「ループ……ですか。
しかしまあ、……まあいいんですけどね。
またどこかに、不幸があるんですか?」


「初めまして。私の名前は
善行 忠孝(ぜんぎょう ただたか)です。
よろしく、隊長さん。
ははは。
ああ、確かに僕のほうが階級は上かも
知れないが。
いや、山岳騎兵は僕の専門じゃない。
あなたの指揮に任せますよ。
私もこんなところでは、死にたくない。」

(PC参戦者)
「あなたがいるなら、
僕はもう一つの仕事に専念出来そうですね。
この部隊は頼みますよ。
このくらいの規模なら、あなたでも
コントロール出来るでしょう。」


「背中が泣いているように見えるうちは、
指揮官としてはまだまだですよ。
実戦指揮官は何を考えているのか、
まったくわからない人間じゃないと勤まらない。
ま、戦火に洗われるうちに、
自然にそうなると思いますけどね。
部下がどんどん死んでいくうちに、
どんな表情も凍りつきますよ。」


「指揮というものは、
コントロールと同義ではありません。
コントロールでは、指揮官の限界がそのまま
組織の限界になります。
指揮というのはね、セッションですよ。
部下は楽器、部下は演奏者です。
それぞれに違いあり、それが悪いわけじゃない。
部下の個性を統合するような指揮官に
なってください。
音をあわせ、あるいはずらし、
一つの音楽をつくるんです。」


「指揮するのが苦しくなったら、
祈るといいですよ。
神や悪魔にではなく、自分が殺した部下達に、
祈って、そして誓えばいい。
そして自分が殺した部下達を思い出せば、
きっとまた指揮が出来ますよ。
少なくとも、僕はそれだけでやってきた。」


間近で見ると、善行は身体を鍛え上げている。
「…ああ、この身体ですか。
悪い友達の影響でね、
トレーニングが癖になっています。
何かを諦めるくらいなら、
自分をいじめろと、昔覚えました。
…見たところ、あなたも私と同じような、
そんな気がします。
何かを失うのが怖いなら、勉強しなさい。」


一方その頃
善行「スキピオ、スキピオじゃないですか。
   どうしたんです。
   こんなところで。」
スキピオ「にゃー。」
善行「お互い様だじゃないでしょう。
   私は私で用事があるんですよ。
   まったく…飼い主が泣きますよ。
   僕の事ですが。」


善行は、歌を歌っている。
長い長い旅の歌だ。
悠久の時の河の歌だ。
河のほとりで一人、
思い人を待つ人の歌だ。
「…何か?
苦しい事があれば、
歌を歌えばいいと思いますよ。
そう、初年兵のときに習いませんでしたか?
もっとも、今はもっぱら私は楽しい事を
思うために、歌を歌ってますけどね。」
(その割には歌詞が悲しいですが)
「そうですか?私はそう思いませんけどね。
人間は都合よく出来ている。
目をつぶれば、いい事ばかりを
思い出すものです。
悲しい事も、あっただろうにね。」
(なるほど)
「ええ。」


善行は、歌を歌っている。
長い長い旅の歌だ。
悠久の時の河の歌だ。
「万里を旅して来た 長い道をたどり
時の河までたどりつく
不思議の側で故郷を眺め 思いをはせる
帰ることのない故郷
その明かりを見つめていた
悠久の時の河 ここで死ねば幸せか
出来ないことを思って 虹を見る
万里を旅して来た 長い道をたどり
時の河までたどりつく
不思議の側でとまる足 人を待つ
来ることのない想い人 その横顔を思い出す
悠久の時の河 ここで生きれば裏切りか
出来ないことを思って 星を見る」
善行は、あなたを見てふと笑った。


「…ああ、この腕の布ですか。
赤いでしょ?
これは九州で、小隊長になった時
渡されるんですよ。
私の、宝物です。」

(PC参戦者)
「…ああ、この腕の布ですか。
ええ、何か、捨てるに忍びなくてね。
まだ持っています。
「なんだか岩田君の血が、
染み付いている気がしてね。」


「ふむ。
ところで日本茶は好きですか。」
(ええ)
「それは良かった。
あのどたばたでも手放していない
逸品の茶葉がありましてね。
どうですか。」
あなたは、善行とお茶をすすりました。
(いえ、あまり)
「こういう時は、大好きですって
言うものですよ。
まあ、いい、○○さん。
君に軍隊での付き合い方ってやつを教えよう。
駆け足、ついてきてください。」
あなたは、善行とお茶をすすりました。
今日はこれでおしまいです。


「ふむ。
いつもよりも鬱々としていますね。
もう少し明るくしていた方がいいと思いますよ。
世界は醜く、最低で糞溜めのような匂いが
しますが、目をやれば奇麗な花が咲いている
時もあります。
それでいいじゃないですか。
それで十分。
人は幸せになれると思いますけどね。
さ、お茶でも飲みましょう。」
あなたは、善行とお茶をすすりました。
………。
「じゃ、元気を出してください。
誰よりもあなたの部下のために。」


善行は、何か探しているようです。
「いえ、実は幸せを探してましてね…。
何か、変ですか?
私だって、それくらいやりますよ。
あった。」
10円玉でした。
「…?
…私は安い男でね。
こういうので十分幸せなんですよ。」


「僕は、あなたの友人ですよ。
…いや、本当に友人かも知れないな。
……。
なんて事だ、技術の進歩はすごいな。
全然わからなかった。」
(竜を倒しに来た)
「……。
待った、待ってください。
少し考えさせてください。
何度も夢に見て、僕は白昼夢まで見るように
なったのかも知れない。」
(なんのこと?)
「ああ、いえ、こっちの話です。
別にあなたの事じゃないかもしれない。」


善行は、あなたを見ながら
昔、どこかで見た絵本の内容を
暗謡している。
「まどのそとではたいようはかげり
ほしぼしはおち
つきはうかばず
はなはかれ
あさつゆがなくても
ひとはそれをたにんごとだといいました
ひとりのひとのこがそれはおかしいといいました
じぶんだけがよければそれでいいのかと
うすくらくてもいいじゃないか
さむくてもいいじゃないか
ひとりあたたかいそれよりも
ひとりのひとのこはひとであることをはじて
猫になり山に登ります
失った何もかもを取り返し正義の御旗を
打ち立てるために
その旗こそはストーブよりも暖かい部屋よりも
わが心を暖める
真の友を得る唯一の冴えた方法
猫は善行忠孝を名乗り
世にうずまくあしきゆめのことごとく
邪悪な企みのことごとくを敵にまわし
友が来るのを待ちました」
善行は、ふと笑いました。
「久しぶりですね、友人。
あなたがいないので、
ずっと、寂しい思いをしていました。
だがもう、それもこれで終わりです。
また戦いましょう、いつもの通りに。」


「今度はどんな世界の危機と戦うんですか?
……はあ。
人の心に浮かび上がった危機を殺して
回るんですか。
なんとまあ、気の長い話ですね。
今、全人類が4億生き残ってるとして
あと4億回も戦うんですか。
……ま、いいですけどね。
つきあいますよ。
人や生き物の集合が世界だとするならば、
なるほど、まったく貴方らしい、
根本的な対処法だ。」


「私は幸せですよ。
これ以上に、どんな事もないくらいに。
確かに戦況は最悪だが、
だが、ここにはあなたがいる。
いいでしょう、
戦況くらいは我慢してやりますよ。
そんなもので、友人が一人あがなえるなら
安いものだ。
手を貸してください。」
善行は、あなたの手を握り、
腕に巻いた真紅のスカーフに
手を触れました。
「ありがとう。
この火の色の布にかけて、
青空が落ちるまで、
地が裂け海が僕を飲み込むまで、
僕は、この国を守りましょう。」


「そうだ、
久しぶりに僕の愚痴を
聞きたくありませんか。」
(ああ)
「あなたがいなかったんで、
ずっと寂しかったんですよ。
希望だかなんだか知らないが、ひどい人だ。
以上、終わり。
それだけって顔してますね。
でも、結構深刻だったんですよ。 ふふふ。
それにね、進歩がなけりゃ
悲しいじゃないですか。
私はもう、昔の私とは違う。
今の私は英雄の介添え人、悲しむ事も
絶望する事もなく、苦しみを知ってはいるが
それでも膝を屈する事はない。
正真正銘あなたの友人です。」
(遠慮しておく)
「そうか、あなたは同調能力も
持っていたんですね。
まあ、いいか、あなたのひるんだ顔なら、
もっと別の方法で見る事も出来ますし。
残念、今頃聞きたいと言っても
遅いですよ。」


善行は、あなたの手を取って
歌を歌った。
「万里を旅して来た 長い道をたどり
時の河までたどりつく
不思議の側で故郷を眺め 思いをはせる
帰ることのない故郷 その明かりを見つめていた
悠久の時の河 ここで死ねば幸せか
出来ないことを思って 虹を見る
万里を旅して来た 長い道をたどり
時の河までたどりつく
不思議の側でとまる足 人を待つ
来ることのない想い人 その横顔を思い出す
悠久の時の河 ここで生きれば裏切りか
出来ない事を思って 星を見る
天を見上げれば貴方はそこに
ならば僕は星へあがろう
後いくばくかの悠久を万里を旅してすごして
いこう」


「この戦いが終わったら、どうします?
…いや、愚問でしたね。
どうせ、次の戦いに行くのでしょう。
この戦いが終わればその次に、
またそれが終わればその次に……。
私ですか?
ふっ。
それも、愚問なんでしょうね。」(一枚絵)



戦闘時サブイベント(「絵本」以後発生確認
善行と英吏が戦闘に参加、PCが昏睡状態になった時発生)

善行は、瞳を青く輝かせると
大地を鳴らした。
善行「芝村、聞こえるか。」
英吏「聞こえております。
善行「隊長は怪我を負って意識がない。
    僕が指揮をとる。」
英吏「承知しました。
    ご命令を。」
善行「敵を殲滅させる。
    成功率は1%ほどでいい。
    作戦立案出来るか。」
英吏「用意しております。
    今、そちらに送りました。」
善行「いいでしょう。
    では、実行します。
    「ついてこい。
    ………。」
英吏「は、何か?」
善行「この若者を殺すには惜しいと、
    僕はそう言っただけです。
    運命とやらに。
英吏「宗教ですな。」
善行「いえ、敵ですよ。
    運命と言うものは、僕が蹂躙して
    叩き殺すべき敵だ。
    「だから、私は運命に介入する。
    <あれ>のように。
    「昔はただ見ているだけだった。
    あんなところまで、決して届かないと思っていた。
    だが、今は違う。
    「<あれ>もただの人間なら、
    僕だってただの人間だ。」
善行は、戦闘を指揮し始めると、
瞬く間に戦況をひっくり返した。
数の差も火力の差も全く問題にしない、
指揮だった。

PC退院後
「気分はどうですか、お寝坊さん。
「ふふ。
ま、怪我が治ってよかった。
「あなたが居ないと、
この国も面白くないですから。
「もう少し自分を大事にしてください。
いいですね。」
(戦闘班各キャラの反応)
竜造寺「うん、何というか。
    どうか、どうか健康にだけは
    気をつけてください。
    あなたの指揮下では、
    人間は一回しか死なないけど…。
    あの人の指揮下では何度でも死ねる事が
    良くわかりました。
    痛いのは一度で十分だ。」
深澤「隊長、今度から怪我するのだけは
   やめてください。
   僕、十回じゃ足りないくらい
   死ぬ思いしましたよ。」
國分「あー、善行?
   いいんじゃねえの?
   本物の指揮なんて、
   いかに効率よく部下を使い潰すかだよ。
   その点あの人の場合、使い潰すというより
   教育しているという感じだよ。」
英吏「貴方が居ない間に、
    たっぷり限界能力テストを受けました。
    「これが戦時じゃなかったら、しばらく休暇が
    欲しいですな。」
柱「…善行さんの話をするのは
  やめてください。
  思い出したくもありません。」
斉藤「実は最近、怪我人が少なかったんですよ。
    みんな胃の薬をもらいにきてましたけど。」

戦闘開始時
「すすんで死なないでくださいね。
「確かに、戦争の最後の時に
男と女が一人づつ生き残れば
我々の勝ちかも知れませんが…。
「でもそれじゃ、面白くないでしょう。
うん。
もう少し面白くなるようにしましょう。
「死なない程度に隊長に従ってください。
以上」




エンディング
迎えのヘリがたくさん来たのは
よかったんですがね。
まあなんと言うか、それどころじゃ
なかったんですよ。
ええ。 愛の告白がありましたから。
-山岳騎兵の述懐

その日、撤退を支援するヘリの群れが来た日、
貴方が使命を終えて、ゲームを終えようとして
いると、善行があわてた様子で走って来た。
「……はぁ、ハァ……。
いや、間に合いましたね……。
何をって、
あなたは次の戦場に行くんでしょう?
その見送りと、いつかの愚問の、答えをね。
僕は、英雄の介添え人。
あなたを支えるのが僕の仕事です。
あなたが死ぬまでどこかで戦う運命なら、
私もそうです。
……いや、それだけが、言いたくてね。」
善行は今まで見た中で一番良い笑顔で笑うと、
口を開いた。
「では、また。
いつか、どこかで。
多分我々が、出会った事のない
誰かのために。」
(うなずいて消える)(微笑んで消える)
善行は貴方が居なくなった後、
少しだけ悲しそうに微笑んで、
ヘリの方へ歩き出した。



善行忠孝 通常 / 提案 / 派生 / シナリオ

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最終更新:2009年09月22日 00:11