ゆっくりいじめ系2299 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編その2-2



そんなこんなで三週間。
当初は指先ほどのサイズだった赤まりさたちも、日が経つにつれて子ゆっくり程まで成長していた。
生ゴミの中に紛れ込ませた成長促進剤のおかげもあり、印付きまりさ達の肌はつやつや。身体能力も同世代のゆっくりより優れている。
長女まりさも、今ではすっかりと飛び跳ねることができるようになっていた。移植した目もよく見えるという。
お兄さんとゆうかの教育によって、すでに年齢以上に見た目も中身も立派なゆっくりだ。
人間から見ても、十分なほどの優良さで、愛で派ならばすぐさま抱き上げ頬ずりしたくなるだろう。
傍目にはとても幸せに過ごすゆっくりに見えるはずだ。だが実際のところ、長女まりさたちは幸せとは縁遠い生活を送っていた。
朝は早く夜は遅い。午前中は体力的に厳しい畑作業、午後はゲスまりさの習性と虐待ビデオを見せられる日々。
もし途中で疲れたと居眠りしようものなら、すぐさまゲス箱か激痛を伴ったお仕置きが待っているせいで休む時間など殆どない。
かといって食事を急いで床を汚せば、これまたゲス箱かお仕置きだ。印付きたちには緊張の連続である。
これのどこがゆっくりなのだ。誰もがそう思うだろう。それでも子まりさたちは、これがゆっくりとしてのあり方なのだと信じていた。
自分の命を助けてくれたお兄さんと、農作業を教えてくれたゆうかお姉さん。
本当に忙しく、幼い身体には過剰な負担を与えられる日々ではあった。
だが、辛いと挫けそうな時、必ずお兄さんは長女まりさ達に向ってこう言うのだ。

「母親と一緒にいるよりはずっと幸せだよね?」

ただ暴力を振るう母親と、厳しくも生き方を教えてくれるお兄さん。答えは考えるまでもない。
さらに彼は、もしあのまま母といても、きっとゆっくりできなかった。と、仮想の辛い日々を子まりさ達に刷り込ませたのであった。
例えそれが人間の仮定であっても、命の恩人を疑う知恵なぞ幼いゆっくりが持つわけなどない。
そのうえ長女まりさ達は、ゲスと関わったゆっくりの末路なぞ、嫌と言うほどビデオで見せられてきた。
これにより長女まりさ達は、辛いと感じるたびに自ずと、ゲスとの生活と今の生活を比較しては自分たちを慰めるようになった。
ゲスと関わればゆっくりできない。ゲスとは一緒にいてはいけない。ゲスは全てのゆっくりの敵だ。
あんなのと一緒の生活なんて、考えたくもない。きっと、とてもゆっくりできない最悪の日々を送ることになるだろう。
だから、今の生活は幸せなんだ。きっと幸せなんだ。ゲスといるよりずっとゆっくりしているに違いないんだ。
何度も自身に言い聞かせる子まりさ達。楽をしようと考える本能を、どうにか抑えつけている。
タンポポの茎より折れやすいゆっくりの根性にしては大したものだが、そこには理由があった。
少し前に、お兄さんはとある約束を子まりさとしていたのだ。

「もう少し大きくなったら、まりさたちのいたお家に返してあげるよ」

その言葉に長女まりさ達が喜んだのは言うまでもない。
生きるために必要とはいえ、やはり厳しい生活に長女まりさ達が疲れや苦痛を感じていたのも事実であった。
本音を言えば、逃げ出してしまおうかと考えたことだってある。
だが万が一にも見つかったら…。その後のお仕置きを考えると、どうしても決心できなかった。
ゲス扱いされた妹たちは、ほとんどゆっくりできなくなったからだ。
しかし、大きくなればお兄さんは返してくれると言ってくれた。
ならば、早まらずその時を楽しみにして頑張ろう。我慢しよう。そう印付きたちは判断したのである。
だからと言って、辛い日々が楽しくなるわけでもないのだが………。

「ゆゃああああ!? いだい!! いだいよおおお!!」
「ちゅぶれぢゃう!? ばりざのおがおがづぶれぢゃううう!!」
「ごべんなざい!! いだいのいやなんでじゅ!! おねがいでずがらやべでええ!!」
「おにいざんやべでよおお!? ゆっぐりでぎないよおおおお!?」
「ごんなごどじでどうずるのおおおお!?」
「ひゃっほーぅい。……ん? ああ、ほら、まりさたちの皮の調子を調べてるんじゃないか」

いつものように子まりさ達の耐久度を確認する為、お兄さんは印付きを壁に軽くぶつけたり地面に落としていた。
お兄さんは長女まりさ達を、指で弾いては箱の壁へぶつけたりして遊……もとい体調をチェックする。
さすが、同じ虐待お兄さんである弟の栄養剤だ。味を変える事無く、栄養価だけを補う事が出来ている。
雑草ばかりの食事でも、これらを混ぜるだけでお手軽に上等なゆっくりを作ることができて便利なことこの上ない。

「だっだら、ずりずりじでよおおお!?」
「まりじゃはおにーじゃんだぢどずりずりじだいよおおおお!!」
「僕は嫌だなあ……、ゲスまりさの子供とすりすりなんて、……ゆっくりできないよ。ほい」
「ゆあああああああああああん!! ばりざだぢはげじゅじゃ……ぎゅぼ!?」
「おねぇぇじゃあぁぁぁぁぁん!? おにぃじゃんぼうやべでぐだざいぃぃぃぃぃ!!」
「………ふむ、まあこんなところか。お疲れ様、今日もまりさたちに異常はないよ」
「「「「「あ、ありがどうございまじだぁぁぁぁ………」」」」」

吐きだした餡子で口を汚しながら、泣いて感謝する子まりさ達。実に素直でよろしい。
文句を言ったり逃げだせばどうなるかと言うのを、しっかり理解しているようだ。
ここまで痛めつけても反抗しなくなれば、もう十分だろう。
いよいよ、お兄さんは最後の仕上げに移ることにした。

「……よし、これなら大丈夫だな」
「ゆ? ……どういうごど…?」
「忘れたわけじゃないだろう? そろそろ山に戻しても大丈夫だと思ってね」
「…ま、まりさたちおうちにかえれるの!?」
「ああ、これだけ丈夫なら問題ないだろう……」

その言葉の意味することを理解できない子まりさたちは、無邪気に飛び跳ねて喜んでいる。

「でもその前に、お兄さんからまりさたちに最後見せたいものがあります」
「みせたいものってなぁに?」
「ゆっくりできないのはいやだよ!!」
「いたくないよね!? ゆっくりできるよね!?」
「大丈夫、まりさたちには何もしないよ」

さあ、いよいよ総仕上げだ。気合いを入れよう。
彼は苦笑すると、長女まりさたちを入れた箱を持ち上げて虐待部屋へと足を向けた。
ここへ長女まりさ達が入るのは初めてのことだ。未知の体験に不安と好奇心の入り混じっていた子まりさたち。
しかし扉を開けてある物を視界に捉えた途端、子まりさ達の思考は一時的に停止した。
長女まりさ達の思考と止めたものは、部屋の隅に置かれていた同じ透明な箱の中身だった。
箱だけならば問題ない。子まりさ達にとって、透明な箱とは家でありゆっくりプレイスなのだから。
問題は中身だ。そこには茶色くドロドロになったゴミを咀嚼している大きなゆっくりまりさの姿。
まりさ種自慢の帽子は鍋のように潰れ、生地には腐った出汁が染みついて悪臭を放っている。
肌は帽子のお陰で直に汁を被らなかったようだが、水分を与えられないためヒビが入り隙間から異臭を放つ餡子が見え隠れしていた。
鮮やかな金色だった髪は、ストレスと汚れにより赤茶けた錆色に変色していた。場所によっては見事なハゲも出来ている。
ゴミを指せと言われたならば、まさにこのゆっくりがゴミと言うに相応しい姿であろう。
時折むーしゃむーしゃと呟いては、全身をぶるぶると震わせて悪臭を放つ何かを飲み込んでいく。
そのたびに疲れた表情を浮かべ、自ら餡子を吐き出しては再び口に入れて咀嚼する。
吐き出した餡子をわざわざ食べるのは、まだ自分の吐瀉物の方が味が良いため口直しにしているらしい。
人間ですら眉をしかめるような光景だが、それを子まりさ達は茫然と見つめていた。
変わり果てた姿と帽子だが、一目で気づいたのだろう。それでもお兄さんは言わずにはいられなかった。

「ほら、久し振りだね。みんなのおかーさんだよ」

母。その単語に長女まりさ達はぴくりと反応し、無言で変わり果てたゴミ饅頭を見つめている。
ゲスまりさの方も、普段なら無言でゴミを入れていくだけのお兄さんの声を聞いたことで、久し振りに彼の姿を視界へと入れる。
さすれば自ずと交差する、母と娘たちの視線。
ゲスまりさは、お兄さんの腕の中にいる捨てた娘たちを茫然と見つめていた。
次第に絶望と後悔の日々に沈んでいた意識が急速に覚醒していくのを実感する。
ゴミを処理する為だけの口も、言葉を発するため久々に喉を震わせる。
よりはっきりと娘たちの姿を確認するため、失われた片目の分まで大きく見開く。
そこには、やはり見紛う事なき娘達の姿。
閉じ込められている間に、ゲスまりさは娘達を捨てた事を激しく後悔するようになっていた。
考えてみればあの子供たちは、自分の最初の赤ちゃんたちだ。産まれた時は涙を流すほど嬉しかった。
それと同時に、ゲスまりさの餡子には忘れていた幼少期の思い出が浮かんできたのだ。
美味しいキノコさんを毎日集めてきてくれた父まりさ。
いつも傍にいて、暇さえあれば必ずぺろぺろしてくれた母れいむ。
自分はあんなに愛されていたのに、どうして子供たちを捨ててしまったのか。
辛い現実から目を背けるが、過去の記憶に逃避すればするほど、ゲスまりさの心には後悔しか浮かんでこなかった。
もしれいむにもっと優しくしていれば。もしもっと自分も頑張っていれば。もし子供たちを愛し続けていれば。
次々と浮かんできた、過去のゆん生の選択肢。
過去の仮定に意味はないが、少なくとも今のような現実になることはなかっただろう。
出来ることならば、もう一度やり直したい。最近は、ゴミを齧りながらそれだけを望んでいた。
その娘たちが今、立派に成長した姿で自分の前に戻ってきた。数は減ったが、残っていればそれでいい。
ごめんね、ひどいことをして。もういちどみんなでゆっくりしようね。いなくなったこのぶんまでゆっくりしようね。
どこまでも自分勝手なゲスまりさは、涙を浮かべて愛する娘たちに声をかけ、

「お、おぢびじゃんだぢ、ゆっぐりじ………」
「おにいさん、まりさたちはこんなゴミしらないよ!!」

その大切な娘たちからゴミと呼ばれて凍りついた。

「おやおや、自分のお母さんを見間違えたのかな?」
「ちがうよ!! あんなのはもうははおやじゃないんだよ!!」
「まりさたちはきれいだよ!! でもあのゴミはすごくくさいよ!!」
「あんなのとゆっくりできないよ!?」
「おにいさん、はやくここからでようよ!!」

口々に母親を否定する印付きたち。その瞳には親子の情なんて存在しない。
同じ空間にいるのも嫌だというように、グズグズの饅頭を見下ろしている。
その目は、ゆうかが赤まりさたちをに向けていたものと全く同じものであった。
対するゲスまりさはこの瞬間、初めて自分に捨てられた時の彼女たちの心境を理解した。
しかし、理解はしても納得できないのが、ゆっくりがゆっくりたる所以である。
当然ゲスまりさは、信じられないとでもいうように涙を流して怒り出した。
だが、それ以上に長女まりさ達の恨みは深い。餡子の奥底を震わせて、箱を割らんばかりの怒声を発する。

「どぼじでぇええええ!? まりざだぢはまりざのごどもで……!?」
『だまれごのぐぞなばごみがあああああああああ!!!!!!!!!!!!』(黙れこのクソ生ゴミがああああああ)
「ゆ……!? ゆいぃ!? ゆびぃぃっ!? どぼじでおぢびじゃんだぢがおごっでるのおおおお!?」
「おまえのぜいで!! おまえのぜいでまりざだぢはあああああああ!!!」
「ずでだぐぜにおやのがおずるなああああああ!!」
「ごろじでやる! ぜっだいごろじでやるううううう!!」
「じねえええええ!! ぞごうごぐなああああああああ!!」

自分たちが傷つく事も厭わずに、透明な箱の壁に体当たりを始める子まりさたち。
完全に忘我状態である。先ほどまでの理性が一瞬で吹っ飛んでしまったようだ。
そしてその迫力に恐怖を覚えるのは、実の母であるゲスまりさ。
サイズは自分よりずっと小さいはずなのに、憎悪に身を焦がす我が子たちを直視することができないのだ。
普段ならば、潰すなり体当たりした後に、怯えさせながら潰れていく様を見て楽しめたことだろう。
けれど今回は違う。なんせ子ゆっくり相手に、自分が痛めつけられるイメージしか浮かばないのだ。
その様子を、お兄さんは例の笑みを浮かべて見つめている。
ぺこん、ぽてん。何とも間抜けな音が、子まりさたちの体当たりの度に上がる。
これでは薄ガラスすら破れるか怪しいものだが、当の本人たちは至って本気だ。
しかし、このままでは自傷して餡子を吐き出してしまう。お兄さんは子ゆっくりたちをおとなしくさせると、母まりさを入れた箱を全力で蹴飛ばした。
腐った生ゴミと共に、三週間ぶりの箱外へ出ることを許されたゲスまりさ。

「早く生ゴミを片付けろ、全部だ」
「……あ、ありがどうございまず。いづもばりざにおいじいだべものをぐでるおにいざんばどでもゆっぐりでず」

久しぶりの外気だが、まりさはそんなことにも気づけないほど、精神的に追い詰められていた。
お兄さんから与えられる恐怖。狭い箱の中でしか許されない悪臭を放つ食事。希望を見た娘たちからの拒絶。
もうこのゲスには、生きる気力はあれども意味はあるまい。お兄さんは、間抜けな面をして床を舐める饅頭を見下ろす。
そしてお兄さんにとっても用済みだ。だが、潰すには汚すぎる。彼は、憎々しげに母を睨んでいる娘たちに声をかけた。

「さて、子まりさ? こんな汚くて臭い饅頭がお前たちの親だよね」
「………………」
「こいつがいる限り、お前たちがゲスの子供だっていう事実は残るんだよ」
「………………」
「おら、返事しろゲスども」
『……ひゃ、はひゃい!!』
「二度手間なんだよ、バカが。……さて、最初で最後のプレゼントだ」

お兄さんは、ゲス母まりさを指さしてこう言い放った。

「もうコイツいらない。だから、あげるよ。好きにしな」
『ゆっ!?』

次いで長女まりさたちの箱を蹴り飛ばして部屋の中へ放つ。
懐かしい母との再会…ではない。子まりさたちが母に向ける目は、もはや敵に向けるそれだ。
ゲスがいる限り、事実は消えない。彼のこの言葉を理解したのだろう。箱から出た長女まりさたちはまっすぐに親の元へと跳ねていく。
母まりさも、本格的に身の危険を感じたらしい。腐った汁のしみ込んだ顔を震わせて、子まりさたちへ喚きだす。

「やべでねおどびぢゃんだぢ!! ばりざのおぢびじゃんはぞんなごどじないよ!?」
「おばえのこどもなんがじゃないいいいいいいい!!!!」
「ごみがじゃべるなあああああああああああ!!!」
「うごぐな!! いまごろず!! ごろずうううううう!!」
「おにいいざああああん!!!! ばりざをだずげでええええええええ!!!! なにもじないっでいったでじょおおおおお!?」

子供たちに言っても無駄だと理解したゲスまりさは、助けを求める相手をお兄さんに代えて助けを求める。
だが、そもそも子まりさを仕向けたのはお兄さんだ。何言ってんだお前、バカジャネーノ? と鼻で笑って答える。

「言ったね。だから、僕は手を出さない。お前をどうするかは子供たち次第だ。……じゃ、ゆっくりしていってね」

名残惜しくもない、今まで何度も繰り返してきたゆっくりとの別れである。
自分の子供を捨てた選択が、この答えだ。ゆっくり死ね。爽やかに歪んだ笑みを最後に、お兄さんは虐待部屋を後にした。
親子水入らずで過ごさせてやろう。……ではなく、単にゲスまりさに最期の瞬間まで逃れられない恐怖を与えるためだ。
ライブで見れないのは残念だが、後で隠しカメラで見ればいい。この場は声だけで楽しむことにするお兄さん。

「おおおにいいざああああああああああああん!!!」
「おにいさんをなれなれしくよぶなああああ!!!!」
「いぢゃい!? どぼじであがぢゃんのぐぜにごんないだいのおおおおお!?」

それは、皮がひび割れたせいで中身がむき出しだからです。そう教えてあげたいが、もう遅い。ちょっとだけ後悔したお兄さん。

「ゆ!? くさいね!! このゲスまりさ、ぼうしもからだもあんこさんもくさいよ!!!」
「やべでね!! まりざはあじがうごがないんだよ!? がわいぞうなんだよ!?」
「ゆ、うごけないんだって!! いいきみだね、みんなでしゅくせいするよ!!」
「げすがしゃべるなんてなまいきだね!!」
「ゆぐ…! でもほんどにぐざいよ……うゆ、…うげぇ」
「まりざああああああああ!? あんござんはいじゃらめええええええ!?」
「ま、まりざはぎれいなんだよ!? ぞんなごどもわがらないの、ばがなの、じぬ……ゆぎゃああああ!?」
「だまれ!! だまれこのごみいいいい!!」
「よぐもまりざを!! おまえなんがばらばらにじでやるううううう!!」
「じんでじまえ!! ごみなんでじねええええ!!」
「やべでね!! まりざはおぢびじゃんみたいにあぞんでだんじゃないんだよ!! くぞがぎがなにわがっだぐぢぎいでるの!?」
「それいじょうぐぢをひらぐな!!」
「ああああああああ!? やべで!! あんござんだざないで!! かわをはがざないで!! ぼうじをがえじで!! だだがないで!!」
「うるざい!! じね!! げずはじねえええ!!」
「や、やべでぐだざい!! いだいのはいやでず!! おねがいじまずがら、もうやべでぐだざいい……。おねがいじまずううう……」
「ゆ、やめでぐだざいだって。げすにはおにあいだね。おおきいくせにいのちごいなんかしてるよ!!」
「げらげらげら。ほんとだね、おにあいだからもっとやってあげようね!!」
「まりさはこのいとくずをちぎってあそぶよ」
「まりさはこのきたないかわをはがしてあそぶよ」
「まりさはこのきたないぼうしをばらばらにするよ」
「ゆがあああああ!! もうやべでええええ!! まりざおうぢにがえるうううう!!」
「なにいってるの? げすはいきるかちなんてないんだよ? ここでみんなでころしてあげるからね。それまではおもちゃになっててね」
「あきたらちゃんとつぶしてあげるよ。おもちゃはちゃんと、かたづけないといけないんだよ」
「だずげでね!? おぢびじゃんはまりざをだずげなぐぢゃいげないんだよ!?」
「…………ゆ? ゲスまりさ、なんかいった?」
『げらげらげらげらげらげら!!』
「あ、…あぎゅあああああああああああ!!!!!!!!」

扉越しでも届く断末魔を耳にし、お兄さんは長女まりさたちと出会って、初めて腹を抱えて笑い転げた。




饅頭潰して日が暮れて……

「おにいさん、いままでありがとうね!!」
「まりさたちは、おうちにかえってゆっくりするよ!!」
「まりさたちはゲスじゃないからゆっくりするね!!」

玄関に横一列に並んで挨拶をする子まりさたち。その饅頭たちの顔は、どれもが開放感に満ち溢れた笑みを浮かべていた。
……ああ、むかつく。だがその感情を隠したお兄さんは、ゲスまりさだった物の詰まった袋を片手に見送りをする。

「あー…、そうだね。でも、本当にいいのかい? 僕らといた方がゆっくりできるのに……」
「ゆっ! で、でもまりさたちはおやまさんにもどりたいよ!!」
「そ、そうだよ!? い、いいい、いつまでもにんげんさんとはいられないよ!!」
「にんげんさんとじゃ、ゆっくりできないんだよ!!」

めちゃくちゃ動揺しているのは、お兄さんによる『教育』の日々を思い出しているからだろう。
お世辞が言えるくらいには知能も持てるようになったが、隠し事は今でも無理なようだ。
しかしお兄さんは気付かない振りをして、長女まりさたちの返事にうなずいてみせる。

「わかったよ……。これでさよならだ」
「ありがとうおにいさん!」
「ゆっくりしていってね!!」
「じゃあ、もうまりさたちもかえるね」
「ゆうかおねえさんにもよろしくね!!」
「はいはい……(おまえらがゆうかなんて軽々しく口にするんじゃねえよ)」

ゆうかと仲良くなったと自惚れるとは、どこまでも癇に障る饅頭共だ。
そんな彼の心中など知らない長女まりさたちは、お兄さんに背を向けるとまっすぐに山の方へと向かっていった。
子まりさたちの姿が見えなくなると、今まで遠巻きに様子を眺めていたゆうかが、お兄さんの傍まで跳ねてきて口を開いた。

「……おにいさん、本当にあのまりさたちは戻ってくるの?」

結局、ゆうかは最後まで子まりさたちに心を開くことはなかった。
彼女の半信半疑と言った様子に、彼はもちろんと答えながら大事な同居人を抱き上げた。
春先とはいえ、夜は寒い。リリーホワイトが山の向こうへ飛んでいくのを眺めつつ、お兄さんはゆうかを抱えて家の中へと戻って行った。







それから二日後。
お兄さんは玄関先で腰を屈め、無表情で足もとに転がる五つの小さな饅頭を見下ろしていた。
彼の視線の先にあるものは、つい先日お兄さんの下で学び育ったゆっくり子まりさたちである。
だが、そのどれもが旅立っていった時に比べ、無残な姿となり果てていた。
そのうちの二体に関しては、体中の穴という穴から餡子を溢れさせて絶命しているほどだ。
どうやら死骸となった饅頭共は、動ける姉妹たちによってここまで運ばれてきたようだ。
だが動けるとはいうものの、残りの三体も無事ではない。
Aとする長女まりさは、治療したはずの片眼が再び失われていた。また、歯も多数折られている。
Bとする子まりさは、帽子が引き裂かれて髪の毛も半分ほどの長さになっていた。おそらく後ろから噛みちぎられたのだろう。
Cの子まりさは、左右の頬を枝が貫通しており、喋ることもままならないようだった。みょん種にでもやられたのかもしれない。
むーざん、むーざん。どこからかそんなコールが聞こえてくるが、ここで声に出しても反応してくれる人はいなそうだ。
結局、三日たたずしてお兄さんの予想は的中することとなった。

「お……おに…しゃ……、まりしゃを……たしゅけ……」

弱々しい声を絞り出して、Bまりさがお兄さんに助けを求める。
以前のように自分たちを救って欲しいと、Bまりさは彼を見つめ、残りの2体も彼を見上げている。

「やれやれ……何をしてるんだか」

半死半生の子まりさたちに、彼はわざと苛立ちを見せながら声をかけた。

「そのケガ、どうせ他のゆっくりにやられたんだろ?」

彼の言葉に、長女まりさが驚いた表情見せて声を上げる。

「ど……どうぢでわがるの? まだなにもいっでないのに………」
「わかるさ。だって、まりさたちから見て山のゆっくりはどうだった?」
「げ、げずばがりだよ…! あんなげずどはゆっぐりでぎないよ!!」
「で、潰しちゃったわけだ」
「ぞうだよ!! でいぶもばぢゅりーもありずも……! ゆっぐりでぎないゆっぐりはみんなづぶじだよ!!」
「それは、まりさたちと同じくらいの大きさのゆっくり?」
「ぞうだよ!! げずのぐぜにまりざだぢにぢかづいでぎで、あまあまをよごぜっでいっだんだよ!!」
「だがら、ばがでげずでぐずでごみのゆっくりはみんなづぶじであげだんだよ!!」
「でぼね、ぞうじだら“おさ”っていうぱぢゅりーがきでね、まりざだぢをしゅくせいずるっでいっだんだよ!!」
「げずのぐぜに!! げずなごどもはぜんぶつぶじであげだのに、どぼじであんなごどいうの!?」

泣きながら出来事を説明するBまりさ。父親れいむような素晴らしいゆっくりがいなかったことにも、強い怒りを持っているようだ。
あんな馬鹿な山のゆっくりとは一緒にいられない。口々にわめく子まりさたちの答えは、そこに集約されていた。
それもそのはずである。何を隠そう彼が教えたのは、『人間と暮らすためのゆっくり』だった。
半野生の生活をさせられつつも、徹底的に飼いゆっくりの知識を植え付けられた長女まりさたちだ。
ゆっくり本来の知識を持っている野生とは、そもそもの倫理観が違うのだ。そこに気づけなければ、分かり合うことは不可能である。
怒りを抑えられない饅頭をなだめながら、お兄さんはこれで何度目か分からない治療用のオレンジジュースを持ってくる。

「だから言ったんだ……。僕らと一緒にいた方がゆっくりできるってさ」
「ゆ!! そうだね、おにいさん! またまりさたちといっしょにいてね!!」
「おにいさんとなら、いたいけどゆっくりできるよ!!」

早速オレンジジュースにより回復した子まりさたちが彼に甘えた声と共に見上げてくる。

「……は! やだよ、なんで自分から家を出た饅頭をまた拾わなきゃいけないんだ。このばーか!!」

それを、彼は真正面から拒絶した。
子まりさたちは、信頼する人物から予想だにしなかった言葉をぶつけられ、茫然と立ちすくんだ。
だが同時に親まりさに捨てられた時の記憶が蘇ったらしい。半狂乱で、子まりさたちはお兄さんへと縋りついた。

「ゆるじでぐだざい!! ぜんぶばりざだぢがわるいんでず!! いっじょうおにいざんのいうごどぎぎばず!!」
「おべがいじばず!! まりざだぢを…まりざだぢをおにいざんのいえにおいでぐだざい!!」
「ばりざだぢ、ぼうゆっぐりでぎるどごろがないんでず!! ごのままゆっぐりでぎなぐなるのはいやなんでずうううううう!!!!」

どうやら既に野生に戻るという選択肢は無いようだ。
………これでようやく完成した。
お兄さんは実験の結果が上手くいったことに大きな息をつきながら、汁で顔を汚す子饅頭どもを冷たい笑みを浮かべて見下ろしていた。

「いいよ。ただし、僕はもうお前たちと一緒にいたくない。新しい人を探してやるから、その人には一生逆らうなよ?」




それから一週間後……、加工所にてお兄さんは、一人の職員相手に今までの流れを説明していた。

「…………で、その実験結果によって出来たのが、この『番犬用・家畜ゆっくりまりさ』です」

彼は説明を終えると、長女まりさたちを仕舞っておいた蓋を開けて机の上に転がした。

「お、おねーさんがあたらしいひと? まりさたちはなんでもします!!」
「まりさたち、なんでもします! だから、めいれいしてください!!」
「だからいっしょにいさせてください!! まりさたちをすてないでください!!」
「教育というよりは洗脳ですね………なるほど、これほどまで従順な子ゆっくりはそういません。ましてまりさ種でここまで……」

職員である女性は、眼鏡をあげて目の前で跳ねまわる子まりさたちをしげしげと眺める。
多少汚かったり傷が目立つのは、屋外で過ごさせたからだ。家畜に人家は過ぎた代物である。
またその3体のどれもが、後が無いと言った必死な表情を浮かべている。よほど捨てられることが恐ろしいのだ。

「はい。だからこそ、生まれたばかりのゆっくりが必要でした」

親から攫ったりなどするといつまでも両親に依存し続ける傾向があるため、この捨てられたという事実が肝心なのだ。
そのトラウマを逐一刺激することで、単純な赤ゆたちの親への依存を自ら断ち切らせることが簡単にできるというわけである。
イレギュラーではあったが、今回は長女まりさが親から暴力を受けたことで、よりスムーズに人間への不信感を拭うことができた。
こうなれば後はしめたものだ。
餡子脳のゆっくりではあるが、危害を加える親と助けてくれる人間のどちらが頼るべき存在かは理解できる。
彼の場合はゆっくりゆうかであるが、他種のゆっくりが人に慣れている姿を見せれば、その効果はより絶大だ。
あとは、日々ゲスを憎むように教育すればいい。ビデオを見せたり、ゲスと判断された姉妹を反面教師として利用する等である。
日夜振るいの連続である。一瞬の油断も出来ない子まりさたちは、ストレスを募らせながらも緊張感を保ち続けていた。
これは後に知ったことだが、ゲスと判断されなかった長女まりさたちは、自覚せずとも本能を抑えつけられるようになったらしい。
もしかしたら、本能そのものがすり替わってしまったのかもしれない。

「そして決め手は、自分たちの手で親を殺させ、野生のゆっくりとの決別をさせることです」

立派に育ったというプライドを持つようになった子まりさたちにとって、ゲス母はから生まれたという事実は許し難い汚点である。
ゲスを憎む長女まりさたちが取る行動は一つだ。ゲスとはいえ親を殺めた事は、長女まりさたちが一つの線を越えてしまったと言える。
最後は野生に戻せば、後は子まりさたちに起きた通りだ。親を殺めた子まりさたちが、他のゆっくりを潰す躊躇は無いだろう。
畑でも野生のゆっくりと遭遇することはできるが、やはり一度にたくさんのゆっくりと会わせるには山の中である。
全滅してしまう恐れもあったが、野生のゆっくりへの敵愾心と憎悪は十分に育ってくれたはずだ。リスクを冒した価値はある。

「ゆっくりでありながらゆっくりを憎み、人に異常なまでに依存する、それが『家畜ゆっくり』です」
「……畑に置いておけば、雑草をかじり、野生のゆっくりが近づけば憎しみのまま駆除に走る……というわけですね」
「はい。そしてこいつらには一度として愛情を与えてやりませんでしたから、愛されることが最大のご褒美なんです」
「なるほど……。それならば低コストで置いておけますね。……しかし、もし我慢できずに野菜を食べることは?」
「説明したとおり、こいつらの全ては人間です。そんな饅頭が逆らうことはありませんよ」
「そうですか……。ちなみに、このゆっくりは愛護派向けでしょうか? 虐待派でしょうか?」
「どちらかと言えば、虐待派かそれ寄りの中立向けですね。僕が子まりさたちにしたことを愛護派が知れば怒るでしょう……」

ただ……。そこでお兄さんは一度口を閉じると、子まりさたちに視線を移す。

「こいつらは人間に気に入られるためならば、どんな真似でもします。模倣の見本は、主にゲス度の低い飼いゆっくりです」

優秀な個体と過ごさせれば、ブリーダーにとっても飼いゆっくり向けの繁殖に一役買えるかもしれない。そう彼は付け足した。

「わかりました。では、是非全ての個体をお引き取りさせていただきます。謝礼は窓口の方で……」
「ありがとうございます。………じゃ、まりさたち。ゆっくりしていってね」
『お、おにいざん……、いばばでほんどうにありがどうございばじだ……』

これから自分たちはどうなるのだろう。子まりさたちはお兄さんにお礼を言いながらも、その表情は不安でいっぱいである。
いかないで。まりさたちをすてないで。3体全てがそんな顔をしているが、彼はそれを全く無視して席を立つ。

「ま、安心しなよ。まりさたちがずっと言うことを聞いていれば、ゆっくりできるさ」

それも運次第だがね。その言葉を飲み込んで、お兄さんは子まりさたちを残して部屋を出て行った。
あの姉妹たちがこの先どうなるかわからないが、屋内飼育型ゆっくりの繁殖用としても、観察体としても生きることはできるだろう。
だが、常にゲスとして扱われるのを恐れている為、どんな愛護派に飼われても緊張の毎日を送ることになるのは間違いない。
また、長女まりさたちやその子孫を買った虐待派がゆっくりとしての真実を教えても、それはもう自分には関係のない話だ。
精々価値観の相違に気付かないまま、若いゆん生を誰かのために尽くしてほしいものである。
そういえば、ゲス箱兼新しいコンポストとなった末妹まりさたちもそろそろ用済みだ。
最近は何も話せず痙攣するようになり、死期が近いのが伺える。そろそろ新しいゆっくりに代える頃合いだろう。
さて、費やした時間に見合った報酬ではないが、資金も手に入ったしわが家のゆうかへ上等な土産でも買っていこう。
お兄さんは加工所で受け取った紙幣の入った封筒を片手に、行きつけの花屋へと寄っていくことを決めた。






終わり




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あとがき
………容量が異常……。俺馬鹿なの? 死ぬの? 
wikiなどで感想をくださった皆様、長期間中途半端にしてしまい申しわけありませんでした。
これでも大分削ったのですが、容量的にはどうしてもオーバー……。読みづらい部分も多いかもしれません。
末妹への虐待成分足りなくね? 母親潰しはカット?
それでは本末転倒なので、添削した虐待部分を補足として後々上げていこうと思います。
なので、虐待シーンはもうしばらく続きます。
最後に、ここまで目を通してくださった方。感想を下さった方。本当にありがとうございました。

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最終更新:2009年03月12日 11:46
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