ゆっくりいじめ系1112 社会とゆっくり 1

※ 現代ものです。現代社会にゆっくりがいる設定となっています。
※ 色々と無茶な俺設定満載ですが、あまり深く考えずにお願いします。
※ 登場人物がちょっといちゃいちゃします。本当にちょっとだけ。

※ 50字改行です。ご注意を。



 ひっきりなしに車の通る大通り。排気ガスに彩られたそこを中心として、人の波が流れている。道路を挟むよ
うにしてそびえ立つ飲食店の数々。その横に、申し訳程度に添えられた植木。

 典型的な都会風景である。誰しもが時計や携帯電話を片手に、時刻と勝負しつつ、おのおのの目的を達成せん
と奔走している状態だ。皆が皆、自分のやることで手一杯であり、道ばたでこける初老の男性がいても、目もく
れず。
 天を貫かんばかりに高くそびえるビルの横で、うずくまる初老の男性。この先進国の姿をあらわにしたかのよ
うなその光景は、しかし、誰しもが気にするものでもなく。今日も今日とて、排気ガスと喧騒と人の波に彩られ
た、都会の昼下がりが始まる。



「……あー、疲れた」

 青空の下、立ち並ぶビルの中のひとつから、少女がひとり、躍り出る。ぼさぼさの黒髪を流し、色あせたブラ
ウスとロングスカートに身を包む、化粧っけも飾り気もない少女である。顔立ちは全体的に柔らかく、愛らしく
はあるが、疲弊のためか目のしたにうっすらと見えるくまが痛々しい。
 少女は、肩に大きなかばんをひっさげている。少女が身じろぎするごとに、それはがたごとと硬質な音を立て、
都会の喧騒に入り混じる。

「なんか食べよ……」

 ついぞ先までいたビルを振り返り、少女は溜息ひとつ。ふところから鉛筆を取り出し、くるくると取り回して、
溜息と同時にしまいこむ。


 少女が先までいたビルは、都心でもそれなりに名の通った美術予備校だった。将来は美術の大学に進むべく、
少女は週末ごとにそこへ通い、絵を描き、疲れた体を引きずって帰るのを常としていた。
 それは今日でも例外ではない。五時間ほど通しで描き続けた体はくたくたで、何か甘いものでも食べないと落
ち着けない、そんな気分だった。

 駅前のコンビニで適当にすませるか、それともちょっと我慢して、遠くの甘味店にでも足を運ぶか。
 人波に紛れ、歩を進めながら考え考え、少女は駅へと向かって歩いていく。

 と、その瞬間。


「ゆっくりしていってね!」


 場違いなほどに能天気な、やたら甲高いファッキンなウザボイスが響き渡り、少女はついつい足を止めてしま
った。同時、周りの人間はわずかに眉をひそめ、まるで汚いものでも見たかのように舌打ちをする。が、それも
一瞬のことで、すぐさま人の波はもとの状態を取り戻した。
 そんななか、足を止めてしまった少女は、聞き覚えのあるそのウザボイスを脳内で再生させ、もしやと思って
視線を下へと向けてみる。

 やはり、というべきだろうか。赤い飾りにしもぶくれた顔面。黒い髪に、人を苛立たせるためだけに構成され
たようなかんばせ。ゆっくりれいむがそこにいた。


 ゆっくり。
 それは、数年前から現代社会に紛れ込んできた、害獣認定のナマモノである。体の中身は餡子やらカスタード
やらと種類によって色々と違うが、皆が皆、人語を話し、殴りたくなるような顔面と性格を所有している。
 突如社会に現れたそれらは、傍若無人そのものといったふるまいばかりをし、人間たちに毎日ぶっ殺されてい
る。当然、動物愛護団体やら、農水省やら、なんだかよくわからんちんな偉い人たちが、ゆっくりの対処を決め
るよう、毎日のように議論されている。

 とはいえ。議論でゆっくりが減るはずもなく。しかもこのゆっくり、放っておけば人様のものを盗みやがるの
で、視認と同時にぶっ殺す、というのが人間たちにとっての日常となっていた。

 が、都会のなかで見かけるのはさすがに珍しい。色々な意味で、都会はゆっくりにとってゆっくりできない空
間であるし、それ以前に交通量激しい都会にいて、ゆっくりごときが一時間と生きられるのか。恐らくは無理で
あろう。
 それを分かっているからこそ、道を歩く人々は気にも留めない。ゆっくりを見つめる少女のかたわら、スーツ
姿のサラリーマンが、まるでゆっくりをいないものとして扱っているように、素通りしている。


「ゆゆ? おねーさんはゆっくりできるひと?」


 物珍しいゆっくりを見かけて、少女がぼうっとしていれば、ゆっくりれいむが言葉を紡ぐ。
 それにしてもこの饅頭、死ぬほど声がウザい。確かに、殺したくなるのも分かるかもしれない。そういえば、
世間ではこのゆっくりを虐待することを生き甲斐としている者もいるとか何とか。
 などと少女が考えていれば、バレーボールほどの大きさをほこるれいむは、少女の目の前でぴょんこぴょんこ
と跳ねる、跳ね続ける。

「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしたら美大に行けないってば。あそこ、競争率高いし」
「ゆー? おねえさんはゆっくりできないの? ゆっくりできないならどっかにいってね!」
「……うわー、見んの初めてじゃないのに、やっぱウザいな、こいつ」

 ゆっくりとまともに会話をするな、というのは人々の常識である。何せこいつら、超絶的に自分勝手であり、
ロジックのロの字も理解していない。いや、理路整然と論理的に話すゆっくりがいたら、それはそれでまた、別
のウザさがありそうだが。
 とにもかくにも、ウザい。とんでもなくウザすぎる。毎日を社会の中で生きている人間が、よもやゆっくりな
ど出来はすまいに。パンピーは忙殺されるのが常なのである。
 かくいう少女も、受験準備で色々とゆっくりできていない。色々とうっぷんもたまっている。

「ゆっくりできないおねーさんはゆっくりどこかにきえてね!」
「はいはい、ゆっくり出来ないですよ。言われなくてもさっさと消えるよ」
「ゆっ? おねーさん、ばかなの? れいむのいうこと、ちゃんときいてるの?」
「うん、そうだね、プロテインだね。……あー、私、結構つかれてんのかなあ」

 ゆっくりと言葉を交わす、などという行為は、時間の無駄以外の何物でもない。何せ、会話にならないのだか
ら。しかも普通にしゃべっていれば、相手に罵倒されるのだから、特別な理由でもないかぎりは、誰もすすんで
話なんぞしたがらない。
 話をする者がいるとするのならば、もうどうでもいいよ的な考えをした人が大半である。それは少女も例外で
はなかろう。

「ゆっくりきえてね! どっかいってね!」

 少女が適当に応対をしていれば、れいむはぽすんぽすんと少女の足に体当たりしてくる。都会のばっちい道の
上にいた饅頭が、スカートに向かって突撃していく姿は、なんといおうか、生理的な嫌悪感がある。
 気付けば、少女はれいむの髪を左手でひっつかみ、持ち上げていた。

「や、やめてね! ゆっくりやめてね! ゆっくりおろしてね!」
「わわ、やべ、ばっちい饅頭もっちゃった! でも、んー……家のサンドバッグ、ボロボロだったし」
「おねーさん、はやくれいむをおろしてね! きこえてるの? ばかなの? しぬの?」
「まあ、間に合わせの一品でいいかな。……サニーパンチッ」

 めごしゃっ、と小気味良い音。

「ゆべえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ!?」

 少女の右手から放たれた拳打は、的確にれいむの顔面をとらえ、その衝撃を餡子中に染み渡らせる。殴る寸前
に左手の力を抜いていたので、れいむは支えとなるべきものを失い、吹き飛んでいった。
 地面を数回バウンドし、一転、二転、三転、れいむは丁度、人のいない寂れた公園にその身を横たわらせる。
人の迷惑にならぬよう、少女が力加減をした成果であった。

「い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」

 れいむはゆっくりと顔を起こすと、痛みにぴーぴーと泣きわめく。憎たらしい顔がゆがみ、今度は前衛芸術じ
みた姿となって、その不細工な泣き顔をそこここに提供。アヴァンギャルドも何もあったもんじゃない。

「どーしたのさ? おろしてやったじゃん。私なりの手段だけどさ」
「ゆ゛っぐり゛や゛べでね゛! じね! お゛ねーざ」
「そうかいそうかい。おもしろすぎんぞ、この野郎ーっ」
「ばびびゃあ゛あ゛あ゛っ゛!?」

 れいむに台詞を全てしゃべらせるようなまねもさせず、チャージなどさせるものか、とばかりに蹴りを放つ少
女。れいむはそれを受け、錆びたジャングルジムに突っ込み、餡子を散らしながら鉄棒のひとつにぶち当たり、
跳ね返り、涙を流しながら着地。
 あまりの痛みに、ゆえーんゆえーん、と叫びながらのたうち回るれいむ。声量がふつうにでかいので、辺りの
人間が不快げな顔を見せる。
 少女は慌ててれいむを上から口ごと踏んづけた。

「ゆぎぎぃ゛っ……!?」
「やれやれだぜ。最近、ストレスがたまっていたんでな。中高一貫校生のうっぷんをなめんなよ」
「ゆっ! ゆっ!?」
「あー……来週の予備校、課題、何だったかなー……」

 れいむを踏んづけつつ、遠くの空を見やりながら、少女は目を細める。もともとが整った顔立ちであるゆえか、
その姿は退廃的な美というものが感じられなくもない。
 が、足下にある醜い饅頭はマイナスポイントである。主役を引き立てるためとはいえ、あまりにも醜い要素は、
引き立て役も何もあったものではない。
 パーフェクトもハーモニーも感じられないそのれいむの姿をちらりと一瞥。少女は来週に出るであろう、予備
校の課題をどうすべきか考える。

「……む、待てよ?」
「ゆーっ! ゆーっ!」
「そうだ、分かった、これだぁっ!!」
「ゆっぎゃあああああああああああああああああ!!」

 何やらアイディアがひらめいたようで、少女は喜びに全身を震わせ、強く強く足踏みした。
 つまり、足下の饅頭は四散した。ゆっくりれいむのあっけない最後であった。


「ふふ、そうだ、ゆっくりがカギだっ。やってやるぜっ!」

 靴の底を餡子で汚しながら、少女は帰路を急いだ。








「俺、爛漫!」

 妙なテンションのまま、家に帰った少女はすぐさま着替えを始めた。色あせたジーンズとシャツに着替え、上
からパーカーを羽織り、手にはそこそこの大きさのプラスティックケースをひとつ、もう片方の手には軍手をそ
なえ、準備万端。
 飛ぶようにして自宅から出た少女は、道を行き、近所の小学校の裏山へ行く。


 数々の雑草が生え、いくつもの巨木がそびえ立つそこは、過去に感じられた生気がない。都心よりやや外れた
場所にあるその裏山は、いまや虫の気配もほとんどなく、まさしく死の森と呼ぶにふさわしい様相だった。
 あたりを見回せば、木漏れ日と巨木が見える。それと同時に、ゆっ、ゆっ、という不快なファッキンボイスも。

 そう、少女のたたずむその森は、今やゆっくりの生息地と化していた。虫たちが少なく、雑草ばかり生え、綺
麗な花などほとんど見かけられないのは、そのせいである。
 かつて、少女も小学生の頃は、この裏山で駆けずり回り、カミキリムシなどをひっつかんで、友人を泣かせた
ものである。当然、別の友人からフルボッコを喰らったが、泣き出した友人は最後には笑って許してくれた。
 そんな凡庸なる過去の話も、少女にとっては結構大切な思い出なのである。

 だからこそ、そんな思い出ある森を荒らしたゆっくりどもを、好くことが出来るはずもない。
 これが、普通の野生生物ならば、仕方ない話として片付けたのであろうが。もうあの饅頭どもの態度や言動が
いちいち癪に障るのである。思い出を蹂躙されるような気分すらしてくるのだ。

 そんなことを少女が考えていれば、やにわに寄ってくる、ゆっくりたち。
 赤ちゃんれいむが二匹に、赤ちゃんまりさが二匹だ。赤ん坊だからだろうか、警戒心の欠片もなく少女に寄り、
お決まりの言葉を吐く。

「ゆっきゅりちていっちぇね!」
「ゆっきゅいちていっちぇね!」

 舌足らずに挨拶する赤ちゃんたちを見、少女は適当に言葉を返す。

「はいはいゆっくりゆっくり」
「ゆゆ? おねーしゃんはゆっきゅ」
「テンドンは一回でじゅーぶんだ」
「ゆぎっ!?」

 例によって、チャージなどさせるものか、とばかりに赤れいむの口を踏んづけ、少女は片手で自分の髪を整え
る。やれやれだぜ、と帽子の位置を直す某学生のごとく。

「ゆきぃぃぃっ!? やめちぇね! おねーちゃんをはなちちぇね!」
「はなちちぇね!」

 当然、抗議の声が上がるが、所詮は騒音のようなものである。電車の駆動音が遠くから聞こえたとして、歩行
中にそれをいちいち気にする人間など、そうそういまい。つまりはそういう話である。

「ふーむ……。やっぱり、課題用にストックは多めにしておこうかな」
「はなちちぇね! やめちぇね!」
「しかしなあ……こればかりに頼ると、全体的な雰囲気が……」
「おねーしゃん、れいむちゃちのゆーことをきいているの? ばかなの? ちぬの?」
「とりあえず、当初の目的どおりにやっておくか」
「ゆゆ! おねーしゃんはゆっくちできにゃいひとだね! いもーちょをはなちてちんでね!」

 ぽすんぽすんと体当たりを足に喰らいながら、少女はぶつぶつとつぶやきつつ、頭の中で図を組み立てていく。
ゆっくりの声などどこ吹く風、いや、風とすら思っていない。
 赤ちゃんゆっくりは少女を攻撃し続けるも、所詮はゆっくり、しかもその赤ん坊である。その衝撃は、少女の
まとうジーンズにすべて吸収されてしまう。
 自分の攻撃がかなわぬことを知ったのか、赤ちゃんゆっくりたちは、ゆえーんゆえーん、と泣きわめいた。

「ゆゆっ? どうしたの?」

 赤ちゃんたちの鳴き声を聞きつけたのだろう、成体ゆっくりが何匹か、そこらの巨木の陰やしげみの中から出
てくる。ゆっくりれいむにゆっくりまりさばかりだが、大きさはそれなり、バレーボール大のものや、なかには
バスケットボールほどの大きさを誇るゆっくりもいた。
 ゆっくりたちは物陰から出た瞬間、少女の姿を見つけ、即座にぷうぅっと頬を膨らませる。

 ゆっくりの威嚇行為である。無論、人間に効くはずもない。

「ゆゆっ! おねーさん、やめてね! あかちゃんがゆっくりできないよ!」
「おねーさんはどっかいってね! そのあしをどけてね!」
「おねーさん、まりさたちのいうことをおとなしくきくんだぜ! いのちだけはたすけてやるんだぜ!」
「おねーさん、ゆっくりしないでね! はやくきえてね! きいてるの? ばかなの? しぬの?」


 口汚い言葉を投げかけられるも、対象の少女は気にも留めず、出てきたゆっくりを数え出す始末。それにして
も、この森のゆっくりたち、ノリノリどころかめちゃくちゃに口が悪い。環境によって生物はその様相を変える
というが、果たしてゆっくりもそうなのだろうか。
 などと考えつつも、少女は頭の中で絵を描きつつ、周りのゆっくりたちを数えていく。

 恐れを見せるどころか全く動じることすらせぬ少女。
 そんな彼女の姿に苛立ったのか、成体ゆっくりの中の一匹が、少女の足に向かって飛び込んでいった。

「ゆっくりできないおねーさんは、ゆっくりしね!」
「あー、死ねって人に言っちゃいけないんだー、せんせーに言ってやるー」

 のほほんとした返答をしつつ、少女は赤ちゃんれいむを踏んだ足を軸に、身を躍らせて華麗にターン。足下の
ゆっくりが摩擦で死なぬように加減しながらのその回避は、飛び込んできたゆっくりまりさの体当たりを、危な
げなく避けるにいたった。
 とはいえ、少女の足の下にいる赤ちゃんれいむはかなりのダメージを受けてしまう。

「ゆきゅぃぃぃ!?」
「苦悶顔! そういうのもあるのか! 私は得体の知れない奇妙な満足感を味わっていた」

 妙なナレーションをつぶやきつつ、少女は赤ちゃんれいむから足をどけ、体当たりの勢いですっこけたまりさ
を引っつかみ、プラスティックケースの中にぶち込んだ。

「ゆぎっ!? やめるんだぜ! とっととここからだすんだぜ!」
「大丈夫、ファミ通の攻略法だよ。お仲間さんも入れてあげるから、文句言わないでね」

 ゆっくりまりさを捕らえたのを皮切りに、少女はひょいほいせっせとゆっくりたちをケースに詰めていく。
 巨大なケースの中に、ぎゅうぎゅうと押し込められる饅頭たち。皆が皆、ゆっくりできないだのおねーさんは
しねだのわめいているが、少女は無視して作業続行。それは何故? ゆっくりだからです、結論。
 饅頭同士で破れない程度の数のゆっくりたちをケースにぶち込み、少女はひとり、満足顔。

「よし、こんだけいればいいかな」
「ゆぎぎぃぃぃぃ! よ゛ぐな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」
「かえしてね! れいむのあかちゃんかえしてね!」

 しかし、仲間を奪われたゆっくりたちは、憎悪のこもった表情で少女をねめつけ、体当たりをくり返す。無論、
饅頭の体当たりなので、痛くもかゆくも何ともない。
 足に小さな衝撃を感じつつ、少女は森の入り口方面まで、ゆっくりゆっくりと歩いていく。


「がえ゛ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」


 怒りに身を震わせたゆっくりまりさが、少女の足に渾身の一撃を見舞う。とはいえ、所詮はゆっくりなので、
少女の体が多少ぶれる程度である。蚊の一刺しじみたものだ。
 しょうがない、と少女はかぶりを振り、プラスティックケースをかたわらに置き、残存したゆっくりたちと向
かい合った。

「ゆっ! おねーさん、はこをあけて、とっととみんなをかえしてね! かえしたらしんでね!」
「はやくするんだぜ! はやくしないと、えたーなるふぉーすまりさーどをつかわざるをえないんだぜ!」

 ぽよんぽよん、と足に体当たりを何度もされ、少女はぼさぼさの黒髪を撫でつつ、人さし指をゆっくりたちに
つきつけた。
 さすがに体当たりされ続ければ、たまってきたうっぷんも素敵なことになろうというもの。少女は、半分受験
生である。そんな彼女が、饅頭の好き勝手な言動を受け続ければどうなるか。それはもう、言うまでもなかろう。
 瞬間、少女のやる気なさげな目が、すっと細められ、

「その行為、宣戦布告と判断する!」

「ゆ……ゆゆっ!?」

「当方に迎撃の用意あり!」

「ゆ? ゆぅぅーーーーーーっ!?」

「覚 悟 完 了」

「ゆっぎい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!?」
「ゆぎゃああああああああ!!!!」
「どぼぢでごん゛な゛ご……ゆべぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!?」
「ゆ゛っぐぢでぎな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!!」


 夕刻の森を、打撃音とゆっくりたちの断末魔の悲鳴が彩った。




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最終更新:2008年10月15日 22:19
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