ゆっくりいじめ系1203 うーぱっくと果樹園

うーぱっくと果樹園

その男は幻想郷でも珍しく果樹園を持っていた。
果樹園とはいえ大規模な物でもなく、リンゴ、ミカン、桃、柿、ブドウなどスタンダードな果物の木がそれぞれ1、2本ずつ。
そして、スイカやメロンといった厳密に言えば果物ではない作物がが少しと、男一人が管理できる精一杯で構成された物だった。

季節は秋の初め。
スイカやメロン、桃といった夏の作物は既に収穫し、好評の内に売り切れた。
今度は柿やブドウ、リンゴ、ミカンを収穫する番である。
作業を始める為に男は物置小屋へと道具を取りに行く。
物置小屋は妙に乱雑で、あちこちにダンボール箱が散乱している。別にこの男はズボラで片付けが下手という訳ではない。
男は誰もいないと思われる物置の中でパンパン、と手を叩きながら言った。
「おーいお前達起きろー。仕事だー!」
するとどうした事か。物置のあちこちに散乱していたダンボール箱がにもぞもぞと動き出し、
「「「「「うー!!」」」」」
という声と共に一斉に飛び起きた。

このダンボールはうーぱっく。
ゆっくりれみりゃ(以下ゆっくりゃ)種の亜種であり、その体は肉まんではなくダンボール箱とゆっくりゃの翼で構成されている。
特筆すべきは「契約」の概念を持っているということである。ゆっくりゃに限らずゆっくりは自分勝手で、一方的な要求しかしないモノなのだが、うーぱっくは違う。
うーぱっくは「空飛ぶダンボール」という自分の特性を生かし、他のゆっくりを自分の身に乗せ、輸送し、その対価に食料を貰って生きている。
契約の相手はゆっくりに限らず、対価さえもらえれば人間、妖怪問わずうーぱっくは物を運ぶ。
男は野生のうーぱっくの群れと契約し、果樹園の手伝いをさせていた。

男は梯子を持つと、果樹園へと向かう。うーぱっくも仲良く行列を作って後に続いた。
最初にリンゴの木に梯子をかけ、上っていく。
実ったリンゴは綺麗な赤色をし、一つ一つが爽やかな芳香を放っている。
男はうーぱっくを呼ぶと、その中にもいだリンゴを一つ一つ丁寧に詰めていく。
リンゴの収穫が終わると今度はミカンだ。こちらも天気に恵まれたこともあり、例年以上の収穫があった。
ミカンの収穫が終わり、日が暮れる頃には、沢山いたうーぱっく達の中身は果物で一杯になっていた。
「よし、今日はこれ位にして帰るぞ!」
「「「「「うー!!」」」」」
中身が重いのか、多少ふらつきながらうーぱっく達は家の中に入ってゆく。
男は収穫物を一つ一つチェックし、商品になるものとそうでないものを選別する。
商品になるものは木箱に丁寧に詰め、傷物や虫食いのあるものは労働の対価としてうーぱっく達に振舞う。
今年は収穫も多いため必然的にうーぱっく達の分け前も多くなる。いつもより多いご馳走にうーぱっく達もホクホク顔だ。
そんなうーぱっく達の様子を木陰から窺う者がいたのだが、うーぱっく達は勿論、男も気付かなかった。



翌日、男は収穫した果物を売りに里へと出かけていった。
うーぱっく達は外で思い思いに飛び回っていた。うーぱっく達だけでは収穫を行う事はできない。その為、男が不在の時は休日として羽を伸ばしても良いようになっている。
男としてもうーぱっく達の仕事ぶりには満足しているため、それくらいの事は当然として受け止めている。
そんな中、群のリーダーであるうーぱっくが一匹のまりさに気付いた。
まりさは、ひとしきり辺りをキョロキョロと見回していたが、しばらくすると森の中へ戻っていき、十数匹の仲間を率いて戻ってきた。
「ゆっへっへ!あのじじいはるすみたいなんだぜ。いまのうちにここのくだものはまりささまがいただいていくんだぜ」
人間全てが善人ではないように、ゆっくりにも悪い個体が存在する。その最たる例がこのまりさの様な通称「ゲスまりさ」である。
狡賢いまりさ種のなかでも輪をかけて悪知恵に長け、その性格はまさに下衆。強盗紛いの事をして他のゆっくりから餌や家を奪い、自分の快楽の為に強姦し、いざとなれば仲間はおろか餡子を分けた親姉妹まで裏切るという始末。
人間は勿論、同じゆっくりからも嫌われている鼻摘み者だ。
しかし、人間にもチンピラに迎合するような考え無しな者が大勢いるように、ゲスまりさにも多くの手下がいた。
まりさと同じ様な下衆な性格な者もいれば、単純に「このまりさと一緒にいた方が効率良く餌にありつける」と考える打算的な者など、この群にいる理由は様々だ。
「ゆゆっ!さすがまりさ!これだけあればとうぶんはしあわせ~だね!」
「うふふ、きょうのらんちはとかいはにふさわしいふるーつばいきんぐね!」
「たいりょうなんだねー、わかるよー」
「ちーんぽ!」
などなど、各々好き勝手な事を喚き散らしている。
そんな中、リーダーのゲスまりさがリーダーうっぱっくに話しかける。
「おい、うーぱっく!もたもたしないではやくまりささまをあのきのうえまではこぶんだぜ!」
「う、うー?」
うーぱっく達は困惑した。あの木は今の雇い主の物だ。どこの馬の骨とも知れぬゆっくりに好きにさせるわけにはいかない。
群で相談を始めたうーぱっく達に業を煮やしたのか、ゲスまりさは怒鳴り始めた。
「あーもう、じれったいんだぜ!とれたくだもののはんぶんはくれてやるからとっととまりさたちをのせるんだぜ!!」
その言葉にすぐにうーぱっく達は反応する。基本的にうーぱっく達は「契約」に基づいて行動する。今の雇い主よりも良い条件で雇うと言うものがいるのなら喜んでそれに従う。
うーぱっく達はゲスまりさの群を乗せ始めた。
「ゆっへっへ!さいしょからすなおにそうしていればいいんだぜ」
うーぱっく達が木に辿り着くと、ゲスの群は枝に飛び移り、たわわに実った果実をかじり始めた。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!なんだぜ!」
その食べ方は汚い事この上なく、一口齧っては別の実に齧りつき、中には意味も無く枝葉を揺らし、折角の果物を落とす者までいる。
そんな様子を見て、うーぱっく達は不安になっていた。自分達は分け前にありつけるのだろうか?このままあの群に自分達の分け前まで食べられてしまうのではないだろうか?
そう考えたリーダーうーぱっくは、リーダーのゲスまりさを問い詰めた。
「うー!うー?」
「ゆゆ?うーぱっくたちもきのみがほしいのかだぜ?ゆっへっへ!さいしょからそんなやくそくまもるきなんてなかったんだぜ!やっぱりうーぱっくはばかなんだぜ!あのれみりゃのなかまだけあるんだぜ!」
「うーぱっくのくせにおいしいものたべようだなんてばかなの?しぬの?」
「とかいはのらんちのじゃまをするなんてやっぱりいなかものね!」
「ぶすいなんだねー、わかるよー」
「おおおろかおろか」
口々にうーぱっくを嘲笑するゲスの群。

そんなゆっくり達に対するうーぱっくの行動は迅速だった。
うーぱっく達はゲスゆっくり達を木から突き落とし始めた。
いつもニコニコとどこか締まりの無い笑顔のうーぱっくではあったが、その時の笑顔からは楽しげな様子は一切無く、容赦の無い冷たいものを含んだ笑顔に変わっていた。
もっとも、人間はおろか、ゆっくりにすらわからぬほどの変化ではあったが・・・。

「契約」をもって生活するうーぱっく達にとって、契約不履行は死にも勝る大罪である。
口約束でハナから守る気は無いとはいえ、ゲスまりさの群は「収穫の半分を対価として渡す」という契約を交わしたのだ。だからこそうーぱっく達は群を木の上まで運んだのだ。
それを破ったゲス達は死んで当然とうーぱっく達は考えていた。

一方、落とされたゆっくりたちにとってはたまったものではない。さっきまで言いなりだったうーぱっく達が急に自分達を突き落としたのだから。
「なにするんだぜ!はやくまりさをたすけるんだぜぇぇぇぇ!!」
いくら粋がっても所詮は饅頭。木から落ちれば命はない。他のゆっくり達も皆必死に自分を突き落としたうーぱっく達に助けを求める。
「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!!じにだぐないぃぃぃぃ!!」
「いなかものでいいからだずげでぇぇぇぇぇ!!!」
「わからないよー!!」
「ぢんぼーーーー!!」
意外な事にうーぱっくは地面に激突する寸前でゆっくり達を助けた。
さっきまで死の危機に瀕しみっともなく泣き喚いていたゆっくり達は俄然強気になる。
「このまりささまをころそうとするなんていいどきょうなんだぜ!せいさいしてやるんだぜ!!」
と、うーぱっくのなかで必死に暴れるゆっくり達。しかし、日頃大量の果物を運び、丈夫になったうーぱっくにはびくともしない。
うーぱっく達は暴れるゆっくり達をものともせず、どんどん上昇してゆく。

「ゆーっ、ゆーっ・・・。きょ、きょうはこれくらいにしといてやるんだぜ!さっさとまりささまをおろすんだぜ!」
暴れてもびくともしないうーぱっくを相手に疲れたのか、まりさは抵抗をやめ、負け惜しみを言った。
しかし、聞いているのかいないのかうーぱっくは降りる気配を見せない。
「はやく!はやくおろすんだぜ!」
「うー♪」
意外なほどあっさりとうーぱっくはゆっくりを降ろすことに決めた。
ただし、地上10mの高さから、である。
ゆっくり達が無駄な抵抗を試みているうちに、うーぱっく達はずっと上昇を続けてきた。
高さがある程度まで達したと見るや、うーぱっく達は見事なまでに整った編隊を組んで一斉にバレルロールを行った。



「おーい、今帰ったぞー!」
「「「「「うー♪」」」」」
男が里から帰ってくると、うーぱっくの群が出迎えてくれた。
庭を見るとゆっくりの残骸と思しき潰れた饅頭があちこちに広がっていた。
念の為収穫していない柿やブドウの木を確認すると、一部ゆっくり達が食い荒らした実があるが、全体としてそれ程酷い被害ではなかった。
「お前達が退治してくれたのか?偉いぞー!」
留守にしていて事情を知らない男は、適当にうーぱっく達が木を荒らしに来たゆっくり達を退治してくれたということにし、齧られて商品にならなくなった柿をうーぱっく達にくれてやった。
「さぁ、明日も収穫するからしっかり働いてくれよ!」
「「「「「うー♪」」」」」
賑やかなうーぱっく達と共に男は明日の収穫に思いを馳せた。



あとがき
今回はうーぱっくに出張ってもらいました。
前回のゆっくり剥製ではゆっくりのセリフが殆ど無かったため、ゆっくりにも喋って貰ったんですが、どうにも難しいですね・・・。
何より泣き喚く時にいちいち濁音をつけなきゃいけないのがなんとも面倒臭いです。
他の作家様のSSとは比べ物にならないほど酷く、虐待描写も少ない文章ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

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最終更新:2008年10月19日 01:34
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