レミリア×ゆっくり系5 レミリアと森のゆっくり_後編その2_2


「あれ? あれってなーに? わたしには、わからないわよー……うふふっ」
 ことさらにおどけた口調で、ふらんは聞き返す。
 判っているけど意地悪をしている、と言う事を知らしめて、レミリアに屈辱を感じさせ
るためだ。
 自分は彼女によって、もっと強い羞恥や屈辱を与えられたのだから、これぐらい逆襲し
ても構わないだろうと考えている。
 嫌だと言って泣いて拒否しても、暴れて断っても、無理矢理やらされる運命から逃れら
れないのなら──少しでも溜飲を下げておきたい。

「くっ……こ、こいつ……」
 ぎりっとレミリアは奥歯を噛みしめた。
 他者に屈辱や羞恥を与え、なぶりものにし、嘲弄したり凌辱するのは大好きだが、され
るのは特別な場合を除き基本的に好まない。
「なに? ねぇ、おねーたまー、わたしになにさせたいのー?」
 くやしい? ほら、どうなのよ?
 調子に乗って、ふらんはさらに態度をふざけたものに変え、あからさまにレミリアをか
らかいはじめる。

「あーっ、もうっ! 言うわよっ! 言えばいいんでしょ! くそっ、このガキぃ!」
 侮辱に対しての堪え性があまりないレミリアは、容易く激高した。
 長々と何度も揶揄され屈辱に歯ぎしりするのを、プライド高い吸血鬼はよしとしない。
「またそうやって、すぐおこる……ほんとに、あんたってがきね……」
 ふらんは呆れ顔で溜め息をついた。

「うるさいっ! ガキにガキなんて言われたくないわよっ! ほらっ、あんたのお望み通
り命令してやるわよ!」
 ぶんぶんと両腕を振り回し、地団駄を踏みながら、レミリアは怒鳴った。
 少し前まで存在していた精神的な余裕は、もはや完全に失われている。

「あー、はいはい……どうぞどうぞ、わたしはさからえませんから、おすきなように」
 投げやりな口調で話しつつ、ふらんは肩をすくめた。
「さぁ、しっかり聞くのよ! こ、こここ……こ、えっと……あ、こ、こいつを……」
 またしても、レミリアは途中で言語不明瞭となり、まごまごしている。
「……もう、いいわよ……じぶんでやるから……」
 だめだこりゃ、と言わんばかりの態度でふらんは首を振った。

「そ、そう? ふ、ふふっ……あ、あんたも好き者ね。いやらしい子ね……ふふっ」
 恥ずかしい命令を口にせず済んだ安堵感で、レミリアは余裕を取り戻す。
 嫌がる相手に強制させた方が楽しいのだが、下僕が命令を聞くまでもなく自分から動く
のは、それはそれで気分が良い。

「……あんたにくらべたら、まけるわよ……」
 レミリアの発言に小声でツッコミを入れてから、腰をかがめ足下のれみりゃを抱き起こ
す。
「うぁ~……な、なになに? も、もう、やだやだ! こわいこわい……ぐしゅっ」
 今度はどんな痛い目に遭わされるのかと思い、れみりゃは身を捩り啜り泣く。

「こわくないわ、だいじょうぶよ……れみりゃ」
 安心させるように微笑みかけ、愛おしげに頭を撫でる。
「うー……なでなで♪ れみぃ、なでなで、すきすき♪」
 精神構造があまり複雑ではなく、知能もそんなに高くないためか、れみりゃは感情の切
り替えが早い。
 敵意が無い、酷い事や痛い事をされないと判ると、途端に泣き顔が笑顔に変わった。

「もうしんぱいしなくていいわよ、わたしがついてるから、ね……」
「うっうー☆ れみぃ、こわいこわいない。ふらんいるから、だいじょぶだいじょぶ♪」
 年齢差と言えるほどの差ではないが、れみりゃの方が数ヶ月だけふらんより長く生きて
いる。
 だが、この場面を傍から見ると、ふらんが姉でれみりゃが妹のように見えるであろう。

「あははっ、わたしも……れみりゃ、すきよ」
 ゆっくりとふらんは顔を近づける。
「う~……れみぃも、ふらんすきすき! うー☆」
 ほんのりと頬を紅く染め、れみりゃは静かに目を閉じた。
 知能も精神も未熟なはずだが、ふらんが何をしようとしているのかは、野生動物として
の本能が察している。

「れみりゃ……んっ……」
「うー☆ んちゅ……ん……」
 四肢と翼を失い、自分よりもかなりコンパクトな姿となっている、れみりゃを胸にぎゅ
っと抱きしめながら、ふらんは己の唇を彼女の唇に重ねた。

「………………んー……」
 腕を組み、無言でじっと見ているレミリアは、小さな呻き声を漏らす。
 なんとなく面白くない──そんな気がしていた。

 そんなレミリアの内心を知る由もなく、ふらんとれみりゃは行為を続ける。
「んっ、むっ……ちゅ……んちゅ」
「……うっ……んんっ……」
 唇を合わせるだけの軽いキスは、舌を絡め合い唾液を啜りあうものに移行していた。

「……あー……なんか……んーむ……」
 どうにも楽しくならない。
 何か物足りないような気がして、レミリアは眉を寄せた。
 相思相愛なラブラブ甘々な行為を、ぼーっと傍から見るのは、とても強い疎外感を感じ
る。
 ふらんとれみりゃの顔が、もっと自分と妹に似ていれば、重ね合わせて浸る事も出来る
のだが、丸々と下膨れな滑稽フェイスでは難しい。

「んっ、ふ……あっ、れみりゃ……」
 食欲をそそる旨みのある、れみりゃの口内を堪能し、ふらんは唇を離す。
 油分と糖分が混ざり合った唾液の糸が、お互いの口元からのびる。
「うー……ふらん……れみぃ、ちゅっちゅちゅっちゅ、すきすき♪」
 もっとずっとキスを続けていたいと、れみりゃはせがんだ。
 言葉は無邪気だが、表情にはかすかな羞じらいの色が浮かび、目は情欲に輝いている。

「んー……中止! 中止よ! はいはい、そこまで!」
 ぱんぱんと手を叩きながら、つかつかとレミリアは二匹に向かって歩む。
「えっ?」
「うっ?」
 突然の制止に、ふらんとれみりゃは呆気にとられた顔で、彼女を注視する。
 良い雰囲気を邪魔された不満よりも、何故だと言う疑問の方が大きい。

「なってないのよ、あんたたちは! そんな甘い、ままごとみたいなのはダメよ!」
 イメージと違う演技をした役者に対する監督のように、レミリアは断言した。
「……って、いわれても……」
 ふらんは視線をれみりゃに戻し、困惑した顔で呟く。
「うー……」
 レミリアとふらんを交互に見ながら、れみりゃは落ち着かない様子で首をすくめた。
 辛い事や苦しい事はなるべく早く忘れられる幸福な性質のため、レミリアが近くに居て
も、そんなに激しく怯えたりはしていない。

「さっき、私があんたに……し、したみたいにっ、も、ももっと激しく、し、ししなさい
って言ってんのよっ!」
 直接的な単語を用いなくても、その行為について話す事に恥ずかしさを覚えるため、つ
っかえながら赤面し、レミリアは注文を出した。

 吸血鬼の主から下僕に下される命令は、主が「命令を下している」と意識しながらでな
ければ、効果を発揮しない。
 どんな言葉にでも反応されたら困るため、そのようなシステムとなっている。
 そのため、レミリアが「命令」だと意識せず言った内容は、身体を勝手に動かす強制力
を伴わない単なる注文に過ぎない。

「そっ、そそそんなの……で、できるわけないでしょっ! なにいってんのよ!」
 自分が先刻された内容を思い出し、ふらんもまた頬を紅く染めつつ、強い調子で拒絶の
言葉を口にした。
 性格や性的嗜好には、ゆっくりふらんだった頃の個性が強く影響している。
 知能と戦闘能力は卓越しているが、ふらん種は生殖行為を淫蕩に愉しむと言う意識が薄
い。
 そのため、あのような快楽重視のプレイを、自発的に行いたいとは思わないのである。

「な、なによっ! あんたが自分でするって言ったんじゃない! わ、私に、命令しろっ
て言うの? そ、そそそんな、は……恥ずかしいこと、を……」
 紅潮した頬をさらに真っ赤に染め、声のトーンを幾分落とし、レミリアは羞じらう。
「やらせたいんなら、めいれいしなさいよっ! じぶんからなんて、ぜったいいやよ!」
 対するふらんは一層強い口調で言った。

「う~……おねーさんおねーさん、ふらんふらん、けんかだめだめ……う~……」
 あまり事態を把握していないれみりゃは、口げんかを止めて欲しいと仲裁する。
 酷い事はされたが、このお姉さんはきれいで可愛い人だから、怒っていなければきっと
一緒に遊んでくれる。
 こっちのふらんは、どうやら自分が好きみたいだから、一緒に居るとゆっくり出来る。
 そのようにれみりゃは考えているため、とにかく争うのは止めて欲しいと、切実に思っ
ていた。

 ゆっくりを生きたまま食らう高い戦闘能力を持った捕食種であるが、ゆっくりれみりゃ
と言う種は、争い事を好まない。
 食欲を満たす狩りをする時と外敵に襲われた際など、必要に迫られた場合以外は、戦う
より「ゆっくり」する事を好む。
 このれみりゃのように、個体によっては「弾幕ごっこ」の存在を知り、無意味に他者を
攻撃する事もあるが、本人は戦闘ではなく遊びのつもりである。
 ごっことつくから遊びだろう、と言う短絡的な思考によっての行動で、戦う意志があっ
ての挙動ではない。
 もっとも、弾幕ごっこと言う単語を知っていても、ルールは全く知らないと言うよりも、
理解できないのだが。

 そんなれみりゃの制止を聞き流し、
「わ、わかったわよ! 命令するわよっ! すればいいんでしょ! こ、こここいつを、
れ、れい……れ、れれレイプ、しっ、しなさいっ!」
 腹を固め、ありったけの勇気を総動員したレミリアは、頑張って言いづらい命令を言葉
にした。

「くっ……ごめん、れみりゃ……」
 言うように仕向けたのは自分だが、命令を下されたからには逆らえない。
 忌々しげに唇を噛み、小声でれみりゃに詫びながら、ふらんは彼女の服を引き剥がしに
かかる。

「うー!? ふらん? な、なになに? れみぃおよーふく、ぬぎぬぎ?」
 ついさっき優しく抱きしめ、接吻をしてくれた相手が、いきなり荒々しい手つきで自分
の服を脱がし始めたため、れみりゃは怯えるより先に戸惑った。

「あ……あははっ、そ、そうよ! これよ、これ……こうじゃなくっちゃね」
 苦渋の表情を浮かべ、れみりゃを全裸に剥いて行くふらんを見て、満足げにレミリアは
頷く。
 意に添わない性行為を強制され、苦悶する姿を眺めるのは心地良い。
 それが自分の命令によって繰り広げられるのだから、とても支配欲が満たされる。

「ほ、ほんとうは……もっと、や、やさしく……したいんだけど……」
 帽子以外の着衣を全て脱がされ、遮る物無き幼児体型を露わにしたれみりゃを、ふらん
は地面の上に寝かせ、その上に腕立て伏せをするような姿勢で覆い被さった。

「うー? れみぃ、いいよいいよ……ふらん、すきすき……ちゅっ☆」
 四肢が無いため背中と首の力だけで上体を起こし、れみりゃはふらんの唇に軽く己の唇
を合わせる。
 詳しい事までは判らないが、少し激しい無理矢理な感じの生殖行為を、ふらんが自分に
対して行おうとしているのは判った。
 だから、別にそれでも構わないと言う意思表示を、れみりゃは行ったのである。

「ああっ、れみりゃ……んっ……!」
 れみりゃの首筋に左手を回し、ふらんは彼女の口を吸いながら、右手を自らの股間にの
ばす。
 人間の女児と同じような形状で慎ましく存在する割れ目に、中指を沿わせ擦り始めた。

「……ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど……」
 レミリアは二匹の横に腰を下ろし、ふらんに向かって話しかける。
「んぷっ、はぁっ……な、なによ?」
 もっと長くキスを続けていたいが、血の呪縛により、身体は主の質問に答えるのを優先
させた。
 不機嫌そうな目で、ふらんはレミリアを睨む。

「いや、その……ど、どうやって、するのかなぁ~って思ったのよ」
 恒例の如くに、やはり羞じらいながら、レミリアは訊く。
「どうやって、って……あ、あんたが……わ、わたしに、した、みたいに……よ」
 こちらも、やはり恥ずかしそうに、ふらんは答える。
「う~☆ れみぃ、ちゅっちゅちゅっちゅ、すきすき! ふらん、もっともっと」
 さらなる接吻を求め、れみりゃはふらんの顎や頬を、ぺろぺろと舐めた。

「い、いや、その……そうじゃなくて、あんた……そ、その、あ……あ、アレついて、な、
ないし……き、気になった、のよ」
 男性器を指す名称を、ストレートに言うのをレミリアはあくまで避ける。
「あ、あれ……あ、ああ……ぺ、ぺぺ、ぺにぺに……ね」
 その器官を人間や妖怪たちがどう呼ぶか知っているものの、ふらんは口に出すのをはば
かり、ゆっくりが用いる呼称を使った。

「ぷぷっ! ぺっ、ぺにぺにですって? ちょっと、笑わせないでよ……あははっ」
 大変に間抜けな響きを持つ単語を耳にして、レミリアは吹き出す。
「あ、あんたがきいてきたんでしょ! わたしは……ゆっくりたちは、そうよぶのよ!」
 今ではふらんも、確かに笑いたくなるような呼称だと思うが、実際に笑われるのは馬鹿
にされているようで腹が立つ。

「うー☆ ぺにぺに! れみぃ、ぺにぺにちゅっちゅちゅっちゅもすきすき♪」
 好きな言葉が出たので、無邪気にれみりゃは喜んだ。
 嬉しそうに喋っている内容を冷静に考えると、非常に淫らなのだが、ふらんとレミリア
はスルーして互いの会話を続ける。

「ま、まぁそれはそれとして……くくっ、そ、その、ぺにぺに? ついてないのに、どう
やってするのか気になったのよ」
 ゆっくりが使う呼称ならば、あまり羞恥を感じないため、意外とすんなり口から出た。
「え?」
 人は自分にとっては当たり前な、常識に類する質問をされると、答えるより先に絶句す
る事が良くある。

 思わず、まじまじとレミリアの顔をふらんは見つめた。
「な、なによ……わ、私そんな変な事きいた?」
 怒るでも罵倒するでもない、頭大丈夫ですか的な視線を受けて、レミリアは反発よりも
不安を感じる。

「あ、うん……よくわかんないんだけど、あんたも……その、はやしてたじゃない?」
「え? そ、そうね……でも、あ、あれは私が普通の人間じゃなくて、吸血鬼だから……
って、ゆっくりも生やせるの?」
 まるで生やせるのが当たり前のように言われた事に気付き、レミリアは驚き聞き返す。

「ああ、そういうことだっったのね……だって、ゆっくりは、あんたたちのことばでいう
なら、しゆうどうたいだから」
 ふらんも認識の違いを悟り、判りやすく一言で説明した。
「へー……そうだったの、なるほど。便利な生き物なのね、あんたたちって……あ、もう
良いから続けなさい」
 とりあえずの疑問が解けたので、先の命令行動に戻れと命令を下す。

「ほんとにかってね、あんたって……んっ」
「うー♪ ふらん、ちゅっちゅちゅっちゅ……んむっ……んっ」
 ふらんは命令通り質問される前の行動に戻り、再びれみりゃに口付けをした。
 舌を絡め合い、甘い唾液と油っこい唾液を交換しながら、ふらんは自らの股間を擦る指
の速度を徐々に速めて行く。

「んちゅ……むっ、んーっ……んんっ……」
「んーっ、じゅっ……くちゅっ……んっ……」
 唇の端から唾液が溢れ顎や頬を汚すのも構わず、ふらんとれみりゃは情熱的な深いキス
を続ける。
 どちらの唾液も糖分や油分を多く含むため、人間や妖怪のそれよりも粘度があり、やや
重く聞こえる湿った水音が絶え間なく響く。

「………………」
 ふらんたちのすぐ脇に、膝を抱えて座っているレミリアは、合わさりあってもぞもぞと
蠢く唇を、じっと見ていた。
 二匹の口元や滴り落ちた唾液から漂う、ほのかな甘く油くさい香りは、性欲よりも食欲
に訴えかけて来る。

 やがて、ふらんの局部──正確に述べるならば、割れ目の上部に位置する小さな突起が、
大きく長く膨張し始めた。
 人の身体で言うならば陰核に当たる部位は、だいたい直径八分ほど長さおよそ四寸ぐら
いに膨張し、まるで勃起陰茎のような形へと成長している。
 そう、これが四肢を備えたゆっくりの男根に該当する生殖器官──すなわち、ぺにぺに
であった。

 四肢を持たない、いわゆる生首生命体である通常のゆっくりは、顎のあたりからその器
官を生やす。
 普段は薄皮の下に隠れ、外からは見えなくなっている産道を子宮とともに、内部から外
部へ向け反転して突出させる事で、ぺにぺにと言う器官を作り出す。
 通常のゆっくりは出産に使う部位と、他者への"種付け"に使う器官が同一と言う、生物
的に考えると極めて異質な雌雄同体となっている。

 それに対し四肢を備えた種は、人体で言うところの陰核を膨張させ、男根を作り出す。
 陰核に該当する部位は、外観は人間と全く同じだが、筒状になった皮肌を小さく圧縮し
た突起である。
 性的興奮状態にある時「生やそう」と思いながら、その感覚が鋭く敏感な器官に意識を
集中すると、筒状の皮肌内部に体内から中身が集まって膨張し、勃起陰茎そっくりな形に
なる。
 外は皮肌で内部は中身が詰まっているため、硬さ的には本物の勃起したペニスと、ほぼ
同じぐらいであり、もちろん射精──精子相当の中身を噴出する機能も備えている。
 イメージ的には人間でも希に誕生する半陰陽が、両性の生殖能力を保持していると考え
れば判りやすい。

「ぷはっ……んっ、れみりゃ……あっ」
 長く深いキスを終えて唇を離し、ふらんは自らの股間に生やした、人間の勃起男根に良
く似た器官を握りしめる。
「うー……ふらん、いいよいいよ……れみぃ、まむまむだいじょぶだいじょぶ♪」
 陶然とした顔で、もう受け入れ準備が整っている事を、れみりゃは伝えた。
 事実れみりゃの女性器相当なスリットは、性的興奮によって内部から染み出した液体で、
もう充分に濡れている。

「ぶふっ! ま、まむまむ……す、すごいネーミングセンスね……ゆっくり、って……」
 傍で見ているレミリアは、れみりゃの発した言葉に衝撃を受けていた。
 先の「ぺにぺに」に続いて、今度は「まむまむ」である。
 かなり独特な呼称で生殖器官を表現する生き物だと、自分のネーミングセンスを棚に上
げてレミリアは思った。

「……ん? まむまむ……え、まさか!?」
 その単語が、どの部位を指しているのかに気付き、レミリアは表情を変える。
「んっ、れみりゃ……あぁっ……」
 立派に屹立した男根的器官を、ふらんはれみりゃの膣的器官の入り口に宛てがう。

 そして、そのまま一息に貫こうとした刹那──
「や、やめなさいっ! あんた、なにやってんのよ! だめよ! だめだめっ! 中止!」
「え!? きゃぁっ!」
 横からレミリアに突き飛ばされた。

「い、いたたた……な、なにすんのよ……!」
「うー! ふらんふらん! お、おねーさん、ひどいひどい!」
 突き飛ばされ地面に転がり全身を強かに打ち付けたふらんと、挿入を待ち望んでいたれ
みりゃが、口々に抗議の声を上げる。

「あんたたち、何考えてんのよ! そっちでしちゃだめよ! こ、こども……出来ちゃっ
たらどうすんのよ!」
 ぷんすかとレミリアは怒り、二匹を叱った。
「……え?」
「……うー?」
 ふらんとれみりゃには、彼女の言っている意味が良く判らない。

「もうっ、これだから野生動物は困るのよっ! そっちじゃなくて、あ、アナ……お、お
尻でするのが普通でしょっ! 結婚前なんだからっ!」

「えぇっ?」
「ううっー?」
 肛門性交が普通であると言い切られてしまい、二匹は呆気にとられた。
「わからないの? いい? そっちは大切にしなきゃだめなのよ! 遊びでしちゃいけな
いのよ! わかった?」
 びしっと指を立て、レミリアは強く注意する。

 レミリアの中の常識では、女性器に何かを挿入する事はタブーであった。
 純潔は特別な意味がある大切なものであり、快楽のためだけに散らしてはならない。
 仮にバージンではなくとも、そこは子孫繁栄を目指すとき以外は、なるべく用いないよ
うにすべきだと考えている。

 性的な嗜好がアナル方面に強く偏っているから、と言う事情もあるが、それ以上に自分
が生まれた当時の、敬虔なカソリックが持っていた価値観に影響を受けていた。
 また、吸血鬼が好む血は童貞と処女の血である。
 神の摂理に反し、それへの反抗を常とする存在であるがため、やたらと聖性とか純潔へ
の拘りが吸血鬼は強い。

 そのため、生まれてからずっと──レミリアのそこは不可侵の地であった。

「……わ、わかったわ……」
「うー……れみぃもわかったわかった」
 強い気迫に押され、本当は良く判っていないが、とりあえず判ったと頷く。
「そう、それならいいわ……もうっ、気分が壊れちゃったから帰るわよ! あんたたち支
度しなさい!」
 もう夜明けがかなり近付いている以上、いちいち命令しながらやらせていたら、帰ろう
にも帰れなくなるとレミリアは判断した。

「あ、うん……し、したくって?」
 むしろこちらの方が気分を壊されたのだが、それに対して文句は言わず、ふらんは帰宅
に同意しつつ指示を仰ぐ。
「うー、れみぃ……はね、おてて、あんよ、ないない……れみぃ、おうち……かえれない
かえれない」
 帰ると言われても、動けないから帰れないと、悲しそうな声でれみりゃは訴える。

「素っ裸で連れて帰れないから、服着なさいって言ってんのよ! あんたはこれ着て、こ
いつには私が着せるから」
 れみりゃが身につけていた下着──シミーズとドロワーズを、レミリアはふらんに渡し
た。

「う、うん……」
 そう言えば、ずっと裸のままだったなと思いながら、渡された下着を身につける。
 ふと、自分が着ていた服を着た方が早いのではと思ったが、血を飲む前の戦闘で所々汚
れて破けていたから、まだ下着だけの方が見栄えが良いかと思い直す。

「ほら、下着つけなくても、スカートで包めば見えないから……」
 そう言いながら、れみりゃを抱きかかえ服を着せた。
「うー……おねーさん、ありがとありがと……」
 ダルマにされたのも脱がされたのも、全てレミリアが元凶なのだが、服を着せてくれた
事に対して、素直に礼を述べる。

「ふふっ、こうして見ると、やっぱり可愛いわね……ああ、今日からあんたも私のペット
よ」
 最初に見たときは滑稽すぎる容姿に衝撃を受け、ひどい侮辱を受けたような気分になり、
思わず泣き出してしまったが、見慣れれば普通に可愛いと思えてきた。
 似ていると認めてしまうのは腹立たしいが、漫画的な似顔絵としてならば、美しくはな
いが醜くもないので許せる範囲だろうと考えている。

「うー? れみぃ、ぺっと? しらないしらない」
 正確には、かつては知っていた言葉なのだが、強くなるのと引き替えに失われた語彙で
ある。
 人間の六歳児の理解語彙量は平均六千語ほどだと言われているが、このれみりゃはせい
ぜい三千語ぐらいしか無い。

「私の家、紅魔館に連れて帰って、一緒に暮らさせてあげるのよ……わかった? 嬉しい
でしょ?」
「うっうー☆ こーまかんこーまかん♪ れみぃ、うれしいうれしい☆」
 れみりゃは紅魔館と言う名称に強い反応を示す。
 喜色を満面に浮かべて、肩から数センチしか存在していない腕の残骸をひょこひょこと
動かし、嬉しさを可能な限りの手段で表現してみせた。

「あはっ、そんなに喜ぶなんて……ふふっ、可愛いわね」
 喜ぶ姿に好感を覚え、レミリアは優しく抱きしめ頭を撫でる。
 刃向かったり、気に触る余計な事をしなければ、すごく無邪気で可愛いと思った。
「うー! れみぃ、かわいいかわいい? おねーさん、すきすき♪」
 れみりゃは今が良ければ、未来も過去も良いものだと考えられる、幸せな思考回路を持
っている。
 そのため、自分の頬を叩き、両翼を引き千切り、両腕と両脚を潰し切った相手に対して
も、わだかまり無く純粋な好意を抱く事が可能であった。

「あら、私のこと好きなの? あはっ、本当に可愛い子ね……ほーら、高い高い♪」
 レミリアもまた刹那的な性格の持ち主であるため、好きだと言われると良い気分になる。
 上機嫌になったついでに、もっと喜ばせようと、赤子にするような事を試してみた。
「うっうー☆ きゃっきゃっ♪」
 構って貰えるのが嬉しくて、れみりゃは楽しそうに声を上げて笑う。
 現在は失われているが、本来は翼を持ち、一応自由に大空を飛べるにも関わらず、幼子
のように喜んでいる。

「……ねぇ、かえるんじゃなかったの?」
 じとっとした目で見つめながら、ふらんはレミリアに話しかけた。
 自分が蚊帳の外に置かれ、忘れられているような気がして、なんとなく気分が悪い。
「ん? ああ、そうだったわね……あんたは自力で飛べるわよね?」
「ええ、あんたのちのおかげさまで、つばさはさいせいいたしましたですから!」
 これって嫉妬なんだろうなと思いつつ、ふらんは不機嫌な声で皮肉を込めて答えた。

「なによ、この子と私が仲良くなったからって、あんた妬いてんの? ふふっ、なんだか
んだで可愛いとこあるじゃない」
「べっ、べつに……そ、それよりかえるんでしょ? わたし、ばしょしらないからさきい
ってよ!」
 気持ちを見透かされたのが癪だ。
 それ以上に、可愛いと言われて少し嬉しくなったのが、もっと腹立たしかったので、わ
ざと突っかかるように言ってみせる。

「あはっ、顔が赤くなってるわよ……もうっ、ふらんちゃんったら素直じゃないわね」
「ふっ、ふふふらんちゃん!? な、なななんで……そ、そんなふうによぶのよっ!」
 妹と同一視されていた時は「フラン」と呼ばれたが、それ以外はずっと「あんた」とか
「おまえ」と言われていたのに、いきなり名前で呼ばれ戸惑った。

「これからずっと、あんたって呼ぶのもどうかと思ったからよ。それとも、何か別の名前
があるの?」
 くすくすと楽しそうに笑いながら、レミリアは聞く。
 いっぱいいっぱいな精神状態にならない限り、ふらんに対してレミリアは、あらゆる面
で常に優位である。
「うっ……ふ、ふらんでいいわよ……れ、れみりあ」
 むうっと呻り一層顔を赤らめながら、ふらんは答え、自身もレミリアを名前で呼ぶ。

「あら、違うわよ『ふらんちゃん』が、あんたの名前。館のメイドたちには、ふらんちゃ
ん様ってあんたのこと呼ばせるから」
「なっ! なによそれ! そ、そんな、ばかみたいのわたしいやよっ!」
 一瞬でも、こいつ実は良い奴かもと思いかけた自分が、一番馬鹿だとふらんは後悔した。

「だって、ふらんだけだとフランと紛らわしいじゃない? それとも、ふらん二号だとか、
准ふらんとか、ふらん代理補佐心得って呼ばれたいの?」
「そんななまえいやよ……ふらんちゃん、でいいわよ、もう……」
 げんなりとした顔で、ふらんは渋々「ちゃん」付けを正式呼称と承認する。
 レミリアが自分の技に対して、独特なセンスの名前をつけている事を、得た記憶から知
っているため、だめ出しをすればするほど絶望的な名称になると判断したのである。

「うー! おねーさん、れみぃも、なまえなまえ♪」
 ふらんが名前を与えられたので、自分にもつけて欲しいと、れみりゃはせがむ。
「そうね、あなたにも必要よね……うん、れみぃって呼んであげるわ」
 自分の愛称を、レミリアは気前良く与える。
 どうせ、その愛称で呼ぶのは図書館の友人ぐらいしか居ないのだし、れみりゃよりも紛
らわしくないと考えた結果であった。

 無論、メイドたちには「れみぃ様」と呼ばせる気で居る。
 主のペットは、すなわち主の所有物なのだから、それを通して主への敬意を示すのは基
本であろう。
 それに、れみりゃをみんなが「れみぃ」と呼んでいては、事情を詳しく知らない来客が
「ここの主は使用人に愛称で呼ばれるほど落ちぶれたのか」などと、レミリアの権威を疑
う想像をするかも知れない。

「うっうー♪ れみぃれみぃ☆ れみぃはれみぃ! うー♪」
 元から自らを指す一人称として使っていたのだが、他者から認められたのが嬉しく、れ
みりゃは「れみぃ」を連呼して喜ぶ。
「よかったわね、れみぃ……ふふっ」
 自分に比べて何か微妙に良い待遇と言うか、まともな名前を与えられたれみりゃを羨む
気持ちよりも、喜んでいる姿が見られたのが嬉しくて、ふらんは和んだ。

「……まぁ、良いわ。それじゃ、帰るわよ……急がないと日が昇るわ」
 ふらんに「れみぃと呼ぶな! れみぃ様と呼びなさい!」と注意しようかと思ったが、
その程度は大目に見ようとレミリアは考えた。

「はいはい、わかったわよ……ちょっと、そんなはやくとばないでよっ!」
 言うだけ言ってさっさと飛び上がり、自分の全速力よりも速いスピードで去って行くレ
ミリアに向かって大声で呼びかける。
 ゆっくりふらんの飛行速度は、空を飛べるゆっくりの中ではかなり速い方だ。
 その上さらに、このふらんはレミリアの血で飛行能力が増強されているが、それでも吸
血鬼の速さには全く及ばない。

「なによ? だらしないわね……もっと気合い入れなさいよ!」
 普段の巡航速度よりもやや速い程度で、レミリアとしてはそんなにスピードは出してい
ないつもりだったが、ふらんの姿はかなり遠かった。
 叱咤しながらも、置いて行くわけにもゆかないので、思い切り速度を落とす。
「うっうー☆ はやいはやい! おねーさん、すごいすごい!」
 人間がジョギングするぐらいの速さだが、それでもれみりゃにとっては速い。

「き、きあいいれろたって……むちゃ、いわないでよ……」
 ふらんは全速力を出したため、ほどなく追いつけた。
「あんた……ふらんちゃんが、どんだけの速さで飛べるか知らないんだから、仕方ないで
しょ」
 自らが定めた呼称だが、まだレミリアも呼び慣れていない。

「あー……これぐらいが、いいかんじのはやさよ……」
 だいたい普通の人間がダッシュする程度の速さに、ふらんは速度を上げた。
「遅っ! もう、仕方ないわね……ふらんちゃん、私の足に掴まりなさい」
 日が昇る前に帰り着けないと、レミリアは困る。
 日光を浴びると吸血鬼は気化してしまう。

 たちまち気化する、と言うわけではなく、じわじわと力を奪われながら気化して行く。
 絶体絶命のピンチではなく、速やかに日陰に避難しなければならない程度の危険だが、
たかが散歩の帰り道でそんな危険に遭遇したいと思うほど、レミリアはスリルに飢えてい
ない。

「ん……つかまれって……まさか……」
 言われるがままに主の足首を掴んでから、下僕は意図を察し顔色を変えた。
「離しちゃだめよ。気合い入れて頑張りなさいよ……牽引してあげるんだからっ!」
 ぐんぐんとレミリアはスピードを上げて行く。
 全速力だと軽く音速を超え、どう考えても抱いているれみりゃと、引っ張っているふら
んが耐えられないため、せいぜい馬を襲歩で駆るより多少速い程度である。

「ああ、これぐらいなら……あぐっ……」
 掴んだ手を振り離されるほどの速度ではないが、不用意に喋った際、折悪しく風に煽ら
れ、ふらんは舌を噛んだ。
「あらあら、ふらんちゃんったら間抜けね……あははっ」
 楽しげに笑いながら、いきなり下僕とペットを外出先で新たに作り、連れて帰って来た
理由を、どうやって忠実なメイド長に説明しようか、レミリアは考えている。

 下手に誤魔化したり、有耶無耶にしようとしても、通じるような相手ではない。
 肛門を犯したとか、その手の話すのに羞恥を伴う事柄は上手く伏せた上で、どう言うべ
きかを悩んだ。
 攻撃したから返り討ちにして、その時に気に入ったから──これで充分だろうか?
 レミリアが連れ帰った以上、異論は多少差し挟んでも受け入れてはくれるだろうが、そ
の間に行われる問答は少なければ少ないほど、伏せたい部分が露見しづらい。

 考えながら飛ぶうちに、もう紅魔館が見えて来た。
「まぁ、なるようになるでしょう……咲夜もきっと、判ってくれるはず」
 誰に言うともなく呟き、速度と高度をレミリアは徐々に下げて行く。

 とりあえず説明を終えて一眠りしたら──さっき途中まで進めた事の、続きに取りかか
ろう。
 人知れず顔を赤らめ、レミリアは淫蕩な妄想を開始した。



 前方不注意で時計台に頭をぶつけ、早朝から一騒ぎを起こす事になるのだが、これはま
た別の話である──。


                                   ■END■

あとがき

 ご笑覧いただきありがとうございます。A.Hでございます。
 お久しぶりです。恥ずかしながら帰って参りましたと言うか、別に出て行ったり消えよ
うとした訳ではなく、ちょっと仕事が増えたのと、地霊殿がノーマルノーコン未だに出来
ず時間が……もう、老化がはじまって、視神経と反射神経が衰えてるのかもですねw

 そんなわけで、一ヶ月ちょいと経ってしまいましたが、後編その2で完結でございます。
 気付いたら前編中編後編1後編2で合計180kbを越えやがりましたが、相変わらず虐待
のぬるさと、非虐待シーンの多さはいかがなものかと自己批判。
 あと、れみりゃの口調をちょいと一般的なものから変えてみました……良く使われてい
る口調も、私としては非常に可愛く感じて、泣いたり笑ったり出来なくなるまで、性的な
意味で色々と可愛がりたいのですが、もっと幼女らしい感じを出そうとしてみましたw

 あと、ありす狂いの作者さん、わざわざ拙作に言及いただきありがとうございます。
 使えそうな設定を取捨選択して、さらに自分が使いやすいよう改変するのが面白いと私
は考えておりますので、すみませんだなんて恐縮です。アレンジむしろ光栄です。

 遅くなりましたが前回もご感想いただきまして、ありがとうございます。
 楽しみにお待ちいただけているとは恐悦至極です……遅くなって申し訳ありません。
 えっと夜伽の件ですが、そろそろ挑戦しようかと三本ほど同時進行で書き始めてます。
 勧めていただきありがとうございます。


※文中「味あわされる」と表記している箇所がありますが、正しくは「味わわされる」で
す。正確な日本語にこだわるよりも、慣例的に多く使われている誤った表記の方が、読む
際に違和感を感じねぇんじゃないかと思ったので。

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最終更新:2008年09月29日 19:30
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