「わしは、風間 東二(かざま とうじ)。
透子様をお守りする個人家令だ。
お前の部下ではない。
覚えておけ。」

何かした方が*


「なんだ。
わしに話す暇があったら、
何かをした方がいいんじゃないのか。」
「お前にも仕事があるだろう。
それをやれ。」

もう一度言う*


「…いいか、若造。
もう一度言う。わしに話しかけるよりも
部隊の運営をした方がいいぞ。」
「そんな歳で死にたくはない。
…そうだろう?」
「お前が何を考えてるか知らんが、
責任があるならそれをやれ。」
「歳が責任を生むと思うな。
責任感が責任を生むのだ。」

おしゃべりな奴*


「…つくづくおしゃべりな奴だ。
まったく、近頃の若いもんは…。」
「いいか、若造、わしに好かれても何の得もない。
それぐらいは、その足りないオツムでも
わかるだろう。」
「わからんなら、医者にいってこい。」
「……まて、まて。
その前に自分の鵺を可愛がって来い。」
「お前のオツムよりもまずは鵺だ。
あれが一番重要な戦力だ。」
「十分に世話をしておけ。
……生き残りたいならな。」

鵺の面倒*

「…若造。鵺の面倒は見ているか。
鵺はいいぞ。
元は犬らしいが、どちらかというと
気質は上等な猫のようだ。
気高く、強く、少し優しい。
何よりあれは、血の通った兵器だ。
お前の気持ちをくんでくれる兵器だ。
愛国心が育つかもしれん兵器だ。
これ以上のものはない。
たとえ燃料がなくたって、
気合で動けといえば動くかもしれん方が
一緒に戦う方としても幸せだろう。
戦車もいい兵器だが、愛国心はないからな。」

お前の見るものが本物*

「……若造。
戦争を経済だ数学だスペックだという奴に限って
戦場に出たことはない。
そんなものの言う事は、まるであてにならん。
お前が見てきたものだけが本物だ。
人が死ぬ。
人が死ななきゃ敵が死ぬ。
鵺が死ぬ。
砲弾は大安売り、
守るはずの軍人が治安維持とか言って
強盗の真似をする始末だ。
ここでこうしてお前たちが駆り出される前、
先進国とやらのハイテク軍隊が海の向こうで
何をして負けてきたか。
想像せんでもわかるだろう。
いいか、技術と道徳は、まったく関係ない。
技術は技術、道徳は心の問題だ。
先に進んでるから、道徳的に正しいなどと思うな。
それと比べれば自分の鵺を見ろ。
鵺はいいぞ。
山岳騎兵もな。
戦士の中の戦士がやる兵科だ。
旧式で地味で地べたを這いずり回る仕事だが、
はっはっ、見ろ、味方は電池切れで
この山の中から逃げ出した。
電気製品には愛国心がないんだ。
自分と鵺の足で走る山岳騎兵だからこそ、
ワシ達は大義名分を、
この国を守って戦えている。
それがわかったら、
ワシと話さずに自分の獣の面倒を見ろ。」

透子様*

「…透子様は、
お前達から伯爵と呼ばれているそうだが
本当か?」

(ええ)
「そうか……。

しかし、不憫ではある。
元々あの方は民主化の先鋒だったからな。

あの方は爵位を返上して、
この国を本当の民主国家にしようと
努力されていたのだ。

…昔の話だ。わしも、若かった。
あの頃と比べて、透子様はお強くなられた。
だが今も、お優しいところは前のままだ。

だから、心のどこかで
傷ついておられるだろうな。」

(何か問題でも)
「問題なんかありゃせん。
実際、元伯爵であられる。

しかし、不憫ではある。
元々あの方は民主化の先鋒だったからな。

あの方は爵位を返上して、
この国を本当の民主国家にしようと
努力されていたのだ。

…昔の話だ。わしも、若かった。
あの頃と比べて、透子様はお強くなられた。
だが今も、お優しいところは前のままだ。

だから、心のどこかで
傷ついておられるだろうな。」


山岳騎兵の歌*

風間のじいさんは、
大声で山岳騎兵の歌をがなりたてている。
自分の鵺に聞かせているようだ。

「騎兵と兵と呼ぶのなら ちょうちょトンボも
鳥のうち 電柱柱に花が咲く

なぜなら騎兵は戦士なり
己の意思で戦う戦士なり

くそ命令とくそ上官
それにしたがうくそよりも
己の恥で動くのよ」

歌の前半は山岳騎兵をバカにする俗謡で、
後半はやり返すために山岳騎兵が作った歌だ。

お優しい方*

「…透子様はな、お優しい方だ。
芝村の遊びでこねくり回された異形の動物達に、
生きる道をお与えなすった。

どんな命も生まれは選べん。
大部分はどうしようもなく不幸な生まれだ。

鵺も、わしも、そうだ。
そうだった。

だがな、透子様はそれではいかんと
おっしゃられたのだ。
生まれは選べんでも、終わりは選べると。

実験で生み出された哀れな動物達は…、
家族を何度も奪われて生きる屍だったわしは…、
人類を守って死んでいくのだ。

こんなに嬉しい事があるか、若造。

下を見るしかなかったわしが、
胸をはって死ねるのだ。

捨てられた哀れなものではない。」


残念に思う*

「若造。
わしはお前が遅く生まれた事を残念に思う。

お前は、せめてわしの歳で生まれれば
よかった。
そうすればきっと…。

そうすればきっと、
お前はバカとも言われる事もなく、
きっと勇敢な英雄として名を馳せただろう。

同じような気のいい奴らに囲まれて、
気持ちよく戦って、憂いなく死ねたろう。

堕落した今を見る事なく、何のために戦ったか、
良くわからん気分にさせられる事もなく。
きっときっと、幸せに戦えたろう。

わしにも仲間がいた。
若造、お前ときっと親友になれた、
そんな奴だったよ。」

生き残るルール *

「若造。
お前に生き残るルールを教えてやろう。
何よりも重要なのは、疑ってかかる事だ。

人の言う事を信じるな。
まず調べろ。

こんなところでも、いや、こんな所だからこそ、
人間と言うのは醜く陰謀をめぐらすものだ。

足許をすくわれるな…いいな。」

戦争というもの*

「戦争と言うものは、誰もかれもをおかしくする。
正義が悪に見え、悪が正義に見える事もある。

そして、都合の悪い事を隠すのがうまい奴は
大勢いる。

誰かをおとしめて、自分が偉くなったつもりに
なる奴もな。

今は、足元も見えない定かでない時代だ。
どこへ行けばいいのか、わからん時代だ。

だからだ。
だから自分の鵺を大事にしろ。

たった一つの自分の相棒を。
鵺だけは嘘をつかん。
鵺と、お前と、土の匂いだけは本物だ。」

内なる心の声 *

「…迷ったら、己の心に耳をそばたてよ。
心に耳で恥だ。
黙って内なる心の声を聞け。

恥だけはいつも、人の行く道を教えてくれる。
恥がするなと言うのなら、それはすべきではない。
恥が戦えと言うのなら、たとえ死んでも戦うのだ。

論理でわかった風な口を聞くよりも、恥を知れ。(本当は口を 利くだと思われ)
論理をこねくり回すのは卑怯者のする事だ。
人が何かをなす理由には、論理はいらん。

悪をなすならば欲望が、
善をなすならば恥だけで十分だ。
いいか若造、それを忘れるな。」

鵺の面倒2*

「鵺の面倒はちゃんと見ているか。
こいつは、生き物だ。
毎日愛情をやらんと、肝心なところですねる。

鵺はいいぞ。
どんな兵器とも違う。
こいつは育つからな。

人間と一緒に、どんどん強くなる。

…いつからだろうなあ、
人がこいつらより機械の方を信用しだしたのは。

いつからだろうなあ。
こいつが時代遅れなんて言われるように
なったのは。

わしが年寄りになったのは。

……だが、古くてもいいものはいい。

鵺はいい。
風邪もひくし、すねもするが、
それは悪い事じゃない、生きてるんだから。

それを否定する戦争がいかんのだ。」

思い残すことはない*

「…透子様は美しくなられたなあ……。
わしはもう、思い残す事は何もない…。
まあ、もとよりあと何年もないが…。

ふ、ふ。
そんな顔をするな。

お前だけはきっちり鍛えて
地獄にいってやる。

お前は遅れてきた、俺達の最後の兄弟だ。
お前が一人前になるまでは、
わしはまだまだ現役だ。」


山岳騎兵とは*

「…山岳騎兵と言うのは、山岳を獣と共に
駆け抜けるから山岳騎兵だ。
森を友とし、大地を盾とするから山岳騎兵だ。

戦車で行けない地形、ヘリではワイヤーで
落とされる地形。

そこを通れるのは、我が騎兵だけだ。
山は味方、森は友だ。

地形を味方にして戦え。
○○。(名字)
この国は、この国の大地はお前の味方だ。

俺達ほど、この国に愛されている兵はない。」

大陸の戦い*

「昔、大陸で戦った事があるよ。
人類のために、国籍も言葉も捨てて、
みんなみんなみんな、一生懸命戦った。

戻ってきたら、家族はみんな死んでいた。
子供も、妻も。
だから、わしは軍に戻った。

そこにはまだ家族がいた…、戦友が。

戦場が帰る場所になったのだ。
わしにとっては。

だが、その戦友もみんなわしを置いて
死んでしまった。
わしだけが今も、ここにいる。

何で、わしは生かされて
いるんじゃろうなあ。」

もっとけ*

「ほれ、もっとけ。

あなたは、オイル式カイロを貰った。

(これは?)
「わしが10歳の時に
自分で働いて買ったもんだ。
ライターの油を入れて、火をつける。

…40年以上だな。

いいぞ。
今でも現役だ、もっとけ。

山岳騎兵が形見で残せるのなんざ、
ポケットに入るものくらいの
もんだからな。」

(捨てて来い?)

「バカモン!
もういい、返せ。

まったく、
たまに人が優しくしようとすると…。

まったく最近の若いもんは…。

何だ、もう欲しいと言ってもやらんぞ。
しばらく引退するのはやめだ。」

遠い目*

風間は、見せ付けるように
遠い目をしている。

「あー。
わしはいつになったら、
引退できるかのう。」

いやみのようです。

エンディング*

あれが、わしの最後の実戦だったよ。

一山岳騎兵の述懐


その日、撤退を支援するヘリの群れが来た日、
貴方と風間 東二は、動物兵器を入れた
檻の中で、運ばれることになった。

「がははは。
やはり山岳騎兵たるもの、最初から最後まで
相棒の傍におらんとなあ。

……なあ。」

(なんです?)(はい)
「わしは、引退することにしたよ。
跡継ぎが、出来たからな。」


(え?風できこえない!)
「それでもかまわん!
わしの思いは、受け継がれたのだから!!
いいか、受け継がれたのだぞ!」

そうして風間は涙を拭いて、
動物達を抱きしめた。

(はい)
「わかってたか。
……そうか、そうだな。
……。

まあ、たまには遊びにこい。
じいさんの一人暮らしだが、
それでも帰るところがあるのはいいぞ。」

そうして風間は涙を拭いて、
動物達を抱きしめた。



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最終更新:2007年07月27日 00:21