運動方程式と力学的エネルギー保存
一般に,力学的エネルギー保存則は,運動方程式の経路積分であるエネルギー原理から得られる。よく見かける相対運動の問題場面で,運動方程式から力学的エネルギー保存を導出するという「遠回り」をやってみた。OKWaveのQ&Aから。

一般に,力学的エネルギー保存は,運動方程式の経路積分すなわち「エネルギー原理」から得られる。

m\ddot{\boldsymbol{r}} = \boldsymbol{F}

\therefore m\boldsymbol{v}\cdot \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} = \boldsymbol{F}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}

{\rm i.e.}\quad {\it\Delta}\left(\frac{1}{2}mv^2\right) = \int \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}=-{\it\Delta}U\qquad \therefore {\it\Delta}\left(\frac{1}{2}mv^2 + U\right)=0

このエネルギー原理を,よく見かける相対運動の問題場面に適用しようとした優秀な高校生がいた(OKWave)。

「摩擦のない水平面の上に、水平面と角\thetaをなすなめらかな斜面を持つ質量Mの台がある。その斜面上に質量mの小物体を置くと小物体と台はともに動き始める」

以下,抜粋。

小物体と台との間の垂直抗力をn,台と水平面の間の垂直抗力をN,重力加速度の大きさをgとする。小物体のx方向の加速度をa_xy方向の加速度をa_y,台のx方向の加速度をAとすると,小物体および台の運動方程式は,

x方向: ma_x = -n\sin\theta     …(1)
y方向: ma_y = -mg + n\cos\theta …(2)
x方向: MA = n\sin\theta       …(3)
y方向: 0 = N - Mg - n\cos\theta …(4)

(1)+(3)より

ma_x + MA = 0    …(5)

…以下略

運動方程式は正確であり,(5)の運動量保存すなわち

mv_x + MV = 0   …(i)

までしっかり導いている。ただ,拘束条件が抜けたのと,エネルギー原理への理解不足のためにうまくいかなかった部分を代行してみた。

拘束条件(小物体が斜面から離れない)から,

\tan\theta = \frac{-a_y}{A - a_x} = \frac{-v_y}{V - v_x} = \frac{-y}{X - x}  …(ii)

運動方程式(1)~(3)に対応するエネルギー原理は,

\frac{1}{2}m{v_x}^2 = -n \sin\theta\cdot x

\frac{1}{2}m{v_y}^2 = -mgy + n \cos\theta\cdot y

\frac{1}{2}MV^2 = n \sin\theta\cdot X

これらを辺々加えて,(ii)の関係を用いると

\frac{1}{2}m({v_x}^2 + {v_y}^2) + \frac{1}{2}MV^2 + mgy = 0 …(iii)

を得る。垂直抗力nは,小物体と斜面がエネルギー(仕事)のやりとりに用いている力であるが,小物体が斜面に与えたエネルギーの分,小物体はエネルギーを減らしていることが明らかなので,垂直抗力がする仕事は小物体+斜面という全体ではプラスマイナスゼロになるから,初めから考えなくてよいわけだ。

通常は,(i)~(iii)を直接立式して,v_x\,,\,v_y\,,\,Vの連立方程式として解くことになるだろう。しかし,たまにこうした「遠回り」をあえてやってみることは,本質的な理解のためにはとても大切であるように思われた。

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最終更新:2010年03月30日 13:42
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