原案=ズワイガニ
編著=Дальний Восток(杏珠)
作=Ageha

電脳鯖民所記



「?」
杏珠が2階に戻ってから、突然に全ての音が止まった。しばらくすると、上から声が聞こえてくる。
「まさかこれ」
上から何者かが降りてくる。
「え誰だ」
「和紙ズワイガニ」
「ズワイガニまだ生きてたんだ」
依然2階からは物音ひとつしない。
「おいこれこの空間の時止まってる可能性あるぞ」
「えぇ」
「なんかこっちで変わったことなかった?」
「強いていうなら杏珠が脱出したぐらい」
「それだろ原因」
「結構やばい感じですよこれは」
「これなんで時止まってるの」
「簡単に言えばジェイがよくわからん方法でここから出たせいでこの空間がバグって、今は使われてないこの空間以外の全ての時が止まってる」
「えじゃあなんでズワイガニは上で動けてたの」
「和紙は電子生命体やからな」
「電子生命体は動けるの、」
「電子生命体は動けるよ」
現在、杏珠、アカツキ、ズワイガニらは電子生命体と呼ばれる人間でない状態にある。
「とりまこの空間の時間を動かさないと和紙ら一生身動き取れん」
「どうしたら時間動くんや」
「うるせえ!!!!!しるか!!!!!お前はトリックオアトリート史上最悪の男ジェイにでも殺されてろ!!!!」
「そんな物騒な」
「とりあえず2階行こう、そう言えばこの人誰」
「ガオーさん」
「俺はなんで電子生命体じゃないのに動けてるんや」
「1階は2階とはまた次元が違うからね」
「一応中庭から見える景色は連動してるっぽいけど」
「えじゃあガオーさん2階上がったら止まるのこれ」
「多分止まる、だからガオーさんここいて」
「あーでも侵入者だから大丈夫なんかな、まぁ一応ここおって」
「俺はじゃあ一旦待機だわ」
こうして2人は2階へと上がった。正確には2階のように見える別次元、だろうか。
「ガチで音なんもしないな」
「てか今ジョイマンと21にカード投げつければ勝ち確じゃね」
「がちやん」
「でもカードない…」
「あっ」
彼らは階段を出てまっすぐ廊下を進む。そして彼らは013号室の前で立ち止まった。
「入るか!」
「鍵開くのこれ」
「いや普通に開いた」
「防犯意識の低さよ」
そして彼らは少しずつドアを開く。そこにはピタりと止まった21とジョイマンがベッドに座っている。彼らの部屋には放送用のマイクや謎のハシゴがある。
「なんやこのハシゴ」
「登ってみるか」
上を登ると天井裏らしきところに辿り着く。中は真っ暗だ。光源がないという意味ではなく、本当に真っ暗なのである。
「えぇ…」
「黒すぎ」
確かにこの光景は黒いと表現した方が適当かもしれない。そこから周りを見渡すと所々黄色いタイルのようなものがある。
「これ部屋につながってんのかな」
「えこわ」
「そりゃ誰も知らんうちに殺されますわ…ゴリラでも迎え撃てんやろこれ(?)」
彼らは再び013号室に戻る。013号室はどうやら森でもなく、市街地でもなく、砂漠が映し出されているらしい。
「なんかやっぱり人狼部屋専用の設備結構あるんだね」
「これはずるいわ」
「てかズワイガニ俺思ったんだけど」
「どしたアシュリー」
「これ部屋に鍵かけて人狼が上の真っ暗闇に籠城したら絶対勝てるくない」
「あ、たしかに」
「じゃあ」
「鍵破壊するか!」
「えでもどうやって」
ズワイガニはホールへ出る。ホールの隅には不自然に椅子が寄せられている。
「この椅子があるじゃろ?」
「まさか」
「それをこうやるんだよぉ!!!!!!!!!!」
ズワイガニは途端にドアに椅子を叩きつけた。ドアは建物に大きな音を立てて廊下へと倒れた。
「だいぶやったなぁおいこれ」
「和紙らがやらないと誰がやるんだい」
「それはそうだけどこれは結構やりすぎでは」
「てかこれ鍵破壊どころじゃないだろ」
「鍵破壊どころさん!?」
「うるさい」
ドアは完全に外れ、013号室の中は晒されている。アカツキが言っていた防犯意識なんてものは皆無である。
「これ流石に隠しとかないとまずいんじゃないの」
「じゃあアシュリーこれ1階まで運んで」
「えぇめんどくさ」
「自分が言ったんやんけ」
アシュリー…ではなくアカツキはしぶしぶドアを1階へと運ぶ。
「ズワイガニー!ここの壁閉めといてー!」
「はいはい」
ドア1つがなくなっただけで部屋の雰囲気が随分"eclectic"になったような気がした。
「あれ、なんやこれ」
ズワイガニは部屋の壁につく謎のレバーを引く。途端に時計が動き出した。
「えっ」
困惑する間も無くジョイマンや21が動き出す。ズワイガニは咄嗟にカーテンの影に身を潜めた。
どうやら彼らは話をしているようである。ドアが破壊されたことは彼らがいるベッドからは死角になっており見えない。
「まだ結構人おるけどどうやって全員殺すねん無理ゲーやろ」
「まぁ確かにそれは思う」
「今1人の部屋ってどこ」
「011号室。今1人」
「じゃあ次そこ行くか」
「おっけー」
ズワイガニの部屋である。今まで散々余裕であったズワイガニのペースが崩れる。
(やばい…)
そして彼らは作戦を練る。ズワイガニの側で。

  • 時刻は12時半を回る…。-
最終更新:2025年08月04日 23:49