「そのっち、そのっち!」
不意にかけられる声
「あれ、わっしー、どうしたの~」
目の前にはわっしーの顔
「どうしたの、じゃないの、部活中なのにまたボーっとして」
そう言ってわっしーの両手が私の顔に添えられる
右手は左頬に、けれど左手は私の右目を覆い隠すように
いつからだっけ、わっしーが私の体によく触るようになったのは
それも、私が供物として捧げて欠落していった部位ばかりを
わっしー達の戦いのおかげで私の供物も返ってきて、あの部屋から解放されて
わっしー達の学校に通えるようになって、勇者部に入って……
いつからかは覚えてないけど、言えるのはきっと
わっしーの記憶が戻っていったからだって
「もう、ほんと相変わらずなんだから」
他の皆からはわっしーの体で隠されてこの行為は見えてない
さぞやほほえましい光景に見えているんだろうねぇ
「そういうわっしーも相変わらずだよ~」
わっしーにそうさせるモノ
きっと、わっしーは未だ悔やんでいるんだ
鷲尾須美だったあの日々の事を、それを忘れてしまった事を
思い出したからこそ、それはより強くわっしーの心に巣食い続けてる
ほんとなら、未だ残るその呪いを解いてあげるべきなんだろうね
それで苦しんでるのは私でも他の誰でもなくわっしーで
何よりわっしーの心にはミノさんでも私でもなく
もっと大きく心を占めてる人がいるんだから
でも、私だって
ずっと会いたくて、話したくて、遊びたくて
やっと、また、一緒にいられるのに、それが叶うのに
「はいはいお二人さーん、依頼の話続けるわよー」
部長からの言葉でようやくわっしーの手が離れ自分の席に戻っていく
もう離れたはずなのに右目は触られた時よりさらに熱を帯びてくる
「すいません風先輩、再開してください」
ねえ、わっしー
私がその行為に何も言わないでいるのはどうしてだと思う
「そのっちも、今度はちゃんとしてね」
わっしーに触られるうちにこんなにも昂ってくるようになっちゃったんだよ
私だってそう簡単に、割り切れたりなんかしないんだから
私をこうしたのはわっしーなんだから
このキモチ、抱いてる位は
いいよね
「はーい」
そう返事をしてなんだけど、そして私はまた
この身に巣食う疼きに思考を委ね、心を何処かへ飛ばしてゆく
最終更新:2015年02月09日 16:48