注意!!
- 俺設定あり
- 虐待されないゆっくりがいます
- それなりに賢いゆっくりがいます
- ところどころにネタが散らばっています
そんなのでも大歓迎という方、ぜひご覧ください。
『恵みの饅頭』
「う~、あまあまがいない……」
そう言いながら、森の中を飛んでいる一匹のゆっくりがいた。
子どものような体に紅白の服を纏い、金の髪に赤い目、頭には白い帽子を被り、背中には七色の羽。
ゆっくりの中でも屈指の戦闘力を持つ胴体つきのゆっくりフランである。
「あまあまがないと、ふらんのこどもたちがゆっくりできない……」
そう呟きながらフランは、あまあま――つまり、ゆっくりを探していた。
捕食種達の食料であり遊び道具でもあるゆっくりは、いつものフランならすぐに捕まえられる。
だが、ここ数日の間に、フランはゆっくりを発見することはなかった。
ある者が起こした事件により、ゆっくり達が中々姿を見せなくなってしまったのだ。
「あのぶたが……あのぶたが、あんなことしなければ……!」
数日前、この森にいたゆっくりは胴体付きれみりゃに襲われ、かなりの数が捕食されてしまった。
自分の獲物を横取りされたことに怒りを覚えたフランは、れみりゃを処刑した。
その後、昼も夜もゆっくりを探しているが見つからない。
「やくたたずのぶただけど、たべればよかった……」
れみりゃにはフランと同様に再生能力があり、顔を破壊されない限り欠損した箇所は生えてくる。
つまり、長持ちする食べ物と言えるれみりゃを捕獲することにより、食糧事情は変わる……はずだった。
だが、激怒していたフランは、れみりゃの手足と羽をとり、川に流してしまったのだ。
あの時、なんで自分はそんなことをしてしまったのか。
フランは怒りに染まった自分の未熟さを恥じた。
「うー……あまあまー……」
どうして、自分はれみりゃを処刑してしまったのか?
その時に子ども達のことを、何故考えられなかったのか?
れみりゃを食べればしばらくは大丈夫だったはずなのに……
何故、どうして、あんなことをしたのだろう?
ああしていたら、こうなっていれば、元はといえば……
フラン自身もろくに食べていないため、意識が朦朧として真っ直ぐ飛べていない。
ユラユラと飛んでいる内に、人里の外れの方まで来てしまっていた。
「ここにあまあまはいない、あまあまどこー?」
人里に用がないフランは引き返そうと方向転換するが、その時フランの目にある物が入った。
黒い帽子にカチューシャ、大きいのが二匹に小さいのが十匹。
間違いない、ゆっくり魔理沙とアリスの家族だ。
フランは空腹でいたことも忘れ、物陰に隠れ血走った目で様子を見る。
「あまあま……! あまあま!! あまあま!!!」
あれがあれば、自分も子ども達もゆっくり出来る。
子ども達の悲しい声も聞かなくて済むし、かわいい笑顔も見れる。
あまあまをとったらゆっくり遊んであげよう。
狩りの仕方も、あまあまの苛め方も教えて、皆で狩りに行く。
ランチにあまあまを食べて皆で笑う、なんて素敵なんだろう!
思わず涎を垂らすフランであったが、手で拭い魔理沙一家の会話に耳を立てる。
魔理沙は笑いが止まらなかった。
都会派のアリスに野菜を食べさせたいと思い、狩りの合間に人里を偵察する日々。
ようやく見つけた人里にある、自分達だけのゆっくりプレイス。
番犬もいなく、柵には自分達が通れるくらいの隙間がある。
自分の妻であるアリスも、かわいい子ども達も自分を褒め称えるだろう。
魔理沙は凄い、魔理沙はかっこいい、魔理沙はとってもゆっくり出来る都会派である。
そんなことを想像していると、思わず笑ってしまう魔理沙だった。
「まりさ、どうしたの?」
「ぱぱ、どうちたの?」
笑っている魔理沙を不思議に思ったアリスと子アリスが尋ねた。
ゆっくり出来そうな場所に連れてきたのは嬉しいが、ニヤニヤと笑う魔理沙は不気味に見えたのだ。
「ゆっ!? な、なんでもないよ! それより、ここがまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!」
「おやさいがたくさんあって、とってもとかいはだわ!」
「おやしゃいってにゃに?」
「ちょかいひゃなちゃべもにょだね!」
アリスから見れば、魔理沙は素敵なゆっくりだとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
魔理沙は都会派のカリスマであると、アリスは考える。
だが、自分がそんな魔理沙に相応しいゆっくりだとは思えない。
自分とて都会派だとは思うが、魔理沙程ではない。
もっと、今よりも都会派になって、魔理沙とゆっくりしたい。
自分を磨く決意をしたアリスだが、一つ心配事が思い浮かぶ。
「でも、まりさ、なかはだいじょうぶなの? にんげんがいるとまずいわよ」
「だいじょうだよ! ここにすんでいるにんげんは、いまはねているよ!
いざとなったら、まりさがありすとこどもたちをまもるから、あんしんしてゆっくりしていってね!!!」
魔理沙の自信満々な態度を見て、子ゆっくり達は魔理沙に尊敬の念を抱く。
人間は強い――母であるアリスからそう聞いていた子ゆっくり達は勝てないと思っていた。
でも、自分達の父は、そんな人間から自分達を守ると言っている。
これは、とても勇敢なことであり、そしてゆっくりを守ることは素晴らしいことだ。
自分達もこんな風になりたい、父のような強いゆっくりに。
目を輝かせる子ども達を、アリスは暖かい目で見つめていた。
「さ、そろそろ、ゆっくりしにいこうね。ありす、さきにいって。まりさはさいごにはいるから」
「わかったわ! さっ、とかいはのゆっくりをしにいきましょう!」
「ゆっきゅち! ゆっきゅち!」
「ゆっきゅちちていきょうね!」
魔理沙一家は騒ぎながら柵の隙間から、畑に侵入しようとしていた。
「はたけを、おそうき?」
魔理沙一家の会話を聞いていたフランは、無謀な行為だと思った。
もし気づかれでもしたら、自分ならともかくあんなあまあま共ではどうにもならない。
何より、人間が出てこられると面倒であり、あまあまを横取りされてしまう。
早い者勝ち――これは自然界の中では当たり前の概念であり、フランがそうするのは当然であった。
翼を動かして柵まで移動し、先頭のアリスを持ち上げる。
「ゆふふ、おそらをとんでるみたいね」
馬鹿なあまあまである――フランはそう思った。
フランを見ている子ゆっくり達は興味津々のようだが、魔理沙は驚きのあまり目を見開いている。
その魔理沙に向かい、笑顔を向けながらフランはこう言った。
「ゆっくりしね!」
「ゆべっ!」
そう言いながらフランはアリスを潰した。
フランの手からカスタードクリームが溢れ、地面に滴り落ちる。
潰れてしまったアリスから手を離し、自分の手についているカスタードクリームをペロペロと舐める。
「うー♪ あまあまー♪」
その言葉を聞いた魔理沙の頭に様々な考えが浮かび、消えていく。
アリスは、どうなったのか。
何故フランがここにいるのか。
フランが舐めている物は何なのか。
そして、何故フランは――自分の子ども達を見ているのか。
ここまで考えて、魔理沙はようやく自分のすべき事に気づいた。
「まりさのこどもたち、にげてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
そう言いながら魔理沙は、フランに噛みつこうと飛びかかった。
だが、フランは冷静に魔理沙を掴み、頬を浅く噛み千切る。
痛みに喚く魔理沙を一発殴り、近くの木に向かって投げつけた。
木に叩きつけられ、魔理沙は痛みのあまりに痙攣している。
「ぱ、ぱぱーーーーーー!!!!」
「ゆっくりしね!」
「ぱぎぇ!」
魔理沙の事を呼ぶ子アリスを、フランは踏み潰す。
その後、潰れた子どもを拾い、中身を捻り出して味わう。
「あまあまー♪ ひさしぶりのあまあまー♪ めぐみのあまあまー♪」
フランは感謝した。
ゆっくりを招く畑を作ってくれた人間に、ゆっくり達がここに来た事に、自分に食べられてくれる事に。
全てに感謝した。
だから、そのお返しにあまあま達には、ゆっくり死んでもらおう。
それがフランなりの恩返しであった。
「あ、ありしゅーーーー!!!」
「にゃにしゅりゅの! いにゃかもにょにょくしぇに!」
「ありしゅをきゃえしぇーーー!!!」
そう言いながら子ゆっくり達は、フランに体当たりをし始めた。
だが、フランにとって、そんな物は効くわけがない。
飛び跳ねる子魔理沙を一匹掴み、そのまま口に入れる。
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「うー♪ あまあまー♪ しあわせー♪」
「ま、まりしゃににゃにしゅるの!」
子魔理沙を食べた事に対し、子アリスがフランに非難の声を浴びせた。
それを聞いたフランは、笑いながら子アリスを掴み、自分の口に入れる。
「いぎ、ぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「あ、あでぃじゅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」
子魔理沙と子アリスを自分の口の中で会わせてあげる。
ゆっくり達を食べることが決定事項であるフランの、せめてもの優しさであった。
「ゆっくりなかよくしね♪」
「「もっぢょゆぎぃ゛ぃ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛!!!!」」
フランは、子ゆっくり達をよく噛んで少しでも満腹感を得ようとする。
途中、帽子やカチューシャが引っかかったが、舌で器用に口内の端に移動させた。
子ゆっくり達を喉を鳴らして飲み込んだ後、帽子とカチューシャを手に吐き出す。
そして帽子とカチューシャを指で摘み、子ゆっくりに見せるように揺らす。
自らの強さを誇示するようなフランの仕草を、他の子ゆっくり達は呆然と見ていた。
「つ・ぎ・は、どのあまあまにしようかなー♪」
フランは笑顔だったが、子ゆっくり達には悪魔の微笑みに見えたことだろう。
その言葉を聞き、子ゆっくり達は一斉に泣き叫び始めた。
「や、やべでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」
「ま、まりしゃたちはまじゅいよ!!」
「もっぢょゆっぐぢぢだいよー!!」
子ゆっくり達は恐怖のあまり泣き叫んだ。
死にたくない、ゆっくりしたい、助けて、どの子ゆっくりもそう思っている。
泣き叫ぶ子ゆっくり達を、一匹のゆっくりが見ていた。
フランに痛めつけられた魔理沙である。
「ゅ……ゆ……」
泣き叫ぶ子ゆっくり達を見ながら魔理沙は考える――果たして、自分にフランを倒せるのだろうか、と。
その考えは間違いであることにすぐに気づくが、では、どうすればいいのか?
自分がいる群れのゆっくり達を総動員すれば、フランを倒せるだろう。
だが、それに賛同してくれるとは思えない。
自分の子ども達が泣き叫んでいるのに、自分はただ怯えているだけで、動くことが出来ない。
群れのゆっくり達だって、自分と同じようになるのは目に見えている。
誰だって自分より強い者と戦いたくない、つまり――戦うということが間違っている?
ならば、逃げるしかない。逃げなければ生き残れない!!
そう気づいた魔理沙は、子ゆっくり達に向かってこう叫んだ。
「ばりざのこどもだぢぃ゛!! ばりざのぢがくにきでぇ゛ぇ゛!!!」
魔理沙は怪我をしていたが、痛みを押し殺し無理矢理叫ぶ。
その叫びは、フランに怯えていた子ゆっくり達にも届き、魔理沙の方を見る。
「ぱ、ぱぱー!」
「ぱぱー! たしゅけちぇー!」
「ゆっくぢじだがったら、はやぐごぉ゛い゛ぃ゛!!!」
子ゆっくり達は、魔理沙の鬼気迫る表情を見て何を言っているのかがわからなかった。
魔理沙は、血走った目で子ゆっくり達の後ろを睨みつけている。
思わず振り返る子ゆっくり達は、さっきから後ろにいたフランの存在に気づく。
フランの顔は笑顔だが、顔にはアリスのカスタードクリームがついている。
子ゆっくり達にはそれが悪魔のように見え、先程感じた恐怖を思い出すのには充分だった。
「ゆっくちはやきゅいきゅよ!」
「ありしゅ! いしょぎゅんだじぇ!」
「ゆっくち! はやきゅ! ゆっくち! はやきゅ!」
自分の元に向かっている子ゆっくり達を、魔理沙がただ待っているわけではない。
痛みに耐えながら跳ねて、子ゆっくり達に一歩ずつ近づく。
魔理沙はフランが邪魔するものだと思っていたが、その場から動いていない。
何故か辺りを見回している。
「こどもたちいそいでえ゛ぇ゛!!」
「ゆっくちいしょぐよ!」
「いしょげ! いしょげ! いしょげ!」
跳ねながら移動している魔理沙は、フランがアリスの亡骸を掴んでいるところを見た。
先程辺りを見回していたのは、アリスの亡骸を探していたからだろう。
フランはアリスの亡骸を食べ始め、一口味わうごとに幸せそうな顔をしている。
その光景に魔理沙は怒りを覚えるが、今はそれどころではない。
アリスには悪いが、自分と子ども達が生き残らなければならない。
そうでなければ、アリスの死は無駄になってしまう。
(ありす……たすけられなくてごめんね!
まりさはありすのぶんまで、こどもたちをゆっくりしたゆっくりにそだてるよ!
ゆるしてくれなんていわないけど、まりさがしんだらまりさのことをころしてもいいよ!)
そう思いながら跳ねる魔理沙は、とうとう子ゆっくり達の元にたどり着く。
魔理沙も子ゆっくり達も大量の汗をかいている。
息を整えている魔理沙一家を、フランはアリスを食べながら見ていた。
「こどもたち、さっさとまりさのおくちにはいってね!」
「ゆ? どうちて?」
「ぱぱが、あいちゅをやっちゅけちぇくれりゅんじゃにゃいにょ?」
「はやくして! まりさのおくちにはいらないと、ゆっくりできないよ!」
『ゆっくり出来ない』
その言葉を聞いた子ゆっくり達は、我先にと魔理沙の口に入っていく。
子ゆっくり達は身体をぶつけ合ってしまい、全員が入るのに時間がかかる。
「ゆぎっ!? まりしゃおきゅにいっちぇ!」
「わかっちゃじぇ! ありしゅもおきゅにいきゅんだじぇ!」
「おきゅのほうにいきゃないと、まりしゃもありしゅもはいりぇにゃいよー!」
微笑ましいとも言える争いを、フランはアリスの亡骸を食べながら見ていた。
子ゆっくり達を見ているとフランは、無意識の内に自分の子ども達との楽しい思い出を呼び起こす。
自分の玩具をとった、そんな理由で喧嘩する子ども達。
仲直りさせるため、子ども達に新しい玩具を与えてあげたことがある。
新しい玩具に眩い笑顔を見せる子ども達――だが、今はそんな事を思い出している場合ではない。
そう気づいたフランは、食べかけのアリスの亡骸を投げ捨てた。
魔理沙が子ゆっくり達を口に入れ終えたのは、ほぼ同じ瞬間である。
「ゆっ! ゆっくりはやくにげるよ!」
そう言いながら魔理沙は自分の巣に向かって移動し始めた。
目には悔しさのあまり涙が溢れている。
『にゃにいっちぇるにょ!? ままたちのかちゃきをとりゃにゃいの!?』
「ふらんはとってもつよいの! まりさでもかてないの! ごめんね!」
『ぱぱのばきゃー! ぱぱがきょんにゃばしょにちゅれてきゅりゅかりゃー!」
「ごめんね! ごめんね! まりさをののしってもいいから、じっとしていてね!」
子ゆっくり達の言葉は、魔理沙の心に刃物のように突き刺さり、目から涙が溢れ落ちた。
どんなに罵られようとも、自分の子ども達が死ぬことは魔理沙にとって耐え難いことであった。
だが、たった数分で起きた出来事は、子ゆっくり達には受け入れ難く、魔理沙を罵倒するのも無理はない。
それはわかっていたが少しでも励まそうと、魔理沙は子ゆっくり達に言葉をかける。
「おうちにかえったら、ゆっくりしようね! ありすのぶんも、しんだこどもたちのぶんも!
だいすきなあおむしさんも、きのみさんも、おはなさんも、いっぱいたべてゆっくりしようね!
それで、みんなでゆっくりあそぼうね! みんなでかりにもいこうね! それで、それでぇ……!!」
魔理沙は子ゆっくり達に楽しい未来を想像させるため、考えもまとめずに言った。
途中で口が止まってしまい言葉になっていなかったが、それでも子ゆっくり達を励ましたいのだろう。
不器用な魔理沙の言葉は子ゆっくり達にも届き、僅かながら元気が出てきた。
『……ゆっくちしゅるよ! ちんだみんにゃのぶんみゃでゆっくちするよ!』
『しょうね、ときゃいひゃはゆっくちしゅりゅもにょだみょんね!』
『ゆっくち! ゆっくち!』
子ゆっくり達の言葉を聞いた魔理沙の目からは、涙が洪水のように溢れて出た。
皆、あんな辛いことがあったのに、それでもゆっくりすると言える強い子である。
アリスの忘れ形見であるこの子達は、自分がもっとゆっくり出来る子に育ててみせよう。
それが自分に出来る、アリス達への謝罪でもあるのだから。
だが、そんな思いは容易く壊される。
「ゆっくりしたようだし、もういいか♪」
そう言いながら魔理沙の後ろにいたフランは、魔理沙を抱え上げる。
魔理沙は誰が自分を掴んでいるか理解し、身体を震わせた。
「ど、どうぢで……?」
「おまえらにはかんしゃしている。おまえらがいなかったら、ふらんもこどもたちもしんでたから♪」
「ゅ…ゅ…」
「ふらんのおうちで、ゆっくりしね♪」
その言葉に魔理沙の心は折れてしまった。
逃げ切れなかったことを認めたくないと言わんばかりに叫び、暴れる。
「ゆぐわ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!! はなぜえ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!!」
「ゆっくりしね♪ ゆっくりしね♪ ゆっくりしね♪」
そう言いながらフランは、魔理沙と魔理沙の口の中にいる子ゆっくり達を巣へ運んで行く。
魔理沙とフランの力の差は大きく、どんなに暴れても魔理沙の抵抗は無意味に終わった。
楽しそうに魔理沙を見ているフランだったが、子ゆっくり達が何も言わないことに気がついた。
もしかしたら、死んでるのかもしれない。
「ちいさいあまあまはどうしたー? ゆっくりしななきゃおこるぞー?」
フランは、なるべく優しい口調で話しかけた。
小さいあまあまは大きいあまあまにして食べる。
子ども達の玩具にする。
狩りの教材としても使える。
フランは、今までそうやってゆっくり達を利用してきたため、生きていなくては困る。
『ゆふふ、おにぇえしゃんったりゃ、ゆっきゅちしちぇにゃいわにぇ』
『まりしゃたちは、ゆっきゅちちていりゅよ! だっちぇ、ぱぱといっちょにゃんだもん!』
『ぱぱのおきゅちのなきゃ、あっちゃかーい♪』
フランの声に反応した子ゆっくり達の返答はおかしなものだった。
どれも今の現状を認識出来ていない――いや、見ようともしていない。
魔理沙一家は今まで幸せであった。
美味しい食べ物、頑丈な住居、仲の良い家族とご近所。
一般的に幸福と呼ばれるような環境であったが、一つだけ裏目に出てしまった物がある。
それは――れみりゃにも襲われなかった強運。
その強運こそが魔理沙一家を助長させてしまったのだろう。
幸せの絶頂にいた魔理沙一家は、フランにより不幸のドン底に叩き落された。
そのギャップに成体である魔理沙はともかく、子ゆっくり達の心は耐えられなかったのだろう。
「こ、こどもたち、ゆっくりしていってね!!!」
子ゆっくり達の異常に気がついた魔理沙が声をかけるが、既に手遅れである。
『あー、ちょうちょうしゃんがとんでりゅ♪ ぱぱのおきゅちはおおきいんだにぇ!』
『ままー、ぱぱのいっちぇるこちょわきゃるー? まりしゃ、わきゃんにゃーい♪』
『ぺーりょ、ぺーりょ、ぱぱにょは、とっちぇもうみぇ!』
「ゆっ? ゆぅー!?」
子ゆっくり達はそれぞれ現実逃避をしており、魔理沙の言葉は届いていない。
なんで、こんなことになったんだろう?
自分が人間の畑を襲うように言ったから?
子ども達を連れて逃げなかったから?
油断していた自分が悪いのか?
どうしたら――ああすれば――どうにかして――元はと言えば――
愛する子ゆっくり達が壊れてしまい、流せる涙すらない魔理沙の目からも、光が消えてしまった。
「あれ? おかあさん? ひさしぶりー、ゆっくりしていってね!
いまね、このおねえさんが、ゆっくりできるばしょにつれてってくれるの♪
まりさも、まりさのこどもたちもそこでゆっくりするよ! たのしみだなー♪」
「ゆっくりしね♪ ゆっくりしね♪ ゆっくりしね♪」
心が壊れた魔理沙一家を嬉しそうに眺めるフラン。
自分の強さを誇示することは捕食種の誉れであり、壊れたゆっくりは自らの強さの証明である。
壊れたように呟いている魔理沙一家を抱え、フランは自分の巣へと戻っていった。
終
後書き
ご覧になってくださった皆様、お疲れ様でした。
「人間の畑にゆっくりがやってくるのなら、野生の捕食種にとって好都合じゃね?」
という考えが浮かんだため、このようなSSになりました。
作:猫三匹椅子
最終更新:2008年10月15日 23:01