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289 名前:安納芋 ◆hJ/HYR69s6 @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/30(日) 04:33:37.15 ID:M0q+yl87O [1/2]
第85話『ホトトギス』

数年前郊外に引っ越してから、様々な鳥のさえずりを耳にする様になった。山鳩やカッコウもいいけれど、特に気に入ったのが初夏の日没後から夜明けまで、水笛に似た声で鳴く鳥だ。
裏の土手にある緑地や、川向こうの山から聞こえて来る。
ピョキョキョ、ピキョキョキョキョ……調べたところホトトギスの声が一番近い。良い声で鳴くものだ。
鳴き声が聞こえる晩はたびたび窓を開け、ホトトギスのさえずりを楽しんでいた。

今年の6月の事。夜1時過ぎに帰宅し車から降りると、ホトトギスの鳴き声がする。かなり近くからだ。
何処にいるんだろう?見える訳もないのに音のする方向…真っ暗な土手に目を凝らした。すると、小さな明かりが土手の上を移動している。高さや大きさ、スピードからして自転車のライトらしい。
夜中にサイクリングをする人もいるだろうが…おかしな事に、どうもライトが近づくにつれホトトギスの声が大きくなっている様なのだ。
耳を澄まし土手を見上げる私の前を、鳴き声と共にライトが通り過ぎる。自転車から鳴き声が聞こえているのに違いなかった。

深夜、真っ暗な土手を自転車で走りながら、水笛を吹いてる人がいる…

正直ゾッとした。今まで聞いてきたホトトギスの声の内、幾つかはコレだったのではないか?
そう考えると恐ろしくなり、慌てて家に入ろうとした。そんな私の目に再び明かりが飛び込んで来る。あの自転車がUターンして戻って来た。
いや、自転車にしてはありえない動きの明かりがこちらに向かって来たのだ。
それはまるで蛇の様に上下にくねり、大きさも先程の三倍はある。鳴き声はキャキャキャア!ギャギャギャア!と原型を留めていなかった。
今度こそ家に駆け込んだ。それでも鳴き声が聞こえそうで、布団を頭から被り耳を塞いで朝を待った。

幸い、この夜以降コレには遭遇していない。が、今ではホトトギスの声が聞こえると、窓を閉め鍵をかけている。

【了】