ゆっくりいじめ系2778 消極的駆除

  • れいぱー設定有り
  • 独自設定、独自解釈注意
  • 舞台は幻想郷ではないどこかの田舎








昔々、あるところにとてもゆっくりしたれいむとまりさの番がいました。

二人は毎日好きなだけご飯を食べ、好きなだけすっきりをしました。

群れの他のゆっくりたちは

「ごはんをおうちにあつめておかないとふゆがこせないよ!」
「すっきりしすぎたら赤ちゃんがふえて、ごはんがたりなくなるよ!」

と言ってれいむとまりさを叱りました。

れいむとまりさは皆が怒っているのを不思議に思いました。

お腹いっぱいならゆっくりできるのに。
赤ちゃんがいればゆっくりできるのに。

そうして二人は冬が近づいてもゆっくりとした生活を続けました。

群れの皆は冬の間のご飯をたくさん集めようと朝早くから夜遅くまで狩をしました。
また赤ちゃんを作らないようにすっきりを我慢しました。

あるちぇんは帰るのが遅くなって、れみりゃに襲われ食べられてしまいました。
あるぱちゅりーは動きすぎて体力を失い、餡子を吐いて死んでしまいました。
あるありすはすっきりを我慢しすぎて耐えられなくなり、れいぱーとなり群れの皆を襲い
ました。

群れのゆっくり達はゆっくりしない生活をしたために、永遠にゆっくりしてしまいました。

ゆっくりしていたれいむとまりさは、冬篭りの間にご飯が無くなりそうになりました。

しかし、ゆっくりしていたご褒美としてドスまりさがたくさんのご飯を持ってきてくれ、
ゆっくりと冬を越すことができました。

めでたしめでたし。





――消極的駆除――





「どうだい、ゆっくりすることがどんなに大切か分かるお話だろう?」

人里近くの森の中。多少開けたところに住み着いているゆっくりの群れを、ぐるりと見渡
して男は言った。
季節は晩秋。紅葉もそのほとんどが散り、冬の足音が聞こえてくる頃だ。
その寒さに抗うために、あらゆる生き物が支度を整える時期だ。

人も獣も、ゆっくりも。

「ゆっくりできなくなるのはいやだよ!」
「れみりゃはゆっくりできないぃぃぃ!!」
「ゆっくりしていればいいんだね、わかるよー」
「れいむはゆっくりしているからだいじょうぶだもんね!」
「れいぱーになるなんていなかもののすることよ!」

群れの反応は様々だった。泣き叫ぶもの、自分はゆっくりしていると言い張るもの。
多くは混乱しているが、男が良く見ると数匹のゆっくりに囲まれた一匹のぱちゅりーが、
少し離れたところから男を睨んでいる。
おそらくは群れの長とその取り巻きなのだろう。

「さぁ皆、冬篭りの準備なんてしていないで、ゆっくりしようじゃないか」
「ゆっくりするよ、わかるよー」
「れいむもだよ! いっぱいむーしゃむーしゃするよ!」
「まりさ、たくさんすっきりしてとかいはなあかちゃんをつくりましょうね~♪」
「まだおひさまがたかいんだぜ! よるまでまつんだぜ!」

男の言葉に簡単に煽動されるゆっくりたち。だがそれも当然のことだ。
ゆっくりの価値観は「ゆっくりできる」か「ゆっくりできない」か。その二つだけ。
食事も睡眠も性交渉も、ゆっくりすることの手段にすぎない。

ゆっくりを人間が確認した当初は、ゆっくりはゆっくりするだけの存在だった。
生物としての最低限の欲求すら持たず、ゆっくりさえしていれば全てが満たされる、不思
議で純なナマモノ。それがゆっくりだった。
それが今や、農作物を食い荒らし、自然の恵みを食いつぶし、害獣の代名詞となっている。
人間は自らの生活と社会のために、ゆっくりを駆除するのである。
もっとも、現在のゆっくりでも、充分にゆっくりさせれば食事や睡眠を必要としなくなる。
そうするには洗脳に近い手段を用いなければならないが。

ともかく、ゆっくりにとってゆっくりすることは何よりも大切なこと。
ゆっくりの知性では、ゆっくりすることの誘惑に抗うことは不可能だ。
だが、何事にも例外は存在する。

「むきゅ! みんなしずかにしてね! おにいさんはうそをついているわ!」

長らしきぱちゅりーが、良く通る声で言った。
群れのゆっくり達が戸惑いの目で男とぱちゅりーを交互に見つめる。

「ふゆにすきなだけごはんをたべたり、あかちゃんをつくったりしたら、はるがくるまえ
にごはんがなくなっちゃうわ!
 おなかがすいて、くるしんで、ずっとゆっくりしちゃうわ!
 まえのふゆごもりのときも、たくさんのむれのみんながふゆをこせなかったでしょう!
 わすれちゃったの!?」

中々賢い個体のようだ、と男は思った。食糧と個体数管理の大切さを理解している。
それにしても、何故ゆっくりは、ゆっくりできない筈の「死」を「ずっとゆっくりする」
と言うのだろう?
人間が死を転生、すなわち新たな誕生の前段階と考えるように、ゆっくりなりに死が纏う
負のイメージを拭おうとした結果なのか。

「でも、ごはんがたりなくなったらどすがもってきてくれるって……」
「そんなのうそよ! そんなにつごうのいいはなしがあるわけないわ!
 それに、まえのふゆごもりのときもにんげんさんがきて、おなじはなしをしていった
わ! でもどすなんてこなかったわ!」

事実だった。一年前も人間達はゆっくりの群れに同じ事を話し、結果として食料の尽きた
大部分のゆっくりは越冬に失敗した。
人間の話を疑い、堅実に生きた僅かなゆっくりだけが生き残り、子孫を増やして作ったの
が、この群れだった。

そして今年、かつての仲間を大勢失う悲劇を引き起こした原因が再びやってきた。
このような悪魔の甘言に騙されるものか。
ぱちゅりーとしては、そのような思いだったのだろう。
大声を上げて乱れた息を整えてから、男を睨みつけた。
群れのゆっくりたちも、疑いと虚言への怒りを込めて男に目を向ける。
誰かが口火を切れば、あらん限りの不平不満、罵詈雑言を男に並べ立てるだろう。

だが男はその反応も想定のうちだったのか。笑みを浮かべて口を開いた。

「まあ皆、待ちなさい。人の話をきちんと聞かないのはゆっくりできないよ」

今にも感情を爆発させそうなゆっくり達を男は軽く制した。
ゆっくりできない、と言われてはゆっくりの沽券に係わる。
黙って男の言葉に有るのか分からない耳を傾けるしかなかった。

「ぱちゅりー以外に前回の冬の事を覚えているゆっくりはいるかい?」

そもそも、一年も前の事を記憶しているゆっくり自体が非常に稀だ。
ゆっくりは記憶を司る内容物が流動するという構造ゆえに、長期間の記憶保持が困難であ
る。半端に発達した精神を保つ防衛機能として、忘れやすいというのもそれに拍車を掛け
ている。
加えて、厳しい野生環境ではゆっくりの寿命は短く世代交代が激しい。
強者の庇護なしに一年もの間生存することは、ほぼ不可能だ。

この群れも例に漏れず、去年の事を正確に覚えている個体はいなかった。
前回の越冬を経験したものは数匹いたのだが、おぼろげに

「なんとなくゆっくりできなかったきがする」

と答えるだけだった。

「皆は冬ごもりの事を覚えていない。ぱちゅりーだけが覚えている。
 つまり、ぱちゅりーが嘘を言っているとしても誰も分からない訳だ」



その言葉に、ぱちゅりーは当惑した。自分は本当の事を言っている。それを疑われるなん
て欠片も予想していなかった。
自分は森の賢者。どの種族よりも知識に満ち溢れた存在だ。
そして自身の知識とは上辺だけの役立たずな物ではない。野生での生活という辛く苦しい
経験から得た、生きた知恵だ。
まして、越冬の経験は自身だけでなく、飢餓に喘ぎ、伴侶や子供を食し、それでも死んで
いった仲間の犠牲の上に成り立っている。
それを否定されることは、死者に対する冒涜でもあった。

だからぱちゅりーはここで退くわけにはいかない。
自身の誇りのために。
死んでいった仲間のために。
そして、今まさにかつての同胞と同じ運命を辿ろうとしている群れの為に。

「むきゅ! しつれいなこといわないでね! ぱちゅりーはうそなんかついてないわ!
 そんなことして、ぱちゅりーになんのとくがあるっていうのよ!」

そうだ。ぱちゅりーにとって、そんな嘘に何もメリットなど無い。
ぱちゅりーとて全く嘘を付かないわけではない。だがそれは群れの仲間を護るための嘘だ。
その身は今生きている群れの仲間のために。
その心は過去失った群れの仲間のために。
惨劇を繰り返してはならない。それだけがぱちゅりーの全てだった。

「何を言っているんだ。得することなら、沢山あるじゃないか」
「ないわよ!」

無い。絶対に無い。ぱちゅりーは群れの長だ。そう決まった時から、自分を犠牲にしても
仲間がゆっくりできることを望んでいる。逆に――――

「群れの皆はゆっくりせずに冬の準備をしてゆっくりできなくなる。死んでしまうか、ゆ
っくりできないゆっくりになってしまう。
 ドスまりさが冬のご飯をくれるのは、ゆっくりしたゆっくりへのご褒美だ。ドスが来て
も、群れの皆はご飯を貰えない。
 一方、ぱちゅりーはゆっくりして冬をすごす。皆が貰えなかった分のご飯まで、ぱちゅ
りーは独り占めできるってことさ」

仲間を犠牲にして自分だけゆっくりするなど、最も忌避することだった。



「む…………むきゅ?」

今、この男は何を言った?
今、自分は何を聞いた?
認識が追いつかない。思考が間に合わない。

「前の冬の時も同じことをしたんだろう? それだけじゃなく、生き残った仲間もぱちゅ
りーが殺したんじゃないか?
 去年から生きているゆっくりが少ないのも、そのせいさ。もし前の冬の事を覚えている
奴がいたら、ぱちゅりーの嘘がばれちゃうからな」

やめろ。それ以上、口を開くな。
たとえ根も葉も無い出鱈目だとしても、不愉快極まりない。

「頭が悪いゆっくりだけ残しておいて、また群れを作る。秋になったら他のゆっくりを働
かせて自分はゆっくりする。冬になったらゆっくりできない仲間を笑いながら、自分はド
スが持ってきてくれたご飯で一人だけゆっくりする。
 いや、ぱちゅりー種は頭が良いと聞くが、こんな事を思いつくとはね! 素晴らしいゲ
スだよ、君は!」

有りえない。そんな事は有りえるという可能性ですら存在を許されない。黙れ黙れ黙れ。
自分を、死者を、目の前の仲間達を、これ以上侮辱することは許さない!

「むきゅぅぅぅ! うそつきでゆっくりできないにんげんさんは、ゆっくりしないでぱち
ゅりーたちのゆっくりぷれいすからでていってね!」
「嘘つきは君だろう? さっきから証拠も無しに反論してばかりじゃないか。森の賢者が
聞いて呆れるね」

知性は自らの存在意義。それを否定されて黙っているものにぱちゅりーたる資格は無い。
誰よりも、目の前の人間よりも、自分は賢いことを知らしめてやらねばならない。

「ぱちゅりーはけんじゃよ! とってもかしこいのよ! それにしょうこがないのは、お
にいさんだっておなじじゃない!」
「怒りに任せて叫んでいるだけなのに、『賢い』とか言われてもなぁ。
 ……確かに僕も、ぱちゅりーが嘘をついている証拠は出せないけど」

そら見たことか。こちらを侮辱しておきながら、その根拠も無いとは片手落ちもいいとこ
ろだ。だがそれも仕方の無いことか。相手は無能な存在なのだから。

「むきゃきゃきゃきゃ! やっぱりおにいさんはおばかなうそつきだったのね!
 さっさとこのゆっくりぷれいすから……」
「だったら、群れの皆に判断してもらおうじゃないか」
「……むきゅ?」

群れの皆が判断? 人間の愚かしさもここまで極まったか。そうしたら、長である自分を
選ぶに決まっているではないか。
長きに渡り群れを纏めてきた賢く威厳溢れる自分と、何処の馬の骨とも知れない愚かで虚
言を吐くだけの下等生物。
比べるまでも無く、自明で必然の理だ。

「むーきゃきゃきゃきゃ! いいわよ! みんなにきめてもらおうじゃない!」
「じゃあ皆が嘘つきだと思った方を群れから追い出すということでいいかな?」
「それでいいわ! でもぱちゅりーのかちは、もうきまっているわ!
 さあみんな、このばかでうそつきのおにいさんをおいだすのよ!」










「うそつきはいなくなったね!」
「これでゆっくりできるね!」

数分後。群れはとてもゆっくりしていた。
長だったぱちゅりーを散々攻撃し、群れから追放して。

ゆっくりにとっての価値判断の基準は、ゆっくりできるか否かのみだ。
ありす種は『とかいは』という言葉に置き換えることもあるが、基本は同じだ。

その基準で言うと、ゆっくりすることを勧める男の話は「ゆっくりできるはなし」であり、
その話をした男は「ゆっくりできるにんげん」である。

一方、長であるぱちゅりーは、食料の貯蓄やすっきり制限など「ゆっくりできるはなし」
とは逆の事を群れに強いており、かつての群れの仲間をゆっくりできなくさせた(かもし
れない)「ゆっくりできないぱちゅりー」だった。

もっとも、それだけなら長として群れをまとめてきた信頼から、ぱちゅりーが排斥される
ことはなかったかもしれない。
だがぱちゅりーは、賢者を自称するにも関わらず、男の「ゆっくりできるはなし」を喚き
散らして否定するだけだった。
加えて、「ゆっくりできるにんげん」を醜い笑い声と共に罵り、完全に「ゆっくりできな
いぱちゅりー」と判断されてしまったのだ。

そうしてぱちゅりーは嘘つきとして、仲間に痛めつけられた挙句に追放されてしまった。
数匹の、未だぱちゅりーを信じているゆっくりと共に、森の奥へと消えていった。

そして元凶である男は、

「他の群れにも、この話をしてあげてね。そうすればもっと沢山のゆっくりがゆっくりで
きるようになるよ」

と伝えて群れを去った。



その後、群れのゆっくりは、外出時に出会った他の群れのゆっくりからも男がしていた話
を聞き、男の話は真実なのだと確信を深めた。
男、あるいは男の仲間が、他の群れにも同じ話をしただけである。
噂や情報というものは、複数の他者から伝えられると本当のことだと思いやすくなる。
男が最後に残した言葉は、噂の拡散の他に、このような効果を期待してのものだった。

加えてこの群れの場合は長を追放した後ろめたさが、その傾向に拍車を掛けた。
男の話が真実なら、ぱちゅりーは嘘つきであり、ゆっくりできない存在を迫害したとして
も、褒められこそすれ罪の意識を感じる必要はないからだ。

そうしてこの周囲一帯のゆっくりは食料確保と生殖の制限をやめ、当然の帰結として冬の
間にほぼ全てが餓死した。





「それじゃあかりにいってくるね!」
「むきゅ、いってらっしゃい」

春、かつての群れからゆっくりの感覚で遠く離れた森の中、長だったぱちゅりーは番のれ
いむが外出するのを見送っていた。
ここは食料となる動植物がそれなりに豊富で、天敵となる生物もいないわけではないが、
数が多いわけでもない。
日当たりは悪く、多くの木々が立ち並ぶ地形はゆっくりにとって移動も定住もしにくいも
のだったが、何より人間の姿を見ることが無かった。

この地でぱちゅりーは新たな群れに所属している。幾つかの家族が集まっただけの小規模
な群れだ。
そしてその多数は、冬に人間の甘言によりかつて所属していた群れを追放されたゆっくり
達だ。彼らが集まり、この地に先住していた僅かなゆっくりと共に作り上げた群れ。

人間に騙されなかった個体が多くを占めるので、群れのゆっくり達は比較的賢いものが多
い。
だが、とぱちゅりーは思う。その程度の賢さなど、ゆっくりにとっては無意味なものでし
かないのだろう。
多少の知能があったところで、ゆっくりには捕食種や人間、そして自然に対抗できるだけ
の身体的能力が欠けている。またその知能も中途半端で、かつての群れの様に却って自ら
の生を縮める方向に働く事のほうが多い。

いかに人間の危険を説いたところで、ゆっくりの貧弱な語彙では欠片も伝わらないだろう
し、「ゆっくりできない」相手を見下すゆっくりには逆効果だ。

捕食種も人間も飾りを失ったゆっくりも、「ゆっくりできない」存在である。
捕食種には頻繁に襲われることから、「ゆっくりできない」=「強くて恐ろしい相手」と
ゆっくり達の共通認識となっている。

だが人間は稀にしか遭遇せず、遭遇しても襲ってくるとは限らず、襲われた場合はそのゆ
っくりの死亡率は捕食種の比ではない。ゆえに「ゆっくりできない」の中身までは他の個
体に伝わらないのだ。

強くて恐ろしい、と言う言葉と共に人間は「ゆっくりできない」と情報が伝わることはあ
るが、ゆっくりにとって最も重要な情報は、ゆっくりできるか否か。
それ以外の事など枝葉末節。ゆっくりの低い記憶能力と相まって、「にんげんはゆっくり
できない」とだけ伝播することになる。

そしてその「ゆっくりできない」の中身は、飾りを失ったゆっくりに向けるものと同じ。
愚かで無様で能力が低く、自分より格下の存在。それが多くのゆっくりにおける、人間の
印象なのだ。

それが過ちであることを、この群れの多くの個体は経験と共に知っている。実際に暴力を
振るわれた訳ではないが、自分達を害する存在だ、という認識は持っている。

しかしそれが次世代に伝わることは無いだろう。ゆっくりが鮮明な記憶を長期間保てる事
は殆ど無く、またそれを仔細に伝える語彙も無い。
ぱちゅりーの様な例外中の例外もいるが、ぱちゅりーでさえ自分の中で考えを纏めること
すら出来ていない。ただ感覚的に、皆の考え方は何処かが間違っている、と思うのみであ
る。

「わからないわ…………」

ちぇん種のような呟きが、ぱちゅりーしかいない空虚な巣穴と思考に響く。
きっと何も考えずに、本能のままにゆっくり生きたほうが、ゆっくりにとって幸せなのだ
ろう。
その結果、無残に命を散らせるとしても、自らの生を後悔する今際の際まではゆっくりで
きるだろうから。
意識する間もなく命を落としたものは、そういった意味では最も幸福なのではないか。

ゆっくりしようと努力し、堅実に生きるものはゆっくりできない。
それらを放棄し思うままに生きるものは僅かではあるがゆっくりできる。

それはどうしようもない袋小路だった。結局のところ、ゆっくりが望むようなゆっくりな
ど、どこにも存在しない。
ぱちゅりーは思考を打ち切る。打ち切ろうとした。それは考えてはいけないことだから。
己と己の種を否定することだから。
だが無限に湧き上がる思惟を押し留めることはできなかった。

感情のままに喚き散らし、本能のままに生きられたら。そう思いながら、どちらの行動も
ぱちゅりーは拒絶する。
感情に身を任せた結果が、以前の群れを追放される原因となった自身の醜態だった。
本能に身を任せた結果が、最初の群れと、そしておそらく以前の群れの仲間の惨劇だった。

同じ事を繰り返してはならない。自分は知性の象徴、森の賢者なのだから。
だがその決意こそが過去の悲劇の原因であることには、ぱちゅりーは終ぞ気が付くことは
無かった。





そして数ヵ月後、群れにぱちゅりーの姿は無かった。
群れを出たのか、何らかの要因により命を落としたのかは不明だ。

ただ一つ確実なのは、ゆっくりできない思考に捕らわれたぱちゅりーは、死の瞬間までゆ
っくりできなかったという事だ。






過去作
  • ゆっくり失踪事件

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最終更新:2009年06月13日 19:57
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