• 作者 604氏

「・・・何これ」
「何って。お前が見たがってたもの」
 ナノが俺の部屋のパソコンで、一心不乱にある物を読んでいる。
 それは、以前から俺が読んでいたもの。江口ハロの物語。
 きっかけは単純なことだった。
 俺が江口の内情を知りすぎていた。それが、ナノには疑問に思えたらしい。
 そして、問い詰められ結果がこれだ。
「これ、本当の事?」
「いや。出てる登場人物はノンフィクションだろうけど、それ以外はフィクションだろ?」
「けど」
「と、言うことにしといてくれ。俺も審議は定かじゃないし。」
 まぁ、明らかに不自然・・・特に同時刻の複数の場所の描写や、複数人の心情など、一人では到底書くことは出来ない内容だ。
 書き手もパラレルだと言ってるし、真実もあるけどほとんどがフィクションなのだろう。
「そっか・・・それで、ツンやチトの足をよく見てたわけだ」
「は?」
「知ってるんだから。アンタが二人の事よく見てるの」
「ちょっと待て。俺は別に」
「隠さなくていいわよ。どうせ、その足を思い出しながらここでこれ読んで一人エッチしてるんでしょ」
「いや、して無いし」
「サイテー」
 む。なんで俺がそんなこと言われないといけないんだ?
「んじゃ、してないってのをわからせてやるよ」
「なにズボン脱ごうとしてるのよ」
「ほら。一発出して見ればその濃さで」
「ばか~~~!」
 思いっきりビンタされた。
 スナップだけじゃなくて腰も効いたいいビンタだぜ。
「はぁはぁ。今日はそういうのしに来たんじゃないんだから」
「あはは。悪い悪い」
「もう・・・でも。この小説。本当だとしたら・・・気持ち悪いよね」
「だな。あと、小説じゃなくてSSな」
 俺とナノはまたパソコンに向かう。
 ナノには言ってないが、ここには俺たちのことも書かれていた。少し調べて見るか。

 俺は今、ハロを尾行していた。
 俺たちとハロたちのSSを書いている人は別人だと思うが、ハロからその作者がわかれば俺の方にも結びつくかもしれない。
 俺に尾行スキルは無いが見つからない自信はある。
 なぜなら、何故かハロは月岡とチトと篠田の3人に囲まれて歩いているからだ。
 彼女らも他に心配事でもあるのか、全然周りに注意を払っていない。
 さて、こんな羨まし・・・もとい、怪しい状態を見逃すわけにもいかない。
 まさにSSのネタのようなものなのだから。
「ねぇ」
「ちょっと静かに」
「ねぇねぇ」
「見つかる」
「ねぇってば」
「うるさいなぁ。先に帰ってろよ、ナ・・・あれ?」
 振り向く前に気づいた。
 今日はナノは一緒じゃない。そもそも今の声はナノとは違う。
「やっほ~」
 !?
「せ、せ、せ」
「セックス?」
「じゃなくて、雪花さん。なんでここに?」
 振り向いた俺のすぐ後ろにはチトの姉の雪花さんが。
「ん~。チトを探してたら、不審者が居たからさらに後をつけてみた」
「不審者って俺?」
「他に誰が?」
 ま、まぁ確かに。
 って。まさか。雪花さんが犯人?
 チト曰く雪花さんは神出鬼没のスキルを供えているとかいないとか。
「ん?私の顔に何か付いてる?あ、はっは~ん。お姉さんに惚れたね?惚れたでしょ。ほら、この胸に飛び込んでおいで~」
「遠慮します」
 この人なら神出鬼没のスキルの他に盗撮や盗聴。挙句には読心術の心得だってありそうだ。
 容疑者1。長岡雪花さん。つか、もう確定でいいんじゃないか?
 けど、聞いても正直に話してくれるとは思えないしなぁ。
「つれないわねぇ」
「ってどこ行くんですか?」
 俺が考え事をしていると、雪花さんは俺の横を通って歩いて行ってしまう。
「ひ・み・つ。じゃね~」
 手をヒラヒラとさせて路地を曲がる。
 慌てて後を追ったが・・・曲がった先の路地にその姿は無かった。
「謎が多いというか謎だらけと言うか」
「私のことかね」
 俺の耳元で『シュボッ』っという音がする。
「渋沢さん」
 日暮毒男の叔父にして、謎な人物2人目。
 タバコをふかすその姿は様になっていてカッコいい。
「探し人は見つかったかい?」
「いえまだ」
「そうか」
「えぇ・・・って、なんで俺が人探ししてるの知ってるんですか」
 渋沢さんは遠い目をしながら空を見上げる。
「人は常に何かを探しているのさ。それが夢と人との違いはあれどね」
 夢追い人と人探しは全然違う気がする。
「あ、そだ。この前はお墓を探していただきありがとうございました」
「なに。あの程度礼を言われるほどのものでもない」
 この人の情報網も侮れないよな。
 よし、容疑者その2はこの人に決定。
「おっと、そろそろ失礼させてもらうよ」
「はい。ではまた」
 渋沢さんはタバコを足元に捨てそれを靴で踏みつける。
 そして俺の方を一瞥すると小さく口を開いた。
「一つ忠告しておこう。君が今調べていること・・・深入りはしない方がいい」
「え?」
 俺が聞き返そうとした瞬間、風が吹き俺は一瞬目を瞑る。
 目を開いた時には渋沢さんの姿は無かった。
「か、勘弁してくれ」
 狐に抓まれるとはこの事を言うのだろうか。
 いやいや。狐より性質悪いような気がする。
 去り際に怖い事言われたし。
 ・・・帰ろうかな。でもなぁ。あと少しっていう気もしなくもないんだけど。
 よし。今日一日調べてわからなかったらきっかり止めよう!
「で。ここか」
 ハロたちを見失い当ても無く歩いていた俺は、何故だか神社に居た。
 SSを読む限りではアレはこの神社に在るはずだけど。さすがに常識離れしすぎだよな。アレは。
「ねぇ」
 ・・・・・・俺は何も見てない。何も聞いてない。
「アレとか在るとか少し酷くない?」
 神社の中には何もない。もし居ても浮浪者か家出人か。
「酷すぎ。私は物じゃないんだから。せめて人間扱いしてよ。彼女はとか住んでるとか」
 巫女服姿の・・・少女が俺の目の前に居る。
「うん。よろしい。子供扱いなのが悲しいけど、そこは大目に見てあげよう」
「なんで居るんだよ!」
「うわぁっ。え?え?え?」
 いくらなんでも彼女がここに居るんならあのSSだって真実だってことか?
 マジで?いや、でもなぁ。
「ん~?よくわかんないけど、悩んでる?」
「悩んでるというか、君がいたせいで悩みが大きくなったというか」
 ウィッシュは俺の答えに首をかしげてしまった。
「えぇ!?なんで、私の名前知ってるの?」
「まて。さっきからおかしいと思ってたが心読めるのか?」
「え?うん」
 あのSSにそんな描写あったかな?
 ふむ?
「で、名前」
「あぁ。そうだ、あのな。俺はハロの友達なんだ」
「ハロ?誰?それ」
「へ?」
 俺はまったく期待していない答えに思考が停止する。
「江口遥。通称ハロ」
「知らない」
 まて。待て待て。いやいや、ここでこの大どんでん返しは無いだろ。
「だって私、人前に姿現すの初めてだし」
 えと。つまりは。あのSSの登場人物は全てリアルで存在するけど中身はノンフィクションですよでFA?
「いやFAと聞かれても」
「・・・悪い。一人にしてくれ。今度・・・賽銭とお供え持ってくるから」
「私お地蔵様じゃないし」
 俺が神社を後にしようとした時。急に頭に鈍い痛みが走り視界がブラックアウトした。
「いいの?・・・ハロの友達でしょ?」
 誰の声だ?
「漏洩を防ぐため・・・仕方あるまい」
「大丈夫よ。死ぬわけじゃないから」
 この声まさか。
「あ」
「どうした?」
「ううん。なんでもない」
 ・・・俺に気づいたか?
「それじゃあ、置いてくる」
「えぇ。お願い」
「・・・全部忘れちゃうけど・・・また、来てね。お賽銭もお供えもいらないから」
 胸元に暖かい感触。
 君は・・・やっぱり・・・全部知って・・・
「・・・ひと・・・公人!」
「ん?」
 ここ。どこだ?
「よかったぁ・・・目が覚めたんだ」
「あれ。ナノ?」
 俺の部屋?ベッドの上・・・なんで。あれ?
 頭が痛い。
「どこか痛い?ねぇ、大丈夫?」
「あのさ。俺・・・一体」
 ナノの顔を見る。
 頬には涙の跡がついていた。
「私が部屋に来た時にはもう倒れてたから」
「倒れてた?」
 全然記憶に無い。学校から出たところからすっぽり記憶が抜けている。
「じゃあ、ナノがベッドに?てか、なんでナノが俺の部屋にいるんだよ」
「え?あ・・・それは」
「涙まで流して」
「!?流してない!!これは・・・そう、アンタが起きるまで読んでた漫画が面白くて笑いすぎて出た涙よ」
「気絶してる俺をほっておいて漫画かよ」
「え?あ」
 ナノが俯く。
「冗談だ。んで、どうした?」
 少しずつ痛みがひいてきた。
「・・・ごめん」
「何がだ?」
 俺、ナノに謝られるようなことされたっけ?
「昨日・・・なんか気まずくって・・・今日も全然・・・話とかしてくれないし」
「あぁ。いや別に昨日のは俺が悪いし、それに今日は別なこと考えて」
 あれ。何考えてたんだっけ?学校終わったらすぐに・・・何しようとしてたんだっけか。
「公人?」
「あぁ、いや。なんでもない。俺こそごめんな。泣かせるまで心配させて」
「っっっ・・・だ、だから。心配はしてない!!心配なんて・・・してないもん」
 ナノは顔を真っ赤にして反論する。
 頭打って忘れるくらいなら、どうせたいした内容じゃないんだろう。それよりも、ナノの方が俺には大事だ。
「ゃ・・・今日は・・・そんなこと・・・したくない」
「俺はしたい。だめ?」
「・・・ダメ・・・あ・・・ん・・・ダメなの・・・本当に」
 俺が抱きしめて首筋を舐めているだけでナノの体から力が抜けていく。
「ねぇ」
「・・・もう。ダメ・・・今日は・・・生理だから・・・ね」
 ふむ。そか。それで昨日も。
「そういうことなら・・・我慢するか」
「ありがと・・・でも・・・口で・・・して上げるね。座って」
「へ?」
 そう言うと、ナノはベッドから降りて正座する。
「はい。ここ」
 ベッドの端を叩く。俺に座れってことだろう。
 俺が指示された位置に脚を開いて座る。
「ズボン脱いで」
 言われるままにズボンを脱ぐ。
「行くよ」
 ナノの手が俺のパンツを下ろす。
「・・・で・・・でかい・・・な、なに大きくしてるのよ!!」
「仕方ないだろうが」
「もう・・・これじゃあ・・・口に全部入んないよ」
 そう言いながら、手で竿を握り、先端に口を付ける。
 舌で先を満遍なく舐めまわし。
「ぃて」
「あ、ごめん」
 たまに歯が敏感な部分に当たって、気持ちいいのかそうでもないのか。
「うぅ。ごめんね。初めてだから・・・こういうの」
「いや、初めてじゃないと困るし。ま、いつでも貸してやるから練習しな」
「・・・本番は別な人にしていいの?」
「なにぃ!!」
「冗談だよ。んっ。なるべく歯は立てないように」
 ナノの暖かい舌が俺のに触れるたびに気持ちがよくなる。
「よし」
 ナノは気合を入れると大きく口を開く。
 うぉぉぉぉ。な、なんか・・・下とは違うよさが・・・す、すげぇ。
「ん・・・ふむ・・・は・・・ふぅ・・・はむ」
 ヤバイ。これはマジで。
「あ・・・えへへ・・・はきから・・・はにかれてきたよ」
 そりゃ、これだけされれば出るって。
「んむ。はぁ・・・ひゅぅ・・・はふぅ」
「ナノ。口・・・離せ・・・もう」
 だがナノは口から俺のを出さないどころか、さらに激しく舌で舐めまわす。
「うぁ。ナノ。ごめん」
 精液が吐き出されるのがわかる。
「んっっ」
 ナノの喉が動く。まさか・・・飲んでるのか!?
「ナノ!!・・・んっっ!?」
 ナノが立ち上がり俺にキスしてきた。
 舌を絡めて・・・この・・・苦いのって・・・まさか!
 うぅ。ちょ・・・待て。そんなに舌動かされたら。
「ふぅ。どうだった?」
「げほ・・・がほ・・・おま・・・飲んじまったじゃねぇか」
「飲ませたんだもん。どう?」
「不味い」
「ふふん。私にいつも無理させるアンタへのお仕置きよ」
「無理なんてさせてねぇし。うえ・・・気持ちわる」
 まさか自分の精液を飲むはめになるとは思いもよらなかった。
「それにしても、今日のは濃かったね。本当に一人エッチしてなかったんだ」
「だから言ってるだろ・・・あれ?」
「どしたの?」
「いや」
 ・・・そうだ。SS・・・でも・・・なんでだろう。もう、調べる気が起きない。
「ん?」
「どうした?」
「これ。何?」
 俺が視線を下げると、シャツの丁度胸のあたりに薄いピンク色のキスマークが。
「へ?あ・・・あれ?」
「き~み~ひ~と!!」
「覚えてない。覚えが無いんだって。全然」
「言い訳無用!!公人なんてだ~いっきらい!!神社でお祈りしなきゃよかった!!!」
 神社?あれ。なにか・・・約束。
「ナノ!」
「は、はい?」
 俺はナノの手をとって見つめる。
「神社に行こう・・・ナノとの永遠を誓いたいから」

「・・・さすがに来てくれないか・・・・・・・・・あ・・・ふふ、二人が幸せで過ごせるように祈ってあげるね」

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最終更新:2007年08月03日 21:45