紅魔館といえば、悪魔が住む屋敷として有名な場所である。
しかし、その主はお祭り好き。
そして、幻想郷も多少近代化してきた折、いろいろと外来の文化が入り込んできた。
今日はクリスマスイブ。
紅魔館は朝からパーティーの準備で忙しい。
「さくや〜〜♪ パ〜ティ〜の準備はどうなってるの?」
「飾りつけは終わりました。後は料理の完成を待つだけです」
「そう。それじゃあ、私は霊夢を呼んでくるわ」
それだけ言い残して、紅魔館の悪魔は神社の方へと飛んでいった。
ついでに越冬中のゆっくりれいむの巣を破壊しながら。
「う〜〜♪ さぐや〜〜♪ ぷっでぃ〜んぱ〜て〜はすすんでるんだぉ〜〜?」
「はいはい。あと少しで終わりますよ」
「う〜〜♪ ぷっでぃ〜〜んだどぉ〜〜♪」
そしてもう一匹。
屋敷に住んでいる、ゆっくりれみりゃが咲夜を尋ねてきた。
このれみりゃ、元々は咲夜が飼い始めたものであったが、棟の咲夜は最近興味が無いようである。
曰く。お嬢様のように扱き使ってくれないから。だそうだ。
「さてと。……」
ぱたぱた走り去っていくれみりゃの後姿を背中で追いながら、咲夜は厨房へと姿を消した。
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「うっう〜〜♪ あうあう〜〜♪」
何時にもましてご機嫌なれみりゃ。
そのわけは、今日はクリスマスと言う特別な日であることであった。
「う〜〜!! ざぐやーー!! ざぐやーー!!」
「およびですかおぜうさま!!」
迷子が親を探すような口調で呼んだのは、一匹のゆっくりであった。
さくや種であるそのゆっくりは、最近連れてこられたもので、れみりゃの近くにいることが多い。
「しゃぐや〜〜♪ きょうはくっりすすうがくだどぉ〜〜♪」
「そうですねおぜうさま!! きょうはぜんやさいです!!」
いまいちかみ合っていない会話だが、それでも二匹は意思の疎通が取れるらしい。
その証拠に、れみりゃはいつも通りニコニコとして、さくやも嬉しそうにしている。
「うっう〜〜♪ とうとうじっこうするときだどぉ〜〜♪」
「そうですね!! おぜうさま!!」
主に、本家姉妹とその従者が行ったならば、相当の雰囲気を出せるであろう言葉を発した二匹は、いそいそと自分達の部屋に戻っていった。
「うーー!! う〜〜〜!! くろうぜっとにいしょ〜〜がいっぱいだどぉ〜〜♪」
ダンボールで区切られた一角。
その中にあるダンボールの中から、手袋や原色まぶしい長靴などを取り出すれみりゃとさくや。
簡単な着衣にたっぷり時間をかけ、漸く準備が整ったようだ。
「う〜〜♪ じゅんびばんたんだどぉ〜〜!!」
「それでは、まいりましょうおぜうさま!!」
そのまま、玄関を抜け門へ。
珍しく揚げパンを食べていた美鈴に、ケーキを取っておけと命令し、そのまま門の外へ。
そして、自慢の羽を広げいざ目的地へ。
さくやが、1/2程の速さでついて行く。
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人里。
午前中、半獣の先生がやってる寺子屋に、サンタコスをしてプレゼントを届け終えた男は、貰った謝礼金で酒を買い家に戻っていた。
ちなみにその服は森の魔法使いが作ったものであったが、受け取る際。
「これをきて、魔理沙に…………うふふ。うふふ」
などと訳が分からない事を言っていたが、一日寺子屋で先生を見て、男も完璧に理解したようだった。
「さぁーて。いい夢見れるように酔っ払うか」
淡い夢を思い描きながら、玄関を開け、中に一歩入ろうとしたときだった。
「うっう〜〜♪ まつんだどぉ〜〜!!」
「そうですわ!!」
聞きなれない声を聞いたのは。
「?」
男は意味が分からなかった。
どう見ても、目の前にいるのは飼いゆっくりである。
手袋や靴を履いていることから分かる。
そして、それは紅魔館のゆっくりであろうと言う事も分かった。
キャラクターがデザインされた手袋に、長靴。
そこに、ぜんせかいれみりゃさま!!! とかかれていたら安易に想像できる。
「で? なんか用?」
分からないのは何故ここにいるか。
たしか、いまの時間は紅魔館でパーティーをしているはずで、メイド長も急がしいはず。
永遠亭の主もそれに行っているので暇だ、といって手伝ってくれた女性が言っていた事を男は思い出していた。
「う〜〜♪ かんたんだどぉ〜〜♪」
「そうですわ!!」
「れみりゃが、およめさんになってあげるんだど〜〜♪」
「…………へ?」
じっくり一呼吸おかれて話されたれみりゃの内容に、男は一瞬で言葉を返した。
「だから〜〜♪ れみりゃがおよめさんになってあげるんだどぉ〜〜♪」
この男、間違っても、ゆっくりを恋愛対象になど見ていない。
そもそも、ロリコンでもない。
薬売りの兎の目を見てもその様な事はない。
むしろそのまま兎に惚れることは間違いない。
「う〜〜〜♪」
対するれみりゃは、余程絶対の地震があるのだろう。
何時にもましてすばらしい笑顔で男の事を見つめている。
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このれみりゃ。
以前、咲夜のお使い際に連れられて街に来たとき、男を一目見て一目ぼれした。
新しく出来た、カスタードケーキがとかいは美味しい今川焼き屋のオープンスタッフとして、首から下、怪獣のぬいぐるみを着てプラカード持ちをやっていた男。
れみりゃは、男のその服と甘い匂いを嗅ぎ、いても経ってもいられず咲夜をなきながら呼びつけた。
当初は、何故ないているのか分からなかった咲夜であったが、店を指差し泣いているれみりゃを見て納得し、十個ほど今川焼きを与え、泣き止んだ事を見てから自身の用事を再開した。
それはそのときで終わったが、れみりゃはその後も男の姿をちらほらと見かける事になった。
主に、自分が気に入った、新しく出来たスイーツの店に、必ず気ぐるみを着てやってくる男。
当初はただ単に喜んでいただけであったが、咲夜が構ってくれなくなってくると、いつも甘いお菓子と服を着ている男にが気になっていた。
咲夜のれみりゃ熱が冷め、比較的自由に外に出れるようになってから、男の後を付けて家を見つけることも出来た。
ゆっくりでも分かりやすい立地であった事も幸いしたが……・。
そうして、その頃になって、れみりゃは男と結婚する事を考え始めた。
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「うっう〜〜♪ こんなかわいくて、こうまかんのあるじなんだどぉ〜〜♪ おまえにふじゆうはさせないんだどぉ〜〜♪」
紅魔館の主。
これこそがれみりゃの自信を絶対のものへと昇華させていた。
おまけに飛びっきりのおめかしもした。
まさに完璧だった。
「ふ〜〜ん……。で、お前は一人でここまで来たの?」
「ふ〜〜♪ このさくやといっしょだどぉ〜〜♪ で〜も! ふたりっきりになりたいなら、さきにかえすどぉ〜〜♪」
「まぁ、おぜうさま!! だいたんです!!」
変な目線で見つめてくるれみりゃを無視し、なるほどと納得したような男は、半開きだった玄関を
開け、二匹を招きいれた。
「まぁ。外は寒いから二匹とも中に入れよ」
「うっう〜〜♪ うまくいったどぉ〜〜♪」
「さすがですわおぜうさま!!」
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結果として。
れみりゃは男に全てをささげる事が出来た。
「うあーー!! なんだどーー!! なんだどーー!!」
金のない若い青年にとって、れみりゃは貴重な食料になった。
「やめるんだどーー!! れみりゃはおぜうさまだどぉーー!!」
セオリーどおりに、処理していく男に向かって叫ぶれみりゃの顔は、まさに信じられないといったものであったが、男は構わずに処理を続ける。
「うあーー!! れみりゃのおべべーー!! おべべーー!!」
防寒具を取り去り、縄でがんじがらめにする。
季節は冬。
能天気なれみりゃでも寒さを感じるのは同じである。
「うーー!! さむいんだどぉーー!! はなすんだどぉーー!!」
やれ縄を解け、暖炉を入れろ、お湯割をもってこい。
そのどれもが無理な事である。
結果として、そのまま放置される事となる。
「うあーー!! ざむいーー! さぐやーー!! ざぐやーー!!」
天井から吊り下げられたまま、必死に名前を呼ぶれみりゃ。
人間のほうの彼女は、今は実際の主の頬についたクリームを拭いていることだろう。
ゆっくりである、さくやは、最初にれみりゃが危機なったときに男に向かっていき、たたき潰された。
「はいはい。大事な食料はそこでおとなしくしててね」
それだけを言い残し、男は台所を後にする。
「まつんだどーー!! こうまがんのあるじのれみりゃだどーー!! おむこさんにしてあげるんだどぉーー!!」
散々叫んでいたれみりゃであったが、男が酒を煽って男が眠りに就くよりもはやく、眠ってしまった。
これから、数週間。
れみりゃは夢にまで見た男との生活を満喫できるであろう。
「慧音さんですか? ええ。正月は、……。そうですか。それじゃあ、僕もお手伝いします。ええ、慧音さんに合わせて、僕も和服を着ていきますから」
ただ、男がれみりゃに好意を持っていたかは、誰も知らない。
最終更新:2011年07月27日 23:37