ゆっくりいじめ系1208 あるゆっくり魔理沙の記録

「にんげんさんなんか、だいっきらいだぜ!!」
 森の中で、いっぴきのゆっくり魔理沙が人間に対する憎しみを叫んでいる。
 しかし、この魔理沙は、仲間が人間に殺された訳でも、人間に捨てられたわけでもない。

「いっつもおいしーものばっかりたべて、ふかふかーなべっどでねて、とってもゆっくりしすぎだよ!!」
 そう。
 この魔理沙は人間に嫉妬していたのだ。
 自分たちよりも、ゆっくりしている人間に対して。
「ぷんぷん!! まりさおこったよ!! こうなったら、にんげんにいじわるするよ!! あやまってもらうよ!!」

「ゆゆゆ~~♪ れっれれいむ~~♪」
「ありす!! ゆっくりはやいよ!! もっとゆっくりしてね!!」

「みんなまっててね♪ まりさがもっとゆっくりできるようにしてあげるよ!!」
 決心した魔理沙は、 森の中でのんびりと遊んでいる仲間の姿を目に焼き付け。
 勢いよく森の中を駆け抜け、普段は近づく事の少ない人里へと入っていった。
 魔理沙の心の中にあるのは復讐そのものだが、その眼はとても生き生きとしていて、とても復讐をする者の目ではない。
 まるで、自分がゆっくりを代表して人間に制裁を加えるものであるかのような表情である。
 あくまで人間と対等に付き合いができると思っているゆっくりにとって、自分たちと人間との差が開くことは決して許せることではないのであろう。


「ゆ!! そろ~~りそろ~~りだよ!!」
 人里に着いた魔理沙は、そこから、人間に見つからないように慎重に移動していた。
 幸い、昼間の通りは賑やかなもので、魔理沙が声を上げたところで気付く者はいなかった。
「ゆへへ。みつからないでこうどうしてるよ!!」
 飼いゆっくりもそこらじゅうを歩いている中、一匹のゆっくりに注意を払うものなどいなかったのだ。


「ゆゆ!! あれはにんげんがあつめたたべものだね!!」
 街の中心へ中心へと歩いていった魔理沙が見つけたのは、総菜屋の屋台であった。
 数多くの食べ物が並んでいるその屋台には、多くの人間たちが詰めかけ、各々気に入った食べ物を買っていった。

「ゆっへん!! まりさたちのごはんをかってにあつめて!! そんなにんげんはゆっくりするしかくはないよ!!」
 最初の目標を見つけた魔理沙は、人が引くのを見計らい、物陰から勢いよく飛び出し、数回の跳躍で屋台の上に飛び移る事に成功した。
 そして、瞬く間に商品を地面に突き落としていった。

 その間わずか数分である。

「ゆへへ~~ん!! かってにたべものをとるにんげんさんがわるいんだよ!!」
 ゆっくりはんせいしてね!!

 その言葉を残して、一目散にその場を去った魔理沙。
 上手く人ごみの中に逃げ込めたようで、出鼻を挫かれた人間たちはどうする事も出来なかった。


「ゆへへ♪ うまくいったね!!」
 一方、作戦が成功した魔理沙は、再び物陰に隠れ、ほくほくの笑顔で今回の成果を喜んでいた。
「でもこれじゃまだだめだよ!! もっといっぱいこらしめて、にんげんさんにごめんなさいっていってもらわなくっちゃね!!」
 そう言うと、魔理沙はさらに人間を懲らしめるために、再び身をひそめて行動を開始した。
 何も知らない人間が見たら、活き活きしているをと思うであろう、キラキラと輝く瞳のままで。


「ゆっゆ~~♪ ここはにんげんさんがかってにゆっくりぷれいすにしたところだね!!」
 次の目標としたのは、畑であった。
 そこでは、ちょうど収穫時期になった野菜が、とても美味しそうに実っている。
 みずみずしく、パンパンに育った野菜を見ていると、一瞬このままゆっくりと食べたくなった魔理沙であったが、本来の目的を思い出し、何とかその思いを封じ込めた。

「ゆゆ!! まりさがこんなにたべたくなったおやさいをかってにじぶんのものにしちゃうなんて、やっぱりにんげんさんはゆるせないね!!」
 怒りにまかせ、どんどんと畑の中に入っていく。
 ちょうど畑の中心あたりに来た時、魔理沙はピタッと立ち止まり、周りの野菜に視線を向けた後に行動を開始した。

「やさいさん!! ごめんなさい!! でも、にんげんさんをこらしめるのはこうするしかないんだよ!!」
 次の瞬間。
 その言葉を発した口で、実っている野菜を引きちぎり、地面に叩きつけ、踏みつぶす。
 まるで鬼神が乗り移ったように、次から次へと野菜をつぶしていく。
 その畑の全ての野菜が潰されるまで、それほど長い時間はかからなかった。

「お!! おだのはたげがーー!!!!」
 食べ物が散乱とした畑に、しばし呆然としていた魔理沙であったが、遠くから人間の声が聞こえるとすぐに我に返り、気が付くと一目散に逃げ出していた。

「おおおお!! おらのとまぴーちゃんがーー!!!!!!」

 残ったのは男の悲しそうな声だけであった。



 次の日も、その次の日も魔理沙の奮闘は続いた。

「ゆゆ!! あっちからにんげんさんがくるよ!! ゆっくりにげるよ!!」
 森の中を動く時でも、人間を避けて動くようになった。
 その気分は、スパイのように魔理沙の感情を高ぶらせ、さらに大胆に行動するようになっていった。

「これもかってにとっちゃったものだね!!」
 時には、綺麗な反物を汚水の中に落とし、

「ゆゆ!! にんげんにつかまっちゃったんだね!!」
「むきゅきゅ!! かえじで!! それはぱちゅりーがべんきょうしたあかしなのーー!!」
「むぎゅーー!! まっでーー!! ……まっで……ま…………」
 時には、飼いゆっくりを襲い、その帽子に付いていたバッジを奪って逃げた。



 そして、魔理沙が行動を開始してから一カ月がたった。
「ゆゆゆ!! もうすぐだよ!! もうすぐれいむたちもゆっくりさせてあげられるよ!!」
 気温が中間を通り越し、一気に変わったのと同じように、既に行動を開始したのが遠い昔のことと感じている魔理沙にとって、
人間達もそろそろ己の行いを戒めているころだろうと言う実感が起こるのは当然のことである。
 空を見上げれば、晴れ晴れとした空が高く上っている。
 おそらくは、そろそろ実りの秋になる。
 そうなったら、自分も越冬の準備をしなくてはならない。
 いくら人間達が反省して、自分たちがゆっくりできるからと言って、越冬には大量の食材が必要になってくる。

「でも、ことしはいっぱいゆっくりできそうだね!!」

 魔理沙はこの行動が無事終えた暁には、霊夢と夫婦になろうと決意していた。
 もともと、小さい時から一緒に遊んでいた霊夢である。
 自分たちにも、お互いを意識していることは分かっていた。
 それ以上踏み込めなかったのは、単にタイミングが掴めなかったからであった。
「ゆへへぇ~~♪ れいむとたっくさんすっきりして、いっぱいあかちゃんをつくるよ!!」
「そうして、まりさのぶゆーでんをたっくさんはなしてあげるよ!!」
 思い描いているのはバラ色の未来。
 それは、綺麗すぎるほどであった。


 季節は進む。
 魔理沙はの行動もいよいよ終幕である。 
「そうだ!! きょうは、ちょっとれいむのよ~すをながめてからいこ~ね!!」
 そのままにこの物語を終えるのに、何か納得のいかないものがあったのだろう。
 この日、魔理沙は街へ出かける前に、広場で遊んでいる霊夢の姿を一目見ようとコースを変えた。
 久しぶりに通るゆっくり道。
 草すらも踏み固められていない道。

 いつもはほかのゆっくりで賑わっているはずのその道は、どういうわけか今日はシンと静まり返っていた。
「ゆゆゆ!! きっとみんなえっと~じゅんびでいそがしいんだね!!」

 なんたって、食べ物はどっさりあるからね!!

 こんなにも早く、みんなが幸せになれるとは思ってもみなかった。
 やっぱり、自分のしたことは正解だったんだね!!
 さぁ、ここを抜ければ霊夢達のいる広場だよ!!

「ゆゆ!! みんなでにげるよ!!」
「みんな? どこにいったの? ゆっくりでてきてね!!」
「ゆーー!! どうしてだれもへんじをしてくれないの!!」

 霊夢の姿を見つけた直後、魔理沙はかくれんぼをしているのだと思った。
 数秒後、霊夢が鬼になっているのだと思った。
 数分後、霊夢だけが生きていることに気づいた。

「れれれれれいいぶーー!!!! いっだいどーしだのーー!!!」
 自身の同様もさることながら、さらに動揺している霊夢の元へ、一直線に駆け寄っていく魔理沙。
「ま、まりざーーー!!!」
 近寄って見ると、魔理沙は霊夢が見ていた景色を改めて見直した。
 そこらじゅうに転がっているのはゆっくりの亡骸。
 そして、そこらじゅうにできている水たまりは餡子である。
 もちろん、その餡子はゆっくりの体の中に入っているものだ。

「どうしてこんなことになったの!! ゆっくりせつめいしてね!!」
「ゆゆ!! にんげんさんが!! にんげんさんがやったんだよ!!」
「ゆ!! にんげんさんはまだこりてなかったんだね!!」
 再び魔理沙の中に怒りの炎が燃え上がった。
 以前とは比べ物にならないほど大きな炎である。
「にんげんさん!! ゆっくりしていないで、はやくでてきてね!!」
「ま、まりさ……」
 傷こそ負っていないが、逃げるのに体力を使いすぎたのだろう。
 体を大きく震わせ、統一の取れない呼吸を繰り返す霊夢。
「ゆゆ!! れいむはゆっくりしててね!! まりさがゆっくりやっつけるからね!!」
 そんな霊夢を元気付けようと、魔理沙はこれまでの事を簡潔に話し出した。
 本来は、全てが終わった時に話そうと思っていた自慢の武勇伝。
 そして、一緒に暮らしたいという事を。
「まりさ……。すごいね。まりさはすごいね!!」
 得てして、魔理沙の思いは全て受け入れられた。
 幾分、調子の取れてきた霊夢が、魔理沙の行動に対して、賞賛の言葉をかける。
 本来は、こんな筈ではなかったが、逆にこの様な状況で霊夢が受け入れてくれた事で、魔理沙の気分は限りなく高く上っていった。 

「まっててね!! いま、にんげんさんにあさまってもらうからね!!」

 弾丸のようにその場から駆け出した魔理沙は、一目散に人里への道を駆け下りていった。
 霊夢から聞いたところでは、人間はまだ近くにいると踏んだ魔理沙は、精一杯の速さでどんどん突き進んでゆく。
「ゆ!!」
 そして、大きな曲がり道を抜けたところで、タバコをふかして休んでいる人間の集団を見つけることが出来た。
 その様子から、人間たちは安心しきっていると感じた魔理沙。
 その瞬間、体が自然と動いていた。
「にんげんさん! れいむたちにあやまってね!!」
 怒り心頭。猛然とそこへ突っ込んでゆく魔理沙。
 おそらくは、こいつらが霊夢に酷いことをした人間だろうと踏んだ上での行動である。

「リーダーサン。まぁだ、テークイットイージー、リビングシテマシタヨー!!」
 しかし、魔理沙の思い描くような結果にはならなかった。
「ゆぐ!! いだいよ!! なにするの?」
 所詮は饅頭である。
 文字通り、あっと言う間にに捕まり縄で縛りあげられてしまう。
 身動き一つ出来なくなった魔理沙であったが、この位でくじけなかった。
 それでも尚、口調だけはしっかりと、人間たちに食ってかかる。

「なにするの!! って俺らは野良ゆっくりの駆除に来たんだが? ……なぁ、この魔理沙か?」
 一人の男が、何かに気付いたように尋ねると、他の人間たちは口々に肯定の意を唱えだした。

「なんだ、おまえか。お前が人間の里を荒らすから、こういうことになったんだぞ」
 戒めるでもなく、子供を諭すような口調で魔理沙に語りかける男。
「そんなのしらないよ!! まりさはゆっくりできるように、こーどーしてたんだよ!!」
 しかし、そんな事は理解できずに、魔理沙は精一杯の厳しい口調で自分の行動を正当化しようとする。

「まぁ聞けよ。お前らが勝手に俺らの作ったものを捨てたり、壊したり。挙句の果てには飼われていたゆっくりの、
区別するために付けられていたバッジを無理やり毟り取ったりしていただろ?」
「あれはみんなのものだよ!! にんげんさんたちが、かってにじぶんのものにするからいけないんだよ!! ほかのゆっくりだって、むりやりとじこめたんでしょ!!」
 聞く耳持たず。
 その魔理沙をみて、やれやれと肩をすくめる人間たち。
 このまま平行線を辿るのかと思い始めたとき、あの男が口を開いた。
「なら、聞いてみるか?」
「ゆゆ……?」
 そう言って男が持ち出してきたのは、一匹のゆっくりであった。
「ゆゆ!! ありすだね!! にんげんさんにつかまったんだね!!」
「そんなわけないでしょ!! ゆっくりりかいできないの?」
 魔理沙の発言を一刀両断したのはゆっくりは、カチューシャに金色のバッジを付けているゆっくりアリスであった。
「ゆ……? ゆ?」
「い~~い? のうそんぶにすんでいるまりさにもよくわかるように、としぶにすんでるありすがおしえてあげるわ!!」
 そのまま、魔理沙の目の前まで近づいたアリスは、まるで子供に難しい話を教えるかのように話し始めた。

「はたけっていうところにあるおやさいは、みんなにんげんがつくったものなのよ」
「ゆ!! うそつかないでね!!」
「なら、なんでほかのばしょよりもきちんとしていて、おつちのいろがちがって、かってにぼうやひもががってあるの?」
「ゆぐ……」

「それに、ありすたちはにんげんといっしょにくらせて、しあわせなのよ」
「ゆ……ゆ……」
「でも、そのしあわせなありすのおともだちのなかにも、あなたのせいでゆっくりできなくなちゃったのがいるのよ」
「ゆぐぐ……」

 アリスは淡々と、しかし分かりやすいように話を続けてゆく。
 その中には、ここの周辺の野生のゆっくりは、今まで人里を襲わなくてゆっくりしていたこと。
 一匹のゆっくりによってそれが壊されたこと。
 余りの被害の為に、一斉に山狩りが行われたこと。
 それは、あくまで周辺の山一つだけであって、奥のまでは行わなかったこと。
 などなどであった。

 そして、自信満々に語るアリスに、まったく反論が出来ないまま次々と説明されてゆく魔理沙。
 直ぐにマルッと信じるのがゆっくりの良いところである。
 そんな事が諺化している程、ゆっくりはころころ言われた事を信じる。
 結果として、魔理沙が今まで築いてきた信念は、あえなく音を立てて崩れる事となる。
「でいぶ!! ごめんね!! もっどゆっぐりじでほしかったのにーー!!」
 同時に出てきた言葉は、好きであった霊夢への懺悔であった。
 霊夢の為に、と思って行動していたことが、全て意味のない、むしろ逆効果だった。
 その事が、魔理沙の心に、強い後悔を埋め込んで行った。
 同時に、大きすぎるそれによって、魔理沙の心は砕けてしまう。

「……ゆ。わるいのはまりさだよ……。 だから、まりさをゆっくりころしてね。ほかのゆっくりはみのがしてあげてね」
 魔理沙の口から出てきたのは、お願いの言葉であった。
 今まで、目の敵にしてきた人間に対するお願いであった。
 それは、自分のしてきた事を理解した魔理沙が出来る、せめてもの罪滅ぼしと考えたからであろう。

「ん~~。……」
 男の一存では決められない。
 一旦人間たちが集まり、相談をする。
 白熱する事もなく、モノの数分で話し合いを終えた男は、先ほどと変わらぬ表情で魔理沙に結果を報告する。

「別にいいよ。元々は君が目的だったし」
「ゆ……。ありがとうね……」
「でも、もうこの辺りにゆっくりは殆どいないぞ。少し前から、何度か山狩りはやってたし。まぁ、それは、仲間意識が強いから、
感化された可能性も含めてだったんだけどな」
「ゆ……。そうだったの…………」
 魔理沙はそれっきり黙りこんでしまった。
 それは、魔理沙なりの意思表示の証か、はたまた精神の限界が来てしまったのか。
 理由は分からないまま、男はただの饅頭と化した魔理沙を抱え、他の人間と連れ立って山を降りていった。


~~~~~~

 それから一ヶ月がたった。
 それでも尚、あの魔理沙は食事を取らされ生きていた。
 否、無理やり生きさせられていたというほうが正しいのかもしれない。

 街の一角に立てられた見世物小屋。
 ここが魔理沙が連れてこられた場所である。

「……とまぁ。このゆっくりが原因で沢山のゆっくりが犠牲になったんだよ」

「ゆっくりしていたぱちゅりーーをかえしてね!! せっかく、せっかくまりさがごーるどばっじをとったのに……。
おまえなんかゆっくりしね!!!!!」

「わかってねー!! あのまりさみたいになっちゃだめだよー!!」
「ゆっくりりかいちたよ!!」
「さっすが、ぎんいろぷらちなばっじのれいむとちぇんのこどもだね!! ゆっくりしてあたまがいいね!!」

「……!!! ……………………!!!!!」

 そこには、毎日のようにゆっくりや、飼いゆっくりを連れた人間たちがやってくる。
 教育。
 怒り。
 そして侮辱の対象として。
 しかし、その殆どが飼いゆっくりの為、飼い主の言いつけを守り攻撃のアクションを起すゆっくりはいなかった。

 理由は様々である。
 しかし、舌も歯も抜かれ、足も焼かれてしまった魔理沙には、ただ聞く事しか出来ない。
 反論か、それとも謝罪か。
 残念ながらそれを確かめるすべはない。




「まりさ!! れいむがきてあげたよ!! ゆっくりしていってね!!」
 そして夜。
 魔理沙の元へ駆けつけてくる一匹のゆっくり。 
「……!! …………!!」
「ゆっくりりかいしたよ!! たべものをもってきたよ!!」
 そう言うと、一旦自分の口に含み、柔らかくしてから口移しで魔理沙に食べさせる。
「……!!」
「おいしいんだね!! ゆっくりたべていっていいからね!!」

 この霊夢は、何を隠そう魔理沙と将来を誓い合ったあの霊夢である。
 あの後、他のゆっくりが沢山いると山の奥のほうに移り住んでいた霊夢は、魔理沙がまだ生きている事を知って、毎晩こうして尋ねてくるのだ。

「ゆゆ♪ まりさ♪ れいむのあたまをよっくみてね!!」
「……? ……!!」
 嬉しそうに話す霊夢の頭には、妊娠の証である蔓が生えていた。
 魔理沙は相手を知っている。
 毎晩ずっとすっきりしていたからである。
 そして、今までは妊娠する事がなかった事も。

「ゆへへ♪ まりさ!! もうすこしのしんぼうだよ!! このこどもたちがおおきくなったら、にんげんにそうこうげきをかけるよ!!」
「……!! ……!!」
「ゆっくり~~ばんじおけ~~だよ♪ まりさだけでも、にんげんにだいだげきをあたえたんだから、これだけいればらくしょうだよ♪」
「ゆっくり~~♪ していってね~~~♪」

 あの時。
 魔理沙の一句一句に目を輝かせていたときと同じ顔をして話す霊夢。
 しかし、口が利けない魔理沙にはどうする事も出来ない。

 “今直ぐにでも死んでしまいたい”

 そう思った所でどうする事もできない。
 もしかしたら、数ヵ月後、ここを譲る形で自分は死ぬのだろうか?
 ふっと、そんな考えが魔理沙の頭を過ぎった。
 出来れば、その前に死んでしまいたいとも思った。 


「ゆゆゆ~~~♪ れいむは~~ゆっくり~~♪ ……」
 そんな魔理沙の思いを知ってか知らずか、霊夢は暢気に歌を歌い続けている。
 その暢気な歌を聞くと、魔理沙は瞼の裏に、山の中でのんびりと暮らしていた情景が淡々と映し出されていくのだった。



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最終更新:2011年07月27日 23:22
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