「そ~らたかいたかーい♪」
「おねーしゃんしゅごーい♪」
「おねーしゃんだいしゅきー♪」

「だすげでえええええ!」

一年で最も過ごしやすいと言われる秋の昼下がり。まりさが妹たちと遊んでいると、友達のれいむの助けを求める声がした。

「ゆゆ!れいむどうしたの!けがしてるよ!」
「れいむおねーしゃんだいじょうぶー?」
「いちゃいのいちゃいのとんでいけー!」

「むきゅん!まりさはおちびちゃんたちをさがらせてね!」

傷つき餡子が流れ出しているれいむを介抱していると、長のぱちゅりーの指示が飛んだ。
指示どおりに妹たちを遠ざけて、囲いとなりだした集団へと戻ると、驚くほど白くなったれいむが息絶えるところだった。
「れいむぅぅ!」
「もっとゆっくり……したかっ……た……」
「どうじてえええ!」
「むきゅー……、れいむはいいつけをやぶってにんげんのところへいったのよ」

ぱちゅりーによるとれいむが話した事情は以下の通りだった。

群れの中でも問題児のまりさが人里で野菜を食べようと誘った。自分ともう一人のれいむがそれに乗った。
野菜を食べていると人間がやってきていじめた。自分は、もう一人のれいむが手助けしてくれたおかげで逃げられた。
捕まっている二人を助けてほしい。


誘ったとみられるまりさは群れのルールを守らず、悪知恵が働き行動力旺盛な、ゲスと呼ばれる部類のまりさだった。
規律ある集団生活には有害だが、未踏の危険地帯を開拓していくことで、問題児ながらも若ゆっくりからは人気があった。

いいところもあったが、人間に捕まってはしょうがない。自業自得だ。群れのメンバーに諦めムードが漂う。


「れいむは?れいむはどうするの!?」
紛らわしいがここで問題にしているのは捕まっているほうのれいむである。まりさはそちらのれいむが好きだった。
「むきゅん。ざんねんだけどあきらめるしかないわ。せめて……このむれにどすがいたら……」
人間には同じように「れいむ」と聞こえるのだが、きちんと意図を汲み取って答えるぱちゅりー。
なにがしかのアクセントの違いがあるのかもしれない。
「そんな……みんながたすけないなら、まりさだけでもたすけにいくよ!」
「むきゅん!だめよまりさ!にんげんはおそろしいのよ!」
制止も聞かず、まりさはそう言って人里へと向かう。




『人里は餡外魔境』




(まっててねれいむ。まりさがだいすきなれいむをたすけてあげるからね!)
頭に広がるは成功のイメージ。人間は自分たちを食べたりいじめたりすると聞く。
だから食べられる前に、まりさたちが木の実を巣の奥に溜め込むようにして閉じ込められているれいむを、助け出すつもりだった。
捕まっているれいむをこっそり逃がして、頬ずりをして無事を喜び合う。
れいむもまりさのことを見直して、人気者のまりさよりも自分のことを好きになってくれる。
『れいむ!もうだいじょうぶだよ!』
『まりさ!』
『こっそりついてきてね!』

『ぶじににげられたよ!ありがとう!』
『れいむにはまりさがついてるからあんしんだよ!』
『まりさ……』
『れいむ……』

そこには根拠のない自信と、れいむをデートに誘いだせたゲスまりさへの嫉妬があった。




坂を下り茂みを越え、動き始めたれみりゃから隠れながら里についたのは、日が暮れようとする時分だった。
黒々と闇が落ちた村の外れに、赤々と灯る松明。その明りの下、男たちが丸い物を蹴りまわしている。
目を凝らしてもよく見えず、
「そろ~り、そろ~り」
と小声で言いながら近づくまりさ。

「ゆぎゃあああああああ!」
蹴りまわされるものの正体を見極める前に、身を引き裂くような絶叫を耳にしてそちらを向いた瞬間、視線が釘付けになった。
自分と同じ顔をしたものが足を焼かれている。ブスブス焦げる匂いが風に乗って流れてくる。
これはゲスまりさが
「ごめんなさい!ごめんなさい!にんげんさんのものだってしらなかったんですぅぅ!」
一度は殊勝に謝っておきながら、
「まりさはおいしくないんだぜ!たべるんならこっちのれいむにするんだぜ!」
許されないと知った瞬間に仲間を売ったことに対する、調理を兼ねた制裁である。

「ばりざがわるがっだでずうううう!あやばるがらばりざのあ゛んよ゛やがないでぐだざいいい!」
「何が悪かったのかなー?」
「にんげんざんのおやざいだべでごべんなざいいい!」
「分かってねえなあ」
「ばりざのおぼうしがああああああ!?」
相手をしていた男は、ゲスの帽子を取ると手にしている松明にかざした。優美なぐらい緩やかに燃え上がる。
悪知恵が働くとはいえ、知能の絶対値が低いので人間には即行でばれる。
「かえすよ」
「ゆぎゃああああああ!あづいいいいい!」
緋色に輝く帽子を頭にのせると、ゲスは大声をあげてとても喜んだ。

「こいつもこんなもんでいいよな?」
「おう、いいよ」
「何か」を蹴っていた男たちが蹴っていたものを鉄板の上に置く。赤々と照らし出されたのは変わり果てたれいむの顔で。
(あくまでもゆっくり視点で)整っていた顔は間断なくめり込んだ足で歪み、砂糖菓子で出来たリボンはところどころ欠けている。
「あづいいいいい!ゆっぐりでぎないいいい!」



「ん?そいつは?」
「あ?なんだお前」
男たちが気づいてまりさを掴み上げた。

「飼いゆっくり?」
「バッジないから違うだろ」
「まりざああ!ばりざとがわるんだぜええ!」
「ま……りさ?……!だずげでえええええ!」
「あ、知り合い?」
まりさは答えない。答えられない。
「みでないでざっざどだずげろおおおお!」
「だずげないならまりざなんがゆっぐりじねええええ」


男の一人が二匹の餡子を掬い取って、OKサインを出した。
「甘みは十分だから全体焼こうぜ」
「けど片方足で蹴ったからそのまんま食いたくねーよ」
「じゃあこいつらに子供産ませてそれ食おうぜ」
「折角手間かけたのにもったいなくないか?それ」
「ストレス解消になったからいーじゃん。それに赤ん坊のほうが旨いらしい」
「どうやって産ませるんだ?」


まりさは目の前の光景を受け入れられずにいた。
変わり果てた姿の人気者のまりさとれいむ。信じられないほど痛そうな仕打ちと嫌な臭い。
助けにきた自分を罵倒する、優しかったはずのれいむ。


「「せーのっ」」
鉄板から引きはがされた二匹が、人間の手で強制的に擦りつけられる。
「すっぎりじだぐないいい!」
「ずっぎりじだらしんじゃうううう!」
「あはは間抜け!」
「いっそこうしたほうが楽じゃね?」
「だはははは!」
男たちはゆっくりの悲鳴なぞ頓着せず、手に持って擦り合わせるのも面倒なので、股に挟んで腰使いの真似などをして笑い転げる。

「い゛や゛だあああ!もっどゆ゛っぐり、じだいいいい!……ゅっゅっ」
「もうゆるじでええええええ!……ゅっゆぅぅ」
「うわ汚ね!」
焦げた二匹の体が粘液で包まれ、今までの苦悶の声から甘く、押し殺したような声に変わる。
「れいむ……れいむ……」
まりさはそんな二人を呆然と見ている。嫌悪感が湧くのに、目を逸らせない。ぬるぬるのれいむ。聞いたことのない声。

「「んほおおおおおおおおおおお!すっきりー!」」
嬌声を上げて二匹は絶頂に達した。見る間に茎を生やし黒ずんでいく。
それを見た瞬間、まりさの何かが切れた。


「いやだああああ!おうぢがえるううう!」
「うおお!?」
おとなしかったゆっくりが突然暴れ出したので思わず取り落とす男。その隙にまりさは灯りの届かない闇へと消えて行った。
「もったいねー」
「うっせ」
「誰か醤油持ってない?」
男たちはあえて追わず、出来立ての赤ちゃんに舌鼓を打った。




まりさが逃げ去ったのは、帰るには見当違いである、村の方向だった。
「ゆ゛ぅぅ……、ゆっぐ……、ゆっぐ……」
泣きながら物音におびえ、目についた隠れられそうな物影に飛びこむ。
「あんなのれいむじゃないよ……あんなきたないのれいむじゃないよ……」
年長のれいむはまりさにとって憧れの存在だった。優しくてきれいだったのに。大好きだったのに。

「ゆー……だれかいるの?」
「ゆゆ!?」
声がしたほうを振り向くと、皮の張り、毛づや、その他どこをとっても素晴らしい、成体の美れいむがいた。
月明かりを浴びたその姿はたおやかで、まりさは一目で心を奪われてしまう。
「ここはおにいさんのおうちだよ。わるいこはゆっくりしないででていってね」
「まりさはわるいこじゃないよ!」
「じゃあゆっくりしていってね!」
「ゆ、ゆっくりしていってね!」


「ゆー、おねえさんはとってもきれいだね!」
「おにいさんがとってもかわいがってくれるからだよ!」
「ゆ!にんげんはこわいよ!れいむが……れいむがあああああ!」
「なかないでね、なくのやめてね。まりさがかなしいとれいむもかなしいよ」
そう言って美れいむは泣きだしたまりさの涙を舐めとる。その親愛の情がうれしくて、いい匂いにどきどきして。
「ゆー……くすぐったいよ」
「まりさはわらってるほうがかわいいよ!」
そう言って頬を擦り合わせる。まりさは先程の光景を思い出して体が強張るが、それも伝わってくる優しさがほぐしていく。

「れいむ……」
「なぁーに?」
「まりさはれいむのことがだいすきだよ」

このれいむこそがほんとうのれいむなんだ。まりさがすきだったやさしくてきれいなれいむはこのこなんだ。
このことおうちにかえろう。これからはふたりでおいかけっこしたり、ちびちゃんたちにおうたをうたったり、ひなたぼっこするんだ。

「れいむもまりさのことがすきだよ」
すりすりすりすり。
伝わってくる振動が、変わった。
「くすぐったいよれいむ~♪」
「……ゅ……ゅぅ……」
「……れいむ?なにか……へんだよ?」
さっきも聞いた声、れいむが出すとは思えなかった声。
「れいむにまかせてね。れいむがきもちいいことおしえてあげるね」
「やめて、やめてね。なにかまりさのからだおかしいよ?」
「れいむといっしょにすっきりー♪しようね」
「!」
実はこのれいむはHENTAIお兄さんに売り込むべく調教されていた、百戦錬磨のエロれいむだったのだ。

「いやだああああ!ずっぎり、ごわいいいい!」
「だいじょうぶだよ。とてもゆっくりしたきぶんになれるよ」
「どぼじでごんなごどするのおおお!?ぎれいなれいむがぞんなぎだないごどしちゃだめでしょおおお!?ごんなのゆっくりじゃないよおおおお!」
「すっきりをわるくいうこにはおしおきだよ!ちょっとほんきだすね!」
当然、その価値観も通常と違い、性行為に対して羞恥心がなく、ゆっくりできる最高の手段だと思い込んでいる。
「ゆふぅ……!」
駆け抜ける快感突き抜ける有頂天。れいむの愛撫で、急速に自分の中で何かが育っていく。
「じぬううう!すっぎりじだらしんじゃうううう!」
「こんなにおおきいのにまりさはなさけないね!」
れいむは取り合わない。人工的な環境で鍛えられたため、成体かどうかの微妙な差異は分からないのだ。
そのため、単なる快感への怯えと判断して更なる刺激を与えていく。
「ごわいよおおおおお!おがあざああああん!」


「「すっきりー!」」


茎を生やして黒ずんでいくまりさ。いくつかの実をつけるも熟しきるには至らない。

「あ゛あ゛あ゛あ゛まりざどおじてえええええええ」
変わり果てたまりさに号泣するれいむ。

「うー醤油醤油」
そこに飼い主である男が戻ってきた。
「おに゛いいざあああん!まりざが、まりざが、すっきりじだらじんじゃったあああ!」
「ん?そいつさっき入り込んだゆっくりか?仲間も黒ずんだし、まだ子供だったんだろ。
未熟なうちにすっきりしたら、産まれる子に餡子とられて死ぬよ」
「ながよぐゆっぐりじだがっただけなのにいい!」
れいむは声を張り上げて泣いた。







翌日。日差しの柔らかな草原で、子ゆっくりが保育役のゆっくりに問いかける。
「まりしゃおねーしゃんまだー?」
「おちびちゃんたちゆっくりきいてね。まりさとはもうあえないよ」
「そんなのうしょだよ!」
「うしょつかないでね!ぷんぷん!」
「ぷかぷかうかんであそぶーってやくしょくしたもん!」
「まりしゃおねーしゃんはいっちゅもやくしょくまもるよ!」
責任感が強く世話好きで、いつもニコニコしていたまりさ。そのまりさが約束を破るはずがない。
「ゆっくりりかいしてね……」
悲しげな説明も耳にせず、その日一日、子ゆっくりたちはまりさの帰りを待ち続けた。



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最終更新:2022年05月18日 21:44