ゆっくりいじめ系1071 コシアンルーレット 後編

「さて、始まりだ」

男は親れいむの眉間にリボルバー拳銃の銃口を押し当てつつ言った。
拳銃を押し付けられた親れいむは、なんとか気丈に振舞おうとしているがその体は小刻みに震えており、体の至る所から冷や汗のような砂糖水がたれている。
親まりさや子ゆっくり達は少し離れたところから、そんな親れいむの様子を固唾を呑んで見守っていた。
男は弾丸を装填したリボルバー拳銃の弾倉を回転させる。回転が止まったところで、親れいむに訊ねた。

「さぁ、まずは一発目。このまま撃つか? 天井に撃つか?」
「ゆっ……、このままうってね!」

最初だから当然と言うべきか。親れいむは頭に向けて撃つことを選んだ。
グッ、と男の指に力がかかる。親れいむは目を固く閉じ、(ろくぶんのいちだからだいじょうぶ)と心の中で自分に言い聞かせる。

カチッ

男が引き金を引いても、空回りする音がするだけで弾丸は出てこなかった。空撃ちだ。

「まず一発目はお前の勝ちだなれいむ。一匹の生存権を獲得だ」
「ゆ、ゆふ~……」

男が銃を一旦引っ込めつつそう言うと、親れいむは安堵の溜息をついた。

「さぁ、まずどの子を助けるか選べ?」
「…………ゆっ?」

子ゆっくり達を指差しながら訊ねた男の質問の意図が、親れいむには分からなかった。
それは親まりさも同じようで、親れいむと同じく「ゆっ?」と首を傾げていた。

「だから、獲得した生存権を誰に使うか選べと言ってるんだ」
「ゆっ? なにいってるのおじさん。れいむたちはみんなたすかるんだから、そんなこといみないよ。ゆっくりつづきをやろうね」
「ダメだ。もし途中でお前が死んだら誰を助けるか決められないだろ?」
「ゆっ、れいむはしなないよ! いいからさっさと──」
「さっさと決めろ」

チャ、と銃口を向けられて親れいむは押し黙った。今この場で男に逆らうことがどれだけ無謀なことか、餡子脳は先の安心感からすっかり忘れていた。
銃口を向けられたことによる恐怖から、れいむは再び緊張状態になり、チラリと子ゆっくり達を見やった。どうあってもこの場は誰かを選べねばならない。それは親まりさも理解したようだった。

「ゆっ、あのこをたすけてね」
「分かった」

親れいむと親まりさは子ゆっくり達の中で一番小さい子れいむを選んだ。
男はその宣言通り選ばれた子れいむを掴もうとする。しかし子れいむは姉妹を二匹殺した男を怖がっているのか、男の手から逃れようとした。
だが逃れられるわけもなく、あっさりと捕まった。「はなちちぇ~!」と男の手の中でジタジタ暴れるがまったく意味をなしていない。
男は子れいむを別に用意していた透明な箱にぶち込んだ。
透明な箱に入れられた子れいむは「だちちぇ~! おねぇちゃんとゆっくち~!」と五月蝿かったので、加工所製のお菓子(材料ゆっくり)を透明な箱に入れた。
子れいむは現金なものでそのお菓子を食べ始め「む~ちゃ、む~ちゃ、ちゃ~わせ~♪ おにぃしゃんゆっくちありがちょう!」と言った。
あまりの餡子脳っぷりに子れいむも射殺してやろうかと男は思った。

すると今度は子ゆっくり達から文句の声があがった。

「にゃんでれいみゅなの~!?」
「まりしゃをたしゅけてよぉぉぉぉ!!」
「れいみゅばっかりじゅるいよぉぉぉ!!」

五月蝿くするなと言われたのをもう忘れたのか、子ゆっくり達はその場で飛び跳ねながらギャースカ騒ぎ始めた。
親ゆっくり達はオロオロしながらも、

「ゆゆっ! みんなちゃんとたすかるからだいじょうぶだよ!」
「ちゃんとみんなでゆっくりかえれるよ!」

と真摯に子ゆっくり達に訴えかけた。子ゆっくり達は渋々といった感じでようやく静かになった。

「さて、ではニ発目にいくぞ」
「ゆっ! まかせてね!」

ずい、と親まりさが前に出る。男はその行動を見て「ハァ?」と首を傾げた。

「何言ってるんだ? お前じゃなくてれいむだぞ」
「「ゆゆっ!? なにいってるの? じゅんばんじゃないの!?」」
「あぁ、順番だよ。ただし、順番が次に回るのは死ぬか全員助かるかのどっちかしかない」

男のその説明に親れいむは青ざめた。つまり、ゲームが終わるその時まで親れいむはこの恐怖の決断を強いられるというわけだ。
親まりさとの交代ならば一息つく間もあって乗り越えられると思っていた。そこにこのルールである。
男はそんな親れいむの心情など一切斟酌せず、再びリボルバー拳銃の銃口を眉間に押し当てた。

「さぁ二発目だれいむ。このまま撃つか天井に撃つか決めろ」
「ゆっ、ゆゆぅ~……」

ダラダラと嫌な汗をかきながら、親れいむは焦燥を感じる。二度続けての命の選択。
失敗すれば命は無い。だが親れいむには弾丸が入っているかどうかなど分かるはずもない。
一発空撃ちしたから、残りは五分の一、まだ大丈夫だと親れいむは判断した。

「ゆっ、このままうってね!」
「分かった」

グッ、と男の指に力がこもる。
それは先ほどの情景とまるで同じ光景だった。拳銃を持つ男。銃口を押し付けられたれいむ。それを見守る家族達。
まるでビデオを巻き戻し、再生したかのようだった。
そうして男の指は引き金を引き










バン!




銃弾は親れいむの眉間を穿ち、頭部を貫き、蹂躙し、突破した。
リボルバー拳銃から放たれた弾丸は、親れいむを貫通し、後頭部から飛び出し、小屋の壁にめり込んだ。
だらん、と親れいむの体から力が抜ける。目は白目をむき、口はだらしなく開かれている。
親れいむは死んだ。

通常ゆっくりは体の餡子の半分が失われるまでは正気を保ち、三分の一以下になるまでは生きているとされるが、人間にあたる脳の部分にある中枢餡子を著しく損壊しても死ぬ。
拳銃より放たれた弾丸は見事にその中枢餡子を破壊したのだ。

ゆっくり一家の間に静寂が訪れた。理解しがたい現実を直視した時に起こる現象だ。
それも長くは続かず、やがて決壊した。

「で、でいぶぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」
「でいびゅおきゃしゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん!!!」
「ゆ゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁん!!!」
「おきゃぁしゃんがぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!」
「ゆ゛ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!!」

決壊したダムのごとくゆっくり一家から涙が流れる。雑音を通り越して騒音の域に達しているゆっくりの喚き声を黙らせるため、男は引き金を引いた。


バン!


天井に向けられていたとはいえ、既にゆっくり一家にとって死の象徴となっている音にゆっくり一家は押し黙った。
黙ってはいるが、「ゆぐっ、ゆぐっ」「おきゃぁしゃん……」とすすり泣いてはいる。

「さぁて、れいむ死んじゃったわけだけど……。どうするまりさ? 続きやる?」

銃をクルクルと指で弄びつつ男は親まりさに訊ねた。
親れいむが死んだことでコシアンルーレットは一度終了した。もしこのまま終われば生存権を獲得した子れいむ以外全てのゆっくりはルール通り死ぬことになる。
他ならぬこの男の手によって。

だが親まりさがゲームを引き継げば、まだ他のゆっくり達が助かる可能性は残っている。
だから当然、親まりさはゲームを引き継ぐことを選んだ。

「ゆっ、まりさやるよ!」

流れる涙を振り払いつつ、一歩前に出る親まりさ。その勇ましき姿に残された子ゆっくりも透明な箱にいる子れいむも憧れの眼差しを向ける。
男は静かにリボルバー拳銃に弾丸を装填し、銃口を親まりさの眉間に向ける。

「ではゲーム続行。現在救出できているゆっくりは一匹。残りはお前を含めて六匹。果たして全員助かるかな? ではまず一発目」
「ゆっ! ゆっくりうってね!」
親まりさは恐怖で今にも気を失いそうだった。れいむはこんな恐怖と戦っていたのかと驚愕する。
れいむを失った悲しみから立ち直ったわけではない。出来ることなられいむや子供達の死を悼んでやりたかった。しかし、それはこの男が許さない。
ガチガチと小さく音を立てる歯をなんとか自制させつつ、親まりさはキッ、と男を睨む。
視線の先にあるのは無慈悲に自分たちの命を奪うバケモノ。そのバケモノの顔を射抜かんとする程強く睨みつける。

男の引き金にかかった指が動く。
カチッ、と音を立て












バン!



放たれた鉛玉が親まりさを貫いた。

「ゆぐぴっ!?」

奇跡的にも親まりさは即死しなかった。眉間に押し付けなかったため、親れいむの時と違ってわずかに狙いがそれたのだ。
だがそれでも、眉間近くから侵入した弾丸は中枢餡子を抉っていった。あと数秒もしないうちに親まりさは死ぬ。

親まりさの薄れゆく意識は、悔しさと悲しみと怒りに満ち溢れていた。
なんで、こんな目にあっているのか。なんで、こんな目にあわないといけないのか。
自分たちはただ、家族でゆっくりしたかっただけなのに、と。
どこか遠いところから愛しい我が子の声が聞こえる。だがもうそれに応える余力も無かった。

「おっと、言い忘れていた」

死体五秒前の親まりさを前に、男はいかにも今思い出したというように声を上げた。

「ロシアンルーレットは弾丸一発。
 ただしこれは弾丸五発。それがコシアンルーレットだ」

消えていく意識の中、親まりさが最後に聞いた言葉がそれだった。

「あ、あ゛ぐま゛ぁ…………」

そう小さく言い残すと、親まりさは事切れた。
















コシアンルーレットは親ゆっくり二匹の死をもって幕を閉じた。
結果は生存ゆっくり一匹と死亡確定ゆっくり五匹だ。
男が定めたルールでは子ゆっくりはコシアンルーレットに参加することは出来ない。
残るは、そう。虐殺タイムのみだ。

親まりさが事切れたのを確認すると、男は弾丸をリボルバー拳銃に装填し始めた。もちろん、一発の空きもなく全て装填した。
ジャコッ、と準備が整うと男は残った子ゆっくり達に視線を向ける。
まりさ種三匹れいむ種二匹の子ゆっくり達は、両親の亡骸に寄り添っていた。

「ゆぐっ、ゆぐっ……」
「れいみゅおかぁしゃん、まりしゃおかぁしゃん……」
「ゆ゛わ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「ゆえぐっ、ゆえぐっ……」
「おきゃぁしゃん、おきちぇよ~……」

もう枯れたのではないかと思えるほど泣いたのにも関わらず、未だに流せる涙があるのかと男は驚嘆した。
子ゆっくり達の足元には小さな水たまりが出来ていた。
透明な箱の子れいむにも視線を向けると、既にお菓子は食べ終えたのか箱の中でゆ~ん、と泣いていた。

親を失った子ゆっくりの姉妹は今悲しみに暮れていた。
男はそんな空気を一気にぶち壊しにかかる。

「さて、お悲しみのところ悪いが、これから処刑タイムだ」

男のその声で子ゆっくり五匹がビクゥ! と跳ね上がった。
恐る恐るといった様子で男に顔を向ける。そこには子ゆっくり達に銃口が向けられているリボルバー拳銃があった。
あっという間に子ゆっくり達は半狂乱に陥った。

「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やめちぇね、やめちぇね! れいみゅはかえりゅよぉぉぉ!!!」
「おぎゃぁぁぁぁじゃぁぁぁぁぁん!!」
「いやぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ゆっくちちていってね!! ゆっくちちていってね!!!」

子ゆっくり五匹は叫び、喚きながらそれぞれバラバラに逃げ始めた。
土間に向かうもの。何もない壁に向かうもの。囲炉裏の中に逃げ込むもの。透明の箱の子れいむに助けを求めるもの。部屋の隅に向かうもの。
恐怖と悲しみと混乱で完全に暴走していた。

男はそんなゆっくり達に慌てる様子もなく、ゆっくりと追い掛け回しはじめた。
歩いて近づくだけで子ゆっくり達は男から逃げ始める。小さくぴょんぴょん跳ねる亀のごとしのろまな歩みに、追いつかぬようゆっくりと歩いて追いかける。
囲炉裏の中に隠れているものや、時折進行方向先に銃弾を撃ちこみあぶり出したり進行方向を変えさせもする。

やがて五分も経たないうちにの子ゆっくりは全員小屋の隅に誘導されていた。
小屋の隅で五匹身を寄せ合ってガタガタと震える子ゆっくり達。子ゆっくり達の前には男が立ちはだかっていた。

「さて、お前たちの親は死んだ。コシアンルーレットのルールに則ってお前たちを殺すことにする」

無慈悲にそう告げると男は拳銃を構えた。照準は身を寄せ合い震える子ゆっくり達に向けられている。

「やめちぇぇぇぇ、やめちぇぇぇ……」
「おにぃしゃん、ゆっくちちてね……?」
「ゆっくちちてよぉ……ゆっくちちてよぉ……」
「まりしゃしにたくにゃいよぉ……」
「どぼぢでごんなごどずるのぉ……」

ボロボロと涙を流しながら命乞いをする子ゆっくり達。その姿は哀れさに満ち溢れていた。
力を持たぬゆっくりの中の、更に力を持たぬ子供。
その子ゆっくりが今、抗うことも出来ない理不尽すぎる暴力の前に泣き、悲しみ、懇願している。
ある者がこの姿を見れば、それだけで心が折れかねない様だ。











バン!


しかしこの男にそんなものは関係なかった。
突如引き金が引かれ放たれた銃弾は、固まっていた子ゆっくりの中の中心にいた子まりさの体半分を吹き飛ばした。

「ゆ゛っ゛……い゛ぢゃい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」

体の右半分を吹き飛ばされながら、未だ存命している子まりさ。中枢餡子を損傷するか餡子を三分の二以上失うまでは死なないのがゆっくりだ。

「ま゛っ、まりしゃぁぁぁぁ!!」
「だいじょびゅぅぅぅぅ!?」
「おねぇちゃん~~!!」
「ゆっくちちていってね!!」

周りの子ゆっくり達が撃たれた子まりさに殺到しようとする。
しかし男はそれを許す間もなく、更にもう一発銃弾を放ち、残った子まりさのもう半分の体を吹き飛ばした。
後に残ったのは、宙を舞った後パサリと落ちてきた子まりさの帽子だけだった。

後はもう予想通りと言うべきか、子ゆっくり達の悲鳴の合唱である。
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!」だの「まりしゃぁぁぁ!!」だのと泣き喚く子ゆっくり達を男は小さい籠に入れていく。
残った四匹を入れた後、男はその四匹を天井の梁から吊るした。
釣り糸と釣り針。釣り針を子ゆっくり達の後頭部に差込み、「ゆがべっ!?」天井の梁からぶら下げるのだ。

透明の箱の子れいむが「おにいしゃん、ゆっくちやめちぇね! どぼじでごんなごどずるにょ!?」と喚くのを尻目に、淡々と男は吊るしていった。
こうして子れいむ二匹と子まりさ二匹が、後頭部に釣り針を埋め込まれた状態で宙に吊るされる状態となった。

「ゆ゛ぎぃぃ、い゛ち゛ゃい゛ぃぃぃぃ!!」
「ゆっくち、やべでね……」
「ゆ゛ぅぅぅぅん…………」
「どぼじでなの゛……まりしゃたちなにもわるいごどじでないよ……」

男は涙を垂らして床を濡らす子ゆっくり達の様子に満足気に頷くと、一旦しまっておいたリボルバー拳銃を取り出した。
その黒光りする拳銃の姿を見て、子ゆっくり達は再び身を竦みあがらせた。

「さて、と……誰から殺そうかな~♪」

男はリズム混じりにそう言いながら、銃口を吊るされた子ゆっくり達に順番に向けていく。
銃口を向けられる度に子ゆっくり達はビクゥ! と過剰に反応する。もちろんその事により体奥深くに釣り針が刺さり更に痛みに身悶えした。

「れいむにしよっかな~♪」
「ゆ゛ぅ!?」

「やっぱりまりさかな~♪」
「ゆびぃ!?」

「よし、れいむだ♪」
「ゆ゛ぅぅぅぅ!?」

「と、見せかけてまりさ!」

バン!

子まりさが反応する間も与えずに銃口を向けて引き金を引いた。
放たれた銃弾は子まりさを即死させず、右頬をそぎ落とした。

「ゆぎゃびぃぃぃぃ!? いぢゃい、いぢゃい゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!」

右の頬が無くなってボトボトと餡子を床に落して泣き喚く子まりさの様子を見て、男は声を上げて笑った。
愉快そうに手を叩き、激痛に苦しむ子まりさを笑い飛ばす。

「ハッハッハ! 最高だよ、まりさ……ヒーヒャハハ! やっぱ回りくどいことするより、さっさと虐めた方が性に合ってるわ!」

そんな男の様子を他の吊るされた子ゆっくりや透明な箱の子れいむは、理解できぬ物を見る目で脅えた。

どうしてこの人はこんなことするのだろう。
どうしてこの人はこんなこと平気できるのだろう。
どうしてこの人はこんなことして笑っていられるのだろう。

男の何もかもが、ゆっくり達には理解出来なかった。

男が笑っている間にも、子まりさの体からはボトボトと餡子が失われていく。
子まりさは「やめちぇぇぇぇ、あんこしゃんゆっくちちてぇぇぇぇ!」と叫ぶのが更に男を楽しませる。

「まりさ、どうだい、辛いかい? 死にたいかい?」
「ゆぎぎぎぎ、ぢにだぐだないよ゛ぉぉぉぉ!!」
「あっ、そう」

バン!

再び放たれた弾丸は、今度は子まりさの左頬を消し飛ばした。

「ゆごぼぉぉぉぉぉぉぉ!?」

子まりさの餡子が零れ落ちる速度が更に速くなる。吊るされた子まりさの直下の床には、既に餡子の小山が出来ていた。

「はい、ご希望通りすぐには死なないよ♪」
「いやぢゃぁぁぁぁぁぁ!! ぢにだくない゛よぉぉぉ!!!」

その言葉を最後に、子まりさは白目を向いて気絶した。いや、もう起きることは無いから死んだも当然だろう。
やがて子まりさから零れ落ちる餡子が無くなり、皮だけになると、男は残った皮を銃で撃って吹き飛ばした。
男は子まりさの処刑を終えると、満面の笑みで残りの子ゆっくり達に向き直った。

「さぁて皆、クイズをしないかい?」

男の言葉に誰も応えない。既に子ゆっくり達の中にあるのは理解できぬモノへの恐怖だけだった。
もうマトモに受け応えるだけの余力は殆ど残されていなかったが────


バンバンバン!

男が天井に向かって銃弾を放つと、にわかに反応しだした。男の希望通りの反応をしなければすぐに殺されると理解したのだろう。
いくら死が避けられぬ状態とはいえ、やはり命ある限り生きたいと思うのは、ゆっくりも同じだ。

「ゆゆっ! くいじゅ?」
「にゃにするにょ、おにいしゃん?」
「ゆっくちできる!?」

男は拳銃に銃弾を再装填しながら、満足気に頷いた。

「そう、クイズだ。今から俺が君たちの誰かにクイズを出そう。クイズに正解できた子は助けてあげよう」

男のその言葉に子ゆっくり達の目は光を取り戻し始めた。
助かる──! ここから生きて帰れる!
その希望が子ゆっくり達を奮い立たせた。

「ゆゆっ! れいみゅやるよ! くいじゅやるよ!」
「まりしゃ! まりしゃやるよ!」
「ゆぅぅぅん、くいじゅだちてぇぇぇぇ!!」

プラプラと吊るされた体を揺すりながら必死に自己アピールする子ゆっくり達。男はそんな僅かな希望にすがりつく子ゆっくり達の様子に心底満足したように頷いた。

「うんうん♪ じゃあ一番最初に名乗り出たれいむにクイズを出そう」
「ゆっ! れいみゅがんばるよ!」

男は一匹の子れいむの前に立つと、少し膝を曲げて吊るされた子れいむと視線を合わせた。
子れいむの目には絶対に正解して助かってやるという意志が見られた。

「ただし、間違えたら死ぬから、そこんとこよろしくね」

下ろしていた拳銃を子れいむの眼前に突きつけてそう男は言った。
子れいむは拳銃を突きつけられて「ゆぎぃ!?」と怯んだが、すぐに「れいみゅはせいかいするよ!」と言い返した。

「では問題。れみりゃとふらん。ぷっでぃんが好きなのはどっち?」

男の出した問題に子れいむは「ゆ~ん、ゆ~ん」と言葉通り頭を捻って考え始めた。
そしてたっぷり一分が過ぎた頃、ようやく口を開いた。

「わかったよ! れみりゃだよ!」
「うん、正解♪」


















バン!

正解を告げられた瞬間笑顔になった子れいむの顔は、眼前から放たれた銃弾によって消し飛んだ。

「「…………ゆっ?」」

残された子まりさと子れいむの顔が凍りついた。この二匹も正解を告げられた時、子れいむが助かると思ったのだ。
なのに、

「どぼじでぇぇぇぇぇぇ!?」
「れいみゅたしゅけてくれるんじゃながっだの゛ぉぉぉぉぉ!?」

当然怒る抗議の声。
これに対し男は

「あぁ、気が変わった」

まるで悪びれた様子もなく、簡単にそう答えた。

「それよりも君たち、お腹空いてないかい? お菓子食べないかい?」

絶対に理解できぬ男の言動に絶望する子ゆっくりニ匹に、男はそんなのどうでもいいとばかりに訊ねた。
無視したら殺される。そう思った子れいむと子まりさは正直に答えた。

「ゆぅ……おにゃかすいたよ……」
「おかちちょうだい! おかち!」

男は笑顔で頷いた。そうそう、それでいいんだと言わんばかりだった。

「じゃあ口をあ~ん、って開けてくれるかい?」
「「ゆぁ~~~~ん」」

子ゆっくりニ匹は男に言われた通り、吊るされた状態のまま口を大きく開けた。
ここにお菓子を入れてくれるのだろうか。
そんな子ゆっくりの希望はあっという間に打ち砕かれた。

「ゆぶっ!?」

子まりさの大きく開けた口に銃口が入れられたのだ。深く、深く、後頭部に銃口と形が浮かび上がるほど深く差し込まれている。
子れいむは驚愕した目で男を見る。その顔は満面の笑みで満ちていた。

「はい、お菓子の鉛玉♪」







バン!

子まりさの体の後ろ半分が吹き飛んだ。ビチャビチャと餡子が床に降り注ぐ。
言うまでもなく、即死だった。

これで死が確定されて残されたのは子れいむのみ。
男は子れいむに顔を向ける。そこにはこれまでの笑みと違って、やや疲れた様子が見れた。

「ふぅ、流石にもう疲れたなぁ。さっさと終わらせるか」

男はそう言うと拳銃を無造作に構え、あっさりと引き金を引いた。



バン!

子れいむは反射的に目を閉じた。あぁ、もうこれで死んだんだと諦観もした。
しかし、


「ゆぶっ!!」

待っていた衝撃は来ず、代わりに子れいむに襲い掛かったのは下からの衝撃だった。
恐る恐る目を開けると、床が見えた。子れいむは宙に吊るされた状態から床に落ちたのだ。

「やっべ、釣り糸撃っちゃった! 逃げられる!」

男が慌てた様子でそう言ったのを聞いた瞬間、子れいむは駆け出した。
まだ体の中に釣り針は残っているものの、ここを逃げ出せば後でいくらでも取れる。
子れいむはこれまでの生涯で出したこともない速度で土間に下りると、何故か開いている外に繋がる扉に向かって駆け抜けた。

「ゆっ! ゆっくちはやきゅにげりゅよ!」

これで、これでこの悪夢から解放される。
家から誘拐された。
親が殺された。
姉妹が理不尽に殺された。
こんな、こんな悪夢からようやくおさらばできる!

子れいむは悲しみとは違う涙を目から零すと、最後の一歩を大きく跳ねた。
子れいむの眼前には開いている扉から見える外の世界が────



無かった。

「ゆぶっ!?」

ビタン、と子れいむは扉に顔面をうちつけた。ずるずると土間にずり落ちる。
顔面の痛みをこらえつつ、子れいむは体を起こし、顔を上に向けた。
そこには、

「残念でした♪」

扉を閉めてこちらに銃口を向けている男がいた。
確かに子れいむは生涯最高速で駆けた。だが人間の歩みに勝てるはずも無かった。

「無駄な抵抗、ありがと。面白かったよ」

男はニコニコ笑顔でそう子れいむに言う。
子れいむの中に出来たそれは、もう絶望や恐怖という言葉では生ぬるい程だった。

「バイバイ♪」


バン!

最後の子れいむも見事な餡子の花を咲かせた。









男は処刑を全て終えると、透明な箱に入れられた子れいむの所へ向かった。
箱の中の子れいむは、滝のような涙を流しており、子れいむの足元には既に大きな水溜りが出来ていた。

「やぁ、れいむ」

男がそう声をかけると箱の子れいむは、「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!」と叫んで男に背を向けて走り始めた。
だがすぐに箱の壁に顔面からぶつかってゆんゆんと泣きはじめた。
そんな子れいむに男は努めて優しい声で話しかけた。

「安心しな、れいむ。君は殺さないよ。君のお母さんのおかげで君はお家に帰れるんだよ」
「……ゆっ? れいみゅおうちにかえれりゅの?」
「あぁ、そうだよ」

そう言うと子れいむは再び泣き始めた。これはきっと嬉し涙だろう。
男は子れいむの入った透明な箱を持つと、小屋を後にした。









「はい、お家ついたよ~」

男はゆっくり一家を誘拐した巣に辿り着くと、透明な箱を開けて子れいむを外に出した。
子れいむは男に構うことなく一目散に巣の中に駆けていった。
男が巣の中を覗き込むと、

「ゆぐっ、おきゃぁしゃん……でいみゅかえっでぎだよ……」

と小さく嗚咽をこらえていた。
家族は皆死んだが、自分は生き残った。後は家族の分までしっかりと生きよう。そう決意しているのかもしれない。
男は子れいむのそんな決意に水を差した。

「ゆっ!? おにいしゃんにゃにちてるの!?」

男は巣の外から腕を突っ込むと、巣の中を掻き回し始めたのだ。
いや、違う。巣の中にあったものを巣の外に引っ張り出しているのだ。

「やめちぇ! しょれはれいみゅのごはんなの! おかぁしゃんたちとあちゅめたのぉ! しょれはれいみゅのたからものぉぉ!!」

子れいむが泣きながら男の腕にすがるが、男はそれを払いのける。
草花や木の実といった越冬用のエサ。
藁や綿の欠片といった暖房用のもの。
小さく光石や丸い石、せみの抜け殻。
それら巣の中にあった一切合財を巣の外に男は引っ張り出す。
子れいむは必死に抵抗しようと男の指にかみついたがデコピンで吹っ飛ばされる。

やがて男はそれら全てを巣の外に出し終えると、一箇所に集めた。
そして、懐からマッチを取り出すと、一箇所に集めたそれに火をつけた。

「ゆびぃぃぃぃぃぃ!! おにいしゃんにゃにしゅるのぉぉぉぉぉ!?」

メラメラと燃え始めるそれに向かって子れいむは駆け込んだ。
親や姉妹と一緒に頑張って集めたご飯。家族に自慢したお宝。
それら全てが燃えていくのを看過できるわけがなかった。

まだ小さい火種の熱などおかまいなしに、子れいむは燃えるものを口にくわえて持ってこうとする。
男はそんな様子を見ながら、懐からあるものを取り出した。それは竹の水筒だった。
水筒の口を外すと、それを火に向かってかけはじめた。
消火用の水ではない。それは、油だった。

「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!? あぢゅいぃぃぃぃぃぃ!!!」

油が注がれたことで火は一気に燃え上がり、子れいむの髪にも燃え移った。
子れいむは突然の熱風と自分の髪が燃える熱さに耐え切れず、燃える物の山から抜け出して地面をゴロゴロと転がり始める。
子れいむの火自体はすぐに消えた。
だが、子れいむが取り戻そうとした物達は消えるどころか一向に火の勢いを増すばかりだった。

「ゆあぁぁ……ゆあぁ……」

子れいむはそんな様子を見守るしかなかった。あの火の中に突っ込むことなど出来るわけがなかった。
やがて石などの燃えないものを除き、巣の中にあったものはあらかた炭だけとなった。
秋の始めから一家総出で集めた越冬用のエサも、寒さをしのごうと集めた藁も、全部燃えた。

ポカン、と放心する子れいむを残し、男はその場を立ち去っていった。その顔はとても満ち足りた表情だった。
ふと冷たさを感じ、上を見上げた。
雪が、降り始めていた。




おわり


────────────────
これまでに書いたもの


ゆっくり合戦
ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男
晒し首
チャリンコ

byキノコ馬

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最終更新:2008年10月09日 02:04
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