳴がこぼれ出た。
「もう一度…聞きますね…?あなたが智也と付き合ってるなんて……嘘……ですよね…」
ゆっくりと、平坦な声で、猫に語りかける。
「あ…あなたの方が、誇大妄想じゃ…」
風を切る音。再び壁にボウガンの矢を突き立てた。
「ひっ…」
「わたくしはそんなことを聞いてるんじゃなくてよ?
もし…また関係のないことをほざいたら…今度は…」
わたくしはそう言うと、ボウガンの切っ先を、泥棒猫の額に向けた。
 もしも、理解出来無ければ殺処分するしか有りませんわね。
 猫は歯の根が合わず、ガチガチと歯を鳴らした。
「……は……はい…そう…です…わ…私は……う…嘘を…つ……吐いて…いました…」
 猫が目に涙を溜めながら、途切れ途切れに言った。
「やっと正直に言ってくれましたわね。それじゃあ、今言ったことを、智也にも言ってくださいましね」
ほほほほほ…やっと自分が猫である事を理解できたようよ…智也……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
教室に戻ると智也が机に顔を伏せていた。「あなたねぇ…。いつまで、あの女のこと引きずってますの!?
あの女はあなたのこと捨てたんですわ!?だったらあなたもあの女のこと忘れなさい!」
「………」
 智也は黙り込んでしまった‥悩むことなんてないのに…人間である智也が、あんなのとくっついちゃいけない。獣姦になってしまう。
確かに獣を慈しむのはいいことだけど、甘やかすと獣は付け上がる‥現に、智也は優しくしていた雌猫に引っ掻かれましたわ。




153 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:40:27 ID:0nQ78ATp
 やっぱり、わたくしが教えてあげなきゃいけないわね…。
「あぁ~、もう!決めましたわ!わたくし、なにがなんでもあなたを慰めてあげますわ!来なさい!」
 強硬手段だけど、智也を引っ張っていくことにした。実力行使だけど仕方がない。  教室の入り口まで引っ張っていくと…… 「ア…アリサ様。分かりました。一人で歩けますから。だから、手を離してください」
 と、言ったのでしぶしぶ手を離した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
智也を久々に自室に招き入れた‥ドキドキする‥わたくしは落ち込んで暗い顔した智也を見て‥‥ある決心をした。
「智也、目を瞑りなさい!」
「はあ!?」
「早く」
戸惑いながら目を瞑った智也にわたくしは‥ソッと唇を重ねた…智也は大きく目を見開いて呆然としている。
「アリサ様…な、何を」
「もう!ニブいですわね…わたくしは…あなたの事が…す、すすすす…」
 恥ずかしくて言えない‥意を決したわたくしは…この間アラブの王子様からお父様宛てに頂いて、まだお父様に渡しそびれているアルコール六十度
のお酒をボトル事ラッパ飲みした。
「お、お嬢様、いけません!!」
 慌ててボトルを取り上げ様とする智也を睨みつけると…
「……わたくしは…あなたが好きなの…智也は…わたくしを…どう想っているの」
「!!!……アリサ様いや‥僕もアリサの事が…好きだ…」
今度は智也の方からキツく抱き締められて優しくとろけるようなキスをされた…それからは…いっのまにか…ベットの上で全裸にされていた。
智也がわたくしの乳房にちゅう、ちゅうと吸いつく…
「ん…ん…智也赤ちゃん…みたい‥」
「アリサ…綺麗だ…」
智也がわたくしの秘部をソッと撫でる…
「ああ……」
アルコールのせいもあるのか淫らな声が洩れてしまう…
「アリサが欲しい……」
熱い視線をわたくしに投げかけ、耳元で囁く智也…わたくしは自然とコクリと頷いていた。
「つ!…………」
智也のモノがわたくしのナカに入ってくる…鋭い痛みが走り‥目尻に涙が溜まり、太股に血が伝わる…心配そうな顔の智也…
「心配しないで…今智也と一つに成れて‥最高に嬉しいんですの‥」
「アリサ…」
智也がわたくしの名前を呼ぶ、もっと呼んで、もっとキスして…
「智也…………!!!!!」



154 :有栖川アリサ:2010/07/17(土) 02:42:41 ID:0nQ78ATp
彼の動きが速く強くなる…身体が熱く成り、ベットのシーツに愛液と血が混じり滴り落ちる…わたくしがクライマックスに達した時…同時にわたくしのナカに智也の精が大量に注ぎこまれた。
わたくし達が幸せの余韻に浸って抱き合っていると、智也のモノがわたくしのナカでムクムクと大きくなる。
「アリサ…もう一回いいかな…」
 照れた顔でわたくしに呟く智也…勿論わたくしに異存があるはずがなかった。

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最終更新:2011年01月04日 17:35