夢魔の業

  • 作者 初代スレ668

 意識がぼんやりしていて、目を開けているのか、閉じているのかも分からなかった。
寝る前にカーテンをみんな引いてしまっていたので、部屋の中は本当に真っ暗だ。
枕元の目覚まし時計のスイッチに手を伸ばし、文字盤に目を遣る。
グリーンのバックライトに照らされて「02:30 AM」の文字が浮かんだ。何でこんな時間に…。
…目覚ましをセットし忘れていた。
違うわよ。
…丑三つ時だ。
違うってば。
とにかく汗で前髪が額に張り付いて気持ち悪い。窓は開いていたのに、どうも風が入ってこない。
こんな寝苦しい夜だなんて聞いてないんだから、なんて思いながら上半身を起こした私はぶんぶんと頭を振った。
髪が鬱陶しかっただけじゃない。私がこんな時間に目を覚ますことになってしまった原因を、頭から振り払おうともしていた。
「違う…違うわよ…」
絶対何かの間違いなんだから。でも…
それは見ていた夢のせいだった。夢でよかったと思うような、残念なような。
恐る恐るパジャマのズボンの中に手を入れてみる。
「嘘…」
口をついて出た言葉は驚いた風だったけど、本心は「やっぱり…」という感じで。
そりゃあ、あんな夢だったし。

ハロと私は。

「…ベッドの中に…」
ただ、いつもの様に私がハロに足でしてあげてた訳じゃなくて、私は、ハロの思うままにされて…、声を上げて…よがっていた。
ギュッと目を閉じて、シーツを掴んでいる自分を、ハロが揺らしていた。
って、これじゃあ私がいつもハロにあんなことしてるみたいじゃない!!
とにかくそんな夢を見てしまう自分が嫌になったが、どうしても悶々とした心地は体にまとわりついて離れようとしない。
「ばかぁ…」
昼間、唐突に欲求不満かとハロに茶化されたのだが、その時は相手にしないでとりあえず足蹴にしておいた。いつものハロの調子だったし。
でも、実際は図星をさされていたのだと思うと、誰も見ていないと知っていても消え入りたくなるほどに恥ずかしい。
絶え切れなくなって布団を被ろうとしたところで、掛け布団が見当たらないことに気がついた。

私は、寝相が悪い、らしい。自分ではあまり受け入れたくないけど。
私は、自分が思った以上にみだらな女なのかもしれない。

と同時に、ハロが恋しくなった。
頭が重くてぼんやりするが、仰向けになって目を閉じてもいっこうに眠くはならない。
いっそ、このまま一人で…しちゃおう。

「ハロが悪いんだからね…!」
私のせいじゃないんだから。
震える手でボタンを上の方だけ外して、その下のシャツをたくし上げる。
そしてブラジャーの上から、自分の胸に触れた。
「やだ…私…」
まだ何もしていないというのに、もう息が荒くなってきている。私ってそんなにやらしいのかな…。
そのままブラも上にずらして、直接乳房に指を這わせる。
いつの間にか指先は冷えてしまっていて、小さく声を上げてしまった。
そういえば、普段ハロはあんまりこういうことはしてくれない…様な。
って!何考えてるのよ…。
「あっ…」
指がたまたま乳首に当たってしまって思わず声が漏れる。
でも…気持ちいい…。
なんというか、言葉にはできないけれど、ハロとするのとはまた違った快感があった。
さっきより少し手に力を入れて、胸を揉む。
「はぁ…ぁっ…」
胸がドキドキしているのが分かる。
一人でこんなことをして興奮している自分を想像すると、かぁっと頬が熱くなると同時に、さらにその興奮が高まってしまう気がする。
「駄目…!もう我慢出来ない…」
息をつきながら下着の中に手を伸ばす。
私、ハロと同じぐらい変なのかな…
ふと過ぎったそんな思いも、快感の前にすぐに消えてしまった。
「んっ…あぁ!はぁん…」
入り口に指を当てて少し動かすだけで、胸の時よりもずっと強い快楽が訪れる。
しばらく私は、そのまま指を動かし続けた。
「あっ…!はぁぁ…あぁ」
もしかしたら、声が大きすぎたかもしれない。
ふと我に返った私は、慌てて胸の上で動いた左手で口を塞いで、息を止める。
「…はぁ…はぁ…っ」
いったん右手の指を下着のしたから抜く。その時にちゃっといういやらしい音がした。
これ、私が立てた音なんだ。
呼吸は落ち着いて来たけど、まだ、足りない。
今度は左手を股の間に差し入れる。
いくらハロのを受け入れたことがあってもそれとこれとは話が違う。自分の指を…その、腟内に入れるのには、些か抵抗があった。
少しの間悩む。
なんだか一線を越えてしまうような気がして。でも、このままじゃ眠れない。
「そうよ、眠るためなんだから…!」
というのはさすがに自分でも苦しかったが、大きく息を吸って、そのまま人差し指をぐっと腟内に挿れる。
「あぁぁ!はっ…はぁん!」
もう駄目。
指を中でかき回すだけでどんどん強烈な快感が襲って来る。
声が大きいとか、そんなことは一切気にならなくなっていた。
「気持ちいぃ!…っはぁ!」
だけどしばらくするうちに、慣れてしまったのか感覚が鈍ってきた。
「…もっと…もっとしたいよぉ…ハロぉ!」
いったん指を抜いて、次は中指も一緒に挿れる。
それでも、ツプツプと音を立てながら根元まで収まってしまった。
挿入の快感だけで半ば放心してしまっていたけれど、すぐに二本の指を出し入れする。
「ぁん…太いっ…」
最初はゆっくり、とおもっていたはずなのに、無意識の内にどんどん手の動きはスピードを増す。
「あっ!あん!はっ…ぁ!」
駄目!駄目!もう我慢できない!気持良過ぎて…
「ハロ!良いっ!…私もう!」
いつの間にか、私はハロに突き動かされていた。
「っぁ!…イく!もう!イっちゃう!!」
体中が一気に熱くなった。頭痛に似た快感。
「ぁぁ!っはあぁ…!!」
…しちゃった。ひとりで。
別に後悔はなかったけど、えもいわれぬような虚しさがあった。
「会いたいよ、ハロ…」

そのまま寝入ってしまったらしく、くしゃみをしたおかげで、自分があられもない格好だったことに気付く。
「…あ、風邪引いちゃう…」
再びぼんやりした頭でそんなことを考えた私は、急いでパジャマを着直し、どこかに行ってしまった掛け布団を探してきてその中にもぐりこんだ。

 次の日の授業には、当然身が入らなかった。
一限目の現代文の時間に机に突っ伏して、起きたのは2限目の途中という有様。
何でハロも…先生も起こしてくれないのよ。
 終礼が終わったあと、早足に教室を出た私は校門の柱にもたれてハロを待った。
「あ、ハロ…」
なんとなくハロの目を見られなくて、視線を合わせないように少しだけ俯いて。
「なんで起こしてくれなかったのよ!」
「いや、なんか朝から疲れてるみたいだったし。愛ゆえに。みんなにも寝かしとく様に言ったのは」
「バカっ!」
やっぱりコイツのせいだったのね。私は立ち上がってハロを睨んだ。
「俺じゃないのに」
立ちくらみがする。寝不足のせいなのかな。
「ぁっ…。ま、いいわ。それと、ねぇ…」
「ん?」
「あのね…今日、家に寄ってかない?」
天気は良くないけど、悪くもない。なんとなく気だるい晩春の、午後。

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最終更新:2007年08月03日 18:07