4・825

「―――すぅ……」

東郷さんには本人も知らないある秘密がある
ただ今の時間午前4時、現在位置私の部屋のベッドの中、目の前には眠る東郷さん
別にお泊りだったわけじゃないし、もちろんワープなんて摩訶不思議があるわけでもない
じゃあなんでこんな時間に私のベッドの中に東郷さんがいるのかというと
……正直よくわかってないんだよねー

「ん……」

東郷さんを起こさないようにそっとベッドから出て
これまた起こさないように細心の注意で東郷さんを抱き抱える

「よっ」

そのまま部屋から出て、向かう先は東郷さんの部屋
いやー、こういう時顔パスって便利だよねー
こんな時間でも通用していいかはわからないけど

「……ととっ」

いけない、少しだけふらついてしまった
あの戦いが終わって、目覚める事が出来て、こうして脚も動くようになって
それからそれなりに経つけどまだたまに危なっかしくなってしまう
私でさえそうなんだから、脚が動かなかった期間が
もっと長かった東郷さんはもっと苦労したんだろうな
そんな東郷さんも私も今では並んで歩くことができる
どちらかが頼ることなくお互いの部屋に遊びに行くことができる

だから、なのかな
東郷さんが無意識に私のベッドに入ってくるようになったのは
勇者としてのお役目から解放されたとしても
散華して捧げた供物が返ってきたとしても
それでこの先の未来に何にも問題がなくなるわけじゃない
いろんなものを背負って辛い想いをしてきた東郷さんの恐怖が
癒されきるにはまだまだ時間がかかるのかもしれない

「とーちゃーく」

部屋に踏み込んだ足でそのまま片隅のベッドに向かい、東郷さんを下ろして
ベッドの上での姿勢を正してあげたら、捲られた毛布を掛け直す

「大丈夫だよ、東郷さん」

約束、したから
ずっと、いっしょだって

むしろ大人になって私の方が東郷さんから離れられなくなったらどうしよう、なんて

さて、私ももう一度寝なおそう
数時間後には東郷さんが起こしてくれる
いつもの、私たちの日常が、また始まるから

「お姫様、おやすみなさい」

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最終更新:2015年02月08日 22:46