アタッシュケースを開けると、
小さなテープレコーダーが入っていた。
開けると作動する仕組みになっていたのだろうか?
ノイズに混じり、男の声が聞こえてきた。
「アー、テス、テス、テスッ!
これはマナーの一環として先に言っておく。
このテープは自動的に消滅する。
あ、さて。
おめでとう…、君は輝かしくも未知の世界への第一歩を踏み出したのだ。
我々は君を仲間として招待する」
(何だ何だ…!?/招待って何?)
「我々は、秘密結社ソックス・ハンターの名の元に日々世界中の靴下を求め暗躍している。
そう、この学園の生徒の靴下とて例外ではない。
そこで、君には重大な使命を与えよう」
(おいおい、使命って何だよ…!?/何のイタズラだ!)
「この学園の生徒の靴下を集めるのだ。
このアタッシュケースの中に、靴下を集めたまえ。
さすれば、君は見るであろう。
靴下による極楽浄土を。
とりあえず、10足集めてもらおうか。
では、待っているぞ」
ボンッ!
テープレコーダーが爆発した。
(…靴下に何の価値が?/靴下の匂いを嗅いでみる)
PC「………………。
靴下…か…」
あなたは、とりあえず自分の靴下を嗅ぎました。
懐かしくも、妖しい匂い。
PC(危険だ…、この匂いは危険だ。
しかし、しかし…知ってしまった…。
もう、後戻りは出来ない…)
靴下を10足集めてください。
突如、文付きの矢が足元に刺さった。
PC(手紙…、自分に?)
(手紙を読んでみる)
(※へ)
(無視する)
無視しようとしたが、
すかさず2本目の矢が飛んできた。
やはり、文付きの矢である。
あなたは、観念して手紙を読みました。
(※)
手紙を開くと、「自分の席へ行け」と書いてある。
ヒソヒソと噂する声が聞こえる。
どうやら、こっちを見ているようだ。
アタッシュケースが気になるらしい。
女子生徒「ねえ、何か匂わない?」
男子生徒「あのアタッシュケース、アブナイ匂いがするな」
皆、口々にそう言っているのが聞こえる。
PC(次の獲物はどいつだ…)
などと、皆の靴下に目配せていると、
それに気付いたかのように小さく非難めいた悲鳴が聞こえる。
PC(何とでも言え。
この快楽と共に生きられぬとは何と不幸な者どもよ…)
自分の席につくと、机の引き出しからイヤホンが覗いている。
PC「…?」
「あー、テスッテスッ!
本日は快晴なり…」
PC「…!?」
間違いない、あの謎の男の声だ。
「ふふふ…、この快楽に目覚めたようだね。
君は私が見込んだとおりの人物だよ。
ほう、もうそんなに集めたのか。
人の心を惹きつけ惑わす香り、ここまで感じる事が出来るよ」
あたりを見回した。
全身をウォードレスで包み、ヘルメットで顔を隠した男が廊下に立っている。
男は、靴下をいれたビニール袋の口を顔に当て、
その臭気を余す事無く堪能しているようだ。
すごく怪しい…。
なぜ、皆その男の存在に気付かない!?
「いいか、そのまま聞け。
次の指令だ。
ほたてやに行き、靴下定食と注文しろ。
ブツが運ばれてきたら、その中に集めた靴下を隠せ。
いいな…」
通信が切れた。
男は、女子たちの悲鳴を浴びながら廊下を駆け抜けていった。
何だ…、やっぱり不審者と思われていたのか…。
周りから、ヒソヒソ声が聞こえる。
女子生徒「ねえ、何か酸っぱい匂いしない?」
男子生徒「あのケース、ヤバイもの運んでるじゃ…?」
皆こちらを注目している。
…一応、指令を受けて来たわけだが。
ごくごく普通の大衆食堂で「靴下定食」など、頼めるものだろうか?
一歩間違えたら、営業妨害もいいところだ。
おやじ「はい、いらっしゃい。
何にしましょ?」
いつもの親父だ。
が、雰囲気がいつもと違う。
そして、指令を伝えてくる男の声とはまるで違う。
まさか、上手く化けた工作員なのか!?
PC「あの、あのあの…あのっ!
く、くくくく…靴下定食」
親父の目が光る。
こちらを一瞥すると、厨房に戻っていった。
PC(あわわ…、怒らせた…?)
気まずくなって、席を立とうとしたその時。
おやじ「あいよ、一丁上がり!」
ラーメンのどんぶりに、山盛りよそった銀シャリの山。
これが靴下定食らしい。
PC(確か、指令では「その中に集めた靴下を隠せ」と…)
箸でご飯を掘り、靴下を埋める。
靴下がほっかほっかのご飯に蒸され、異様な臭気をかもし出した。
周りの客が、目を細める。
おやじ「御代は結構です」
親父はニヤリと笑い、靴下の埋まったどんぶりに手をかけた。
このまま下げるつもりらしい。
(させるか!!/(無意識に靴下を奪い返す))
自分でも、どうしてそういう行動を取ったのかわからない。
どんぶり飯に顔を突っ込み、夢中で靴下を頬張りながら店を出た。
悪夢のようだった。
蒸された靴下は程よく匂い、黒服の追っ手がそれを嗅ぎつける。
何故なんだ!?
あの店に、こんな黒服を従えるほどの何があるというのか?
ほうほうのていであなたは自宅へ戻り、
アタッシュケースに靴下を戻した。
PC「世の中、敵だらけ…。
もう安息の日々なんて無いかもしれない。
ならば、いっそ…」
(ソックス・ハンターになる/外道の道を行く)
PC「奴らに靴下を取られる前に、この手で残りの靴下を…!!」
あなたは靴下を集め続ける事を決意しました。
こうして靴下を集め続けている自分を、人はどう見ているのだろう。
言い知れぬ背徳感が湧き上がる。
下を向いていると、自分の足元にラジコンカーが走りこんできた。
「テステス、テスッ!」
あの、男の声だ。
ラジコンカーに、スピーカーが付いているらしい。
「よくぞ、靴下を守った。
残りも後わずかだな。
我々の情報が知られていたようだ。
君にどんぶりを運んだのは敵組織の人間なのだよ。
あやうく靴下を奪われるところだったが…」
(ところで、あなたは一体…/実は、あなたすごい人?)
「ソックス・バトラーとでも名乗っておこうか。
フハハハハ!」
ボンッ!
ラジコンカーは爆発した。
PC「ソックス・バトラー…。
………ダサッ!」
周りから、ヒソヒソ声が聞こえる。
女子生徒「ちょっと、異臭が…」
男子生徒「なんだろ、この匂い…気分が…」
靴下の匂いで気分が悪くなってる人がいる。
匂いの元に、大体察しがついているのか
皆が恨めしそうにこっちを見る。
おやじ「いらっしゃい」
いつもの親父だ。
この前のあれは何だったんだ。
やっぱり敵となる存在だったのか?
なぜか教室中に異臭が漂っている…。
空「この酸っぱい匂いは何な…?」
ドサッ!
ドサドサ!ドサッ!
次々に倒れていくクラスメイト。
空「こんなところにハンターが…」
PC「…………」
空「まさか、お前が…」
靴下の匂いで、授業どころじゃなくなりました。
結局この日は、休校になりました。
とうとう、11足の靴下を集めた…。
アタッシュケースを覗き、悦に入っていると突然、
ペンギンの着ぐるみを着た謎の男が目の前に現れた。
まさか! あのメット男なのか!?
よく着れたなぁ…ペンギンの着ぐるみ…。
(あ、あなたは…/…ソックス・バトラー?)
バトラー「いかにも。
我こそは、秘密結社ソックス・ハンターのソックス・バトラー!
人々に誠の幸、靴下の魅力を伝道するのが我が役目。
おめでとう。
君はもう、我々と道を同じくするものだ。
君は今日から、ソックス・ニューオーダー。
ソックス・ニューオーダーと名乗りたまえ」
(名を頂戴する)
PC「ソックス・ニューオーダー…」
バトラー「さあ、君の靴下を加えて11足。
これは君のものだ。
将来、孫に自慢すべきものだ」
訳も無く涙が溢れ出た。
同志を得た喜びだったのか、力が抜けたのか、
それは自分でもわからない。
ただ、ソックス・ニューオーダーと名乗り、
これからも靴下を求めて生きていく事だろう。
あなたは、ソックス・ニューオーダーの称号を得ました。
ソックス・ハンター 完
(…いや、拒否します)
バトラー「あり? そうなの?
惜しいな、惜しい。
せっかく君は同胞となってくれるものだと思っていたとばってん…
興ざめタイ、ふんなら、靴下だけもろうて行くけん」
ソックス・バトラーと名乗る男は、アタッシュケースを抱えて逃げていった。
PC「……………………。
(カタギに戻ろう。ノーマルなのが一番だ)
ソックス・ハンター 完
最終更新:2006年11月12日 23:07