ゆっくりは自分以外のゆっくりを迫害する事を容赦しない。
それが奇形なら尚更で、跳ねれない・歯がないという理由で親が子を殺す事もあるのだ。
そして、ここに二種類のゆっくりがいる。
一匹はゆっくりめーりん 皮が厚くて丈夫なのだが、喋れないという欠点を持つ。
もう一匹はゆっくりこうりん 高い知能を持つが、目が見えないという欠点を持つ。
この欠点のせいで、他のゆっくりから二匹は虐められていた。
何かをしたわけでもない。ただ、目が見えない・喋れないという理由だけでだ…
ゆっくりこうりんは辟易していた。理由は、先程からずっと後ろをつけてくる他のゆっくりの存在である。
こうりんの目が見えない事を知っているから、他のゆっくりはこうりんの失態をずっと待っているのだ。
言葉では頭の良いこうりんに勝つことはできない為、転んだりしたら思い切り馬鹿にしたいのである。
しかし、先程からこうりんはそんな失態を見せることは無かった。
それどころか、まるで目が見えているかの如くスイスイ道を進んでいく。
石があれば飛び越え、穴があったら横にそれる。
小賢しいありすやぱちゅりーは先回りして石を置いたり穴を掘ったりしたのだが、それでもこうりんは引っ掛からない。
やがてつまらないとぶつぶつ文句を言いながら、ゆっくり達はどこかへ行ってしまった。
ゆっくりめーりんは耐えていた。いつも受けるいじめという理不尽な暴力に。
手に掛けているのは先程こうりんの後をつけていたゆっくり達である。
それぞれが石を投げたり体当たりをかまして、めーりん独特の鳴き声を聞こうとするのだがめーりんは鳴かない。
最近はずっとそうである。いつもならすぐ聞けるあの無様な鳴き声が聞けないため、ゆっくり達は気に食わなかった。
最後はまりさが木の枝で突き刺したが、結局めーりんは鳴き出さなかった。
抜かれた枝の穴から中身が出ても、めーりんは痛みを堪える為に目を瞑り歯を食い縛っている。
拍子抜けしたとばかりに、めーりんを放ってゆっくり達は帰っていった。
どれくらいの時間がたっただろうか。日は沈み、辺りが薄暗くなり始めた頃放置されていためーりんに近づくゆっくりがいた。
ゆっくりこうりんである。
こうりんはめーりんが刺された傷に葉っぱを当て、めーりんを背負って静かに移動する。
目的地は自分の住みかである洞のある木、あそこなられみりゃに見つかる事はないからだ。
そんなこうりん達を見ている影が一つあるとも知らず…
「きょうもさんざんだったぜ」
そう言いながら、リーダーのまりさが息を吐いた。
ここはあるゆっくり達の集落の一つ。その中の洞窟に、この森のゆっくりが集まっていた。
正確には、先程こうりんとめーりんに手を出していたゆっくりである。
「さいきんあのゴミクズがなかないからほんとうにつまらないんだぜ」
「めなしはめなしでなんにもはんのうしないからつまらないのよ!」
「ぱちゅのいうとおりだわ。ありすがわざわざおいたいしにもひっかからないし」
「ほんとうにくうきのよめないやつらなんだぜ」
「むぎゅ!クズはばかなんだからきたいするはんのうくらいすればいいのに、ほんとうにクズね」
「あのめなしはめなしでいなかものなんだからとかいはのありすたちのおもいどおりにならないからいやになるわ」
好き勝手に文句を言うゆっくり達。ちなみに目無しとはゆっくりこうりんを指す言葉である。
「みんな~ おもしろいものをみてきたよ!!」
そこに一匹のれいむが帰ってきた
「おもしろいものってなんなんだぜ?」
「まぁ、れいむのみつけたことだからどうせたいしたことはないとおもうわ」
「ぱちゅにどういね」
「むぅ~ ぱちゅもありすひどいよ!!」
そういいながられいむは頬を膨らませた。
「ぱちゅもありすもいまはれいむのはなしをきかなきゃだめなんだぜ」
「むぎゅ…」
「わ、わかったわよ」
「で、おもしろいはなしをきかせてほしいんだぜれいむ」
「うん! まりさのためにゆっくりしないではなすよ!」
れいむが話した内容はこうりんがめーりんを治療してどこかへ連れて行ったと極めて簡潔なことだった。
「はぁ、それがどうしたのよ」
「む、ひどいよありす!」
「だってそうでしょう。めなしとクズがただいっしょにかえったってだけじゃない」
「ぱ、ぱちゅりーまでひどいよ!! まりさはそうおもわないよね!!」
縋る思いでまりさを見つめるれいむ。視線の先には何か思いついたのか、にやついてるまりさがいた。
「れいむはおもしろいじょうほうをもってきてくれたんだぜ!! さっそくいくぜ!!」
「お、おもいついたっていったいなにをよ!!」
「そうよ!せつめいしなさい!!」
「いきながらせつめいするからみんなついてくるんだぜ!!」
そう言いながら、洞窟の外へまりさは駆け出した。残りの三匹も後を追う。
めーりんが目を覚ますと、体の節々に痛みがあるのを感じた。昨日受けた暴力の名残である。
特に枝に刺された部分は、葉っぱが当てられてはいるものの傷は完全には塞がっていなかった。
とりあえず治療してくれたゆっくりにお礼を言おうと洞の中を見渡すが、誰の姿も無い。
ただ、この場所が誰の住処なのかは分かっていた。
初めて会った時に、そのゆっくりと約束した場所だからだ。
とりあえず傷は痛むものの、めーりんは探すために外へ出て周囲を探し始めた。
自分の中身を出さないよう、静かにゆっくりと跳ねるめーりん。
探し始めてすぐに相手を見つけることはできた… まりさに踏まれているこうりんをだ…
「まりさ! クズめーりんがきたよ!!」
「みればわかるんだぜれいむ。まりさはめなしじゃないんだからな!」
「ゆ、ごめん…」
「ありすとぱちゅはやれ!」
「むきゅ!」
「まっかせて!」
まりさの合図によって現れた二匹はめいりんを二本の枝で貫き地面に釘付ける。
その内の一本は、昨日貫いた場所を刺していた。
「~~~~~!!」
思わず悲鳴をあげそうになるが、めいりんは必死に歯を食い縛る。
「めーりんはすごいね、そんないたいめにあってもなかないんだから」
「そうね、わたしみたいにからだがじょうぶじゃないてんさいならいまのでしんでるわ」
「いなかものはじょうぶってことね」
暢気に喋る三匹だが、まりさだけは気に食わなかった。
めーりんのあの無様な鳴き声を聞いてこそ、自分は初めてすっきりできるのだ。
それなのに鳴かない。だから余計に気に食わない。
踏んづけているこうりんをれいむに交代してもらい、まりさはめーりんに飛び乗る。
「~~~~~!!」
まりさの方が二回りほど大きい上でのプレスだ。いくら軽めに跳んでも、かかる重圧は半端でない。
まりさはめーりんの目を見る。その目は怯えず、しっかりと何か意思を持った瞳であった。
「きにくわないんだぜ!!」
まりさは何度もめーりんをプレスする。貫かれている所からめーりんの中身が噴出すが容赦しない。
何度も何度も、鳴かせる為だけにプレスを続ける
「ねえまりさ、それがなかないのってこのめなしがいるからじゃないかしら?」
まりさがめーりんを踏みつけていると、ありすがいきなり話しかけてきた。
「どういう意味なんだぜ?」
「だからね、そのクズがなかないのは、このめなしがいるからなのよ!」
こうりんを踏みつけまりさにいうありす。
「ありすのかわりにわかりやすくせつめいしてあげるわ。そのクズはね、このめなしにぶざまなところをみせたくないのよ」
「クズめーりんがか?」
「そうよ。クズのなきごえはとてもみにくいでしょう? だからきかれたくないのよ!!」
ぱちゅの言ってることがわかり、納得するまりさ。
つまり、好いた相手に嫌われたくないから鳴かない。そんな理由で、このゴミクズは自分の思い通りにならなかったのか…
そして、それがわかったまりさはめーりんに腹が立ち、手加減無しの踏みつけ行った。
踏みつけを終えたまりさはそのままめーりんから降りる。
もう、めーりんの命の灯火は消えかけているとわかったからだ。
めーりんの周りは傷口から吹き出た中身で赤く染まり、確実に致死量以上の中身が出ていた。
「つまらないやつだったぜ」
「まりさ、だいじょうぶ?」
「ほんとうになまいきなやつだったわね」
「あのゴミはどうするの?」
れいむとぱちゅは近づき、ありすが顎で指し示したのは、もうほとんど死にかけているめーりんだ。
放っておけば確実に死ぬし、何かをしたとしても助かることはないだろう…
「もうつかれたからやすむんだぜ。あのクズはぱちゅとありすですきにしていいんだぜ!」
しかし、このまりさは容赦しなかった。
自分の機嫌を損ねためーりんを、許すことなどしなかった。
好きにしていいと言われたぱちゅりーとありすはめいりんに刺さっている木の枝を抜き、再び刺す。
「クズはクズらしくぶざまになきなさいよ!!」
「そのきもちわるいこえをきかせなさい!!」
ひたすら
抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す 抜いて 刺す
何度も繰り返すことによって、めーりんのいた場所は緑色の帽子と赤いめーりんの中身、皮の残骸だけが残った。
「君達は、本当に愚かだよ…」
めーりんが死んだのを見て、今までずっと黙っていたゆっくりこうりんが口を開いた。
「ゆ?」
「めなしのくせになまいきだぜ。いままでずっとなにもしなかったよわむしのくせに」
まりさがすぐ挑発をする。色々消化不良だから、今度はこーりんですっきりしようと考えたのであろう。
「弱虫か… 僕はね、今君達に殺された子との約束を守っていただけなんだよ」
「やくそく? あのクズめーりんと?」
「しゃべれないあのゴミクズとどうやってやくそくできたのかおしえてもらいたいわ!」
「ま、ゴミクズとめなしのいなかものコンビにならできるかもしれないわね!」
ありすの言葉に笑う四匹。しかしこうりんだけは静かに佇んでいた。
「ゴミクズね、僕に言わせれば君達の方が十分ゴミクズだよ」
「ゆっ!!」
「むぎゅ!!
「なまいきよあなた!!」
「あんなゴミクズとまりさたちをいっしょにするなんてゆるせないんだぜ!! やっちまえれいむ!!」
「まかせて!!」
まりさの言葉にれいむが返事をし、近くにいるこうりんを潰すために跳躍する。
「ゆっくりつぶれてね!!」
踏み潰す為の攻撃がれいむが繰り出す。喰らえばこうりんは助からなかったろう。喰らえばだが…
こうりんは踏み潰される前に前転し、れいむのプレスを避ける。
「ゆ!?」
これに驚いたのはれいむだ。相手は目が視えない筈なのに、自分の攻撃を避けたのだから。
そして、れいむは二度と目に光が入ることはなかった…
れいむのプレスを避けたこうりんは人間の武器――苦無――を口から出して銜え、れいむに振り返って目の部分を切りつけたのだ。
いきなりの事で動けない三匹… 何が起きたのかわからなかったのだ。
「まりざぁぁぁぁ!!めがあぢゅいよぉぉぉぉ!!ぐらいよぉぉぉぉぉ!!ごわいよぉぉぉぉ!!」
れいむの叫び声で我を取り戻し、ありすとぱちゅは銜えている枝でこうりんに突撃する。
しかし、こうりんは突き出された枝を跳躍で飛び越え、そのまま懐に入って二匹の目をれいむのように刈取った。
「どぼじでぇぇぇぇぇ!!」
「なんでわがるのぉぉぉぉ!!」
同じように騒ぎ出す二匹。これで残っているのはまりさだけになった。
「ま、まってほしいんだぜ!!」
恐怖を感じたまりさは逃げるチャンスを探す。あの三匹のように目無しにはなりたくなかったからだ。
「なんでおまえはいままでなにもしなかったのにいきなりおそってきたのかおしえてほしいんだぜ!!」
そして、一つの疑問があった。今まで何もしてこなかったこの目無し――こうりん――が、何でいきなり襲ってきたのかを知りたかったのだ。
「言ったろ? 僕は君達にゴミクズゴミクズ言われていたあのめーりんとの約束を守っていただけだって」
「そ、それはきいたからわかるぜ!! そのやくそくがなんなのかをおしえてもらいたいんだぜ!!」
そう言いながら、まりさは周囲を伺う。相手が目が視えないのだから、立ち向わずに逃げ出せば追ってこれないと考えたのだ。
「君はあのめーりんが何で鳴かなかったかわかっているのかい?」
「ゆ? ありすがいってたんだぜ! めーりんはおまえがすきだからみにくいあのなきごえをきかせたくなかったって!!」
「それがもう間違えているんだよ。僕がこの森に着いた時あの子に言ったんだ。『君を虐める奴らを殺そうか?』ってね。
でも、あのめーりんはそれを断ったんだ。今まで転々としてきた森で出会っためーりん達のようにね」
「な、なんでそんなおそろしいことをめーりんなんかにいったんだぜ!!」
「僕は言ってみただけさ。僕が目無しと呼ばれ迫害されるように、めーりんは喋れないというだけで暴力を受ける。君達のようなクズからね」
「まりさはクズなんかじゃないぜ!!」
「それに、話は聞いてもらいたいね。あの子は『ちゃんと』断ったんだ。いくら虐められても自分は大丈夫だってね。
そこで僕はある約束をした。『君が虐められても大丈夫というのなら、一度も鳴くな』ってね。
めーりんは頑張って守ろうとしたよ。自分を虐める奴らを僕から守る為に、必死で鳴かないよう頑張ったんだ」
こうりんが話しに夢中になっているのを感じ、少しずつまりさは距離をあけていく。
「結局、めーりんは僕から守ろうとしたゆっくり達の手で殺されてしまったけどね…
今にも逃げ出そうとしてるクズの手で!!」
その言葉を聞くと同時にまりさは走り出した。
自分の考えが読まれていると感じて、すぐにでも逃げ出さねばれいむ達と同じ目にあってしまうと思ったのだ。
幸い足には他の三匹と比べても自身があった。
あんな目無しに自分が追いつかれるわけがない… 必死にまりさは走り出す。
「ひゅぎゅ!!」
しかし、途中で転んでしまった。
転んだ理由は… 帽子と中身が散らばっためーりんを踏んで滑ってしまったのだ。
急いで立ち上がろうとするが、それはできなかった。自分の体に刺さった木の枝のせいで…
「ゆぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ぬいでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
あまりの痛みにまりさは刺した相手、こうりんに懇願する。早く抜いてもらわねば死んでしまうと思ったのだろう。
「おいおい、これから君は目を刈取られるんだよ? この程度の痛みなんてかすり傷みたいなもんさ」
「いいがらぬいでぇぇぇぇ!!!!じんじゃうぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「大丈夫だよ。めーりんは君に刺されても生きてたろ? 問題ないさ」
「あんなのどいっじょにじないでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!まりざじんじゃうよぉぉぉぉぉ!!!!」
「ふぅ、騒がしい奴だ。君は反省しているのか?」
「じでまずぅぅぅぅぅぅ!!!! だがらぬいでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「本当かい? 僕は嘘吐きは許さないよ?」
「はぃぃぃぃぃぃぃだがらぬいでぇぇぇぇぇ!!!!」
「…わかったよ、抜いてやる」
「ありがどうございまずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
口ではこんな風に言っているまりさだが、頭の中ではどうやってこうりんに復讐するかを考えていた。
自分をこんな痛い目にあわせた目無しをぶっ殺してやると。
「じゃあ、抜くから目を瞑ってね」
「はぃぃぃぃぃ!!」
まりさは心の中で笑っていた。これで自分の勝ちだ。
これを抜いたら目無しを潰して、奴隷にすると決めていた。
そんな夢を見ていたら、右目の瞼に冷たいものが触れてそのまま目がくりぬかれた。
「いあぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! まりざのめがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「大丈夫だよ、もう一個も抜いてあげるから」
「やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ まりざがなにじたのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「君は嘘吐きだからね、目玉をくりぬいたんだよ。言ったろ? 嘘吐きは許さないって」
「まりざはうぞづいでなあいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! だずげてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「君は騙せたつもりかもしれない。だけど、僕は他のゆっくりが考える事がわかるんだよ。口に出さなくても、ね。
だから僕は喋れないめーりんと意思疎通もできるんだ」
「やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁやべでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぬがないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「君みたいなのがいるとね、僕はゆっくりできないんだよ」
じゃあねと言いながら、こうりんはまりさの左目も取り出した。
ある一匹のゆっくりこうりんがいた。
目が見えない・喋れないという理由で迫害される自分とゆっくりめーりんに疑問をもったゆっくりこうりんだ。
そして、そのゆっくりこうりんは考えたのだ。
自分達と同じように他のゆっくりの目を取り出して目を視えなくする。
そして、目が視えない・喋れないゆっくりだけになれば誰も迫害されなくなると。
こうりんはこの森のゆっくり全てから目を取り出して、また別の集落を求めて歩き出す。
この森のゆっくりを守ろうとした、ゆっくりめーりんのお墓に花を添えて……
これで書いた作品が小ネタを含めると5つになりました~読んでくださった方、本当にありがとうございます。
今回は、これらにインスパイアされて書いてみようと思った作品です。
ちなみに自分の中でゆっくりこうりんはうしおととらのさとりのイメージ
最後に、御目汚し失礼!!
最終更新:2011年07月30日 02:01