紅魔館×ゆっくり系13 れみりゃの越冬

「うっう~♪ れみりゃがた~べちゃ~うぞ~♪」
 今日もニコニコと森を飛んでいるゆっくりれみりゃ。
 太っていると言うわけでは無いが、ゆったりしている体からくびれの付いた四肢をだらんと垂らして、木々の多い森の中を飛んでいる。
「ゆっぐりそごにいでねーーー!!!」
 れみりゃが、追いかけているのはゆっくり霊夢。
「う~~~♪」
「だどぉ~~♪」
 数匹の家族と一緒に行っているこれは狩りではない。
 それは、最近れみりゃが考え出した遊びだった。
「う~~~♪ ……とっだどぉ~~~~♪」
「ゆ!! がえじでーー!! れーむのぼーーーじーーー!!!!」
「うっう~~~♪ つかまえたどぉ~~~♪」
「ゆーーー!! がえじでーーーー!! がえじでーーー!!!」
 その遊びは、ゆっくりの髪飾りを剥ぎ取ると言うのもだった。
 以前偶然に髪飾りを取った所、突然泣き叫び出した。
 その様が琴線に触れたれみりゃは、時々紅魔館からやってきて遊んでいるのだ。
「う~~♪ おなかがすいだからかえるどぉ~~~♪」
「「う~~~♪ かえる~~~♪」」
 このゆっくりの姿を見るのにも飽きた一家は、おやつを求めて紅魔館に舞い戻った。
「ゆーーー!! がえじでーーー!!! れいむにおぼーじかえじでーーーー!!!」
 泣き叫ぶゆっくり霊夢を残して。
「う~~♪ ? ぽいするの!! ぽいっ!!!」
 その髪飾りは、途中で捨てられた。

 ――

「う~~♪ おか~しゃんたちがかえってきたどぉ~~~♪」
「う~~♪ まぁまぁ~~おかえりなしゃ~~い♪」
 屋敷に戻った一家を出迎えたのは、赤ちゃんれみりゃだった。
 これらも全て親れみりゃの子ども。
 以前、森に遊びに行った時に集団アリスに襲われ、今の姉れみりゃ達を生んだ。
 その後、またまた森へ入ったときに集団アリスに襲われ、今の赤ちゃんれみりゃを産んだのだ。
「う~~~♪ みんなでぷっでぃ~~んをたべるどぉ~~~♪」
「「「うっう~~~♪」」」
 普通のれみりゃよりも遥かに多い家族。
 その長でもある親れみりゃが、仲間が大勢居るであろう庭の一角まで足を運ぶ。
 ここには自分達の仲間が沢山居る。
 そのどれもが、丸々としている。
 無理もない、唯一といっても良いゆっくりフランはここにはやってこない上に、おやつや食事と称して美味しいプリンが振舞われる。
 まさにれみりゃ達にとっては夢の楽園。
「う~~~♪ ぷっでぃ~~んもらうんだど~~~♪」
「れみ☆りゃ☆う~~♪」
 一家がそこに着くと、既に多くのれみりゃが集まっていた。
 予定ではそろそろプリンが出される頃合だからだ。
「ちょっと。貴方達?」
 予想通り、そこに一人の女性がやってきた。
「「「「う~~~♪ ぷっでぃ~~ん♪ ぷっでぃ~~んはどこだどぉ~~~♪」」」」
「無いわ」
 一切の間を置かず、瞬時に言い放つ。
 れみりゃ達の頭では、理解するのに少し時間がかかった様で、数刻気味の悪い間が流れた。
「「「うーーーー!!! ぷっでぃーーんくれないどーーさぐやにいいつげてやるどーーー!!!」」」
「お前等にやるプリンはもう無いのよ」
 れみりゃと同じような格好をした少女が、更に言葉を続ける。
 その目は、明らかに目の前のれみりゃ達に憎しみ以上の何かを見つけていた。
「うーーー!!! こうまがんのあるじのれみりゃがいってるんだどぉーーー!!!」
「はやぐよこすんだどぉーーー!!!」
「おまえなんがやっつげじゃうどーーー!!!」
「……煩い蛆虫ね」
「「「う?」」」
 飛び掛ってきたその三匹に、弾幕を放つ。
 狂い無く命中した弾幕は、れみりゃの首から下を全て吹き飛ばした。
「ああああ!!! れみりゃのきゅーどなからだがーーー!!!!」
「どうじでだどぉーーーー!!!」
「さぐやーーー!!! ざぐやだずけるんだどぉーーーー!!!!」
「少しは黙ってなさい」
「ぴゅぎゃ!!!」
 一匹のれみりゃの頭を踏みつけ、此方に注目している全てのれみりゃに言葉を発する少女。
「良いこと? これから冬になるの。だから庭は雪に埋まる。私は絶対にお前達を屋敷の中には入れたくない。だから、金輪際ここに立ち入る事は許さない。……つまり、二度と屋敷の敷地に入るなって言う事よ」
 ゆっくりには難しすぎたか。
 一度考え直し、もう少し簡単に・端的に言い直した。
「うーーー!! ごごはれみりゃのおやしぎだどーーー!!!」
「かっでにおいだすなんでゆるざないどーーー!!!!」
「うーーー!! ……ぎゃ!!!」
「うー? ぷじゃ!!!」
「……」
 黙って半数のれみりゃを粉砕し終えた少女は、残ったれみりゃ達にもう一度だけ呟いた。
「出て行かなかったら、今度は全員殺すわ」
「はいーーー!!ででいぎまずーーー!!!!」
「みんなでででいぎまずーーー!!!!」
 一番最初に言葉をあげたのはあの家族だった。
 殺されないために、その道を選んだ。
 それだけの事だったのだが、その態度に少女は少し表情を和らげた。
「そう。貴方達は聞き分けが良いわね。慈悲深い私が、冬の間の食料と巣をプレゼントしてあげるわ」
 そういい残し、呼び出した自分の従者に後を任せ森の奥へと進んでいく。
「うーー!! ざぐやーーー!! あいづたおじでーー!!」
「れみりゃだじのおやしぎなのにーーー!!!!」
 目を真っ赤にした従者に擦り寄って行ったのは、家族以外のれみりゃ達だった。

 ――

「ふん。ここなんか丁度良いわね」
「入るわよ!!!」
「ゆ? おねーさんだれ? ここはまりさたちのおうちだよ」
「みちにまよったの? だったらゆっくりしていくといいよ!!!」
「にんげんがたべれるたべものも、たくさんあるよ!!」
 中に居たのは、一匹の大きな魔理沙と小さなゆっくりが沢山。
 それも、キチンとしているゆっくり達だった。
「そんなにゆっくりする気はないわ。ここは私が貰う事に決めたの。だから貴方達は出て行きなさい」
「ゆ!! なにいってるの!! でてきけないよ!! これからふゆになるんだよ!!!」
 今出て行けばみんな死んでしまう。
 当然の主張をするゆっくり魔理沙だが、今の少女は聞く耳を持っていない。
「そう……出て行く気は無いの?」
「とうぜんだよ!! いくらにんげんだって、まりさたちはここをまもるためにたたかうよ!!」
「そうだよ!!! このなかではれいむたちのほうがつよいよ!!!」
 一匹の帽子の無い霊夢が、魔理沙の考えに同調する。
 それに喚起され、巣の内部の全てのゆっくり達が戦う意思を明らかにした。
「そう。仕方が無いわね」
「ゆ? ゆゆゆ?」
 一匹の霊夢を捕まえ。
「ゆーーーー!!!! いだいーーー!! ゆっぐりじだいーーー!!!」
 威力を絞った不夜城レッドで焼き払った。
「「「ゆゆ!!!」」」
 巣の内部に同様が広がる。
「ゆ~~!!」
 特に、この魔理沙は後悔した。
 人間ではなく妖怪だったのだ。
 このままでは確実に巣は全滅する。
「でも、安心なさい」
「「「「????」」」」
 既に、巣の中の全てのゆっくりは、目の前の少女の声に聞き入っている。
「さっきのは、威力を絞ったの。今度は、皆纏めて一瞬で消し去ってあげる」
「「「「っ!!!!」」」」
 声をあげる間もなく巣内のゆっくりは一掃された。
「いけない。食べ物まで燃やしてしまったわ。……まぁいいか。あいつ等こんな物食べそうにないし」

――

「ほら、冬の間はここで過ごすのよ!!」
「うーーー!! ありがどーーーござまずーーー!!!」
「ありがどーーー!!!!」
 新しい巣に案内されて尚、未だ泣き叫んでいる一家。
 無理も無い、少女が帰ってみると、一家以外のれみりゃは全てナイフでズタズタにされ、片目をくり貫かれ、歯を削り落とされていたのだから。
「ごめんなざいいーーー!! ごごはあなだのおうじでずーーーー!!!!」
 少女に向かって叫んだその一言が終わった瞬間、そのれみりゃ達の命も終わった。
 目の前で、その光景をずっと見ていた一家は随分こたえたのだろう。
 現に、少女に対する口調も、かなり丁寧なものになっている。
「ほら。これが食料よ。これだけ有れば冬の間は足りるでしょ?」
 小悪魔に頼んで、用意させたゆっくり総勢百匹を巣の中に纏める。
「もっと用意できますが?」
 嬉々として語る小悪魔に礼を言い、逃げるようにしてその場を離れた少女は、もう二度と小悪魔には頼らないと誓ったそうだ。
「はいーーー!! だりまずーーー!! ありがどーーござまずーーー!!」
「そう。私はこれで帰るけど、もし雪が解けたらお屋敷に来てもいいわよ? プリンくらいなら上げるわ」
「はいーーー!!! はいーーー!!!」
 それじゃあね。
 入り口に板をはめ、少女は冷えてきた空に飛び去っていった。
「うーーー!! みんなでふゆおごすどーー!!!」
「「「「うーーー!!!!」」」」
 緊張の糸が解けたのか、何時もの口調には戻ったれみりゃ達が、やや強張った口調で来るべき冬への抱負を語った。
「ゆっぐり!!」
「ゆっぐりゆるしてね!!」
「まりさたちのおうちにかえしてね!!!」
「とかいはのありすは、こんなおおべやでなんてふゆをこせないわ!!!!」
 声をあげたのは、食料のゆっくり達。
「う?」
 当然、何も食べていなかった一家の食欲を呼び起こさせるのには十分だった。
「うっう~~♪ た~べちゃ~うぞ~~♪」
 近くに居たゆっくりに、親れみりゃが一番最初に飛びついた。
「ゆーーーー!!! いだいーー!! はなじでーーーー!!!!」
「う~~♪ うまうま~~~♪」
「「「「う~~~~~♪」」」」
 それを合図に子供達も飛び掛る。
「ゆーーー!! まりざをはなじでねーーーーー!!!」
「むぎゅーーーーーー!!!!」
「ゆっゆ!! とかいはのありすははやくかえるの!!! ゆぐーーーーー!!!」
「う~~~~♪ !! う~~~~♪ ひどりいっこまでだどぉ~~~♪ ゆきがなくなるまでもたせるんだどぉ~~~♪」
「「「「う~~~~♪」」」」
 一匹でもここに居るゆっくりは皆大きい、一匹食べればお腹も膨れるだろう。
 小悪魔が集めてきたのはこういう優しい理由が有るのかもしれない。
「ゆーーー!! こどもだじがいるおーじにがえらぜでーーー!!!! ……」
 親れみりゃに食べられていた霊夢が、そういい残して息絶えた。
「まりざもーー!! こどもたじのおーじーーー!!!」
「むぎゅーーーー!!!」
「ふゆのあいだにとかいはのみのごなじをおじえよーどおもってたのにーーー!!!!!」
 次々と死んでいくゆっくりの声を聞くと、どうやらここに集められたゆっくり達は、皆親ゆっくりのようだ。
 確かに、餡子に質も落ちた親ゆっくりでも、れみりゃなら食べるだろう。
 小悪魔が考えた廃材利用の方法らしい。
「けっぷ♪ う~~♪ おなかいっぱいだどぉ~~~♪」
「「「う~~~♪ おにゃかいっぱいだどぉ~~~♪」」」
 食事を終えた一家は既にまどろみモードに入っている。
「う~~♪ みんなでゆ~がにねるど~~~♪」
「「「「う~~~~♪」」」」
 親れみりゃの命で、一箇所に集まりスヤスヤ眠り始める一家。
「がえじでーーー!!!! れいむのあがじゃんがーーーー!!!!」
「まりざのかわいいあがじゃーーーーん!!!」 
 ゆっくり達が騒々しく泣き喚くのも気にせずに、全員がれみりゃスマイルを浮かべて眠りに着いた。

 ――
 それから数日間、れみりゃ達は優雅に過ごしていた。
 泣き叫ぶ声をBGMに楽しく食事を取ったり。
 一家でうーーうーーお喋りしたり。
 れみ☆りゃ☆う~~♪ にぱ~~♪ と踊ってみたり。
 しかし、数日が過ぎると流石にゆっくり達は衰弱し、一家を楽しませた叫び声もあげなくなっていた。
「うーーー!! つまらないどーーーー!!!」
 真っ先に不満を漏らすのは親れみりゃ。
「うーーー!!」
 それが子供にまで伝わった時に、親れみりゃの頭には新しい考えが浮かんでいた。
「う~~~♪ ぼうしをとっちゅうぞ~~~♪」
 そう、以前やっていた楽しい遊びを思い出したのだ。
「う~~~♪ まぁまぁただまいいどぉ~~~♪」
「あがじゃんもみてるんだどぉ~~♪」
 そう言って、親を先頭にお姉さんれみりゃ達がゆっくりの髪飾りを取っていく。
「!!! あああーーーーーー!!!! れいむのかみかざりがーーーー!!!!」
「むっぎゅーーーーー!!! ぱじゅりーのぼうじもっでがないでーーー!!!!!」
 予想通り、先ほどとは打って変わって大声を出し泣き叫ぶゆっくり。
 その様子に、一家全員は狂喜乱舞。
「う~~~♪ れみりゃもやる~~~♪」
「ゆゆ!! ぼうしのないまりさは、とかいはのあr……!!! あああーーー!!! がえじでーーーー!! おねがいーーー!! どがいはにはひっずなのーーー!! なんでもするがらーーーー!!! がえじでーーーーー!!!! いじめられじゃうーーーーー!!!!」
 ついには、赤ちゃんまで混ざり、大髪飾り取り大会が始まった。
「うっう~~~♪ みんなれみりゃのくちのなかにぽいするど~~~♪」
「う~~♪ ぽいっ♪」
「あああーーーー!!! れいむのりぼんがきえじゃっだーーーーー!!!!」
 白熱し大会は、取る相手が衰弱していた事もあり瞬く間に終了した。
「うっう~~~♪ たのしかったど~~~♪」
「う~~~♪」 
 しかし、それだけでは終わらない。
「ゆーーー!! ぼうしのないまりさはさっさとしんでね!!!!!」
「ゆ!! ありすだってへんてこりんなものがないよ!! しんでね!!!」
「むっきゅーーーー!!!! みんあしげぇーーーー!!!!」
 ゆっくりのアイデンティティーの崩壊、それによる副産物が、この巣の中で始まったのだ。
「ゆーーー!!! ……」
「ゆっゆ!! はやくつぶれてね!!!」
「むっじゅーーー!!! じゅーーーー!!!」
「ありすがつぶしてあげるよ!!!!!」
「むっしゃ!! うめーーー!! めっちゃうめーーー!!!」
「ゆゆ!! たべものだね!!!!」
「むっきゅーー!!! ひさしぶりーーーー!!!」
 何日も食事をしていないゆっくり達にとって、既に目の前の捕らえられた親ゆっくりは饅頭でしかない。
 殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ、殺して食べ。
 その数をドンドンと減らしていく。
「うーーーー!!!! どうしてだどぉーーーーー!!!!!」
「やめるんだどぉーーーーーー!!!!!!!」
 当然、れみりゃ達は大混乱だ。
 今まで遊んでいた、大人しい食料達が一斉に暴れ出し共食いを始めたのだ。
 直ぐにでも止めさせなければ、自分達の命も危ない。
「うーーー!! おどなじぐするんじゃどーーーー!!!」
 一匹の赤ちゃんゆっくりが、その中へ飛び込み、大声で訴える。
 しかし、今のゆっくり達は捕食種であっても関係が無い。
「ゆ!! じゃましないでね!! じゃまするゆっくりはゆっくりしんでね!!!」
「!!!! うぎゃーーー!!! まぁまぁーーーー!!!!」
「あああーーー!!!! あがじゃんがーーーー!!!!」
 ゆっくりの波に飲み込まれたかと思うと、ボロボロになって吐き出され、それをゆっくり達に食べられる。
「はぁはぁ!! これめっちゃうめーーー!!!」
「ゆゆ!! りぼんのないれいむはゆっくりしんでね!!!」
「うめ!! ぶ!!!」
 食べていた霊夢が死んだ時、そこには赤ちゃんの帽子が残されているだけだった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! れみりゃのぷりでーーできゅーどなあがじゃんがーーーー!!!!」
「うーーー!! がずがらやめるんだどぉーーーーー!!!!」
「ゆ?」
 今度は、お姉さんれみりゃが一匹の魔理沙に未だ残っていた帽子を被せに近づいていった。
「ゆーー!!! そのぼうしはゆっくりできないよ!!!」
「がえずーーー!!!」
 ポフ
「!!!! あああ!!! やめでーーーー!!!!!」
 その声で、数多くのゆっくりが二匹に視線を飛ばす。
「「「「ゆ!! あのゆっくりはゆっくりできないよ!!!!」」」」
「「「「ぼうしをかぶせたれみりゃもゆっくりできないよ!!!」」」」
 そして待っているのは今までを同じ制裁。
 しかし、今度は多くのゆっくりが同じ目標に攻撃をしているのだ。
 いかに大きな捕食種といっても、結果は先ほどと同じだった。
「うーー!! うーーー!!!」
 もはや、残された家族は離れてその光景を眺めているしかなかった。
「うあーー!! まぁまぁーーーー!!!!」
「だずけでだどーーー!!!」
 逃げ遅れた数匹の子供達が再び波に消えていく。
「うーー!! ざぐやーーー!! だずげてーーーー!!! れみりゃのあがじゃんだじがーー!! たべものがーーー!!!!!」
 唯、泣きながらオロオロするだけの親れみりゃ。
 全てが終わるまで、ずっとそのようにしていた。」
 ……。
 先日から振っている霙が完全に雪に変わったのか、洞窟内には深々と雪が降り続ける音だけが聞こえる。
「……」
 残った家族達は何も話さない。
「………………」
 最後まで残った魔理沙も、全身に食べられた後が無数にあり、もう長くは持たないだろう。
 !!!
 界雷の一発が、その沈黙を打破した。
「うーーー!! れみりゃのごはんがーーー!!!!」
「うーー!! どうするんだどぉーーー!!!!」
「まぁまぁーーーー!!!!!」
 同然としたまま、眠りに着くまで、残された一家はその場で立ち尽くしていた。

 ――

 それから一週間が過ぎた。
 外は既に深い深い雪で覆われ、飛翔能力のあるれみりゃでさえ動けない。
「うーーー……ごはん……たべたいどぉーー」
「ぷっでぃーーん……」
「ざぐやーー……ぷっでぃーーんもっでぎでーー……」
「さむいどーーー……」
「うーー!! どうじでなのーー!!!」
 幾ら泣いても食料は出てこない。
 共食いしようにもそこまで頭は回らない。
「うーー!! うああーーーー!!!」
 襲い来る空腹と寒さのなかで、森の中にある灯台のように、その洞窟からは絶え間なく叫び声がなり続けていた。

 ――
 更に二週間が過ぎた。
「う……さぐ……ありが……だど……」
「みん……で……あそび、いく……ぉー」
「まぁ……まっで……」
「がえっ……ら……ぷっで……たべる……」
「うーー……このひろば……おどるど」
「「「「れみ☆りゃ☆う~~♪ にぱ~~~♪」」」」
 一家は既に幻想の中に旅立っていた。
 おそらく、一週間後には一家でこの世から旅立っているであろう。


 ――
「お嬢様、あのれみりゃ達はどうしていますかね?」
暖かい暖炉の前で、紅茶にブランデーを入れながら、咲夜は自分の主であるレミリア・スカーレットに思い出した事を尋ねてみた。
「さぁ。……でも、足りなくなってもゆっくりアリスにでも子供を生ませれば数は増えるし。何よりアレだけ居たら大丈夫でしょ。」
「そうですか。それでも、子供を生ませて親のほうは大丈夫ですか?」
 紅茶を手渡し、手持ちぶさになったそこにお盆を挟んで、再度尋ねる。
「大丈夫よ。あいつ等はみんな親だったんだから」
 冷えた体に取り込むと、途端に頬が赤く染まった。
「そうでしたか。でも、この時期に良く親をあんなに連れ出せましたね。小悪魔は」
「……その話はもうしないで……」
「……? 分かりました。ですが、お嬢様なら、運命を見れるんじゃないんですか?」
「それは無理よ」
 一度冷えてしまった体を温め直すように、今度はゴクゴクとあおっていく。
「はぁ?」
「あいつ等畜生の運命は見れない。死後も何処に行くのか、畜生道だったかしら?」
「さぁ。そこまでは……」
「とにかく!! なかなか聞き分けの言いやつ等だったから、雪解けでまた現れたら、今度は特大プリンくらいご馳走してあげなさい。できるなら教育をしてもいいわよ」
「はい。そのように」
 紅魔館の一室で、来年のれみりゃの動向を話す二人。


 その一家が畜生道へ行くのか、はたまた違う所に落ちるのか。
 それは、未だ誰も知らない


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最終更新:2011年07月27日 23:37
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