「俺?俺、國分(こくぶ)。
政昭(まさあき)。
他に言うことはないかな。
あー。車や砲は扱える。
あればの話だが」
「あー?周りがどういっててもいいんじゃねえの。
俺は俺だよ」
國分 政昭は首筋をかいている。
「あー?そういや山岳騎兵って、すげーバカに
されてんだろ?
獣臭いとか、前近代的とか。
ま、実際そうだからしょうがねえか」
國分 政昭は首筋をかいている。
「あー?山の中は虫がおおくていけねえよなあ。
そういえば山岳騎兵ってトイレどうしてんだ。
やっぱどっかで…。
ふっ……怖い顔すんなよ」
「あー?あんたも暇だね。俺なんかと話して。
この部隊。俺よりやばい奴がおおいよ。
そっちの面倒みたら?
……戦争になって最初に壊れるのは心さ。
まず、何が悪いのか分からなくなる。
面倒見てやれよ。隊長なら」
「ボンクラって奴はすぐ人の意見を信じやがる。
確かめもしねえで……。
あー、いや、こっちの話。
ま、今回は俺の言ってることに嘘はねえ。」
國分 政昭は首筋をかくのをやめて、冷たい目で
あなたを見ている。
「あー?こういう時はしゃべるもんじゃねえよ。
耳を澄ませ。虫が鳴いてるじゃねえか。
俺は好きだぜ。そういうの。
人間の作った音楽だって悪くはないが。
自然の歌も、おつなもんだろ」
「……俺は山岳騎兵なんか良くわからねえ。
でも、いいんじゃねえの。
別に獣の背に乗って戦う奴がいても。
こんな山の中じゃ戦車つかえねえだろ。
単に獣ってだけでバカにするやつは頭がわりい」
「そう、人間って奴は自分の見たことだけ信じれば
いいんだよ。
周りがどういっててもいいんじゃねえの」
「あー?こんなときにしゃべるもんじゃねえよ。
月の綺麗な夜じゃねえか」
「昔の騎馬武者のようだな。
俺達は……」
「真実の前には人は黙るしかねえよ。
山が綺麗なら黙って見てればいいんだ。
そこで口を開くから、ボロがでる。
人にはもって決まった器の大きさがある。
その大きさを超えてはどんな言葉を使っても
受け止めることは不可能だ。
……だが世の中は単純じゃない。
口を開くことでボロがでても器を越えてもそれ
が真っ赤な嘘でも……。
だがそれでも言う奴はいる。
心の底から嘘をつこうと決めた奴なら」
一方その頃
國分 政昭はラジオを聴きながら毒づいている。
「……本物の愛国者はそんなこといわねえだろ。
クソバカ政治屋どもが。愛国者なら銃を取れ。
恥を知れ」
「あー?かいいー。風呂最近はいってねー。
いや、水はかぶってるよ。お湯だよ。お湯。
お湯の風呂にはいりてー。
山岳騎兵はよくこんな環境で冷めた飯食っても
戦ってられるな。一体どれくらい、この国に
よくしてもらったらそんなこと出来るんだ?」
(いや、なにも)
(人間が国のために戦うのか?)
「なるほど、あんたは国士なんだな」
國分は居住まいを正した。
「生来の不調法者ゆえ、今までのご無礼をお許しください。
改めまして、自分の名前は國分 政昭と
申します。
貴方と国家に忠誠を誓い、正義にそむかず、悪に
退かず、戦う事を約束します」
「遠からん者は音に聞け、
近くばよって目にも見よ!
俺の名前は國分政昭。
(PC)様に従って、
この国を憂う国士の一人!
今更一人二人の血で
この国が蘇るとは思わずとも!
この血!この肉!我が心を!
国土に吸わせ!もって楽土の滋養とせん!」
「おお、あれか、一度やってみたかった。
あっはっは。
やってみたかった。
救国の英雄を、その下につき従う三下でもいい
から。やってみたかった。
どれだけ笑われても、
俺の生まれた国を、俺の手で守ることを」
「遠からん者は音に聞け、近くばよって目にも見よ!
俺の名前は國分政昭。失われし厳慈を父とし、
この国土を母として生を受けし大丈夫!
侵略者どもめ!俺の目が黒いうちは寸土でも
渡してなるものか!」
遠からん者は音に聞け、
近くばよって目にも見よ!
俺の名前は國分政昭。
救国の英雄、(PC)に付き従う第一の兵!
ここより先が地獄だと!わかって来るならそれも
良し!聞いてないならそこを退け!」
「遠からん者は音に聞け、近くばよって目にも見よ!」
皆が口を揃えて叫んだ。
俺の名前は國分政昭!
「……。
その通り!誉れ高き山岳騎兵の一人にして!
良き仲間に恵まれし一人の国士!
我が生こそは揺ぎなき友情!
我が力は揺るぎなき友情!
その人生は最良なり!
たかが10倍か20倍の数でこの堅陣を越えるの
は、絶対無理と思われよ!!!
…参るッ!」
「いや。
好きな事を好きなだけ言ってやった。
いい気分だ。
いつ死んでも、いいぐらいにな」
(駄目ですよ。生き残ってください)
…いい気分なのに水をささんでも。
いや、隊長が言うなら、そうしますが。
でも生き残ってここから上手く抜ける
自分の姿がどうにも想像出来ないなあ。
(もう少し粘れ)
ED
恥ずかしかったなあ。
家に帰るとみんな俺の事、知っているんですよ。
-山岳騎兵の言葉
その日、撤退を支援するヘリの群れが来た日、
貴方と國分は最後にヘリに乗って、
互いに乾杯をする事にした。
「川の水以外にもうまい物がある事を、
思い出しました」
(俺もだ)
二人でゲラゲラ笑いました。
「実はここで死ぬ事しか考えてなかったんで、
この先どうしようかと思ってる。
……んで、相談なんだが。
実は元の部隊に戻るんじゃなくて転属して山岳
騎兵に志願したいんですが、
優秀な小隊長は拾ってくれますかね。
(歓迎するよ)歓迎
國分は、小声で貴方に言った。
「約束だぞ。
俺は山歩き、気に入ってるんだからな」
二人でゲラゲラ笑いました。
(多分ね)
(川の水はまたすぐ飲めるさ)
最終更新:2006年08月13日 17:26