4・323

銀の記憶を思いだし、またその端末が夏凜に渡っていた事を知った東郷さんは夏凜にあるお願いをする
そのお願い―少しの間だけ手を貸してほしい―に首を傾げながらも応じ手を差し出した夏凜は驚く事となる
東郷さんは差し出された夏凜の手を自身の手で優しく包むと、頬へそっと寄せた
まるで、既に大赦に回収され今は無い端末がそこにあるかのように、持ち主の手ごと慈しむかのように
また、ごめんなさい、やっと思い出せた、等と言葉を零し涙を流す彼女の姿は、夏凜にとって初めて見る物であった

程なくして、夏凜の手を解放した東郷さんは端末のかつての所有者の話をする
そして、こんな事に意味は無いかもしれないけど少しだけ気が楽になった、と
今度ちゃんと会いにいく、といくらか晴れやかになった顔で感謝を述べる

そんな一連の、夏凜にとっては新鮮な東郷さんにときめきを覚えるも
同時にその行為が自分に向けられたものではなかった事に
言いようのないモヤモヤを夏凜は感じてしまうのであった

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最終更新:2015年02月08日 21:11