原案=ズワイガニ
編著=Дальний Восток(杏珠)
作=Ageha

電脳鯖民所記


(一か八かもう一回レバー下げればどうにかなるか…?)
ズワイガニは横で話す2人の男の側で考えていた。レバーを下げるなら今がチャンスである。しかし、あまりにもリスクの高いその行動にカニはいまいち決心がつかなかった。
「じゃあまずは011号室行くか」
「俺毎回面倒な仕事ばっかなんだけど」
彼らはおもむろにベッドから立ち上がる。すると、ついさっき自分たちが登った天井裏の空間へと登っていく。
(今なら行けるか…!)
21の足が見えなくなった途端、ズワイガニはカーテンから勢いよく飛び出し、ダクトのハッチを閉めた。上の21とジョイマンは突然のことに戸惑う。
「は?誰?」
「これ俺ら閉じ込められるくない」
上ではかつて010号室で杏珠が聞いたような激しい音が聞こえる。
「和紙はオホーツク海に帰るんだよおおおおおおおお!!!!」
ズワイガニは部屋から逃げ出した。慌てて部屋へ戻ってくる21とジョイマン。しかし、彼らが下へ降りた時既にズワイガニの姿はなかった。
「俺らの話してた内容絶対聞かれたやん」
「あれ結構まずい?」
「てかなんでドアなくなってんや」
「えぇ…」
唖然とする2人。そしてズワイガニは011号室へ急ぐ。
「ぬーん〜生きてるか〜」
さっきまで急いでいたとは思えないほどふざけた言い方である。
「ズワイガニ死んだと思ってた」
「えぇ」
ズワイガニはうわべふざけつつも内心ぬーんの安全に安堵した。
「そういえばズワイガニ黄色のカードもらった?」
「?」
「なんかここに侵入者がきてそれ倒したら出れるらしいよ」
「和紙もしかして不利かこれ」
「他の人よりはそうかも」
「うーん、」
一瞬の沈黙。
「そういえばぬーんさんは010号室行かないんすか」
「なんか集まるの危険らしいよ」
「えぇ」
「だから別れてる」
「そうなのか」
すると突然011号室にドアのノック音が響く。ズワイガニは咄嗟に身構え、天井を見る。ぬーんはドアを開けにいこうとする。
「ぬーん、開けない方がいい」
「え、なんで」
「ドアスコープ覗いてみて」
「え…普通に蕣いるけど」
「???」
そこに21とジョイマンの姿はなかった。そこにいるのは蕣のみである。
「2人とも一旦うちの部屋きてくれへん?」
「わかった」
「いいよこいよ飯尾(?)」
そして彼らは010号室へ移動する。
「あれ、こっちに集まってないんだ他の人たち」
「ちょっと色々あって佐藤さんと009号室とかの人は別のとこに行ってもらった」
「大変そうだなぁ(?)」
010号室に現在居るのは蕣、ぬーん、ズワイガニ、昆布の4人である。佐藤、メスガキ、X JAPANらは005号室へ移動したようだ。部屋は随分と寂しげである。
「こっちカードないし結構やばいんよな」
「あ、そういえば杏珠いないからまだ黒カードあっちが持ってるのか」
「人狼入ってきた時確かに詰むかこれ」
「カード作りにいかん?」
「いいね」
「じゃあ行くか」
彼らは廊下へ出る。
「和紙掲示板民の方コンタクトとるから君たち右の方の部屋からカード集めてくれん?」
「わかった」
彼らは別れ道を違える。ズワイガニには根っから掲示板民と話すつもりなどない。ホールへと一直線に向かう。そして、壁を開くのである。
「すまん、待たせたな」
「おそいしこれ結構重かったぞ」
背丈を超えるほどの高さを持つドアを支える女の子と、その横に立つ謎の武器を所持した成人男性の図は中々にシュールである。

ここにきてこのゲームの構図は人狼VS村人から第1陣営の蕣陣営VS第2の佐藤陣営VS第3のアカツキ陣営の三つ巴戦となる。そしてそれを影から狙う人狼。まだ見ぬ聖ら001号室の未知の勢力など、ここが"電脳鯖民所記"の1章の終わりといえよう(何章かに分ける場合の話であるが)。

  • 時刻は13時を回る…。-








































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少し過去の話をしよう。この空間には1階と2階が存在する。いずれも次元を隔てているため、同じ空間内に存在するわけではないのだが。
かつて4年前、2021年9月。現在2階で人狼ゲームを行っている面々と同じように、唐突にこの異空間へと転送された人々がいる。考察でも散々上がっていた通り旧37鯖民である。
彼らは最終的に人狼に敗北した。そして、当時村人側だった37鯖民は皆電子生命体となりこの電子空間を約4年間彷徨い続けた。
しかしこの度、杏珠、アカツキ、ズワイガニら前回参加者は再び106鯖民として人狼ゲームへの参加を果たした。彼女らが電子生命体である由縁はここからである。当然、106鯖での人狼ゲームに参加することができなかった旧37鯖民らは現在も電子生命体として電子空間を彷徨い続けている。
現在の1階はかつて2階として存在していた。何を言っているのかわからないと言う人は無理に理解しなくても良い。4年前、1階は2階であったのだ。106鯖による人狼ゲームの開催によって、かつて2階であった37鯖民の部屋は1階へと下がった。当然4年前にも1階は存在する。

では4年前の1階とは一体何か?


1鯖である。

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最終更新:2025年08月05日 23:49