コンデンサーの貯水槽モデル(その2)
かぎしっぽのQ&Aより。コンデンサーの貯水槽モデル(試論)に続く試論第2弾。苦肉の借金対策?

【問題】
図のスイッチ{\rm S}_1,{\rm S}_2は連動して左右に切り替えることができる。初めコンデンサーの電荷は0であったとする。スイッチをまず左に入れ,十分時間が経過した後に右に切り替えて十分な時間を待つ。この操作をn回繰り返した後のAB間の電位差V_{{\rm AB}n}を求め,無限回繰り返した場合の最終値を求めよ。


【解答】
n回目の操作の後のC_1の電位差V_{1n}および,C_2の電位差V_{{\rm AB}n}に対して,電気量保存および電圧の関係より次の式が成立する。

C_1V_{1n} + C_2V_{{\rm AB}n} = C_1V_0 + C_2V_{{\rm AB}n-1}

V_{{\rm AB}n} - V_{1n} = V_0

ただし,電位差はいずれも下極板に対する上極板の電位差とする。
上2式よりV_{1n}を消去して整理すると,

V_{{\rm AB}n} - 2V_0 = \frac{C_2}{C_1+C_2}(V_{{\rm AB}n-1} - 2V_0)

となる。したがって,

V_{{\rm AB}n} = 2V_0\left\{1-\left(\frac{C_2}{C_1+C_2}\right)^n\right\}

を得る。最終値は,

V_{{\rm AB}\infty} = 2V_0

である。

この問題における現象の概要は次のようなものである。

(1) C_1を電位差V_0に充電する。
(2) C_1の下の極板の電位をC_2の下の極板に対してV_0だけ底上げした上で,C_1からC_2へと電気量を配分する。

この(1),(2)を繰り返す。(2)の最終状態は,両者の上の極板の電位が一致した状態である。初めのうち,この電位はV_0より小さくC_1は (1)でもらった電気量を超える電荷を放出するために,下の極板は+になる場合もある。しかし,C_2の電気量が増えるにつれて,上の極板の電位が上がっていき,V_0を越した後はC_1の最終電荷は上の極板が+になる。(1)でC_1は電位差V_0に充電されて,その後下の極板は電位V_0に底上げされるので,上の極板は(2)の操作でスイッチが切り替わった直後は,高さ2V_0からより電位の低いC_2の上の極板に電荷を落とすわけだ。C_2の上の極板の電位はしだいに2V_0に近づき,無限回の操作の後に2V_0に到達する。C_1はもはや充電されて上の極板が2V_0に底上げされても,同じ高さになったC_2の正極板に電荷を落とすことができなくなって終わりをつげる。

初めのうち,C_1は電荷の符号が逆転する場合もあるので,なかなかよいモデルがみつからないが,この一連の流れはちょうど貯水槽1に水をくんでは,高く上げて貯水槽2に同じ水位になるまで配分するという操作にあたる。

※ 図はC_2=2C_1としている。1回目はC_1は電源(ポンプ)から借金をしてC_2に電荷(水)を配分する。

したがって,最終状態を一気に実現するには,C_1の上の極板の電位(貯水槽1の水位)を常に2V_0にするために,V_0の電源(ポンプ)を並列につないでおいて,なおかつもう一つの電源(ポンプ)で下の極板をC_2の下の極板よりもV_0だけ高い電位に保つようにする。C_1から電荷(水)がC_2に放出されてもただちにC_1は充電されて電位(水位)2V_0を保つから,C_2の上の極板の電位(水位)が2V_0になるまで充電(給水)されることになる。C_2 に対して抵抗による電圧降下をのぞけば2V_0の電圧が加えられていることから,最終結果はあたりまえのものといえる。

下図は最終状態を一気に実現するための等価回路である。



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最終更新:2010年02月23日 16:37