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①隆に話しかける

「かわいい子だったね」
「だな、春樹も隅に置けないな」
隆はなにか面白がっている風に見える。

「なんか、うれしそうね?」
「ん?そりゃな、あの春樹をからかえる大チャンスじゃないか」
私は呆れて隆を見た。
さっきやけにうれしそうだったのは春樹をからかえる絶好の機会を得たからなのだろう。
こういうことに関して今まで隙をみせなかった春樹だから、隆にはうれしいのかもしれない。

(隆らしいといえば隆らしいけど…)
少し春樹をかわいそうに思いながら、女の子から受け取った紙袋を覗き込む。
重さはそれほどでもないから、お菓子か何かだろうと入っている包みを取り出す。

「なんだ?お菓子か?」
隆もそう思ったのか私の手から包みをとるとひっくり返してみる。

「ん?包装紙にも、包んであるシールにもメーカー書いてないな」
「え?」
言われて良く見れば、確かに無地の包みには店の名前は書いていない。
お菓子ならば包装紙にそれらしい記述があるはずだし、それ以外でも普通は包装紙をとめてあるシールに社名くらいは入っているものだろう。

「手作り…?」
「か?」
私と隆は顔を見合わせる。
なんとなく釈然としないものを感じる。

(それに、挨拶に来るにしてもこんな時間に女の子一人でくるもの?普通大人の人とくるんじゃないかな…?)
けれど、女の子の態度になんら不信な点はなかった。
私にはそれが逆に、不自然なものに感じられる。

私は…
①包みを開けてみる
②リビングに戻る
③隆に意見を求める

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③隆に意見を求める

「ねえ…、なんか変じゃない?」
「変って?」
「だって、女の子がこんな時間に一人でくるなんてさ。
 学校終わってからならもっと早くに来られたはずだし、それに昨日は日曜日だったんだよ?昨日来ればよかったじゃない」
「うーん、そうかぁ?単に、塾とか行っててこの時間にしか来られなかったとか」
「時間に関してはそうかもしれないけど、この包みも変だとおもわない?」
「まぁ、これは少し変だとおもうけど…、でもさっきの子べつにミストに操られてたわけじゃないし、大丈夫じゃないか?」
隆はそう言って包みをもったまま、リビングに向かう。
私も隆を追って一緒にリビングに入る。
隆は包みをそのままテーブルの上に置きソファに座った。

「ま、春樹が来たら開けてみようぜ」
「うん」
私は包みが入っていた紙袋をたたむと、包みの横に置く。
改めてみれば、紙袋も無地の白いものだ。

(なんか徹底してるっていうか…)
私はやはり釈然としないものを感じつつ、チハルが一つソファを占領しているので隆の横に座る。

(でも、隆が言うようにミストに操られてるんじゃなかったら気にしすぎなのかな?)
包みを見ながら考え込んでいると、ふと視線を感じて視線を向ける。
当然のように隆と目が合った。

「なに?」
「…なんでそんなに気にするのかと思ってさ」
隆はそういって、ちらりとテーブルの上を見る。

「純粋にコレが気になるのか?それとも…」
隆は視線を私に戻して口を開く。

「春樹が女の子を助けたことが気になるのか?」
探るような声音。

①「包みが気になるだけよ?」
②「何でそんな事聞くの?」
③「春樹のことも気になるけど…」

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③「春樹のことも気になるけど…」

と、私が言いかけたところで春樹がリビングに戻ってきた。

「おっ、ウワサの的の登場だな」
隆はやけにニヤニヤと笑いながら、春樹を目で追った。
私もリビングを移動する春樹の行動をつぶさに観察してしまった。

「……一体、どうしたのさ。二人とも……」
春樹は訝しげな表情のまま、ソファーに座った。
「いやぁ。春樹君も隅に置けないなぁ、と思ってさ」

隆は嬉しそうに言いながら、紙袋を春樹に手渡した。
タオルで髪を拭いていた春樹はその手を止めて、紙袋を受け取った。

「かわいい女の子からのプレゼントだ。春樹君もやるねぇ」
中身を確認しようとする春樹に向かって、隆は冷やかすように言った。
そんな隆に対して、春樹は苦笑で応えている。

「ちょっと隆ってば、嘘を言わないでよ。この前、春樹が体育の時間に助けてあげた子がみなさんで食べてくださいって持ってきたのよ。ちゃんとお礼に来てくれるなんて、いい子だね」
「そうか…桐原さんが。わざわざ、いいのに……」
春樹は無地の包装をゆっくりと開けていった。

(名前を聞くのを忘れていたけど、桐原さんっていうのね)

包装紙を解くと、中から白い箱が出てきた。
「甘い美味しそうな香りがするよ」
私は香ばしいような、甘酸っぱいような香りを吸い込んだ。
「多分、お菓子だ。桐原さん、お菓子作りが趣味だって言っていたし…」
春樹にしては、さっきから言葉の歯切れが悪い。まるで、対応に困っているようにも聞こえる。
「いいから、早く開けようぜ」

隆に促されるようにして、ゆっくりと箱を開けると中からパイが出てきた。
見た目も美しくて、まるでケーキ屋で売られているような出来だった。
「うわぁ! 本格的なパイね」
「多分……アップルパイだよ。まさかこんな夜に持ってくるなんて思わなかったな」
春樹は嬉しそうというよりは、どこか浮かない顔をしながら呟いた。

①「どうして、アップルパイを持ってくるって知っているの?」
②「桐原さんと仲がいいのね」
③「もっと嬉しそうな顔をしたら?」

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③「もっと嬉しそうな顔をしたら?」

府に落ちない春樹の態度に、思わずそう口にした。
「え……ああ、そうだね。ごめん」
春樹は私の言葉に小さく苦笑いを浮かべ、再び手元のアップルパイに視線を落とした。

こんがりと焼きあがったパイ生地の周りには抜き型で抜かれた木の葉の形のパイ生地がところどころあしらわれ、格子状に被せられた生地の隙間から覗くフィリングは綺麗なはちみつ色をしている。
箱の底には箱や包み・紙袋と同じく真っ白なレースのペーパーが敷かれていて、素人目に見ても相当な手間と時間がかかっている事が伺える。

(もし私が誰かにこんな贈り物もらったら、きっとすごく感激すると思うんだけどな)
春樹も甘いものは嫌いじゃないはずなのに。
そう思って見るからか、箱に触れる春樹の何気ない仕草も私の目にはこころなしかぎこちなく映った。

「別に私に謝らなくても良いけどさ。だって、1ホール手作りでしょ?きっと桐原さんも大変だったんじゃないかな。もっと喜んであげたって良いのに」
「しかも売り物みたいによくできてるしな、コレ」
春樹の横から覗き込んだ隆は、先ほどひっくり返して裏側を確認した際に崩れたと思われるパイの小さな破片を制止する間もなくひょいと口に運んだ。

「ちょっと!春樹より先に食べることないでしょ!」
「だいじょーぶだろ、彼女もそれくらいで怒りゃしないって……ん」
もごもごと口を動かしながら、隆はまるで料理人が料理の味見をしているかのように斜め上に視線を彷徨わせた。

「どう?」
「んまい!ひょっとしたら駅前のケーキ屋のより旨いんじゃないか?」
私の問いにそう答えてさらに手を伸ばそうとする隆の手をはたいて、隆の手の届かない所に箱ごとパイを移動させる。
春樹は隆の感想に特別驚いた様子もなく、なぜか少し困った顔で言った。
「そうかもしれません、去年も彼女の彼氏がクラス中にそんなような事を吹聴してましたし」
「彼氏?なんだよ、桐原さんてお前の彼女じゃないのか?」
冗談めかして春樹の肩に手を廻しながら隆が言った。言いながら隆は意味ありげな視線をこちらに寄越してきた。私は気付かないふりでやりすごす。
春樹は私たちのそんなやりとりには気付かなかったようで、顔をしかめたまま呟いた。
「違いますよ、俺はただの同級生で彼女にはれっきとした彼氏がいます。ただ……」

そう言いかけて、春樹は考え込むように口を閉ざしてしまった。その表情は相変わらず曇ったままだ。
(なんだろう、さっぱり話が読めないや……)

春樹に何て尋ねよう?
①「わざわざ持ってきてくれたのに、春樹は嬉しくないの?」
②「去年って、桐原さんとは中学生の頃から知り合いなの?」
③「桐原さんの彼氏がどうかしたの?」

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③「桐原さんの彼氏がどうかしたの?」

春樹の態度がすっきりしないのは桐原さんではなく彼氏のほうに原因があるのだろうか?
去年からということは中学時代からの知り合いということになる。
私の言葉に、春樹は深いため息をついた。言っていいものか迷っているようにも見える。

「なんだよ、さっさと吐いてすっきりしろ」
そんな春樹を、隆が肩に回した手に力を入れて、軽くゆする。
春樹は少し苦笑して、やんわりとそれを止めると言いにくそうに言葉を続ける。

「あいつ、俺が桐原さんを好きなんじゃないかって、勘ぐってるみたいで…」
「へぇ~?」
隆はそれを聞いてにやにやしながら、春樹の顔を覗き込む。

「で?実際はどうなんだ?桐原さんのこと好きなのか?」
「そんなわけないじゃないですか。もちろん友達としては好きですけど、恋愛感情じゃありません」
きっぱりと春樹は言い切ってため息をつく。

「だから彼女がお礼のためにわざわざ手作りのお菓子を持ってきたって、あいつに知れたら…しかも、こんな時間に」
「あ~、なるほどなぁ」
隆は同情するように言う。
確かにそれならば、素直に喜ぶことも出来ないだろう。

「でも、それならはっきり言えばいいじゃない?」
「言ったよ…」
春樹が疲れたように言った。
ということは、それも信じてもらえなかったということだろう。
私も春樹に同情しかけて、ふと思いつく

①「春樹、前に好きな人が居るって言ってたわよね?」
②「私が誤解を解いてあげようか?」
③「チハルに女の子に変身してもらって、春樹の彼女ってことにすれば?」

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③「チハルに女の子に変身してもらって、春樹の彼女ってことにすれば?」

私はなんとなく閃いた事を口に出していた。

「すぐにベタベタとひっつくし、彼女役にはもってこいだ」
隆は二個目のアップルパイを頬張りながら、賛成した。

「だけど…チハルがいいって言うかな」
春樹はあまり乗り気ではないのか、言葉を濁すように呟く。
「愛菜が頼めば、嫌だとは言わないはずだぜ」
隆はそういった後、「心配すんなって」と付け足しながら、春樹の肩を勢いよく叩いた。

(彼氏の方はそれで解決するとしても…)

「で、春樹は…桐原さんの気持ちを直接聞いたことあるの?」
女の勘というわけではないけれど、桐原さんの気持ちは春樹に傾いているような気がしてならない。
(この勘が外れていてくれればいいんだけど…)

「そりゃ、彼氏がいるんだったら春樹のことはただの友達だろうさ」
当たり前だろうという口調で、隆は口を挟んだ。
「わからないよ。彼氏がいても心変わりすることだってあるでしょ?」

春樹を見ると、まったくアップルパイに手をつけていなかった。

①「春樹も食べなよ。このパイすごく美味しいよ」
②「どうしたの? 春樹」
③「隆。ひとりで食べすぎよ」

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②「どうしたの? 春樹」

私の問いかけに春樹が何度目かになるため息をつく。

「姉さん、桐原さんに気持ちを直接聞いてどうするのさ?
 もし、心変わりして俺が好きだと言われても、俺はそれに応えることはできないんだよ?」
「それは…そうかもしれないけど」
「それなら、最初から聞かないほうが良いと思う。
 桐原さんが直接言ってきたとしても、俺は断るし」
春樹はきっぱりという。
その言い方に、ふと私は思う。

(もしかしたら、春樹は桐原さんの心変わりに気づいてる?)
ということは、桐原さんの彼氏だって気づいている可能性が高い。

「じゃあやっぱりチハルに女装させる作戦で春樹に彼女がいるって、桐原さんとその彼氏に見せ付けてやれば良いだろ。
 もし、桐原さんが春樹を好きでも彼女が居るってわかればあきらめるだろ」
隆がチハルのために用意してあったアイスコーヒーを飲みながら言う。

「そう…ですね。あ、隆さんこれも食べて良いですよ」
「ん?良いのか?」
「ええ、かまいません。俺は食べないほうがいい。桐原さんに少しでも期待させるようなことはできません」
そういって、春樹は立ち上がる。

「じゃあ俺、先に部屋に戻るから」
「あ、うん」
「おう、おやすみ」
春樹はそういってリビングから出て行った。

「春樹も大変だな」
春樹が手をつけなかったアップルパイをほおばりながら、隆が苦笑する。

「そうね…」
「さて、それじゃ俺らどうするよ?愛菜はもう寝るか?」
アップルパイを飲み込んで、隆が尋ねてくる。

私は…
①寝る
②もう少しリビングにいる
③チハルを起こして今の話をする

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③チハルを起こして今の話をする

「とりあえずチハルを起こして、今の話をしてみようか」
「おう、そうだな。おい、チハル起きろ」
私の言葉に隆は頷いて、チハルをゆする。

「…ん?」
「チハル起こしてごめんね、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「…おねがい?なぁに?」
まだ目が覚め切っていないのか、しきりに目をこすりながらチハルが体を起こす。

「チハル、私の年くらいの女の子に変身してみてくれる?」
「愛菜ちゃんくらいの女の子?うん、わかった」
言うないなや、ぽんっとチハルの姿が変わる。

「うそっ、かわいい!」
「お?コレならいけるだろ」
姿の変わったチハルに思わず私は歓声をあげ、隆は目を丸くする。
顔はやはりチハルの面影を残しているが、男の子だったときより顔のつくりが丸っこくなっている。
髪も少し長くなり、セミロングで、ふわふわと軟らかいウェーブがかかっている。

「これでいい?」
「うんうん、完璧よ」
「えへへ」
ちょこんと小首を傾げる仕草が、女の子の姿だととてもかわいらしい。
ほめてあげると、うれしそうににっこり笑う。その姿さえ魅力的に見える。

「よし!それじゃ簡単な打ち合わせをするぞ!」
隆の言葉に私が頷き、チハルはきょとんとする。

30分後

「それじゃ、おやすみ隆」
「おう」
簡単な打合せをすませ、私は女の子の格好のままのチハルを連れて部屋にもどって布団に入る。
チハルももぞもぞと、私の布団にもぐりこんでくる。
こうしていると、友達とお泊り会をしているようだ。

「それじゃあおやすみチハル、さっきの話よろしくね」
「うん、まかせて、愛菜ちゃん」
そういって、擦り寄ってくるチハルをぎゅっと抱きしめて目を閉じる。
すぐに、心地よい眠りにさらわれて、私は久しぶりに夢を見ずに眠った。


ふっと、意識が浮かび上がり、私は目を開ける。
時計を見ると丁度起きる時間だ。

(夢を見ないで寝るって久しぶり、さてと今日は…)

①朝から昨日の作戦を実行
②放課後昨日の作戦を実行
③作戦実行は文化祭、今日から作戦準備

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①朝から昨日の作戦を実行

(よし!やるぞ!)
私は起き上がって、心の中で気合を入れる。

「ん……愛菜ちゃん?」
「あ、おはようチハル」
私が起き上がったときに目が覚めたのか、ごしごしと目をこすりながらチハルも起き上がる。
昨日とは違い、寝ている間にテディベアに戻らなかったようだ。

(これも力が強くなってきてるってことなのかな?)
「おはよう、愛菜ちゃん」
にこっと笑うチハルに、思わず抱きついてほお擦りする。

(か、かわいい~~~~)
妹が居たらきっとこんな感じかもしれない。

「愛菜ちゃん、どうしたの?」
急に抱きつかれたチハルが不思議そうに、でもうれしそうにたずねてくる。

「んーん、なんでもないよ。今日はがんばろうね!」
「うん!」
私が笑いかけると、うれしそうに笑い返してくれる。

「さて、それじゃあ着替えて、朝ごはんにしようね」
「ボクも?」
「あ、チハルは……」

①そのままで
②制服姿に変身
③かわいい私服に変身

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②制服姿に変身

「計画どおり制服姿になってもらっていい?」
チハル素直に頷くと、ポンと軽い音を立てて制服姿に変身した。

「どう? 愛菜ちゃん」
ブレザーにネクタイ、そしてズボンの少女がその場でくるくると回っていた。

「えっと……ちょっと違うかな」
「どうして?」
軟らかいウェーブを揺らしながら、チハルが覗き込んだ。
「ほら、今のチハルは女の子に変身しているでしょ。だから、私がいつも着ている制服じゃないとね」

「あ! そうだった」
私に指摘されて、ようやく気付いたようだ。
(大丈夫かな…)

「昨日、愛菜ちゃんと隆とで決めた作戦通りにすればいいんだよね」
「そうよ。チハルの演技力で決まるんだから、頑張ってね」
私はチハルの頭を撫でた。
美少女になっても、目を細めて気持ちよさそうにする仕草はやっぱりチハルのままだ。
「うん。ボクがんばる!」
「そのボクも、今日一日はワタシで通すのよ」

再び変身したチハルは胸にはリボン、紺のブレザー、チェックのプリーツスカート。どう見てもうちの女子生徒そのものになった。
隆と打ち合せしたとおりの言葉を、チハルは目を泳がせながら、ゆっくりと話し出した。
「うんと…。ワタシは…春樹の恋人のチハルです。はじめまして」
(かわいい~~。これなら、作戦も成功しそうね)

確かな手ごたえを感じながら服を着替えて髪を整え、チハルと共に階段を下りた。

①春樹にチハルを見せて驚かせる
②隆と最終の打ち合せをする
③チハルと朝ごはんを食べる
最終更新:2007年07月30日 09:03