ゆっくりいじめ系2595 白まりさと黒まりさ(前編)

 これはお兄さんが仕事の事情で新しく越して来た村の近くの、山の中で起こった事件の話。
 良く晴れた日に切り株の上に座ってゆっくりする事から始まりました。



 「あ!おにーさん来たよ!ゆっくりしていってね!」


   「「「ゆっくりしていってね!」」」



 お兄さんはこのゆっくりという生き物が大好きでした。









    白まりさと黒まりさ

            作者:古緑










 「おぉありがとよ、ゆっくりしていくわ」


   「「「ゆっくりー!!」」」



お兄さんのゆっくり好きはとどまる事を知らない様で
越して来た村に住まいを構える際にも、
ほとんど山の中にある家を改装して使わせて貰う程でした。
勿論それはゆっくり達のなるべく近くに住みたい為です。



 「お兄さんお兄さん、この前のまりさの話、おぼえてるかしら?」

 「ありすの好きな?」


そんなお兄さんは村の人間との新しい付き合いも程々に、
今日も山に入ってゆっくり達と一緒にゆっくりしていました。



 「違うわよ!そのまりさだけど!別に好きなんかじゃ…」

 「はいはい、それで?」

 「最近そのまりさがれいむとよく遊ぶから不安なんだねー
  わかるよー」



そして今、お兄さんは座るのに丁度良い切り株の上で
三匹のゆっくりとお話をしているところでした。
胡座をかいた脚の中にはゆっくりありす、膝の上にはゆっくりちぇん、
頭の上には小さなゆっくりれいむがゆっくりと眠っています。
そして周りにも色んなゆっくり達が、ちらほらとゆっくりしています。


 「また皆でゆっくりしようね!」

 「こんどはもっともっとゆっくりしていってね!」


初めはやはり警戒されました。
前に居たところのゆっくり達と比較して、こちらのゆっくりは随分と警戒心が強い。
それがお兄さんが初めてここの群れと接した時の感想でした。
しかし無理も無い事でしょう、ゆっくりにとって人間は時に恐怖の対象にもなるのですから。


 「あぁ!明後日あたりにまた来るよ!じゃーな!」


しかし、お兄さんはゆっくりの種ごとの好きなモノや、上手い接し方を
これ迄の暮らしの中で知っていたので、段々と、段々と打ち解けて行く事が出来ました。
笑顔で送り迎えされる様になる迄には3週間もかかってしまいましたが、
今ではしばしばゆっくりの悩み相談までされる程、信頼を得る事が出来たのです。


 「やっぱり面白いな、ゆっくり達は」


仕事で村や山の中を歩き回ってから
夕方近くになってゆっくり達と3時間程もゆっくりする日々。




しかし、そんな幸せな日々は永くは続きませんでした。





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   ( ギッ、 ギッ、 ギッ、)



夜の7時。

今日も群れのゆっくり達とゆっくりしてから帰ったお兄さんは
村からほとんど孤立した寂しい借家の中で仕事をしていると
家の扉が何かで押される、何かとても大きなモノに扉が押される音を聞きました。



   ( ギッ、 ギッ、)



扉の向こうに何か生き物らしきモノがいます。
お兄さんは静かに椅子から立ち上がると、ゆっくりと扉に近づいて行きました。


 「…人間さん、人間さん、起きてる?
  起きてたらゆっくりお返事を頂戴ね?」


もしも恐ろしい何かだったらどうしようと思っていたお兄さんは
そっと胸を撫で下ろしました。
声から判断すると、どうやら突然の訪問者の正体はゆっくりまりさのようです。
(どこのゆっくりまりさかまでは分かりませんが)


 「まりさか?」


 「そうだよ、ゆっくりしないで来ちゃってごめんね
  人間さん、今ちょっとお話し出来るかな?」


どうやらお喋りに来たようですが、お兄さんは少しだけ不審に思いました。
お兄さんと仲の良いゆっくり達の中には『人間さん』と呼ぶゆっくりはいません。
…それに、こんな声が低めのゆっくりとは越して来てからまだ一度も会った事が無いのです。


 「ああ…いいぞ
  入りなよ、今ドア開けるからよ」

 「うん」


そうは思いながらも、お兄さんが警戒心ゼロな程にお気楽にドアを開けた瞬間、
先程の音の正体も低い声の理由も理解しました。



予想通り、そこにいたのは大きな大きなゆっくりまりさだったのですから。




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 「ごめんね、出来たら人間さんのお家の中で
  お話し出来れば良かったんだけど」

 「いや、最近はもう夜でも結構暖かいからな
  気にするな」


お兄さんと大きなまりさがいるのは家の外にある薪割り場。
薪割り台に座ったお兄さんの目の前の、大きなまりさが申し訳なさそうに
眉をハの字に曲げています。

人間を遥かに凌ぐ程の巨体を誇るこのゆっくりまりさは
お兄さんが仲良くしている群れの長だそうです。
つまり、お話とは当然ゆっくりについての話なのでしょう。



 「そんで…初めまして、というトコだろうけど、なんなんだ?
  ゆっくりはもう寝る時間じゃないのか」


 「…人間さんは、群れの皆と仲良しなんだよね?」


 「え?」


 「今日ありすから聞いたんだ、たまに原っぱの近くのおっきな樹に
  ゆっくり出来る人間さんが来て、一緒に沢山ゆっくりしていってくれるって」


まりさが少し言いにくそう言ったのを聞いて、お兄さんは
もしかしたら迷惑だったのだろうか、と言わんばかりの困った様な顔になりました。

というのも、群れを纏めるゆっくりの中には
群れのゆっくりが人間と関わるのを良しとしない者もいると知っているからです。

それは人と関わるデメリットの方が大きい為。
例えば、過剰に甘い物を与えて舌をおかしくさせてしまう人間。
優しく接し過ぎて『人間は皆ゆっくり出来る』とゆっくりに思わせてしまう人間。
これらの行為は最終的にゆっくりを死へと導く事もあります。

お兄さんもそれを知っている為、それらの事はしませんが
基本的にゆっくりが人と関わってあまり良い事は無いのです。


 「あぁ、そうだけど…?
  やっぱいけなかったか」


 「ううん、群れの皆と仲良くしてくれる事は嬉しいよ
  今まで一緒にゆっくりしてくれる人間さんなんてあんまりいなかったから…」


ゆっくりと仲良くするお兄さんの元に群れの長がお話に来たのに
内容はゆっくりと関わる事を止めて貰いたい、と言うものでは無い。

どうやらゆっくりと関わる事が問題では無いようですが、だったらますます分かりません。



 「じゃあ一体話って…」


 「…………」


大きなまりさは10秒程黙って地面を見ていましたが、
意を決した様にお兄さんに向かって、叫ぶ様に言いました。





 「お願いだよ!ゆっくり力を貸して欲しいよ!」





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そこはとってもゆっくりしたゆっくりプレイスだったそうです。

お日様に照らされた野原、芽吹く草花、
その中で器用に口だけでお花飾りを作ろうとする小さな子ゆっくりと
それを微笑みながら見守るお母さんゆっくり。
お口やお帽子に沢山のご飯を銜えて家族の元へと帰るゆっくり達。

大きな洞窟でゆっくり達は仲良く暮らし、野原の食べ物は尽きる事は無く、
争いを起こす様なゆっくり出来ない子もいない。

そんなゆっくりの群れはどこまでも幸せに、何の心配も無く
このゆっくりプレイスで暮らしていました。



あの日までは――――




 『ゆゆー!おさー!何だかゆっくり出来ないまりさ達が来たよ!』


 『ゆっくりしてないでとっとと出てくるんだぜ!!
  ウスノロまりさ!!』




 『…ゆゆ?すっごく大きなまりさだね?ゆっくりしていってね?』



洞窟の中から出て来たまりさが見たゆっくり、
それは今までどんなゆっくりよりも大きかった自分よりも
更に大きなゆっくりまりさだったそうです。
肌が少しだけ普通のまりさよりも黒いことから、この場では黒まりさとでも呼びましょう。

手下らしきゆっくりを10匹程連れており、
そのゆっくり達もまた一般的なゆっくりよりも大きかったと言います。


そして、唐突に現れたその黒まりさと
その手下のゆっくりが言う事には


 『まりさ!このまりさがゆっくりプレイスを独り占めしてる田舎者まりさよ!』

 『ゆへへ…"兵隊ありす"の教えてくれた通りのゆっくりプレイスなんだぜぇ…?
  このまりさ様の率いる"軍隊"のお城にするには持ってこいなんだぜ!』



 『…ゆ?何言ってるの?ここは皆のゆっくりプレイスなんだよ?
  一緒にゆっくりしようよ!』



 『ゆふん!これだから田舎者は…』

 『…話の分からない馬鹿まりさなんだぜ…』





   『これで分からせてやるんだぜ!!』




そう叫んだと思うと、黒まりさは白まりさに体当たりをぶちかましたそうです。
不意打ちと言う事もあったのでしょうが、
体当たりを受けて洞窟の壁に体を打ち付けられた当の白まりさが言うには
『まりさじゃ勝てないまりさ』『一緒にゆっくり出来ないまりさ』と感じたそうです。

相手の黒まりさは自分よりも大きな体を持っている上に
更に『ゆっくり』をある程度捨てながら成長し続けた事で
自分よりもずっと強い力を得る事が出来たのであろう、
その一方で、自力でゆっくりプレイスを探す事が出来ないのもその為だそうです。
(お兄さんにはその辺の話は理解出来ませんでした)


兎に角、黒まりさに負けてゆっくり出来なくされてしまった白まりさはその時、
まるで命令される様に言われたそうです。



 『ゆん、弱虫まりさ!また来るんだぜ!
  いつまでもこのまりさ様達のゆっくりプレイスでゆっくりしてたら――




  ――――永遠にゆっくりさせてやるんだぜ!!』





それを虚ろな意識の中で聞きながら、白まりさはゲラゲラと笑いながら去って行く
黒まりさ達の背中を、ただ見送る事しか出来なかったと言います。



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それからというものの、黒まりさの手下達は
しばしば白まりさ達のゆっくりプレイスにの近くに現れては、
ご飯を集めている白まりさの群れのゆっくりにまで陰湿な暴力を振るう様になったそうです。

今のところ命だけはまだ誰も取られていませんが
そのゆっくりプレイスに居続ける自分達に対して怒りを高めていく黒まりさ達が
自分達の命を奪う未来は、そう遠いものでは無いかも知れません。

今では黒まりさ達は、群れから2時間程歩いた小さな野原に住まいを構えており、
その群れの数も白まりさの群れよりも多く、戦力差はかなりの開きがあると言います。




 「――と言うね、ゆっくり出来ない事になっちゃったんだ…」


 「成る程、…でも『力を貸してくれ』って?
  正直なところ…お前の勝てないその黒まりさを
  俺がどうにか出来るなんてとても思えないんだが…」



目の前のゆっくりまりさの体の大きさは
高さだけを見ても、お兄さんの倍近くはあるでしょう。
そんなゆっくりに一人で勝てる人間はそうはいません。

ましてやその白まりさよりも大きな黒まりさ…
まず痩せっぽっちのお兄さんには無理でしょう。



 「ゆん、悔しいけど、あの黒まりさの強さは本物だよ…
  きっとお兄さんでも勝てない…でも、人間さんが力を合わせてくれれば…!」



ここに来てようやく話が分かりました。
つまり、悪い黒まりさの群れを倒せるのは人間の群れしかいない。

黒まりさの群れの連中は村の人間にしばしば迷惑をかけているそうだし、
自分と力を合わせてそんな黒まりさを倒すのは
お兄さん達人間にとっても、きっと悪い話では無い筈だよ、と白まりさは言いました。

白まりさは自分達のゆっくりプレイスを守る為。
人間は自分達の生活における邪魔な存在を排除する為。
お兄さんには村の人間にその話を通す窓口になって貰いたいと言う事なのでしょう。

成る程、利害は一致していると考えられるかも知れません。
確かにお兄さんが越して来てから間もなく
この村には様々な形でゆっくりによる害が現れ始めていると聞きます。

黒まりさがこちらの山に越して来て、白まりさの群れを襲うようになった時期と
村でゆっくり害が増加して来た時期と照らし合わせてみても合致し、
どうやら黒まりさの群れが人間の暮らしにとって良くない事は確かでした。


 「成る程な…分かった…
  村の人間と話し合ってみるが、余り期待はするなよ」


それを聞いた白まりさは心から嬉しそうに笑顔を見せてから
お兄さんにお礼を言いました。


 「ありがとう人間さん!
  それじゃあ2日後のこの時間にまたゆっくり来るね!」


お兄さんの予定と合う日にまた会う約束してから
機嫌良さそうにドスンドスンと帰っていく白まりさの背中を見て、
ようやくお兄さんは気付きました。
白まりさの背中が酷く傷つけられていた事に。





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 「…役に立てなくて済まん…」



2日後の夜。
お兄さんと白まりさは再びあの薪割り場にいました。
その場に流れる雰囲気は2日前よりもずっと暗く、重く。
どうやら白まりさの願いは叶えられなかった様です。


 「ゆん…残念だよ、でも、ありがとうお兄さん…」


実際これは無理も無い事でした。
山のゆっくり達のイメージは、この2週間だけで地に堕ちており
村の人間の多くはゆっくりの言う事など信用したりしません。

ゆっくり等どれも大差無い、出来る事なら山のゆっくりの数を
出来る限り減らしたいと思っている者ばかりです。

また只でさえ自分達よりもそんなゆっくりと仲良くしようとする
お兄さんの信用も無いのでしょう(しかもお兄さんは新参者です)
信用されず願いが却下されたと言うのも無理も無い事です。


 「ごめんね、無理言っちゃって…
  まりさ達でゆっくり頑張ってみるよ!…ゆぅッッ!!」

 「オイ、大丈夫かまりさ!」


昨日、白まりさの群れに黒まりさが直々に来たらしく、
白まりさの体は2日前よりもずっと痛めつけられていました。
帽子は折れ曲がったまま直っておらず、体中に痛々しい黒い痣の様なものが見られます。



 「大丈夫だよ!まりさは強いんだから!」

 「…………」



 「どうするつもりなんだ…?
  お前は黒まりさに勝てない、俺らはお前等に手を貸してやれないのに…」

 「ゆっくりしないで考えてみるよ、
  まりさは群れの"リーダー"なんだから、
  きっと良い方法をゆっくり見つけてみせるよ!」

 「…………そうか…」


それからお兄さんは、哀れな白まりさに
出来る限りの治療と帽子の修繕をしてやりました。

その夜、かつて見た嬉しそうに帰っていく白まりさの背中を見る事は出来ず、
まるで這う様に帰っていくその姿を、お兄さんはなんとも言えない表情で見送りました。




黒まりさがお兄さんの家に来たのは
その次の日の事でした。





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  「ゆっくりしないで出て来い!!ねぼすけじじい!!」






朝の6時。

扉を叩くドシン!と言う大きな音で、お兄さんは目を覚ましました。
窓から外を覗くと浅黒い肌を持つ、とても大きなゆっくりまりさが
扉の外で怒鳴っているのが見えます。

あの黒まりさなのでしょう。
確かに白まりさよりも更に大きく、攻撃的な口調は話に聞く通りです。


 「何だ…?何の用だ…?」

 「ゆ”っ?ようやく出て来たんだぜ!薄のろなじじいだぜ!」


お兄さんは家から出たわけではありません。
小窓から顔を覗かせただけですが、黒まりさにとって話が出来ればそれで良かったようです。


 「とっとと知ってる事を話してもらうんだぜ!」

 「何の事だ?」



 「とぼけるんじゃないんだぜ!!
  昨日!あのウスノロまりさが人間と、
  何かゆっくり出来ない事を話してたって事はうちのまりさから聞いてるんだぜ!!」



どうやらどこからか情報が漏れてしまった様です。
この黒まりさ、人間が危険という事くらいは分かっているのでしょう。
白まりさがその人間と密会していると聞いてやって来たのです。


 「あぁ、その事―――」


そこまで言うとお兄さんはハッとした様に口を閉ざしました。
しかし黒まりさにとってその台詞だけで十分だったようで
直ぐにお兄さんを問いつめます。


 「ゆん!やっぱりなんだぜ!
  さぁ、何の話をしていたのかゆっくり吐いてもらうんだぜ?」


 「………」



抵抗しても無駄だと思ったのでしょうか、お兄さんは黒まりさに話しました。
ゆっくりプレイスを明け渡す様に黒まりさに言われた事で
白まりさが人間に助けを求めようとした事を。
そして、それを人間側が拒んだ事を。
話が終わるまでに5分とかかりませんでした。




 「弱虫まりさの周りには弱虫が集まるものなんだぜ!
  じじい!余計なマネしたらゆっくり出来なくさせてやるんだぜ?
  よ~く憶えておくんだぜ!」




そう言うと黒まりさはお兄さんの家から離れていきました。
少しの間話をした間柄とは言え、白まりさは昨日今日出会ったばかりのゆっくり。
お兄さんが義理立てする程の相手ではない筈、


 「………」


その筈でした。





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 「お兄さん!お兄さん!ゆっくり開けてね!!」


次の日の昼頃、お兄さんはまたゆっくりの体でノックされる扉を開けると
切り株の上で話したありすをはじめとする、
最近忙しくて久しく会えなかった群れのゆっくり達と会えました。


 「なんだお前等、ゆっくりしないで…」


 「まりさが大変なんだよ!!黒まりさに…!
  お兄さん!!まりさを助けてあげてね!!」



その言葉だけで何が起きたか分かったお兄さんは
小麦粉の袋と水とバケツを鞄の中に急いで詰め、群れのゆっくりを抱えて
あの野原まで走っていきました。






 「大丈夫かまりさ、しっかりしろ…!」

 「お”にい…ざん…?」


きっと、"人間に助けを求めた事による制裁"を受けたのでしょう。
横たわった白まりさの姿は前に会った時よりも更に酷い状態になってました。
帽子は所々破け、肌は擦り傷だらけ、治した痣も前より更に多くなっています。

体の損傷を確認したお兄さんはバケツの中で小麦粉を水で融くと
それを白まりさの傷に塗り始めました。


 「あの黒まりざが来てね…」

 「あぁ…」


治療を続けながら白まりさがお兄さんに掠れた声で語りかけます。
見た目は酷いですが、どうやら命に別状は無さそうでした。


 「『3日後にまだここに居たら、群れ全員で攻め込む』って…」

 「……あぁ…」


この先は同族であれ一切の容赦は無いという、
どうやら最後通告のようです。


 「『その間に群れを纏めて、どこかへ引っ越せ』って…」

 「……………」


お兄さんが目の近くの治療をすると、
白まりさが泣いているのが分かりました。




 「どうずればいいのか”な”ぁ…皆がゆっぐりできなくっぢゃうよ…」


 「……………」



勝てない相手であるなら大人しく移動して他のゆっくりプレイスを探せば良い。
一匹のゆっくりの話なら、それでも問題は無いでしょう。
しかし群れ全体の話となればそんな簡単にもいきません。

群れ全体でこの安全なゆっくりプレイスから出て行き、新たなるゆっくりプレイスを探す。
今まで安全な場所で平和に過ごして来たゆっくり達は
外敵だらけの、本物の自然の中でどれだけ生き残れるでしょうか。

ゆっくりプレイスは直ぐに見つかるでしょうか?
半分くらいは生き残れるでしょうか?
もしかしたら白まりさ以外のゆっくりはみんな…


 「まり”ざぁ…やだよぉ…」

 「ゆっぐ…ゆぐ…」


移動を経験して来たらしき、周りの数匹の大きなゆっくりは俯いて、
かつての辛い体験を思い出している様でした。
その顔は涙でくしゃくしゃで、移動の過酷さを物語っています。


 「……まりさ」


その間、暫く黙っていたお兄さんが鞄の中から子瓶と注射器を出したと思うと
治療の仕上げにと、子瓶の中身を白まりさに注射しました。


 「…ゆ?なんだか少し楽になったよ…?」


するとどうでしょう、完全回復とまでは行かない様ですが
横たわった体を起こせるまでに回復した白まりさは、不思議そうに体の調子を確かめました。
跳ねるくらいなら問題は無さそうです。




 「まりさ、ちょっと俺に付いて来い」




___________________________________

後編

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最終更新:2009年05月06日 03:29
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