ゆっくりいじめ系578 ゆっくり推進委員会_2



ぱちゅりーがゆっくりと意識を取り戻したのは、いつもの見慣れた親友の家の中であった。

「ゆっ!?まりさおねぇちゃーん!!ぱちゅりーおねぇちゃんがめをさましたよ!!」

それに気が付いたのは、まりさの姉妹であろう。

少し小さめのその娘がそう叫ぶと、他のゆっくり姉妹達やまりさの両親も駆け付け「「「ゆっくりしていってね!!」」」とぱちゅりーに嬉しそうに声を掛ける。
それに遅れるように、ぱちゅりーの親友であるまりさが勢い良く跳ねながらやってきた。

「ぱちぇ!!よかった、めをさましてくれたんだね!!」

ぼんやりと眼を開けるぱちゅりーに対して、まりさは眼に涙を溜めて頬を寄せた。

ぱちゅりーはいつものまりさと違う感触に違和感を覚えたが、少し動いてみると直ぐに理解した。
自分の身体の周りに何やら白い物が巻かれているのだ。

何故こんなものが巻かれているのか。というのも、霞が掛かったような意識の中で段々と理解出来てきた。
あの人間に千切り取られた頬の餡子の流出を止めるため、まりさがここまで運んできて姉妹達と処置してくれたのだろう。

にんげん!?
――そう、わたしたちはにんげんにおそわれたのだ。

「むきゅ!!そうだ、れいむ……れいむは!?」

意識がはっきりした途端、穴の中から飛び出していったれいむの事を思い出し叫んだ。
突然の事に、まりさの妹達は驚いた様子だったが、まりさは少し間を空けてぱちゅりーの眼を見据えて言った。

「れいむは……れいむはまだもどってないよ。きっとにんげんに……」

そこまで聞けば、ゆっくりの中でも頭の良いぱちゅりーは直ぐに察する事が出来た。
周りのまりさの妹達も「れいむおねぇちゃんがぁぁ!!」や「ゆっくりかえってこないよぅ!!」などと叫び出した辺り、まりさはもうその事を伝えた後なのだろう。
まりさの両親も、れいむが人間に連れて行かれたという事とその行く末を理解してか、どんよりと暗い顔だ。

そんな暗鬱な空気の中、まりさは入り口の方に跳ねながら、

「それじゃあ、みんな。ぱちぇのことはたのんだよ!!」

そう言って、外へと飛び出して行く。

その突然の事に、ぱちゅりーは眼を白黒させた。
まりさはこんな時に何処へ行こうと言うのか!?

「むきゅ?まりさはどこにいっちゃったの?」

周りの家族の様子を見渡す。
ぱちゅりーのその問いに対して、誰も何も言わずに、ただ眼を床へと向けるだけであった。

暫く、ゆっくりな静まり返った空間が出来上がる。
重苦しい――息が詰まる雰囲気だ。

一体全体、何だというのか!?

ぱちゅりーがもう一度まりさが何処に向かったのか問いただそうとしたその瞬間、一匹の子供まりさが声を張り上げた。

「まりさおねえちゃんは……まりざおねえぢゃんば、れいむおねぇぢゃんをだずげにいぐってぇ!!」

そこまで喋ると、堰を切ったように泣き出し始めた。
周りの子供達も「ばぢゅりーおねえぢゃんにいっぢゃだめだよぅ!!」や「なんでいっぢゃうのぉ!?」など口々に叫び、
連動するかのように貰い泣きしだした。

ぱちゅりーは、まりさの両親を見やる。
その顔を見るに、恐らくはぱちゅりーが気絶している間にもう話を済ませたのだろう。
二匹は寄り合いながらただプルプルと震え、涙を流しながら耐えていた。

「むっ、むっ……むきゅぅぅ!!」

家族の様子に対して、頭の良いぱちゅりーは全てを悟り、その時にはもう駆け出していた。
家の入り口の辺りで、後ろから呼び止める声が聞こえたがそんな事は気にも留めない。

遥か前方に米粒程に小さくなった魔理沙目掛けて、最大の速度で這いずり進む。
身体が痛む。
包帯に黒く餡子が染み渡り、それと同時に力が抜けていく感覚を味わう。
だがそれでもぱちゅりーは、自身の持てるもの全てを振り絞ってまりさを追い続ける。

「むぎゅぅ、むぎゅぅ……ま、まりざぁぁあ!!」

ギリギリ声が届きそうな地点でまりさの名前を叫ぶ。

聞こえただろうか――――いや、聞こえたはずだ。
遠くに見えるまりさの後姿は、立ち止まっている。

良かった。と、息も絶え絶えなぱちゅりーは思った。

しかし次の瞬間、その後姿がぶるぶると少し震えたかに見えた後、更にスピードを上げて進み始めた。

「ゆっ、なんで!?まりさ……まっでよ”、まり”…ま”り”さ”ぁぁあ”!!」

突然のまりさの反応に一度は安心したぱちゅりーも再び這いずりながら、涙を流し大声で呼び掛ける。
傷口も大きく開いたのか、動いて捩れた包帯から段々と漏れ出す。

それだけでは無い。
過度の運動のせいか、喘息持ちのぱちゅりーは呼吸もままならず、時折大きく餡子を吐き戻していた。

「まり”さ”……まり”さ”ぁ!!」

それでも尚、ぱちゅりーは叫び続けた。
ここで呼び止める事が出来なければ、まりさにはもう二度と会えないだろう事を彼女は知っていたからだ。

「ま”っでぇ……もどっでぎでぇ!!ぱじゅりーは、は”じゅり”-は”ぁ……ま”り”さ”のこ”と”がす”き”なの”よ”ぉぉお!!」

森の中の鳥達も何事かと驚いて飛び立つほどの、全精力を込めた渾身の叫び声をあげる。
とてもぱちゅりー種の出す声量では無い。
もちろん本人も無事では済まず、呼吸がもう、まともに出来なくなったのか暫くピクピクと痙攣し、ワンテンポ置いた後に「がはっ」と大きく嘔吐した。

再び目の前が真っ白になっていく。
まりさには、届いただろうか?

そんな事を思いつつ、ぱちゅりーはその場に突っ伏した。


ずっとつたえずにいたおもいを、なんでこんなときにいっちゃうんだろう!?

しかも、せっかくちりょうしてもらったのにまたこんなにもなって。

わたしはやっぱりもうだめみたいだけど、せめてまりさがにんげんのところに、いくことをおもいとどまってくれると―――――――――。


「ばぢゅりぃぃぃぃい!!」

遠くからの呼び掛けに、沈んでいくばかりの意識が引き戻される。
薄っすらと眼を開けると、そこには遠くからゆっくりとは思えない物凄い速さでこちらに向かってくるまりさの姿が写った。

「ぱちゅりー!!ぱちゅりー!!なんで、なんでついてきたりするのぉ!!」

まりさは、ぱちゅりーの傍まで駆け寄ると大声で呼び掛ける。
対して、ぱちゅりーは産まれたての小鹿のように弱々しく震えながら「だって…だって……」と呟くばかりであった。

「まりさは、れいむをたすけにいくんだよ!!やくそくしたんだから、たすけにいくってぇ!!」

堰を切ったように、まりさの眼から涙が流れる。
例え自分も人間に捕まろうとも、それで死ぬ事になっても、れいむを助けに向かう。

それだけの決意を持って家を出たのだ。
家族に幾ら諭されようとも、反対されようとも、まりさはその決意を頑として変えなかった。

それなのに、ぱちゅりーの呼び掛けに対して戻ってきてしまったのだ。

「なんでぇ!!な”んでな”の”ぉぉぉお”!!」

まりさの慟哭が辺りに響く。

ぱちゅりーの元へ戻るという行動が意味する事を、まりさは気付いていた。

ぱちゅりーを見捨てて前に進む事が出来なかったという事実。
それはまりさの固い決意すら曲げ、それは即ち、再びぱちゅりーを置いてれいむを助けに向かうという行為を不可能にさせるに十分であったからだ。

れいむとの交わした約束を叶える為には、非情になってぱちゅりーを見捨てて進むべきであったのだ。
それが出来なかった自身の行為を悔い、今再び前へと進めない自身に対して、自己嫌悪に陥っているのであった。

「うわあぁぁぁあ!!なんでぇ、なんでだよぉお!!」
「む、むきゅぅ……だってぇ、まり…さがぁ……」

そんな恐慌状態のまりさを、虚ろな眼で見つめていたぱちゅりーは衰弱しながらも優しい声をあげる。

「だってぇ…まりさがい…ないとぉ、ぱちゅりーは……いきて、いけないよぉ……」
「どぼぢで、ぞんなごどいうのぉぉぉお!!」

蚊の鳴く様な声であったが、どうにかまりさには届いたようだ。

「まりざは…まりざはれいむをだずげにいぐんだよ!!まりざは、れいむのことがずぎなんだよ!?」
「むきゅぅ…しってるよ、そんなことぉ……」
「だったら、なんで!?」

強がってみたものの、ぱちゅりーの心がズキリと痛む。
何と無くは判っていたが、はっきりとまりさの口から「れいむがすき」と聞かされたのはコレが初めてであった。
しかし構わない。

「ま、まりさに、い…いきて、ほしいから……」
「で、でも…まりさは、れいむをたすけだしたらもどってくるよ!!」
「に、にんげんにつかまっちゃったらね……ゆっくりは…にどと、そとにでて…ゆっくりできないんだよ。ま、ましてや…たすけ、だすなんて……むり、なのよ」
「ゆっ!?」

何て自分は酷い女だろう――そう、ぱちゅりーは思った。
自身の行為。そして、この口から餡子と吐き出している言葉。
どれを取っても最低のモノだ。と、自分でも判る。

だがそれでも、ぱちゅりーはその嫌悪感を無視し、言葉を紡ぐ。
それがまりさの命を救う事になるのなら、幾らでも自身の心を痛め付け、鬼になる事が出来た。

「れ、れいむは…もう、むりなのよ」
「そんなこというな、だぜ!!れいむはかならず、かならずもどってくるんだぜ!!」

相手が五体満足な状態であったなら、同属のゆっくりであったとしても、まりさは構わず体当たりをして押し潰していたかもしれない。

だが、相手は息も絶え絶えのぱちゅりーだ。
しかも、もう一人だけとなってしまった親友のぱちゅりーなのだ。

そんな荒事はとても出来る訳も無く、ぱちゅりーの言葉を受け止めたくないという様子で辺りを転げ回るしか無かった。

「むきゅぅ…ごめんね。でもね、きいてまりさぁ……」
「いやだ、ききたくない!!ききたくなんて、ないよぉお!!」

その様子を涙を流しながら見ていたぱちゅりーは、まりさが少し落ち着くまで間を置く。
自身の身体の方も傷口は余り思わしくないが、呼吸の方は若干落ち着いてきた。

一通り転げまわった後、ぱちゅりーに背を向けるまりさに擦り寄り、その背に持たれかかる様にして話を続ける。

「……きっとね、れいむも…れいむもね、こう、おもっているはずだよ」
「ゆっ、れいむも!?」

まりさも少し落ち着いてきたのか、れいむという言葉に反応して振り返る。

「うん、れいむもね。きっと……まりさには、きけんなことはしてほしくないって……おもっているよ」
「ほんとうに!?ほんとうに、れいむもそうおもっているかな?」
「むきゅ……ぜったいに、そうおもっているよ。それにね……」
「ゆっ、それに?」
「まりさと、ぱちゅりーには……しあわせになってほしいって。うん……きっとそうねがっているよ」

そそっと、弱々しく、ぱちゅりーはまりさの頬へと身体を寄せる。

「だからね……しあわせになろうよ。ゆっくりと……れいむのぶんまで…ね?」

まりさに身体を密着させて、そっと耳元で囁く。
その言葉を聴いたまりさの眼から、ブワっと涙が溢れ出てきていた。

いつの間にか、まりさの家族がぱちゅりーがやってきた道を駆けている。
ぱちゅりーを呼び戻そうと追ってきたのだろうか。

まりさはそれに気付いているのかどうなのか、ともかく「れいむぅ!!れいむぅ!!」と、れいむの名前を連呼するだけであった。

ぱちゅりーの方は餡子の流出量が限界に達してきたのだろう。
家族が辿り着いた時には、まりさの横で倒れていた。

それに気付いたまりさは我に返り、家族と協力して急いでぱちゅりーを家に運ぶ事にした。

その道中、まりさの「ごめんね、ごめんね」と誰に謝っているのか判らぬ呟きに気付いたのは、恐らくはぱちゅりーだけであっただろう。








「ゆっ!!?」

れいむは大きく眼を見開き、夢の中から覚醒した。
辺りを見回して、まりさとぱちゅりーを探す――が、そこに存在してあろう筈がない。

ああそうだった。
自分はまりさとぱちゅりーを逃がすために囮になり、人間に捕まってしまったんだ。
それも、もうかなり前だ。

ここは何処かの建物の、何処かの部屋の箱庭の中。
3m四方で形作られた、ここに来てからのれいむの住処だ。

まりさとぱちゅりーと、一緒に遊んでいた森からどれだけ離れているか判らないが、兎にも角も確定的に戻る事は出来ないのは判る。

それに何だろうか、全身が気だるい。
身体の中がズキズキする。


段々とハッキリしてきた現実に、身体の奥から吐き気のようなものが込み上げ身震いする。

そして、気付く。
まりさとぱちゅりーを探して眼をさまよわせた時に違和感を感じたのだが、やはりおかしい。

眼が、片方しか、見えていないのだ。
無事な右眼だけ動き、左眼の有った場所は今は窪んだ眼窩が覗くだけであった。

そう、人間に左眼は抉り取られ――。

「ひどいよ、ひどいよぅ。れいむの、おめめが……ゆっ、ゆああぁぁぁああ」

声を押し殺して、控えめな涙を流す。
普通のゆっくりなら、その現実を認められず喚き立てるであろう場面だが、れいむはそうしなかった。
そんな事をした所でどうなるものでも無いと理解していたし、実際の所、余りの絶望感にそれを行うだけの気力がなかったのだ。

「やめてって……やめてっていっだのにぃ。ゆぅ……うううぅぅぅ」

独り言を繰り返し、されど慰めてくれる他のゆっくりもいなければ寄り添ってくれる親友も居ない。

そうやって暫く塞ぎ込んだ後、ふと目の前に食事が入った容器が置いてあるのに気付く。

あの人間が置いていったのだろう。

ここに来てから、決められた時間にきっちりと食事は出されていた。
味の方も、蟲やら雑草と比べればかなり美味しい部類に入る代物だ。

それに何やら、今日は少し量が多目にも見える。

「ゆっくり……いただきます」

れいむは、少しぼんやりする身体を引きずって其処まで行くと、誰に言うでもなくそう呟き、食事に口を付けた。

別段、人間に食事前に言うように指図された訳でも無い。
以前からの習慣であった。

「むーしゃ、むーしゃ」

他に争う者も無く、ゆっくりらしくゆっくりと租借をする。
誰もいないその箱庭の中で、ゆっくりとした食事の時間が流れる。

「むーしゃ、むーしゃ……」

2分の1程食べた辺りで、傍に吊るされている吸い込むと水が流れてくるチューブに口を付ける。

「ゴクゴク……し、しあわ……」

身体全体の餡に適度な湿り気を与える程度の水を含んだ後、プハァっと、口を離す。
普通なら、その後に本能的な言葉とも言われる「しあわせー!!」が出るのだが――。

「……しあわせ、なんかじゃ、ない…よ」

ポツリとそんな言葉が出た。

「まりざとぱちゅりーがいないと、しあわせなんかじゃないよぉぉ!!」

先程の控えめな嗚咽から打って変わり、薄暗い部屋の中に慟哭が響き渡る。
右目からも、先程吸い込んだ水分を全部出し尽くさんとばかりに涙が溢れ出る。

「かえりたいよぉ!!まりざぁ!!ばぢゅりぃ!!」

誰に聞かせるでも無く叫び声を上げたかと思うと、おいおいと泣き喚く。

「まりさぁ…ぱちゅりぃ……うっ、うっ……」

そんな風に親友の名前を何度か叫んだ後、少し落ち着いた様子で啜り泣き、
今度は勢い良く、残った餌へと齧り付いた。

「かえるから……ぜったい、かえるから。まりさたちがたすけにきて、ぜったいいっしょにかえるんだからね」

ガツガツと飲み込み、みるみる内に容器の中の餌を平らげていく。

「それまで、れいむは、しなないから!!ぜったいに、しなないんだからね!!」

多目の食事を勢い良く平らげようとする辺り、傷付いた自分の身体を回復させようという意気込みなのだろう。
自分に言い聞かせるように叫ぶその言葉も、この辛い現実を何とか乗り越えるための激励なのであろう。

だが、彼女は知らない。

数日前に、遠く離れた彼女の故郷とも言える森の中で、親友であったまりさとぱちゅりーのやり取りを、彼女が知ろう筈はなかった。

その知らないという事実が意味する所は、適う筈も無い未来を思い描く、滑稽な存在を作り出すだけなのか。

はたまた虚空だとしても、希望有る未来を思い描く事によって、今という現実を絶望で押し潰されないようにしてくれる幸福なのか。

どちらにせよ、彼女の苦難は未だ始まったばかりだという事だろうか。







  • 余計な話

――それにしても、恐ろしいものだ。
と、先輩と呼ばれた人物は思った。

「研究とはいえ、あそこまで無機質にやれるものかねぇ」

そんな事を口にしながら廊下を早足で歩く。
今日の報告書を、急いで班長に渡さなければならない。

この人里の人間で結成された「ゆっくり推進委員会」というのは、それなりに規則などに五月蝿い組織ではあった。

ゆっくりというものが外から入ってきた、いわゆる「幻想生物」なのか、それとも「妖怪」なのか、はたまた「別の何か」なのか。

などを調べ、
更に、そのゆっくりの危険性や利用価値を調べる機関のようなものである。

部門も「駆除」、「捕獲」なども有れば「研究」だったり、愛玩用のゆっくりを育成する「飼育」という部門も有る。
中には「観察」などと言われる部門まで有る。

正直、自分ではよく判らないが、里の自警団にも似ていて、それでいて少ないが給料も出してくれる。
謎な組織だ。


例の、たまたまゆっくりの眼球部分について調べていた男は、研究班に属していた。
滅多に研究室から出ないが、それなりに優秀な奴のようだ。

自分が連れて来ただけに、鼻が高い気がするが、そうでもないような気もする。

研究班は数名しか所属していないが、結構熱の入っている部門らしい。

人里の医術レベルの低さを、何処ぞの竹林だかの医者だけで補うのは良くない、と危惧した誰かさんが設立したようだ。

そもそもゆっくりと医療を結び付けるとか、その誰かは阿呆かと思う。

――まぁ、それはどうでも良いのだが、問題はあの男だ。

ゆっくりという生物は研究班から見れば、人語を解して、その上で人間より圧倒的に弱い――要するに、人語を解するモルモットな訳だが。
研究生物として考えれば、有る意味で革新的に素晴らしい事なのかもしれない。

だからといって、あそこまで冷徹に捌けるものなのだろうか?
と、見ていて思った。

見ようによっては、苦しめつつ生かす、生殺しというやつだ。

いや、それも違うな――そういった虐待や拷問で使う言葉を適用する事すら出来ない。
研究用生物に対して、そんな言葉を使う人間など、過剰な動物愛護団体くらいなものであるからだ。

あいつにしても、痛ぶるとか苦しめるとか、そういった感情を持って作業している訳ではない。
実際の所、研究のために「作業」しているだけだ。


まぁ、何が言いたいかというと、
私見ではあるが、これだったら、まだ動物を嬲って楽しむ奴の方が、まだ人間的に思える。という話だ。

流石は他の部門から「惨殺」班などと、陰で呼ばれるだけはある。
かなり前の幻想郷なら兎も角、今の融和的な幻想郷では当然の事――いや、昔でも駄目だな。

一番悲しいのが、その惨殺班に、自分も配属されてしまったという事実だ。
これから先、あんなサイコ野郎や、ある意味でその上を行くかもしれない他の連中と付き合っていかないといけない事を考えると頭が痛くなる。













後書き

ゆっくりに身を任せつつ、盆休みを――。

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最終更新:2008年09月14日 07:25
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