ゆっくりいじめ系606 餡子とキリギリス

「ゆっゆ♪ ゆくり~~していってね~~~♪」
 騒々しい街の中、ストリートミュージシャンに混じってゆっくり霊夢の一家がお喋りをしていた。
「!! れいむとこどもたちのおうたじょーづだったでしょ!! おかねいれてね!!」
「いれちぇねーーー!!!」
 どうやら、他の人間がこうやってお金を手にしているのを見て真似をしているらしい。
 通りかかった男に気が付いた一家は、お喋りを中断させて男に話しかける。
「ゆ!! お金入れててね!! どうして黙ってるの!!」
「れいみゅたちの、うつくいしこえにみとれちゃったんだね!!」
「ゆ!! それならしかたがないけど、はやくおかねいれてね!! いちまんえんだよ!!」
「「「いっちまんぇん!!!!」」」
 ぽかんとしている男を尻目に、一家はお子で覚えたのかお喋りの聴講料に一万円を要求してくる。
「……お金が欲しいのか? ……ほら」
「ゆ!! ありがとーーね!!」
「すごいね!! こんなにもらえたね!!!」
「これだけあればふゆのあいだもゆっくりできるね!!!」
「「「「ゆっくり~~~~♪」」」」
 男から渡されたのは一万円のお札であったが、一家はその本当の価値は分からず、ただお金を渡された事だけに感激しているようだ。
「それじゃあ、みんなゆっくりついてきてね!!」
 お母さん霊夢を先頭に、一家は一列になって元気に進んでいく。
 最後尾は、先ほどの男だが、後ろを見ないゆっくりたちはその存在に気付いていない。
「ゆ♪ ここだよ!! はやくはいろうね!!」
「「「「ゆっくりしていってね!!!!!!」」」」
 近くの店に入るや否や、全員でお決まりの文句を言い、そのまま店のレジへ。
「ゆっゆ♪ このおかねでゆっくりできるたべものいっぱいちょうだいね!!」
「「「けちけちしないでいっぱいちょーだいにぇ!!!」」」
 跳躍し、レジに上がった親の声に重ねる形で、子供達も食べ物を要求する。
「……んべ!!!」
 しかし、ニコニコ顔に突きつけられたのは拳だった。
「んぎゃぶ……」
 レジの下に叩き落されたお母さん霊夢、びくびく痙攣しているその周りに、子供達が駆け寄ってくる。
「おがーーじゃーーん!!」
「にゃにしゅるにょーーー!!!」
「れーーみゅたちはたべものをかいにきちゃんだよぉーー!!」
「……ゆゆゆ、きちんとおかねをはらうんだから、らんぼうしないでね!!」
 余りダメージは深くなかったのだろう。
 すぐさま回復したお母さん霊夢は店員に文句を言うが、バイトのおにーさんはしれっとあしらう。
「偽札っすよ。買いたきゃ本物の金持ってきてください……っす」
「ゆ!!」
 お母さん霊夢が、ここに来るまで満面の笑みで咥えていたお札。
 少し涎でふやけてはいるが、そこには大きな文字で子供銀行の文字が書かれていた。
「ゆ!! ちがうよ……んぶ!!」
「「「ゆーー!!」」」
「あじゅじゅしたー……っす」
 それ以上の抗議を許さず、店のそこまで吐き出された一家。
「よ!!」
 すると店先には、先ほどの男の姿が。
「ゆゆ!!! おにーーさん!! このおかねはつかえないよ!!」
「しょーだよ!! つかえるおかにぇちょーだいね!!」
「「「ゆっくりれいむたちにおかねちょーだいね!!!」」」
「るさい!!」
「んじゃ!!」
 余りにも煩かったのだろう、一番身近にいた子霊夢を蹴飛ばし、摘み上げる。
「ゆぐぐぐ!! はなしてね!! いだいよ!!! おがーーしゃーーん!!!」
「ゆ!! そのこをはなしてね!! ゆっくりはなしてね!!!」
「煩いって言ってるんだよ!! 大体、さっきのお喋りで何で金を取られなきゃならないんだ?」
 手にしている子供を一家に見せながら、男は淡々と話しかける。
「ゆ!! れいむたちはおうたをうたってたんだよ!!」
「そうだよ!! れいむたちのおうたじょーずなんだよ!!」
「もうっ♪ おにーさんちゃんときいてね♪」
「んんぎゃらっぺいんじょーーー!!!!」
「「「「「ああああ!!! なにずるのーー!!!!!!」」」」」
「この位じゃまだ死なないだろ。それより、そんなに歌に自信があるのなら俺について来い」
 そして、ぐったりとしている子霊夢を握った男の後ろをぴょこぴょこ着いていく一家。
 たどり着いたのは、先ほどとは反対側の大通りであった。
「ほら。そこを見てみろ」
「「「「ゆ?」」」」
 男と一家の視線の先には、ブリーダに育成された霊夢と魔理沙の一家が楽しそうにテンポよくお喋りをしている。
「ゆゆゆ!! おかねをもらってるよ!!!」
「ほんとだ!! たくさんもらってるよ!!」
「なんで!! どうして!!!」
 空き缶に次々と投げ込まれるのは、殆どがカースト制最下位の硬貨なのだが、一家は恨めしそうに見つめる。
 未だ、その理由が分かっていないのだろう。
「お前等の歌よりもずっとずっと上手だからさ」
「「「「!!! ゆぐ!!!」」」」
 幾ら餡子脳と言われているゆっくりでも、流石に現物を見れば理解するらしく、みるみる間に顔に皺が増え、ついには大声で泣き出した。
 こちらのほうがリズムが良い。
「ぞんなーーー!! れいむはおうたがじょーずだねっでいってぐれたのにーー!!!」
「おかーーしゃんはおうたはじょーーずだよーーー!!!」
「いいや。下手だね。俺以外のヤツに声をかけてたら、即座に潰されるか加工場に連れていかれただろうね」
「「「「「ゆっぐりーーーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」
 加工場の言葉が燃料となり、更に一家の泣き声は大きくなる。
 それにしてもこの一家、抜群のリズム感である。
「それでだ。この俺がお前えらの歌を鍛えてやってもいいぞ?」
 男の拍子抜けの提案に、最初に泣き止んだお母さん霊夢が応える。
「ゆ? ……れいむたちおうたじょーずになるの?」
「そうだ。あの一家よりも沢山のお金がもらえるかもな」
「やる!! やるよおにーーさん!! れいむたちにおうたおしえてね!!」
「「「「おちえちぇね!!!!」」」」
 こうして、男とゆっくり一家の特訓が始まった。

~~~~
「ゆ~~っくり」
「だめ音程が合ってない」
「ゆぐ!!」
 ……
「ゆ~~っっっくり!!!」
「早い!!」
「ゆ!!!」
 ……
「ゆ「ゆ「ゆっゆっゆっくり」り~~~」」
「声を合わせろ」
「「「ゆっぐり!!!!!」」」

~~~~
 特訓は数週間に及び、毎日一家は男の家に通っていた。
 そして、舞台は最後の日。
「……ふん。まぁまぁ上手くなったな」
「やったね!!! れいむたちうまくなったって!!」
「「「やっちゃね!!!」」」
「これでたべものたくさんとれりゅね!!!」
「なぁ、何でお前等そんに食べ物にこだわるんだ?」
 集まって喜んでいる塊に向けて、今までずっと疑問だったことを男は尋ねてみた。
「ゆ!! れいむたちは、ふゆのあいだのたべものをかうんだよ!!」
「あつめるのはつかれりゅから、おうたうたってあちゅめるんだよ!!」
「ゆっゆ!! おにーさん!! れいむたちあたまいいでしょ♪」
「アー、ソウダッタノカ。デモキミタチ、モウスグユキガフッテクルケド、ズイブンユックリシテルンダネ」
「「「「…………」」」」
 一家に一足早い冬がやってきたようだ。
「……。だ、だいじょうぶだよ!! れいむたちはおうたがうまくなったから、あっというまにおかねがあつまるよ!!!」
「そうだね!! たべきれないくらいのおかねがあつまるね!!!」
「おにーーさんはしんぱいしょうだね!!」
「れいみゅたちをみちぇちぇね!!!」
 一家は自分達で勝手に納得し、簡単にお礼の言葉を言った後に男の前から姿を消した。
 翌日、男はあの一家を大通りで見つけることが出来た。
「ゆっゆ~~~~♪ ゆっくり~~~していってね~~~♪」
「ゆっゆゆ~~~~♪ ゆっくりゆっくり~~~♪」
「ぷってぃ~~~ん♪ ぷってぃ~~~~ん♪ たべるのもぷって~~んたいけい~~~♪」
 以前のそれとは格段に上手くなっている、そのお喋りに、道行く人もちらほらとお金を投げ込んでいるようだ。
「ゆっゆ♪ おかねがいっぱいになったね!!」
「さっそくたべものをかいにいこうね!!」
 朝早くから、黄昏時までかかり、やっとツナ缶をいっぱいにした一家は意気揚々とお店に向かって歩き出す。
 その後ろを、一日を無駄にした男が着いていく。
「ゆっゆゆ~~~♪ このおかねでおいし~~たべものちょ~~だいね♪」
「「「ちょ~~じゃいにぇ!!!!!」」」
「はいはい、……っす」
「ゆ~~~~♪」
 今度はキチンと接客された事に、思わず頬を緩める一家。
 これが最後の笑顔になるとは、この時は誰も思っても見なかっただろう。
「はいっす。どうぞ、っす」
「ゆ~~~♪ ゆゆゆ!!!」
「これじゃけ?」
「おにーーしゃん!! もっとちょ~~じゃいにぇ!!」
「れいむたちをだまさないで、きちんとわたしてね!!!」
「ってぃわれても、これでもさーびすしたほうっすよ? こんだけだったら、それ位っす!!」
「ゆゆゆ!! ……そんな……」
「じゃあおれもう上がりなんで、失礼しまっす!!!」
「ゆゆゆ…………」
 店員が袋に入れたのはぱちゅりぃ印の鶯パンが二個だけ。
 それでもゆっくりにとっては重い袋を咥え店の外に出る一家。
 入るときの威勢は、もう無い。
「ゆ!! おかーーしゃん!! ゆきだよぉ!!」
「ほんとだ!! たくさんふってきちゃよ!!!」
「ゆぐっぐ!! どーーじでふっでぐるのーーーー!!! ゆきさんのばかぁーーー!!!!」
 お母さん霊夢が、無駄だと分かっているにもかかわらず空に向かって咆哮する。
「もっとゆっくりしてぇーーー!!!」
「れいみゅたちにこうんさーとさせちぇーーーー!!!!」
 子供達も、大きな口をあけて天に叫ぶ。
「ゆっくりしているかい!!!!!!」
 そして男が、ゆっくり達に大声で話かける。
「おにいさん!! れいむたちこれじゃあふゆをこせないよ!!!」
「たすけてね!! おじさんのたべものをわけてね!!」
「いままで、いっぱいれいむたちのびせいをきかせてあげたんだから、ゆっくりしないでわけてね!!!」
「そんなに食べ物が欲しいのか?」
「「「ゆっゆ♪」」」
「それ!!」
「んぎゃい!!! ゆーーー!!」 
「ぺじゃ!!! やめてね!! ゆっくりりかいしてね!!!」
 勢いよく、二匹の子霊夢を掴むと、悲鳴を上げさせながら握りつぶす。
「「……」」
 息がなくなったことを確認すると、大きな容器に入れて一家に差し出す。
「お前等の歌で冬を越せるほど食べ物が帰るわけ無いだろ? ゆっくり理解してね♪ これがおにいさんからの食べ物のプレゼントだよ♪」
「ゆ……ゆゆゆ……」
「ん? もっと欲しいのかな?」
「「「「「どぉ~~~~じでゆっぐりさせでぐれないの~~~~!!!!!!!!!」」」」」
 一家は、母親を先頭に逃げるように自分達の巣へと戻っていった。
「……いりぐちはふさいだから、なかはあったかいね」
「そうだね。……わらもたくさんあるからふっかふかだね」
「でも、たべものがないよ……」
「ゆーー……」
「ちゃんとたべものをあつめてればゆっくりできたのに!!」
「しょうだよ!! おかーーさんがばかだからだよ!!」
「ゆ……。でも、みんなもれいむたちのうたならすぐにあつまるね、っていってたよね!!」
「ゆぐぐ……」
 家の中には食べ物が二つある。
 パンと饅頭。
 そして、終わる事の無い堂々巡りの議論。
 それは、人前で喋っていたお喋りの続きのようであった。

~~~~~

「あら、霊夢の所も冬至かぼちゃを作ったの?」
「なに意外そうな顔をしてるのよ。作っちゃ悪いわけ」
「いいえ。餡子入りの冬至かぼちゃなんて豪勢なモノを作るだけのお金があった事に驚いているのよ」
「こないだまで言い金づるがいたのよ。でも、段々稼ぐ量が減ってきたから、最後は自身が食事になってもらったわけ」
「なるほど。ちなみに今日伺ったのは、今回のクリスマスパーティーの案内よ。今年はれみりゃ親子に作らせるバイキング形式にしたから」
「ふーん。まぁただ飯だしね。お邪魔するわ」
「そんなに行き当たりばったりの生活じゃ、蟻とキリギリスのようになるわよ?」
「大丈夫よ。ゆっくりが越冬の食事代って貯めておいたお金が沢山有るから」


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最終更新:2011年07月30日 02:21
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