「やっぱり俺的にはジョイマンの部屋のレバーが気になるんよな」
「和紙も気になる」
1階に拠点をおくアカツキ陣営である。
「ズワイガニはそのレバー押したら時動き出したんでしょ」
「層」
「でも時を操るレバーとかなら流石に強すぎる気がするんよな」
「人狼ゲーになります"しね"」
群雄割拠な空間。それでもこのグループはまだ他よりか幾分マシに見える。他のグループを少し覗いてみよう。
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「またズワイガニ消えたし」
「うちなんか消えるんちゃうかな思っててんな」
「えぇ」
010号室。所謂蕣らの集団である。彼女らは共に黒カードを作成した佐藤、
メスガキ、X JAPANらとはじめあまり軋轢はなかったはずだ。しかし今やこの有様。蕣らと佐藤らの考え方の違いと曖昧な不信感がもたらしたものである。
どこか部屋の雰囲気は暗い。部屋の外に広がる鬱蒼とした森もどこか暗く見える。
106鯖を見ていたらなんとなくわかるが、やはり彼らはなんとなく属するコミュニティが違うのである。現状存在するアカツキ陣営、蕣陣営、佐藤陣営、そして001号室の未知のコミュニティ全てにハマるピースなどこの空間には存在しないのである。かつての杏珠は4つの勢力全ての橋のような役割を担っていたが、彼女は今頃この空間からは夢のように遠い現実世界の片隅に居る。
ベッド横の机には、先端がボロボロになったドライバーが1本置かれている。
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「さとうさんたちは黒カード持ってるからあっちよりか有利か」
「あの時蕣からカード取ったのナイスすぎ」
彼らは010号室と違って比較的意気揚々としていた。彼らの安心の由縁は彼らが持つ黒いカードに他ならないだろう。人狼に唯一対抗できる黒いカード。その価値は測れない。
しかし、彼らが滞在する005号室はかつて010号室で杏珠がしたような天井裏からの侵入に関する対策が一切されていない。すなわち…。
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巡り巡って001号室。彼らは人数的には最も有利である。
チルノ、紫猫、桜音、雨遊、聖の合計5人。平均的な年齢こそ他より低いものの"人数"という指標は人狼にとって十分脅威となり得る。
そして、彼らは残り1人が合流すれば人狼に有効である黒いカードを作ることができると言う点もかなり大きい。それに、彼らはすでに人狼が何者かというのも把握している。
「21とジョイマンがもし本当に人狼なら部屋が近いあたいらは危険?」
「アワアワ」
「杏珠さんが言ってたことが本当なら…」
「早いところ黒カード作りたいね」
「人狼へ対抗できる手は欲しい」
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「レバー調べにいかん?」
「行きたいけどジョイマンと21部屋おるし、スーパーダンシングゴリラバトルのチャンピオン赤レッドクリムゾン赤赤スカーレットゴリラがおらな厳しいんちゃうかな(?)」
「ガオーさんはその武器なんなの」
「隠れん坊の装飾の銃とか」
「打てるかは知らないですけど」
「えぇ」
「この空間に入るためにmod apk入れたから基本何でもできるよ」
「チートで入ったの!?!?!?」
「あと俺無敵化してるから死なない」
「じゃあガオーさんいたら勝ちやん」
「行けるわ今なら」
「おいアシュリーガオーさん守るためにドア持っていけ」
「おいこれ結構重いんやぞ」
「仕方ないだろ、白スーツ陽気ゴリラと黒スーツサングラスゴリラもいないんだから(?)」
「背に腹はかえられないか…」
こうして3人は上へと進む。1人はドアを抱えながら。1人は片手に銃を持ちながら。そしてもう1人はただただ陽気なカニである。
「おっも…」
「あともう少しだ!頑張れ24365対応不可!」
「やめろそれ」
「上こんな感じなんだ」
彼らはドアのない013号室へ進む。中は誰もいないようである。
「こりゃ和紙だけここから脱出できるぐらい都合がいいな(?)」
「いつ見てもこのドアない部屋笑う」
「一体誰がこんなことを…」
「お前な」
部屋を真っ直ぐ行ったところにはレバーがある。
「もしこれ倒して時間止まったら停止スイッチで確定な」
レバーは上を向いている。
「おらあああああああああ!」
ズワイガニが怒涛の勢いでレバーを倒す。そんな力込めなくていいだろ。
「力強くない」
「これぐらいがちょうどいいんだよ」
至って空間に異常はない。周りからは少しの声が聞こえる。
「時が止まるスイッチではないのか」
「うーん、」
ズワイガニはその後合計五回程度レバーを上げ下げする。しかし何も起きない。
「壊れた?」
続いてアカツキが1回ほどレバーを上げ下げする。やはり何も起きない。
「!」
天井裏のタイルが開く。
「逃げるぞ」
途端に部屋が白い煙のようなもので覆われる。
「えなにこれ」
「また誰か入ってんかこれ」
21とジョイマンが次に部屋を見た時、既にそこにいたであろう人の痕跡は消えていた。