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仲良し姉妹



闇が支配する時間。空には薄蒼い色で輝く月が地上を妖しく照らしている。
人は眠り、野生の生き物も巣で睡眠を取る夜に二つの人型が空を飛んでいた。
二つはふよふよと辺りを見回すと何かを見つける。
夜目が利くその瞳は暗く離れた偽装を見抜く。

二つは地上に降り立つ。
何かが住んでいる巣であろうそれは草と板で遮られている。
偽装のバリケートのつもりなのだろうが人の手を持つ二つはそれは障害にならない。
バリケードを退けると巣の入り口が見える。
二つは…いや二匹のゆっくりは静かに入っていった。


「ゆぅ…ゆぅ…」
「ゆちゅぅ…ゅぅ…」

巣の中は比較的広かった。
人間の子供でも楽に入ってそれなりに動き回れるその巣にはゆっくりが暮らしている。
成体サイズのれいむ。そして小さいボールサイズの子供れいむとまりさだ。合わせて7匹はいるだろうか。
とても安らかな寝顔をしたゆっくり達である。
れいむには夫であるまりさがいた。
仲の良い夫婦であったが二匹は寝る前のすりすりで発情してしまい、「すっきりー」をしてしまったのだ。
本来は成体サイズになると子供を作っても黒ずみの饅頭になる事はなく、死なずに出産が出来る。
しかしまりさは中身の餡子が足りないのか、それとも子供を作るのに体が弱い方だったのか。
赤ん坊が実ると共に黒ずみ、まりさは死んでしまった。
れいむは悲しんだ。泣いて悲しんだ。
最愛のまりさが「すっきりー」で死んでしまい、心がぽっかりと穴が開いてしまった。
だがそれもすぐに吹っ飛ぶ。
まりさの頭から元気な赤ちゃんが生まれたのだ。
初めて赤ゆっくりの言葉である「ゆっきゅりちていってね!」にれいむは涙を流し、
そしてまりさの形見であるこの子達を育てようと強く誓った。

最初は手間がかかった。何せ初めての赤ちゃんを世話をするのだ。
失敗もあった。赤ちゃんの泣き叫ぶ声で一睡も出来なかった事もあった。
しかしれいむは慈愛を持って育てた。近所のぱちゅりーとありすの手伝いもあって、赤ゆっくりも子ゆっくりまで成長した。

いずれこの子達は自分から離れ、巣立つだろう。

その時まで、れいむがゆっくりと育てるよ。

れいむは幸せだった。
まりさが死んだのは悲しいけど、それでも子供達が育っている事にゆっくりとできた。
巣も偽装をしているから侵入者も来ずにゆっくりと過ごせる。

だがいつの世も、幸せというのは突然壊れるものだ。

バリケードを退かし、進入した人型のゆっくりは巣を見渡すと赤ん坊を一つに集める。
その後、れいむの頬をぱしっと叩いた。

「うー、おきろ」

れいむは夢から覚める。
こんな時間に誰が起こしたのだろう。

まさかちびちゃんがこわいゆめをみた?

れいむは目をゆっくりと覚めると、

金の髪に赤い瞳をした捕食者が目の前にいた。

「ふ、ふ、ふ、ふらんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

れいむを夢から覚ましたのはゆっくりふらんだ。それも人型の。
捕食者として最強クラスの戦闘能力の持ち主であり、
その気性の荒さと相まって適うもの無しとゆっくり界では常識が作られる存在である。

な、なんで!?かもふらーじゅはかんぺきなはずだよ!!

れいむは混乱していた。
捕食者を初めとした野生動物に見つからないようにカモフラージュしていたのに目の前にその捕食者がいるのだから当然だろう。

ち、ちびちゃんは!?

自分の安全より子供の安否を先に確かめるのは母性に優れたれいむらしい思考だ。

「うー♪おまえのさがしてるのはこいつらかどぉー♪」

れいむは凍りついた。
ふらんだけではない。ゆっくりの天敵である最悪の捕食者が二匹いる事に。
もう一匹はゆっくりれみりあ。通称れみりゃ。
ババ臭いおべべにニコニコとした下膨れ。
ふらんと劣る戦闘能力と気に入らない事があるとすぐに泣き叫び、某瀟洒なメイドに助けを求める。
それでもただのゆっくりでは適わない力を持つ恐ろしい天敵だ。
そのれみりゃの手にはれいむの愛する子供達が握られた。

「ち、ちびちゃんをどうするのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「う?あまあまをたべるにきまってるどぉ~♪そんなこともわからないんだどぉ?」

れみりゃは手に持つ子供れいむを牙で突き立てるとじゅるじゅると吸い始める。
中身の少ない子供のためか、すぐに餡子が無くなり皮だけのデスマスクとなる子れいむ。

「ゅびゅ…」

声は一瞬。痛みがなく逝けたのは幸せだっただろう。
なぜなら地獄はまだ始まったばかりなのだ。

「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛、ぢびぢゃん゛があ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
「うー☆なかなかおいしいんだどぉー」

あまあまの味に満足するれみりゃと子供を食べられ殺される母れいむ。
れいむはふらんに掴まれた腕を振り解こうともがく。逃げるためではない。子供を殺したれみりゃを殺すためだ。
しかしれいむとは遥かに差のある強い力を持つふらんはビクともしない。

「すこしだまれ」
「ゆぷぅ!!?」

脳天からふらんに殴られ、動きが止まる。
ゆっくりは痛みに弱い。ちょっとした事で動きを止めたり、命乞いをするナマモノだ。
事実、怒りに燃えたれいむはふらんの一撃で意気消沈してる情けなさである。

「うー、おきるんどぉー」
「ゅ…?」
「だーれ?おねーさん」
「ゆっくりしていってね!」「していってね!」

子ゆっくりは夢から覚めると起こしたれみりゃに挨拶をする。
まだ小さいからなのか目の前にいるのはゆっくりである事が判ってもれみりゃである事を知らないようだ。

「にげてぇぇぇぇぇぇぇ!おちびちゃん!ゆっくりにげてぇぇぇぇぇ!」

母れいむは声を張り上げる。
自分はどうなってもいい。ふらんとれみりゃに食われてもいい。
せめて、せめて自分の子供達だけはと言わんばかりに叫ぶ。

「ゆ?おきゃーしゃん。どうちたの?」
「おかーさん、もっとゆっくりしようよ!」
「ちがうの!れみりゃはゆっくりできないの!はやくにげないとゆっくりできなく「うー、うるさい」ゆぶぅ!」

危機感が足りない子ゆっくりを早く逃げるように言うがそれを理解していない。
騒ぐれいむを煩わしいと思ったふらんは再びれいむを殴った。

「おかーしゃんになにするの?!」「ゆっくりはなしてあげてね!」「ゆっくりしね!」

子ゆっくりは自分の母親を殴ったふらんに攻撃しようと跳ねてたいあたりをしようとする。
しかしそれはれみりゃに押さえられた子ゆっくりは動きすらままならない。

「ゆっくりはなちてね!」「おかーさんのところにつれていってね!」

恐れを知らずにれみりゃに命令する子ゆっくり達

「うー、うるさいんだとぉ…」

むりやり動こうとする小さい饅頭にれみりゃは一匹一匹に底部に小さな傷を付ける。
それはカッターなどでほんの少し皮を切ってしまう小さな傷だ。

「ゆぴぃ!?ゆっくりやめてね!」「やだよ、いたくしないでね!」「い゛だい゛だいい゛たい゛いぃぃぃぃ!」

だがそれは痛みと縁の無かった子ゆっくりにとって初めての体験だ。
元々跳ねたりして移動するゆっくりにとって、底部に傷が付くのはかなり嫌う。
なぜなら移動の出来ないゆっくりは敵対者から逃げる事も、食べ物を探しに行くことも出来ないからだ。
そうなってしまったら生物として底辺に位置するゆっくりだ。死んで一生ゆっくりできないのは明白である。
れみりゃに傷つけられた底部の痛みによって、もう子ゆっくりは跳ねる気力すら無くしてしまう。
底部に傷を付けられるとゆっくりは跳ねられなくなるのだ。

「うー、おまえはゆっくりとこどもがころされるのをみてろ」

ふらんはれいむに悪夢の始まりを告げる。
自分の大事な愛する子供が傷つけられるのをじっと待てと言うのだ。

「まずはおまえからなんだどぉー♪」

最初に選んだのはれいむの子供だ。
可愛らしい顔は恐怖と苦痛で苦しむその姿はれみりゃにとって、これから始める行為のスパイスに過ぎない。

まずは手始めに目を抉った。「ゆぴゃぁぁぁぁぁぁ!?!れいむのおめめがあぁぁぁぁぁ!!」
小さい目はぷるぷるとしていて感触が気持ちいい。思わず握りつぶした。舐めたら甘かった。

次は皮を剥いだ。「ゆびいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!??!!いぢゃいい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」
餡子が漏れないように丁寧に剥ぐ。時々剥く加減を間違えて餡子が漏れかけた。

リボンを取った。反応がない。先に取って反応を楽しむべきだったか。

髪の毛を剥いた。「ゆぼぉuw;cujw@:wt!?!!」
むりやり剥いた結果、皮ごと髪の毛が取れた。頭には餡子が丸見えになった。
露出した餡子から指を突っ込んだ。掻き回したり、こねこねしたり弄る。「ゆ!ひょへっ!ゆぽ!?」と一つ一つ反応を示して楽しい。

もう壊れてしまった。これだから子ゆっくりはすぐに壊れて楽しめない。
食べてみるととても甘く美味しい。苦痛で味を凝縮されているのだろうか。ふらんの分も残しておこう。

次に選んだのはまりさだ。
「ゆっくりやめてね!やるなられいむをやってね!」とさっそくまさり種特有の裏切りを発動している。
しかしれみりゃには関係ないことだ。

まずは帽子を取る。「やめてね!それはまりさのおぼうしだよ!!」
びりびりに引き裂いてやった。柔らかく脆いそれは見るも無残な状態になる。涙を目と同じ幅を流して気分がいい。

口に指を入れる。「ゆげぇ!がぎぎい゛ぎがぁ゛」
中は暖かく、餡子の感触がする。指の位置を変えると目が白目になったりして面白い。

頬を千切った。「ゆぎい゛ぃぃぃぃぃ!!ばりざの゛ぼっぺがあ゛ぁぁぁぁぁ!!」
食べてみると美味しいがれいむ程ではない。まだ苦しめる必要がある。

金色の三つ編みの毛を毟った。「ゆ゛ぎああぁぁぁぁ!?まりさのかみがあ゛ぁぁぁぁ」
右側の部分が皮ごと取れて見るだけで痛々しい。餡子を触るとぴくんぴくんして可愛かった。

片方の目に指を入れた。「ゆべぶあ!ゆびぃ゛!」
プチっといい感触と共に目は潰れ、その先の餡子ごと貫く。暫く震えていたが動かなくなった。
どうやら死んでしまったようだ。
食べると甘くまろやかになっている。子ゆっくりはそのままでも美味しいが苦しめれば更に美味しくなる。

子れいむ、子まりさと続いて二匹目の子れいむを手に取るれみりゃ。
まだ終わらない。子ゆっくりの地獄は。

口から頬まで裂いた。「ゆ?!ひゅほほほほほ!!?」
微妙に餡子が見えそうなぐらいまで裂けられた姿はまるで口裂け女だ。言葉もまるで喋れてない。

紅白の色をしたリボンを取る。「ひょるはひぇいむのぉ!!」
ハチマキのようにれいむの額に巻くと、力を込めて引っ張る。頭が皮があるのに餡子が見えるぐらい圧迫されている。

プチュウ

「ぢびぢゃん゛ん゛ん゛ん゛!!」
「うう!つぶしちゃったんだどぉ」

れいむは目の前の光景が信じられなかった。
最愛のまりさから生まれたゆっくりとしていった子が一瞬で4匹も奪われた。
それは悪夢としか言う他が無かった。
一方、れみりゃは不満だった。
このふらんとれみりゃはゆっくりを苦しめる事で味が甘くなり美味しくなるのを知っている。
しかし脆い子ゆっくりでは苦しめてもすぐに死んでしまう。
自分の手加減の問題とはいえ最後の一匹を苦しめさせる事が出来ないのにちょっと悔しかった。

「ゆ!おねーしゃん、なにちてる?!」
「ゆひひひひひ」

残る二匹の子ゆっくりはとてもゆっくりしていった。
一匹は現実逃避による幼児化。もう一匹は精神崩壊。
目の前で姉妹が壊される光景に小さい餡子脳は耐え切れなかったのだ。
これではどれだけ苦しめようとしても意味がないだろう。元々脆い子ゆっくりでは苦しめる事は難しい。

「めんどくさいんだどぉー、もうたべちゃんだどぉ」
「や゛め゛でぇ゛ぇぇぇぇぇ!おねがいです゛!でいぶはどう゛なっでい゛い゛でずがらこどもだけば!」

れいむの懇願。その姿は真剣に子供を愛してるのが分かる。
まりさだったらさっさと見捨てて、自分だけゆっくりするだろう。
れみりゃとふらんは視線を合わせる。
子供を持ったれみりゃはニコニコとした顔でれいむに近づいていく。

たすけてくれるの…?

思わず淡い希望を見だす。
れみりゃは手に持つ子まりさをふらんの口に、れいむをれみりゃの口に。

ゆっくりと自分の子供が食われる様を見せ付けた。

「うー☆おいしいんだどぉー♪あまあまなんだどぉー♪」
「おいしかった」

ゆっくりと見せ付けようにも子ゆっくりは餡子が少ない。
結果的には最初に吸われて死んだ子れいむより少し長く吸っていた程度だろう。
しかし母れいむは違った。
長く、長く。それこそ永遠に近い悪夢を見せ付けられた。
いっそ夢であれば良かった。
しかしこれは現実だ。
ふらんに殴られた痛みが、ふらんの口から漏れた子供の餡子の暖かさが、そして自分を縛る恐怖と怒りが教えてくれる。

「ゆ゛があ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

力いっぱい暴れた。今まで生きてきて最も力を発揮していた。
それでもふらんはビクともしない。圧倒的な力の差があった。

ふらんとれみりゃは外に出た。
れいむは相変わらず暴れているが無意味な行動である。
ふらんは空に飛んだ。れいむを掴んだまま高く高く、空に飛び続ける。
れいむは思わずちびり掛けた。
地上といたと思ったら、突如高い空にいるのだ。
能天気なゆっくりなら「おそらをとんでるみたい!」と喜んでいただろう。
しかしれいむはそんな余裕など無かった。

落ちれば死ぬ。

明確な死に今更背筋が凍っていた。

「れいむははなしてほしいの?」
「や、やめてね!いまはなしたらしんじゃ…!」

パッと離した。
落ちる落ちる落ちる。
地上から空まで約30m程だ。
それでもゆっくりからしてみれば身も竦んでしまう高さ。落ちて潰れて死んでしまう。
れいむの脳裏にはまりさの顔が、子供の顔が、近所のぱちゅりーとありすの顔が浮かび上がる。
あと少しで地表に激突する瞬間、落下は止まった。

「!!!?」

れいむの顔は涙と鼻水のようなものでぐちゃぐちゃだ。
地表に当たる前に掴んだのはれみりゃであった。
れみりゃはれいむを掴んだまま、空へと飛び上がる。
そしてまた落とした。

「ゆぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

地表に激突する直前にまた止まる。
止めたのはふらんであった。
ふらんはれいむを掴んだまま、空へと飛び上がる。
またまた落とした。

「ゆええぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

これはれみりゃとふらんの遊びだ。
ゆっくりを掴んだまま空に飛び、ゆっくりを落としてそれが地面に落ちたら落としたものの勝ち。
掴んで止めたらそのまま空に飛び上がり、止めたものは落とす。
シンプルではあるが、能天気で餡子脳であるゆっくりの悲鳴は耐えることが無い。

「ゆゆ!おそらをとんでるみたい!」→落ちる→「ゆゆ!おそらをry」→落ちる→以下エンドレス

しかしれいむは賢かった。
自分の子供が殺され、空に落ちる恐怖が餡子脳であるにも関わらず記憶していた。
ゆっくりは物忘れが激しい。特に自分の嫌な事に関しての物忘れっぷりは痴呆症と疑われかねない程だ。
それはそうでなくてはゆっくりが自然で生きていけないからだ。
巣で、外で、出産で、すっきりで、超冬で、食事中で、川で、飾りで、人間に殺されて…。
いつ如何なる事でも脆弱なゆっくりでは死に繋がる。
特に赤ゆっくりの脆さは石にぶつかるだけで皮が破けて餡子が漏れるほどである。
死が日常に存在し、それでいて自分の肉親から友人、赤の他人まで死ぬ状況で、
半端な精神と記憶力を持っていたらすぐに壊れてしまう。
賢いゆっくりは自然で生きていけない。れいむはふらんとれみりゃに会うまで幸運に恵まれていたのだ。

何回空から落とされただろうか。
れいむは声を発していなかった。精神が完全に壊れて声すら出ないのだ。
ストレスの影響か、黒い髪は抜け落ちており、見た目はハゲ饅頭にしか見えない。

「うー、こわれちゃった」
「つまらないんだどぉー、もうたべちゃうんだどぉー」

壊れた玩具を二つに分けた。
最後まで声を発することなくただの饅頭になったれいむはふらんとれみりゃの食べ物になる。

「うー!おいしいんだどぉー!」
「うー、あまあま」

れいむの餡子はとても美味しかった。
ゆっくりは成体になると餡子がパサパサと水気が無くし、美味しくなくなってしまう。
しかし度重なるストレスと精神が壊されるまでの遊びにれいむはとても美味しい餡子に変わっていた。
そして恐怖と苦痛で甘くなった子ゆっくりを食べながら二匹は新たな獲物を探しに行った。



れみりゃとふらんは敵対してる。
いや、ふらんがれみりゃの天敵といっていいだろう。
何せ出会うとふらんは一方的にれみりゃを殺しにかかる。
理由はふらんの気性の荒さがあるだろう。それ以外にもあるかもしれない。
それなのになぜ二匹は仲がいいのか。
それは姉妹であるからである。ただし餡子の繋がりはないが。

れみりゃは一人っ子であった。
れみりゃ種は交尾をしても子供が生まれにくく、にんっしんっをしても一匹か二匹が関の山だ。
体の無いれみりゃの植物型にんっしんっでも5匹以下という少なさ。これが希少種の理由かもしれない。
れみりゃの両親はれみりゃが出来たのが嬉しかったのか持てる愛情を持って育てた。
しかしれみりゃには欲しいものがあった。
「妹」である。
以前、父に付いていった狩りにゆっくりの姉妹がいた。おねーさんと呼ばれる事に憧れたのだ。
しかし子供が出来にくいに加えてれみりゃ種は一度子供が生まれると体力などの問題で暫く交尾すらままならない。
一度は諦めた。我が儘も言ったが無駄に終わったからだ。
そんなある日の事である。
ゆっくりの狩りの帰りにれみりゃは一匹の赤ゆっくりを見つけた。
綺麗な金の髪に透き通る赤い瞳。
ゆっくりふらんである。
親とはぐられたのか、捨てられたのか、なぜここにいるのは分からない。
れみりゃはそれを拾うとれみりゃはふらんを「妹」にすると両親に言ったが断られた。
当然である。れみりゃとふらんは敵対してる。それもふらんはれみりゃを簡単に殺す事ができる危険な存在だ。
赤ちゃんならまだ安全だ。しかし成長して自分たちを襲ってきたときに勝てる保障はないのだ。
だがれみりゃは食い下がらない。

『れみぃはがんばっておねーしゃんになるぅ!』

涙目になりながらもれみりゃは両親を説得しつづけ、ついに折れた。
そこかられみりゃとふらんの奇妙な姉妹が生まれた。
最初は両親も気味が悪がっていた。天敵に対しての恐怖が拭えないのだろう。
しかし「ぱあーぱ?」「まうまぁ?」の言葉取らずだが自分たちを親と認識してる姿に両親は驚き、喜んだ。
両親はれみりゃとふらんに愛情を注いだ。
子供が二人になって嬉しかったのだろう。
れみりゃもふらんを大事にした。狩りを一緒にしたり、遊んだりもした。
やがて月日が流れると二匹は成体に近いサイズに成長する。
巣立ちの時だ。
両親と子供は別れを済ませるとゆっくりと羽ばたく。
れみりゃは両親に感謝した。自分をここまで育ててくれた事を。
ふらんは両親に感謝した。天敵である自分を娘として育ててくれた事を。
両親は子供達に感謝した。とてもゆっくりとした子が自分たちの所に来てくれた事を。



ふらんとれみりゃの姉妹はとても固い絆で結ばれている。
れいむ一家で遊んだ後、姉妹は更にゆっくりの住処に襲撃し、遊んで壊して殺して食べた。

ぱちゅりーを殺した。すぐに死んで詰まらないがむきゅむきゅと言って面白かった。

ありすを殺した。子供を玩具にすると泣き叫ぶ母ありすの姿に性欲溢れるれいぱーの面影すらない事に滑稽で笑った。
クリームにコクが出て美味しかった。

みょんを殺した。相変わらず単語が統一されているが痛めつけるととてもいい顔をしてくれる。

親ゆっくりを目の前で殺した。子ゆっくりは涙でぐしゃぐしゃになって精神が壊れた。

ちぇんとらんを殺した。ふらんとれみりゃの二人係でちぇんとらんを互いが痛めつけられる姿を見せ付けた。泣き顔にゾクゾクとした。

てるよとえーりんを殺した。てるよは痛めつけても何も反応は無かったがえーりんはとても慌てふためいた。

てんこを殺した。殺す直前まで歓喜な顔に引いた。

…?ゆっくりがいるのに姿が見えない。

服を着てない人間の男に出会った。れみりゃとふらんを見るやいなや、凄まじい形相で走ってきた。
命の危険ではなく貞操の危機を感じて逃げた。

ドスの群れを壊した。全てのゆっくりの飾りを外し、食料庫の食べ物を何処かに捨て、赤ん坊と子ゆっくりを潰し饅頭に、
寝ているドスの底部の近い部分に穴を数個開けた。これでドスは動こうと跳ねると穴から大量の餡子が漏れて死ぬだろう。
阿鼻叫喚となるドスの群れを想像し、二匹は笑った。


まりさは逃げている。
最凶と最悪の捕食者の手から逃れるために。

「ゆっくりおとりなっているんだぜ!まりさはにげるんだぜ!」
「どぼじでえ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!でいぶも゛おぉぉ!」

妻と子供を見捨ててしまったが自分が死んだら意味が無い。
妻も子供も自分が生きていればまた作れる。
それにここまで引き離せばたとえれみりゃとふらんが追いかけても間に合わない。
まりさはそう思っていた。

「ゆぶぇあ!!」ボグシャア

突然まりさの体が爆散した。
皮と餡子が内側から爆裂し吹き飛んでミンチと化したまりさは地面に降り注ぐ。
なぜこのようになったのか?れみりゃ側の視点を見てみよう。

れみりゃとふらんはゆっくりの夫婦を見つけた。
まりさとれいむ。探せばいくらでも見つかる夫婦だ。
いつも通り、親を殺さず子供が壊され殺される様を見さしていたがまりさが隙を見て逃げ出した。
逃げ出したまりさとの距離はそこまで遠くない。全力で飛べばすぐに追いつけるだろう。
だが、れみりゃは違った。

「うー、にがさないんだどぉー☆」

右腕を高く上げるとそこに霊力が集う。
薄い霊力とはいえそれは集まり圧縮されると一つの球体になっていく。
弾幕だ。
赤い色をした弾幕を作り上げるとれみりゃは逃げたまりさに狙いを定め、撃ち出した。

「ゆぶぇあ!!」

効果は見ての通り。
威力の薄い弾幕でも饅頭に過ぎないゆっくりでは一撃必殺と成りえる。
しかし威力のコントロールが出来ないのかまりさの体は原型を留めないほど砕け散った。
これでは遊ぶ事も出来ないし死んだ痛みも一瞬だ。味も変化してないだろう。

れみりゃとふらんはゆっくりの中で著しく成長する個体だ。
しかしふらんは成体になってすぐに強くなるがれみりゃは成体になって早くて数年という時間を要する。
これではれみりゃが強いところを見た者など皆無だろう。
野生のゆっくりは数年も生きられないのだから。特にれみりゃ種は総じて馬鹿なのが多く、それで自滅してしまう。
だがこのれみりゃは違った。
親の教育、姉としての心、成長して増加した中身と知識。
ふらんと共に生きたれみりゃはついに成長期を迎えた。
その結果、妖精に近いゆっくりであるれみりゃはついに弾幕を操れる程の強さになる。
中身が増加した事で言語能力、理解力も伸び、純粋な戦闘能力はふらん種に匹敵するだろう。
さすがに人間には適わないだろうが、それでもゆっくり程度なら負ける事などまずない。

「「うー!うー!」」

二匹は楽しんだ。
毎日毎日ゆっくりで遊んで食べて、ゆっくりできた。
夜は自分たちのテリトリーだ。
ゆっくりが寝ている間に蹂躙し、壊されていくゆっくりの群れに快感すら覚える。
姉妹は月が照らす夜を楽しんだ。
しかし姉妹は早く帰るべきだった。
最初のれいむ一家で終わりにして巣に戻るべきだった。
なぜなら夜はふらんとれみりゃだけのテリトリーではない。
ここは幻想郷。
忘れ去られた妖怪が行き着く一つの道。
ならば夜という潜在的な恐怖を支配する化け物がいても不思議ではないのだ。

「こんな所でゆっくりに会うとはね…運がないわね。あなたも…」

ふらんとれみりゃに重圧が押しかかる。
それは恐怖だ。久しく忘れていた根本的に存在する感情。

めのまえにいるのはなんだ?

それは最悪の化け物。それは最強の化け物。

蒼く輝いていた月は紅く染まる。まるで血のように…。

串刺し公「ヴラド」の末裔と自称する化け物。吸血鬼と呼ばれる悪夢の顕現。

「不愉快だわ…あなたたちは」

永遠に紅い幼き月「レミリア・スカーレット」であった。


レミリアはゆっくりが嫌いだ。
愚鈍で馬鹿で分際すら弁えない。
かつてあろう事か自分を命令し、高慢としていたゆっくりの群れを存在から消し飛ばしてやった。
その時は冷静さが足りなかったので反省した。淑女は常にCOOLだ。
しかし彼女の従者がレミリアを模したゆっくり(本人は認めたくないが)を溺愛してる。
正直頭を心配して竹林の薬師に見せたレミリアは間違ってないだろう。
なぜならゆっくりとオリジナルはかなりかけ離れている。
いや、一部は似たのもいるがそれは置いておこう。
ありすを例に取ると彼女のオリジナルであるアリス・マーガトロイドは性欲を溢れる存在だったり、都会派が口癖でもない。
常に冷静で魔法の腕はさすがにレミリアの友人であるパチュリー・ノーレッジに劣るが精細さと人形との連携は優るとも劣らない。
しかしレミリアを模倣したゆっくりは最悪の一言だ。
我が儘で自分の気に入らない事があれば従者を呼び、プリンばかりを要求し、あまつさえ屁をこく肉饅頭。
力はゆっくりの中では上位に位置するらしいがちょっとした事で馬鹿故に自滅し、
しかもフランを模したゆっくりに殺される程度の存在。
プライドの高いレミリアにはそれが許せなかった。
愚鈍と馬鹿なのを拍車にかける自分を模倣したれみりゃは特に嫌っていた。


れみりゃとふらんは逃げ出したかった。
普通のゆっくりと違い、姉妹は自分より強い敵を見つけるとその場から逃げ出すのが多い。
それは生き抜くための知恵の一つだ。
たしかにゆっくりの中では強いがそれだけ。自分より強いのはいくらでもいるのを知っているし、挑んで死んだら話にならない。
故に妖怪や人間の類は極力関わらないようにしていたのだが…。
目の前にいる化け物から逃げ切れる自信がなかった。
動けば一瞬で肉片に変えられる。そんな光景が頭に浮かんでしまう。
れみりゃとふらんは目を合わせる。

「うー!」
「ゆっくりしね!」

選んだ選択は弾幕で動きを止めてすぐに離脱する事。
れみりゃとふらんは数にして数十個の弾幕を作り上げるとレミリアに撃つ。
それで倒せるなんて思っていない。時間稼ぎにすらならない。ただ、相手を驚かせればいい。
まさかゆっくりが弾幕を撃つなんて思わないだろう。
着弾したのも確かめずに後ろに逃げる姉妹。
それが普通の人間や妖怪なら逃げ切れたかもしれない。
しかし、相手は普通の妖怪ではない。
自他も認める化け物なのだ。

「!?うぎああぁぁぁぁぁぁ」
「う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!?」

突然翼が引きちぎられた。
誰が千切ったなんて簡単だ。
レミリアである。

「弾幕を使うなんて驚いたわ…でもあの程度では当たらない」

翼を失った姉妹は地に落ちる。
高い空から落ちてしまう。
いくら高い再生力と生命力を持つふらんとれみりゃとはいえ地面に叩きつけられる衝撃で無事で済むはずがない。

「うぐぅあ!!?」ブチャア
「うべぁあ!!」ドグチャ

地面に落ちた。
その衝撃は凄まじく、長く生きた中でも受けた事の無い痛みが全身に広がる。
並みのゆっくりであったら潰れた饅頭に成り果てるだろう。幸いれみりゃの傷は浅かった。
れみりゃの体は再生が始まっている。翼も生えかけて、痛みもだんだんとだが薄れていく。

「うー!ふらんがあぁぁぁ!!」

だがふらんの傷が深かった。
全身の打撲は当然として腕や足は千切れかけ、曲がってはいけない方向に曲がっている。
腹から中身が出かけており、頭は血のように餡子が流れていた。
再生が追いついていない。
早めに治療をしなければ死んでしまう程の重症だった。

「ふ、ふらんはれみりゃがたすけるんだどぉー!」

ふらんを抱きかかえるようにして急いで巣に戻ろうとする。
しかしまだ吸血鬼の悪夢は続いている。

「何処に行くつもりかしら?私を置いていくつもり?」

目の前に紅い化け物が立っていた。
もはやどうしようもない。絶望がれみりゃを染めた。
戦う?Noだ。勝ち目なんて万の一つない。
逃げる?Noだ。逃げ切れる可能性なんてまた万の一つも無い。
ふらんを置いて逃げる?それこそNoだ。愛する妹を置くぐらいなら自分で死ぬ。
命乞いをする?…それしかないのか。

「れ、れみりゃはどうしてもいいですから、ふらんはたすけてくださいだどぉ…」

レミリアは一瞬、目を丸くして興味深そうにれみりゃを見つめる。

「ふぅん…どうしてもねぇ…なら私はあなたを痛めつけるわ
死んだほうがいいぐらいに拷問をかけてあげる
もちろん死なさない。これでもゆっくりが死ぬぎりぎりまでやれるから
どう?それでもやるかしら?」

レミリアは内心笑っていた。
所詮他力本願で痛みに極端に弱いゆっくりだ。
たとえ姉妹だろうが肉親だろうか簡単に切り捨てるゆっくりには耐えられるはずがない。
そう思っていた。

「わかったどぉ…れみりゃをすきにするどぉ…」
「そう、ならいいわ。始めるわよ」


レミリアの拷問が始まる。
人の手で行えるであろう様々な拷問を掛けた。
腕を千切り取った。
足を千切り取った。
鼻を千切り取った。
目を抉り取った。
腹を裂いた。
中身を掻き混ぜた。
一つ一つの指に針を刺した。
皮を剥いた。
火で体を焼いた。
生えかけた翼を少しずつ千切った。

人間ですら発狂するであろう拷問を与える。
なまじ一般のれみりゃより再生力が高いが故に死ぬ事はない。レミリア自身の腕もあるだろう。
一つの痛みを与える度にれみりゃの叫び声が空に響く。
泣いた。目から涙が溢れ出る。その目を抉り取られ、更に痛みが襲い掛かる。

だがれみりゃは決して助けなど呼ばなかった。
ふらんを差し出して自分だけゆっくりしようなんて言わなかった。
どれだけ拷問を掛けても、どれだけ苦痛を与えても。

レミリアは不快を感じた。

なぜこいつは助けを呼ばない?いつものなら咲夜の名前を言うのに。
なぜこいつは見捨てない?ゆっくりは他人を差し出してまで生き残ろうとするのに。

「なせだ…なぜ助けを呼ばん。いつもなら咲夜の名前を出すはずだ
自分が助かるなら肉親でも差し出すはずだ」

レミリアの口調が淑女から素に戻る。
判らない。目の前の饅頭が判らない。

「う…あ…お、ねーざんば…いもーどを゛、まも゛る゛んだどぉ゛…
れみぃが…ま゛も゛る…」

所々が肉汁が溢れ出るその体はふらんの傷をも超える。
レミリアの拷問の凄さが窺い知れるがここまで自我を失わないのもさすがだろう。
それでもれみりゃは決して痛みに屈しない。
ふらんを助けるために自分を差し出した。
ならば自分が耐えなければ意味が無いのだ。

レミリアは不快を感じた。
なぜ不快に感じるのか分からない。だが目の前のれみりゃとふらんに不快を感じた。
それは500年を生きる吸血鬼でありながら心は少女である事に関係してるのかもしれない。
レミリアには妹がいる。
フランドール・スカーレット。5歳違いの妹だ。
姉をも超えるポテンシャル、能力の危険性、気の触れてる節からレミリアは妹を地下に閉じ込めた。
フランも地下にいることに不満は無かった。
仲が悪いという程ではないが逆に良いとはっきりと言える姉妹ではない。
フランは白黒の魔法使いと紅白の巫女と出会って昔のような笑顔をするようになった。
それはレミリアが自分で消してしまった笑顔だ。

レミリアの抱いてるのは不快感は「嫉妬」だった。

自分たちを模しているのにも関わらず、なせこいつらは仲が良い?

吸血鬼の少女は気づかない。もしくは嫉妬という感情を知らないのかもしれない。認めたくないのかもしれない。

「もういい。貴様は飽きた。妹諸共痛み無く消してやる」

今すぐこの不快感を消したかった。
だから目の前の饅頭を消す。容易な事だ。人間が力を入れるだけで壊れる存在。
吸血鬼たるレミリアの弾幕はれみりゃとふらんを消しカスすら残さないだろう。

れみりゃはレミリアの言葉に怒った。
自分を殺すだけならまだいい。しかし妹も殺す?約束を破るなんて。自分自身を差し出したのに。
れみりゃは弾幕を練る。ボロボロの体で。死にそうな体で。
全ては妹を守るため。今この瞬間、彼女の力はゆっくりの域を超える!

「!それは」
「うあーー!!」

れみりゃの手にあるのはただの球体の弾幕ではない。それは紅い槍。
成長する事で弾幕を覚えたれみりゃは次なる技を会得する。
レミリア・スカーレットのスペルカードを模倣したそれは───

「すぴあ・ざ・ぐんぐにるー!!」

槍が放たれた。
それはまともにレミリアの頭に直撃する。それと同時に爆音が響いた。
その威力はもはや妖精の持つ弾幕の域ではない。下手したら人間でも殺しかねない代物であった。
だか、相手は人間ではない。
化け物だ。
人間を遥かに凌駕する化け物にダメージなど無かった…。

「う…あ…あ…」
「まさか私のスペルカードを模倣するとは…だが、所詮は偽者だな
これは面白いものを見せた礼だ」

レミリアはカードを手に取ると魔力を解放する。
集う集う集う集う。
人間には成し遂げられぬほどの魔力の解放と収束。
紅い色をした霧がレミリアの右手に漂う。
霧は形を作り始める。極限まで圧縮されたそれは槍だ。紅い紅い色をした槍だ。れみりゃの槍より紅い槍。
それは神の持つ武器を模した代物か。もしくはそれその物なのか。
その名は 神槍{スピア・ザ・グングニル}
レミリアの持つ最大にして最強の武器(スペルカード)であった。

れみりゃはふらんに寄りかかった。
息はある。だが、長くはないだろう。

「ごめ゛んね゛…おね゛ーざんがよ゛わ゛ぐで…ごめ゛んね」
「おねーちゃ…ん」

最後の姉妹の言葉。
レミリアの槍は放たれた。

紅い流星だった。その槍は音を置き去りにした。
投げられた直後に爆音が響く。土が巻き上がり、後に残るのは小さいクレーターだけ。
これでもまだ手加減されたほうであろうが、威力の高さが窺い知れる。
しかしレミリアの気分は晴れなかった。最後まで不快感が残った。

紅い月が地上を照らし続ける。
だが少女の背中は酷く小さく見えた。



「めーりーーん!!」
「ぐぼふぁ!?お、お願いですから妹様!あまり強く飛び掛ると危険ですよ!主に私の命が!」
「えー、めーりんは妖怪で頑丈なんだからいいじゃない!」

紅魔館は今日も平和だ。
紫もやしは白黒魔法使いと図書館で本の取り合いを。
メイド長は役に立たない妖精メイドに代わって仕事をやり続ける。
門番と妹様は最近仲が良い。微笑ましい光景だ。門番が口から血を吐いていなければだが。
そして我らのお嬢様はフランを遠くから見ていた。

(本当に…楽しいそうね…)

紅白の巫女から言わしてもらえばレミリアは十分シスコンだ。
本当に危険と判断し、冷酷ならたとえ血の繋がった肉親でも殺す事が出来る。それは心の持つ者なら当然の事だ。
しかしレミリアはフランを閉じ込めるだけにした。殺す事はやろうと思えばやれるというのにだ。

「お嬢様…少し宜しいでしょうか」
「咲夜?何かしら」

突如レミリアの隣に立つのは従者である十六夜咲夜だ。
彼女は時間と空間を操れる。突然現れたのもその能力故だ。

「何かを間違えてもそれは取り戻そうとすればやれるものです」
「私のした事は間違いではないわ。それと同時に許されるものでもない」
「いいえ、お嬢様は歩かないだけなのです。一歩でも前に歩けば…何かが変わると思われますよ?」

従者は言い終わると姿を消す。自分の仕事をしにいったのだろう。

「生意気ね…私に説教をするなんて」

レミリアは笑みを溢す。

まったく自分の従者に説教を喰らうとは情けない。

日照り用の傘を持つとレミリアは外に出る。

「フラン、ちょっと……」
「お姉様、どうしたの?」

姉妹の仲はこれからどうなるのかは…
語るのは野暮だろう。



人里とも紅魔館とも離れた場所に二つの何かが動いてる。
それはゆっくりだ。ボロボロで瀕死に近い状態であるが。
一匹はゆっくりれみりあ。れみりゃ。
もう一匹はゆっくりふらん。ふらん。
レミリアのスピア・ザ・グングニルを喰らったゆっくりだ。いや正確には槍は当たっていなかった。
槍は地面に当たっていた。しかしそれによって起きた凄まじい爆風がれみりゃとふらんを飛ばしたのだ。
それでも傷はより酷くなり、もう虫の息と言って良い。

それに近づく人型が一人。麦わら帽子を被ったそれは二匹を見つめると、丁寧に抱きかかえる。
れみりゃとふらんは苦痛を抱えながらもだんだんと安らかになる。
母親に抱かれるのに似た安心感を感じたのだろう。
麦わら帽子を被ったそれは住処に着くと瀕死の姉妹を治療する。
傷が深く、難航を極めたが治療はなんとか成功した。
姉妹の手は強く握られていた。安らかな寝顔は何を見ているのだろうか?

ゆっくりと夜は明けていった。


(おわり)

今まで書いたもの
のうかりんランド①、②
ぺにぺに饅頭
ゆっくりゆうかの一生

あとがき
レミリアの口調は淑女とシリアスの二つがあっていい
自由とはそういうことだ
キャラ崩壊してたらごめんね。超ごめんね

追記
修正+追加修正

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最終更新:2022年05月18日 21:18