1‐パイ×アイリーン-3

故郷に帰るまでの交通費はパイが援助してくれることで解決した。
アイリーンとしては日雇いのバイトでもして交通費くらいは自分でなんとかしたかったのだが、
一刻も早くアイリーンを田舎に帰らせたいパイによって反対された。

お金は田舎に帰ったらすぐ送ると言ったのだが、
パイはアイリーンが大人になって自分で稼ぐようになってからでいいと断った。

行きは貨物列車に荷物同然の扱いで来たのだが、帰りは普通の汽車に乗ることが出来た。

しかし中国の人口は多いので、車内はぎゅうぎゅうで乗り心地のよいものとは言えなかったのだが。

故郷に戻ったアイリーンはまず初めに祖父に思い切り頬をひっぱたかれた。
祖父は彼女の姿を見つけると黙ってかけより第一声を発する前に彼女をひっぱたいた。
アイリーンは涙目になりながらも「ごめんなさい」と謝ると、
祖父は、「いいから早く身体の汚れを落としてこい」と言って家へ戻った。
何も聞かれなくてほっとしたような、それでも祖父には全てお見通しなのか、不安な気分だった。

アイリーンは、村の川の麓に流れる川まで行った。
自宅の風呂を沸かして入っても良かったのだが、何となく自然の水を浴びたい気分だった。

そこは、娘たち専用の水浴び場で、早朝の今人はおらず鳥の声しか聴こえないほどの静けさだった。


パサ、と服を脱ぐと、足先を川につける。
ひんやりとした冷気が足先から頭の先までじんわりと伝わる。
「冷たい…」
だけどその冷たさは心地よく、彼女の気持ちをほっとさせる。
徐々に肩まで水に身体を沈める。
「気持ちいーい」
アイリーンはじゃぶじゃぶと頭から水を被ると、誰もいないのをいいことに、スイスイと辺りを泳いだ。
ひんやりとした水が身体を撫でるたび、身体が清められるような気分になる。
パイと一緒に入ったお風呂もいいが、自分にはここが一番合っている。

アイリーンは仰向けに川の水にプカプカと身体を浮かせた。
自然の音に耳を傾ける。
そして、都会であったことを思い出していた。
危険な目にもあったが、パイとの出会いは彼女にとって誇らしい出来事だった。
村の少女たちより自分が一歩大人になったように感じる。

パイの演舞―
アイリーンは立ち上がり、パイの演舞を思いだし、踊ってみる。
あのときのパイの動きはまるで体重を感じさせなかった。
くるくると回ろうとすると、水中の小石に足をとられ、バランスを崩して倒れた。
静寂の中にバシャンという音がこだまする。

「やっぱ、見て真似できるほど簡単じゃないよねえ…」
アイリーンは、尻餅をついた体勢のまま考えこんだ。
売春宿で男に、ホテルでパイにされたことが頭を過る。
「あたしったら…」
アイリーンはその恥ずかしい考えを払拭しようと頭をぶんぶんと左右させる。


あの何とも言えない快楽を覚えてしまってから、あのときの感覚が何度も彼女の頭を過ることがあった。
その度に身体が火照るのを牽制してきた。
でも、どこかでまたあの時の快感を味わいたいと思っている自分がいる。
それほどに強い刺激だった。

「ちょっとだけならいいよね…?」
アイリーンは、恐る恐る自ら乳房に手をのばし、そっと揉んでみる。

「ん…んん…っ」
人に触られるのに比べれば劣るが、甘い刺激が走る。
指先が先端に触れるたび、下半身…“彼女自身”が疼くのが分かる。
「んぁッ…いい…ッ」
アイリーンは頭の中でパイのことを考えていた。
いや、勝手に考えてしまうのだ。
パイに出会ってからというもの、彼女の存在が常にアイリーンの心の中にあった。
頭の中でパイが自分を触っている妄想をする。
今、自分に触れているのはパイの細くて美しい指。
「パイ…さぁんッ」
気づいたら指が性器に伸びていた。
「はあんッ!いいよぉっ!!」
クリトリスに指が触れ、思わず大きな声を出してしまい、ふと我に帰る。
ここは野外なのだ。
あまり大胆なことをし過ぎると人に見られてしまうかもしれない。

しかし、今さら止められるわけがない。
若いアイリーンは欲求を抑えられるほど理性は発達していなかった。

それに、人に見られているかもしれないというソワソワした危機感は非常に彼女を興奮させた。

中指を膣に挿入する。


冷水で冷えた指の感覚がはりつめんばかりに敏感になっているそこには、強すぎる刺激になる。
「あ…あん…つめ…たい…っ」
中指をくの字型に折り曲げ押し付けるように壁を擦る。
「はぁん…いい…っ」
一本だけでは彼女は満足できず、二本目の指も挿入する。
指の動きにあわせて艶かしく腰をうねらせる。
両足を立て膝で水中に中腰で座る状態になる。
この位置だと流れる水が同時にクリトリスに触れるか触れないかの状態になり、
一人でも一度に二ヶ所の快感を得ることができる。
「あっ…あっ…いくぅっ!!いっちゃう!!」
膣が指をぎゅっと締め付け、彼女に絶頂が近いことを知らせる。
快感のあまりガクガクと膝が震え、アイリーンは前崩れに倒れこむ。
水中に顔がつかないように左腕で身体を支え、右手は挿入したままで抽送を続ける。
尻を突きだした格好になる。
まるで自分は盛りのついた犬ではないか。
「あんっ…あああーっ!!」

絶頂を迎えると、彼女はしばらく肩で息をする。
最後の声、かなり大きな声が出てしまった。
しかも矯声。
もしかしたら本当に誰かに聞かれたかもしれない。
立ち上がり、回りを見渡す。
とりあえず誰の姿も見えない。

家出娘が帰ってきたはいいが一人自慰に耽っていたなんて知られたら、恥ずかしくてまわりに顔向けできない。

何だか急に白けた気分になってきてしまった。


「帰ろ…」
アイリーンは服を纏うととぼとぼと家まで帰った。
途中、村の人とすれ違ったりもしたが、びっくりしたような顔をしただけで自分に話しかけて来る者はいなかった。

まさか見られたわけは無いだろうが、罪悪感が頭を覆う。

「ただいま…」
家に戻ると、祖父が難しそうな顔をして座っていた。
手には何やら手紙のようなものが握られている。
「おじいちゃん、何?」
「む…ああ、このわしに今さら武術の大会に出ろなどと戯けた手紙がきたのじゃ」
「大会?」
「ああ、馬鹿げておる。」
手紙には他の出場者の名前も書いてある。
中には明らかに外国人の名前もちらほらある。
そして、アイリーンのよく知る人物の名前も。

―パイ・チェン―

アイリーンは目を疑った。
本当にあのパイが?
しかし…中国広しといえども武術を極める女性は多くはない。
しかもパイのあの功夫であればなんらおかしくはない。

アイリーンの頭にふつふつとある考えが浮かぶ。
もし、自分がこの大会に出ればパイにまた会えるかもしれない。
パイに認められるかもしれない。
―あの人に近づきたい…


「おじいちゃん!私、その大会に出るよっ!おじいちゃんの代わりに!」
「!?馬鹿なことを…お前なんかじゃ相手にならん!」
「何年かかってもいいの!今すぐにとは言わない!私を大会に出させて…!」

祖父は肩を落とした。
言い出したら聞かない娘だ。

自分が止めたところでまた勝手に行ってしまうのは目に見えている。

「外へ出ろ。稽古をつけてやる。」
「本当に!?」
アイリーンは喜んで祖父のあとについて行った。
先ほどまでのモヤモヤした考えなどいつの間にか吹っ飛んでしまった。



そして、数年後―
アイリーンは世界格闘トーナメントの舞台でパイと再会を果たすことになる。

おわり
最終更新:2008年06月29日 21:33
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