ゆっくりいじめ系1899 魔理沙とまりさのキノコ研究 二日目



「ゆ・・・ゆっくりしていってね!」
起床と同時にいつもの挨拶、今日はやけに自分の声が響いて聞こえた。
「ゆ、そうか・・・」
まりさは箱の中に入れられたままだった。
いつもと同じ調子で張り切って日光を浴びにいこうとしたまりさは自分の状況を改めて思い出すとしゅんとしょげてしまった。

横にいる友人の「まりさ」はまだすぅすぅと寝息を立てていた。
自分の挨拶を返してくれてもいいのにとまりさは狭い箱の中でぷくっと頬を膨らませた。
「ほら、二匹とも。朝ご飯だぞー。」
そう言って暗がり現れた人間は両手に皿を1枚ずつもっていた。恐らくあれがここでの朝ご飯なのだろうとまりさは思った。
二匹が入っている箱はどちらもちょうど口周辺の壁面が蝶番で固定されており、まるで玄関扉の新聞入れのように開閉が可能だった。
食事はそこを介して行われた。人間がまりさ達の口元に運んできた食べ物をまりさ達が食べるという飼いゆっくりですら滅多にやってもらえないような食事方法だった。

「どうだ?うまいか?」
「ししししあわせー!!!!」
初めて人間の家で食べた朝ご飯にまりさは感動した。それは昨日食したお気に入りのキノコよりも遥かに美味だったからだ。
「お、お姉さん!もっと!もっとちょうだい!」
「ははは、大丈夫まだまだあるぞー。」
「ゆゆーん!!」
まりさは箱の狭さや周りの暗さに抱いていた不快感を吹き飛ばすようにがむしゃらに口内に運ばれてくる食事に舌鼓を打った。

しかし、それとは対照的に友人の「まりさ」は同様に運ばれてくる食事に全く反応を示さなかった。
それは食べ飽きた等という様子ではない。そもそも限られた食料事情で生活していたまりさ達の群れの中で「飽きた」と言って食事を拒む、文句を言うということは言語道断であった。
ましてや狩りを行う事で生活していた「まりさ」が食事に対して敬意の念を払う事は当然の事だった。
そんな「まりさ」が与えられた食事を不満そうに咀嚼して飲み込む様にまりさはまたもカチンときた。
「なにやってるのまりさ!せっかくもらったおいしいご飯にしあわせにならないなんてお姉さんとご飯に失礼だよ!」
「ゆゆゆ!そ、そうだったね。まりさすっかり忘れてたよ。お姉さん、ご飯さんありがとうね!」
「お、後から来たまりさは礼儀正しいなあ。でも先に来たまりさも最初は私にしっかりと礼を言っていたんだぞ。」
「ゆっ!そうだったの!?」
「ああ。でも病気のせいかなあ、だんだんと元気がなくなってきて今みたいな様子になっちゃたんだよ。」

それを聞いてまりさは「まりさ」に申し訳なく思った。病気で元気の無い「まりさ」に体力を使わせる様な事を無理強いさせてしまったのだから。
「ゆぅー、ごめんねまりさ。疲れてるのに無理する様な事言って・・・」
「いいんだよまりさ。ご飯をもらってお礼を言わないまりさが間違っていたんだよ。これからはゆっくりしっかりお礼を言うよ!」
「うんうん、二匹とも礼儀正しくてなによりだ。
 ところで二匹に相談なんだが聞いてくれるか?」
「ゆ?」「ゆゆ?」
「どうも二匹とも『まりさ』っていうのは私にはちょっと分かりづらいんでね。先に家に来たまりさを『先まりさ』
 後から来たまりさを『後まりさ』って呼んでもいいかい?私がそう呼ぶだけだからさ。」
この提案に二匹は戸惑った。二匹は互いに自分がまりさである事を自覚し、また相手もまりさであると認識していたからだ。
そのゆっくりに似合わない微妙なニュアンスは人にとってはとても理解しがたい物だった。
少しの間だけ二匹は相談するように互いをチラチラと見つめ合うと決心がついたようにキッとした顔つきになり、
「いいよ!お姉さん!まりさ達の事はそう呼んでね!」
と声高らかに承諾した。
「おー!ありがとうな先まりさ、後まりさ!」
「ゆゆーん!」
二匹は壁に遮られつつもまるで頬をすりあわせるかのようにお互いに向かって背伸びをした。


食事が終わると二匹は暇になったので談笑する事にした。とはいってもその内容のほとんどが後まりさの質問となった。
先まりさは一体何時からここにきたのか、ここでの生活はどんなものか、今まで寂しくなかったのか等、後まりさは自分が気になる事を次から次へと先まりさに質問した。先まりさは後まりさより多少賢かったのか全ての質問に対して事細かに答えてくれた。
「まりさは三日前にここにきたよ。どうしてここに来たかは覚えてないけどとても疲れてたよ。それから始まったここでの生活はあまりゆっくりしてなかったよ。狩りはしなくていいけどお友達がいなかったんだもん。だから寂しかったよ。まりさ一匹でこんな暗い所にいる事はね。」
先まりさの眼は疲れているせいもあってかどことなく下を見つめていた。今までの辛さもその疲れを増幅させているようだった。

「でも今は寂しくないよ!」
そう言って先まりさは突然顔を上げて後まりさを見つめた。後まりさにはその先まりさの眼が先程とは違って小さな光が宿っているように見えた。
「だって今はまりさがいるんだもん!同じ病気になっちゃったのは残念だけどまりさが来てくれてとてもうれしかったよ!ありがとうまりさ!!」
先まりさは後まりさに対して精一杯の笑顔で感謝を言った。その明るい笑顔に静かに聞いていた後まりさの涙腺が思わず緩み、決壊した。
「ま゛、ま゛りざぁぁぁ!!!!おびょうきなおっだらいっしょにかけっごしようね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」

気丈に振る舞っていた先まりさも後まりさの号泣についに感情が爆発した。大きく開かれた眼と口からは尋常ではない涙と声が溢れ出した。
「う゛ん゛っ!!!ぜっだい゛まりざが勝ってみせるからね゛!!!!」
二匹は泣いた。泣きながら病気が治った後のことを叫ぶように語り合った。
一緒に狩りヘ行こう。あの湖で帽子ボート競争をしよう。たくさんの木の実を集めた方があの可愛いぱちゅりーに告白しよう。
溜ったストレスと寂しさを一通り吐き出し終わった二匹は友人がいるという安心感と叫んだ事による疲れで昼食前にまた寝息を立て始めていた。




「朝ご飯だぞー!ゆっくりしてないで起きろー!」
今では聞き慣れた人間の声で後まりさは目を覚ました。どうやら昨日昼前に寝てから丸々24時間近く寝てしまったらしい。
今までこんなに寝た事が無かった後まりさは何だか時間を無駄にしてしまった様な気がして残念に思ったが
これもゆっくりしていていいかもしれないとすぐに考えを改めた。

「いやーよく寝てたなー。余程疲れてたんだろう、無理するなよ?」
昨日同様に今日も二枚の皿を持ってきてくれた人間はまりさ達の事を心配してくれているのか二匹をじーっと見つめている。
すると人間は先まりさの方に何か良いものでも見つけたのかパァッと顔が明るくなった。
「ちょ、ちょっと待ってろ。食事はすぐやるからちょっと待ってろ!」
そう言うと人間は皿を地面において取り出した手帳に何やらすらすらと書き出し始めた。
ゆっくりである二匹にはそれが何の事であるか全く分からないが何か喜ばしい事が人間に起こったのであろうという事は理解できた。

「お姉さん!何か良い事あったの?」
「うん?あ、そうそう!先まりさ・・こっちのまりさな。うまく行けば今日明日に病気が治るかもしれないぞ。」
「ほ、ほんとに!?」
「あぁ、うまくいけばの話だけどな。」
「よかったねまりさ!病気なおるって!」
そう言って先まりさの方を見た後まりさは不思議な違和感を感じた。
周りが多少暗いので気づかなかったが何やら先まりさがぼやけて見える。
後まりさはそのことを起きたばっかりだから眼が慣れていないのだろうとい事にしたがまだ別の違和感は拭えていなかった。

それは当の病気が治ると言われた先まりさが人間の宣告に対して何の反応も示さなかったのだ。
どうしたのまりさ、具合が悪いの?と聞いてもうんともすんとも返事が無い事に先まりさは不安を感じた。
「お姉さん!まりさが返事してくれないよ!本当に病気なおるの?」
「大丈夫大丈夫、今は薬をあげているから気持ちが落ち着いているだけだよ。もうすぐ治るからさ。」
「ゆ、ゆぅ・・・」

後まりさはなぜか納得できなかった。それは森で駆け回っていたゆっくりとしての本能が囁いてたのだろうか、後まりさはなぜか自分達が取り返しのつかない所にいる様な気がしていた。
おかげで昨日あれほど感動した朝食にも満面の笑顔で「しあわせー!」とは言えずただ口に含んだ物を咀嚼し飲み込むだけだった。
先まりさに至っては一口も朝食を口にしなかった。どう見ても昨日より具合の悪い先まりさが本当にもうすぐ病気が治るのか?
後まりさの疑問はその日の正午まで自身をゆっくりさせない程に大きかった。


「まりさ、お昼ご飯もおいしかったね!」
「・・・・・・・・」
「もうすぐ病気なおるんだねまりさ。」
「・・・・・・・・」
「いいなあ先に治って。まりさも早く治したいよ!」
「・・・・・・・・」
「治ったられいむ達によろしくね!まりさもすぐに戻ってくるからね!」
「・・・・・・・・」
「ねえ、まりさ。大丈夫?」
「・・・・・・・・」
「まりさ、お願い返事して?」
「・・・・・・・・」
「どうして・・・?」
「・・・・・・・・」
「どうしてへんじしてくれないのぉぉぉ!!!!」

後まりさ自身も病気のせいか元気は無かった。しかしそれでも会話の無い静かな時間が続く事の方が後まりさにとっては耐えられなかった。
元気を奮い立たせてなんとか先まりさと会話をしようと試みたが結果相づちの一つもうってはくれなかった。

「おねーさぁん!!おーねぇぇさぁぁん!!!」
「はいはいどうしたどうした。」
「まりざがぁ!まりさがしゃべってくれないのぉ!!!どうじでぇ!?もう治るんじゃないのぉ!!?」
後まりさのあまりの気迫に流石の人間も押し負けそうになる。
「いや、まあまあ・・・落ちつけって・・・」
「お願いでず!!まりさを助けてあげてぇ!!とても辛そうな゛の゛!!!」

まりさの願いを聞くと人間は何かを考えるように顎に手を当てて唸りだした。
そのまま10秒程唸り声をあげると何か思い切ったように、よしっとつぶやいて後まりさを見つめた。
「まりさ、実はな」
「ゆっ?」
涙目の後まりさは自分達の命運を握る人間の声に注げる限りの集中力を注いだ。


「お前ら病気じゃないんだよね。」
「・・・ゆっ?」
「ほら、これ見てみ。」
そう言うと人間は先まりさの入った箱の天井にすっと手を入れると先まりさの帽子をひょいとつまみ上げた。
「・・・・・・!!!」
先まりさの帽子の下を見た後まりさはその光景に絶句した。
先まりさの頭にはさっきまでかぶっていた三角帽子に劣らない程に大きいキノコがニョキッと生えていたのだ。


「どどどどういうこどぉぉぉぉーーーー!!!!!」
「いやぁ実はね、今とあるキノコの栽培方法について模索してたんだけどさどうやらお前らゆっくりが苗床になった方がキノコの発育がいいらしくてさあ。」
「な゛に゛いってるのかわがんないよぉ゛ー!!!」
「それでれいむ種とか捕まえてキノコを育てようとしたんだけど連中の頭にキノコが生えたら当然おかしいと思うだろ?
 苗床が苗床だから精神面もキノコの発育に関係するかなーって思ったんで最初はでかい帽子をかぶってるお前らを実験に使ったんだ。」
「だがらわがんないっでばー!!!」
「もう一匹はすでに完成している様なもんだからさ。ほらこんな事してもほとんど動かないだろ。」

そう言うと人間はおもむろに先まりさの顎周辺の皮を掴むと思い切り引きちぎった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛まりざのお顔があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
叫ぶ後まりさとは対照的に先まりさは顎の皮が引きちぎられ不気味にも歯茎が露出している。
それでも先まりさは目が半分開いたままどこか遠く見つめて微動だにしない。

「ほら何も言わない、動かない。つまりこれで一つの実験は終了だ。だからもう1つの実験対象、すなわち興奮状態にあるゆっくりでのキノコの発育状況は如何に!ってことで。ああ、当然お前の頭にもキノコ生えてるよ。」
その発言に先まりさははっとした。今現在の自分の体の疲れがそのキノコによる物だという事がはっきりと理解できたからだ。
「どうして・・・!!どうしでえ゛!!!どうしでこんなごどするのお゛!!!!」
「どうして・・・?んー、しいていうなら・・・」
そう言うと人間は後まりさに向かって満面の笑みで言い放った。


「人間の知的探究心はゆっくりに勝る!ってことかな。」
「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ここからまりざ達をだじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!おうちかえるぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」



人間が宣言した病気の完治まで残り一日。そのことが何を意味しているのか、後まりさは知る由もなかった。

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最終更新:2009年01月08日 03:36
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