「ゆっくりいじめ系347 孤独のゆっくりゆゆこ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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あるところに2匹のゆっくりゆゆこがいた。
「こぼねー」
「こぼねー!」
バスケットボールぐらいのゆゆこの声に、テニスボールぐらいの子ゆゆこが応える。
2匹は、群れへと帰る途中だった。
子ゆゆこは、ゆゆこの子供ではない。偶然見つけた子ゆゆこをゆゆこが保護して連れて行っている。その為、子ゆゆこはまるで群れのことを知らないでいた。
ここまで歩きながら群れの事を聞くたびに、子ゆゆこは目を輝かせている。
早く他のゆゆこ達に会ってみたい。今までにない新たな生活へと子ゆゆこは心をときめかせていた。
「ハフ、ハフ……ハフ?」
「こぼね?」
ゆゆこ達の足が止まる。
道沿いに進んだ先を見ると、黒い帽子がゆらゆらと並んで揺れているのが見えた。
ゆゆこはそれだけで、ゆっくりまりさの家族連れが歩いている事を悟った。
「こぼねーこぼねー」
「ハフッ!」
ゆゆこにエサがいると言われて、鼻息が荒くなる子ゆゆこ。
2匹はお互いに歩みを揃えて、黒い帽子へ向かっていった。
隣で遊んでいる子まりさばかり見ていた親まりさは、目の前に来るまでゆゆこの存在に気づけなかった。
「ゆ?」
「おかあさん、ちがう子達がきてるよ」
「ゆゅっ?」
子供に言われて振り返った時、ようやくゆゆこ達に気がつく。
「ああぁぁああぁぁぁあああああぁっ!?」
瞬間、思わず絶叫したまま固まっていた。
「お、おかあさん?」
「どうしたのおかあさん? あの子達といっしょにゆっくりしようよ?」
「ゆっくりしていってね!」
まだゆゆこの存在を知らない子供達は、親しげにゆゆこ達へ接しようとしている。
そこに気を取り直した親まりさが、間に入ろうと飛び出してきた。
「だめ! このゆっくりたちとはゆっくりできないよ! おかあさんの後ろにかくれてね!」
決死の表情でゆゆこたちを睨んでいる。
しかしまりさを今までエサとしか見たことのないゆゆこは、まるで意に介さなかった。
「あなたたちは早くいえにかえってね! ゆっくりしたらだめだよ!」
「ゆーっ!」
「なんでそんなこというの! いやだよ! もっとゆっくりしたいよ!」
親の言っていることが理解出来ない子供達は、まるで言うことを聞かない。
そんな親へ、子ゆゆこは張り付くように近づいていく。
「ゆっくりしたらだめぇええぇぇっ!! にげてぇぇぇえぇえぇっ!!」
親まりさの必死の叫びと、子ゆゆこがまりさに口をつけるのは同時だった。
「ゆぐっ!!」
「こぼねー!」
そのまま囓った皮を咀嚼する。
「おいちー!」
「お、おかあさん!」
「おかあさん、どうしたの? 大丈夫?」
急に顔を顰めた親まりさの様子に慌てるも、まだ状況を把握していない。
「い、いいから、早く逃げて……ゆっくりじな」
子ゆゆこは食べ終えた場所へまた口をつけ、今度は一気に吸い込み始めた。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃがぐぎゃがっ!!」
「ずずずずずずずず……」
子ゆゆこの口に餡子の甘さが広がっていく。
「お、おがあじゃん!」
「どうしたのおかあさん!」
「いやぁぁあぁっ!! おかあさんがちっちゃくなっていくよぉおっ!!」
みるみるうちに餡子を吸い取られ、細い皮だけの存在になっていく親まりさ。
「……み……ゆっく……にげ……」
最後の声は、子供達に届くことなく風と共に消え去り。
親まりさは皮だけとなって、風に飛ばされていった。
「げっぷ」
「いやぁああぁあぁあぁあぁっ!!」
「おかあさぁぁあぁああぁあぁんっ!!」
その場で泣き叫び始める子供達。動こうとする子まりさは1匹もいない。
最後の最後まで、親まりさの気持ちは子供達に伝わらなかった。
軽い食休みを挟んで、子ゆゆこは泣き崩れる子まりさ達へ近づいていく。
それを、後ろから迫ってきたゆゆこに突き飛ばされて邪魔された。
「ハフッ!?」
地面で体を擦られ、体中が砂埃で汚れてしまう。
突然の事に思わず起き上がってゆゆこを見ると。
冷たい目で、子ゆゆこを睨みつけていた。
「……こぼ」
これまで見たことの無かったゆゆこの様子に、思わず子ゆゆこはたじろいだ。
ゆゆこは、そのまま子まりさに迫っていく。
食物連鎖の上位であるゆゆこに蹂躙されていく子まりさ達。
その光景をまるで目に映さず、子ゆゆこは先ほどの冷たい目にずっと怯えていた。
途中で僥倖な食事もあり、ゆゆこ達は気分も高らかに群れへたどり着いた。
ゆゆこの冷たい目に怯えていた子ゆゆこも、食べた後はいつも通りのゆゆこだったことで、どうにか落ち着いていた。
群れにつくと、多くのゆゆこ達が子ゆゆこの事を歓迎してくれた。
巨大なゆゆこもいれば、同世代のゆゆこ達もいて、今まで同種を見たことのなかったゆゆこは、文字通り飛び跳ねて喜んでいた。
群れについた後、ゆゆこと子ゆゆこは一緒に暮らし始めた。
ゆゆこに子供はいないので2匹だけの生活だったが、外を出たらすぐに友達に会えるので寂しさなど微塵もない。餌もゆっくりゆゆこの群れがあるだけあって、辺りを歩けばゆっくりがすぐ見つかる環境。困ることはまるでない。
今まで1匹で過ごしていた子ゆゆこにとって、今まで感じたことのなに暖かさがそこにあった。
やがて、子ゆゆこがゆゆこと同じぐらいの大きさになった時、子ゆゆこは独り立ちをする。
群れのある場所の外側に見つけた洞穴に住み、1匹で生活し始めた。
「うー! うー!」
羽根を咥えられ、ゆっくりゃはじたばたと肉まんな体を動かして藻掻いている。
逆に子ゆゆこはご満悦な笑顔を浮かべて喜んでいた。
ゆっくりゃや、ゆふらんは、その羽根で飛べるためにゆゆこでも捕まえる事は難しい。今回はゆっくりゃがゆっくりを捕まえようと降りてきた所を逆に捕まえていた。
もちろん捕まりそうになっていたゆっくりの住処は覚えている。ゆっくりゃを食べた後で、また狩りに行こうと思っていた。
取りあえず咥えていた羽根を引き千切り、持ち運びしやすくすると、そのまま住処の洞穴へ歩いていく。
「ぎゃ、ぎゃおーっ! ぎゃおーっ! 食べちゃうぞーっ!!」
食べられるのは、もちろんゆっくりゃだった。
「うー! うー!」
「ハフ、ハフハフっ!」
「うぁあああああぁああぁああぁっ!!」
肉まんが瞬時に食べ尽くされる。生では食べられない筈のゆっくりゃの羽根も、子ゆゆこは歯ごたえがある程度にしか思っていない。
油の乗ったゆっくりゃに、ゆゆこは幸せそうに食後を堪能していた。
入り口に影が映る。
「こぼね?」
「こぼねー」
影の正体は、知り合いのゆゆこだった。
「こぼねー!」
「こーぼねー」
ここに来た時からほぼ同世代だった2匹は、出会ってすぐに仲良くなり、普段から頻繁に雑談する中になっていた。
友達と仲良く話ながら子ゆゆこは考えていた。
子ゆゆこは、以前から別のゆゆこと一緒に狩りへ行きたいと思っていた。1匹でやる狩りはどこかつまらなく、爽快感に欠けていたからだ。
「ハフ、ハフハフ」
「……」
目の前で熱心に喋っている友達へ、ゆゆこは思い切って切り出してみた。
「こぼねー」
場の空気が凍った。
「……こ、こぼね?」
「……」
訪ねても、友達から返事が来ない。
黙ったまま、立ち去ろうとする。
「ハフッ!?」
子ゆゆこは訳がわからないまま、友達に追いつき、必死に謝った。
途端、友達は元の様子に戻り、また雑談を始めていく。
笑いながら雑談を聞いていた子ゆゆこは、心の中で震えていた。
去り際に友達がみせた冷たい目線は、あの時のゆゆこの目そのものだった。
「こぼねー?」
いつものようにゆっくりを探しに来たこゆゆこが不思議そうに声を上げていた。
ここ最近、餌のゆっくりが少なくなってきたと子ゆゆこは感じていたのだが、今日は少ないを通り越してまるで見つからない。
この辺りのゆっくりが住み着きそうな場所のほとんどを、子ゆゆこはなんとなく覚えている。それが至る所を探したものの、どこにもゆっくりの姿はない。
ほぼ1日を掛けたにもかかわらずの成果なしに、子ゆゆこはがっかりしながら群れへ帰っていく。
群れには異変が起きていた。
「……ゆっ?」
住処に帰り、取りあえず子ゆゆこは友達へ会いに行ったが、そこには誰もいない。
それじゃとゆゆこに会いにいくが、そのゆゆこも姿が見えなかった。
「……こ、こぼね?」
今まで危機感を感じていなかった子ゆゆこも、ようやく事態の異常さに気づく。
そのままゆゆこは知り合いの家をほとんど回っていったが、他のゆゆこはどこにも見あたらなかった。
「こ、こぼねぇえぇっ!?」
半狂乱する子ゆゆこに、声をかけるものはどこにもいなかった。
そもそも、ゆっくりゆゆこは群れを成さない。多数で動くとしても家族としてぐらいだ。
なぜなら、ゆゆこが2匹いるだけで、食料が2分の1に減ってしまうからだ。
多くのゆっくりを食べないと満腹にならないゆゆこにとって、それは大きな理由になる。
なのでほとんどの場合、ゆゆこは単独で生活しているのだが、唯一例外があった。
ゆっくりが多く住んでいる土地を見つけると、自然とゆゆこは集まって住みついていく。一時的に群れをつくり、互いに競ってゆっくり達を食い潰していく。
そしてその土地にゆっくりの姿が見えなくなると、また単独に戻り、次の狩り場を探して旅立っていくのだ
今はもう、ゆゆこも友達も、他のゆゆこ達も既に旅立っていった後だった。
他のゆゆこ達は育てられる内に移動を繰り返すため、単独で行動することには旅自体に慣れている。
子ゆゆこにとっての不幸は、この狩り場があまりに上質だったため、移動せずに育ってしまったことだった。
「……」
呆然としたまま動けない子ゆゆこ。普通ならば餌を求めて旅立たないといけない。
しかし子ゆゆこはどうしたらいいのかわからない。
「ハフ……」
突然、1匹になってしまった虚無感に、子ゆゆこは包まれていた。
どうしたらいいのかわからない子ゆゆこは、取りあえず洞穴に戻っていつも通りの生活を続けていた。
しかしここは群れから餌がないと判断された場所。しばらく必死に探してみたものの、1匹のゆっくりも見つからない。
「……こぼね」
取りあえず周りに生えていた植物を食べて飢えを凌ぐが、ゆっくりゆゆこの腹がそれぐらいで満腹になるわけがない。
ひたすらに空腹と、それ以上の孤独感に耐えながら子ゆゆこは日々を過ごしていた。
ある日、子ゆゆこは久しぶりの大物を見つける。
それは子を産んだばかりのゆっくりれいむの家族だった。
「や、やめてね! れいむはよごれてるからおいしくないよ! ゆっくりできないよ!」
「あっちいってね! むこうでゆっくりしていてね!」
親れいむが前に出て子供を庇おうとしている。
子ゆゆこはせっかく見つけたごちそうながら、食べようとはまるで思っていなかった。
飢えはまだ植物や虫でぎりぎり我慢できている。
それよりも久しぶりに、誰かと話せる事に期待が高まっていた。
「こ、こぼね……こぼね」
「しらないよ! れいむたちはれいむたちだけでゆっくりするよ! あなたはどこかへ行ってね!」
「ゆっくりできないから早くどこかいってね!」
子ゆゆこの言葉に罵声を浴びせ続けるれいむ達。
いくら話しかけても、れいむ達は聞き入れようとしない。
「ごぼねぇ……」
子ゆゆこの目に涙が光る。
その瞬間を、親れいむは見逃さなかった。
「みんなゆっくりしないでね! 急いでにげてね!」
「あなたはそこでゆっくりしてね! おってこないでね!」
「は、ハフッ!?」
涙が乾かない内に、れいむ達は走り去ってしまった。
「ごぼね゛……」
子ゆゆこは苦悩する。どうして話をしてくれないんだろうと。
子ゆゆこは、今まで他のゆっくり達を餌としか思っていなかった。
そんな中、いきなり友好的になっても信じるゆっくりがいないのは当然だ。
そんな理屈も、ただ本能に任せて狩っていた子ゆゆこには理解できない。
残ったのは寂しさと、お腹から訴えかけてくる空腹だけだった。
れいむの家族を逃してから1週間。
「……は、ハフッ。……は、はは、ハフッ」
体を重く感じながら、子ゆゆこは餌を探していく。
植物や虫しか食べていない体は急激に衰えていき、今では見る影もなくやせ細っている。前ならどれだけ動いても疲れなかったのが、今では数メートル動いただけでくたびれる始末だ。
今や子ゆゆこの中に孤独感はない。
砂漠の砂のような飢えが、子ゆゆこの体を突き動かしていた。
まずは植物を食べようと森へ向かうゆゆこ。辺りの花や草はほとんど食べてしまい、今や生木の皮を剥いで食べている。
そのまま樹木に齧り付いたりもしたが、さすがの子ゆゆこも樹を噛み砕くことは出来なかった。
白い身を晒して立っている木々。まだ食べていない樹はあるかと子ゆゆこは探していく。
そこに、懐かしい匂いを感じ取った。
「こっ!?」
この近くにゆっくりがいる!
力の入らない体を酷使して、獲物へ近づいていく。
そろそろ本当に体力の限界が近づいてきた時、木々の間を縫って歩くゆっくりを見つけた。
もう躊躇はしない。
「こぼねぇぇえぇぇえぇえぇえぇぇえっ!!」
飢えの勢いをそのままに、ゆっくりにかぶりついた。
「ハフッ!?」
「ハフ、ハフハフッ!!」
必死に体を食べ尽くしていく。
しかし3分の1ほど食べたところで、子ゆゆこは食べているゆっくりの顔を見た。
ゆっくりゆゆこだった。
「うぶっ!?」
体の奥底から湧いてきた吐き気に、思わずその場を離れて嘔吐した。
口の中からは、まだ消化しきっていなかったゆっくりの欠片が流れ出ていく。
それは、自分の体と同じものだ。
「うっ!?」
強烈な嫌悪感に蝕められ、子ゆゆこは続けて嘔吐した。
突然襲われた事に、ゆゆこは呆然としていたが、相手が苦しんでいるのを理解すると、そのまま逃げようとする。
「こ、こぼねぇぇええぇえっ!!」
「ゆっ!?」
急いで話しかけようとするも、既にゆゆこは走り出し、側からいなくなっていた。
思わず、宙を仰ぐ子ゆゆこ。
そのまま寝そべると、苦悶に顔をゆがめて叫び始めた。
「ぁああぁあぁぁぁあぁああぁあっ!!」
共食いをしてしまった事実。
また新たに襲ってくる孤独感。
吐いたことによって高まった空腹。
そのどれもが、自虐的に子ゆゆこを責め立てる。
やがて叫びが止むと、子ゆゆこはその場を動かなくなった。
もう、動く気力も体力も残されていなかった。
「ゆゆっ? おかあさん、何かへんなものがあるよ」
「なんでもさわっちゃだめだよ、ゆっくりみせてね」
「おかあさん、これなぁに?」
「……なんだろう? おかあさんにもわからないよ」
「ふしぎだね! へんなかたちだね!」
「ゆゆっ、へんなものにちかづいてゆっくりできなくなったらたいへんだよ。ゆっくりはなれようね!」
「ばいばい~」
「ゆっくりしていてね!」
子ゆゆこの意識はたゆたっている。
何か考えていたのか、何も考えていなかったのか、子ゆゆこ自身も覚えていない。
ひらひらと吹く風に揺られる体の感覚だけが、僅かに子ゆゆこの意識を繋ぎ止めていた。
子ゆゆこは寂しかった。
子ゆゆこは悲しかった。
なにを間違えたのか、子ゆゆこにはわからない。
脳裏にふと過ぎるのは、一緒に過ごしたゆゆこと友達の姿。
そして今まで食べてきたゆっくり達の姿。
ほとんどのゆっくりは、絶望に歪んだ表情をしていた。
ごめんなさい……ごめんなさい……。子ゆゆこはひたすらに謝り続けた。
もう、酷いことをしないから許して欲しい。
だから、誰か応えて欲しい。
最後に誰かと話したい、子ゆゆこの願いはそれだけだった。
そんな気持ちも、いつしか意識と共に途切れていく。
もう子ゆゆこは、体も心も空っぽだった。
大きな風が吹く。
強風になびかれて、空っぽの体は空へ飛びだっていった。
どこへだって、飛んでいきそうな勢いだった。
End
前の話で俺のときめきを返してくれ、と感想があったので俺的に出来るだけ返してみた……つもり。
返せてないかなぁ、すっきりしない話だもんなぁ……。
最初は丸々と太ったゆゆこを炙り焼いて食べるような話を書いていたんですが、どうにもしっくり来なかったので練り直したらこんな話になりました。
書き終わってから、ケロちゃんの話に被ってると気づいたのは後の祭り。もう書き直すのは無理ジャー!
なんか色々不満がありますが、楽しんでもらえたら何よりです。
by 762
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