動く光源はなぜ斜めに光を出すのか?(2)
続編。相対論的な速度合成によってつじつまのあう,光に対する相対性原理。

Yahoo!知恵袋から。ややあいまいな回答が寄せられたことも手伝って,質問者が納得しないままに,再質問となった。続編として私の回答を転載。また,相対論的な速度合成則を用いて,光の速度と光源の速度の合成を試算してみる。

マイケルソン・モーレーの実験は,光を用いても公転による地球の速度を測定することができないことを示しました。つまり,光も相対性原理から自由ではいられない…ということです。

物体を鉛直上方に投射する台車があるとき,投射された物体を静止系から見ると斜め投射されて,放物線を描く運動になります。

一方,月に向けてレーザーを発射するとき,太陽静止系から見るとその間地球も月もほぼ等しく太陽周りに公転するので,レーザーは斜めに月に発射され,月面上のアポロがおいてきた反射鏡で反射されて,正確に地球にもどってきます。

運動する光源から発する光は,投射体と変わらずに光源の速度が合成された速度をもつのです。ただし,その速度は相対性理論にもとづく速度合成となり,その結果斜めに発射された光の速さも,相変わらず不変な「光速」となるのです。


折しも,「40年間、月のホコリまみれの平原に放置されたソビエトのロボットが再び発見され、驚愕のレーザの閃光を地球に返してきた。」というニュースがあり,ルナ17号が月面に運んだローバー「ルノホート1号」がレーザー反射によって再発見されたという記事が検索にかかった。

では,運動する光源の速度と垂直に発射された光の速度の合成を試算しよう。

{\rm S}^\prime 系が{\rm S} 系に対して速度\boldsymbol{v}で運動し,その{\rm S}^\prime 系において物体が速度\boldsymbol{u} をもつとき,{\rm S}系から見た物体の速度\boldsymbol{w}\boldsymbol{u}\boldsymbol{v} の合成速度である。



\boldsymbol{u} から\boldsymbol{w} への変換は,

\boldsymbol{w} = \frac{1}{\gamma(1+\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}/c^2)}\left\{\boldsymbol{u} + \gamma\left(1+\frac{\gamma}{1+\gamma}\cdot\frac{\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}}{c^2}\right)\right\}

となる。ただし,

\gamma=\frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}}

である。(参考 http://homepage2.nifty.com/ysc/Rel.pdf

ここで,\boldsymbol{v}=(v,0,0)\boldsymbol{u}=(0,c,0)にとれば,運動する光源の進行方向に垂直に発射される光の合成速度が得られる。\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}=\boldsymbol{0}だから,

\boldsymbol{w} = \frac{\boldsymbol{u}}{\gamma} + \boldsymbol{v} = (v,\frac{c}{\gamma},0)

を得る。もちろん,その速さは

\sqrt{v^2 + c^2/\gamma^2} = \sqrt{v^2 + c^2(1-v^2/c^2)} = c

である。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年06月21日 13:40
添付ファイル